Twitterへ斬り込むFacebook

August 11th, 2010 by Rion このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをはてなブックマークに追加 2 comments »

FacebookがTwitterとの連携を強めているようだ。

FacebookからTwitterをアップデート

Facebook近況アップデートを選択的にTwitterへと流す仕組みが公開されている。Facebookのパブリッシャーは近況(ステータス)だけでなく、リンク・写真・動画などをフィード・掲示板に流すことができるので、その中で必要なものを選ぶということだ。パブリッシャーの機能はアプリケーションで拡張することもできる。

もちろんFacebookの狙いは、Twitterへの投稿をFacebookへの投稿の一部とすることだ。現状ではTwitterの更新をFacebookに自動投稿することはあっても逆を行っている人は少ない。FacebookからTwitterへのチャンネルを作ることで、メインで使うプラットフォームをTwitterに移行するユーザーを引きとめようということだろう。

Facebookがこの機能でTwitterの領域へ本格的に手を伸ばそうとしているのは、今のところ「ファンページ」にしかこの機能が提供されていないことにも表れている。ファンページとは企業や芸能人のための特殊なプロフィールだ。いわば法人や芸名に相当し、ほぼ個人のプロフィールと同じように使うことができる。

しかし、ファンページでは「友達になる」の代わりに「いいね!」(Like)というボタンがついていて閲覧者が一方的に支持を表明できる。これは相互の承認を必要しない点でTwitterのフォローに似ている。

一対多の関係はFacebookでは成立しにくい、有名人とそのファンというブロックを囲い込んだ。

Wave開発中止のポイント」で述べたように、Twitterが独自のプラットフォームとして成立したのはこの一対多という新しい関係を提示したためであり、Facebookはそれに対してファンページにより「有名人とそのファン」的なつながりを作って対抗しているわけだ。そのファンページにTwitterとの連携機能を加えることはこれをさらに進めるものだ。

Facebookには以前よりファンページによく似た機能としてグループという仕組みを提供してきたが、最近ファンページへと比重を移してきており、ファンページを推進していく強い姿勢が窺える。

Twitterのこの性質は、個人が一種の有名人となりファンを獲得するという環境を提供し、それにのった「プチ」有名人が次々にファンを呼びこむことでTwitterは拡大した。

ただ、この作戦がすんなり進むとは限らない。その理由は個人のプロフィールと著名人・ブランドのファンページという区別だ。Twitterは個人も企業も区別せず一対多のコミュニケーションを提供する。そのため個人が自然に一対多の関係を築いていくシステムが出来上がった。Facebookのファンページも個人で作成できるが、それは個人のプロフィールの延長線上にはない。あくまで個人レベルでの繋がりは相互的な友達関係、企業・ブランドと個人とのは一方的な支持関係という区別は残ったままだ。既に有名な人であればこれでいいが、普通の個人がいつのまにかブランドを作っていく環境にはなっていない。

離婚保険

August 10th, 2010 by Rion このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをはてなブックマークに追加 1 comment »

離婚にそなえた保険が発売されているそうだ。

Divorce Insurance (Yes, Divorce Insurance)

It is sold in “units of protection.” Each unit costs $15.99 per month and provides $1,250 in coverage.

一単位月$16で離婚時には$1,250支払われるとのこと。受け取るためには離婚証明を送付すればいい。購入単位の上限の有無については言及されていない。

So how does the company prevent people who know they are going to get a divorce from signing up?

保険を提供するときにまず問題になるのは逆選択だ。離婚すると得をする保険には離婚しそうな人が集まる。すると保険料が上がり、一段と離婚しそうな人が集まる。

To prevent that kind of adverse selection, the policies don’t mature until 48 months after their effective date

この保険では支払を48ヶ月後からにすることで、今離婚したい人を排除している。生命保険が自殺への支払いを遅らせるのと同じことだ。

And what about other possible selection problems related to people with volatile relationships or a family history of divorce purchasing policies in large numbers?

しかし、加入者の審査はあまり厳密ではないようで、本人の男女関係や家族の離婚歴といった情報を利用することはないそうだ。

the policies, [...] , aren’t covered by any state guaranty funds that would honor them if the provider goes bankrupt.

この保険はどの州によって保護されていないようで、母体が破産すると支払いが行われないそうだ。スタートアップということもありまずは真面目なビジネスなのか吟味する必要がありそうだ。

「消えた高齢者」という犯罪

August 7th, 2010 by Rion このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをはてなブックマークに追加 8 comments »

高齢者の消息が掴めないというニュースが世間を騒がしているようだ。

高齢者の安否確認に「答えたくない」…拒否相次ぐ

地域社会が崩壊しているなどという今更な論点につなげる人も多いが(大体消息がつかめなくなったのは最近のことでもない)、一番の問題は年金などの不正受給だろう。極端な話、不正受給がないなら安否確認自体の必要性は薄い。

Cheaters in Social Security plentiful: Officials who go after fraud say it’s emblematic of a much larger problem

死亡届を出さずに親族等が年金を不正受給するというのは日本に限った話ではない。死んでいないことにすればお金が送られてくるのだからこういう犯罪が起きるのは当然のことだ。これを予期していなかったなどというのは無理がある。

[...] the Social Security Administration estimated that during the previous six months it had received more than 75,000 allegations nationally of possible fraudulent payments.

アメリカでも半年で75,000件の疑わしい支払いがあったとのこと。アメリカには戸籍制度もないので問題はより深刻だろう。

a Florida woman, Penelope Jordan, pleaded guilty to a theft charge after she was accused of hiding her dead mother’s body in a bedroom while Jordan collected the woman’s Social Security benefits for more than six years.

違法にソーシャルセキュリティーを受け取るやり口は幾つもあるが、その一つは今回の日本の問題同様に、死亡した親族を隠すことだ。

During that same period, more than 3,700 criminal investigations were closed, more than 300 people were arrested, more than 400 individuals were charged and nearly 800 people were convicted of crimes related to defrauding the agency.

但し、問題への対処は大きく異なる。アメリカ政府はこれを悪質な犯罪とみなして積極的に捜査している。不正受給の存在は社会保障への支持を大きく損なうからだ。同じ半年の間に300人以上が逮捕されている。

Social Security Fraud (pdf)

[...] penalties of imprisonment up to five years and a fine of as much as $250,000.

不正受給は重罪(felony)で、最大五年の懲役と最大25万ドルの罰金となっている。これに加えて民事訴訟の対象となる。

高齢者の所在確認 | 日テレNEWS24

これに比べて日本での罰則は非常に軽いようだ。基本的に死亡届をしていないことに対するペナルティで、年金を不正に受給することに対するそれではない(そちらは通常の詐欺で対応するのだろう)。

医療・介護サービスの利用から安否を確認するというのもいいかもしれないが、まずは年金制度が構造上こういった犯罪の温床になるという認識を持つ必要があるのではないだろうか。同じことは生活保護など他の社会保障制度にも言える。

Wave開発中止のポイント

August 6th, 2010 by Rion このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをはてなブックマークに追加 3 comments »

GoogleがWaveの開発中止を発表したのニュースになった。では何故上手く行かなかったのだろうか。

Google’s struggles

Google’s struggles both with Wave and also with Buzz and Knol are that these are ventures with strong network effects and so that technology adoption is a great challenge.

Wave、Buzzであれば、FacebookやTwitter、KnolであればWikipediaと非常にネットワーク効果の高い市場を相手にしている。既に相当のユーザーがいなければサービスの価値はほとんどない。

それに対して成功したGoogleの製品の多くは強いネットワーク効果がない。広告であればユーザーが少なければ価格が低いだけだろうし、GMailやGoolge Doc (App) にしてもファイルレベルでの互換性は取れる。MapやReaderにいたってはスタンドアローンで利用出来る。

For Facebook, it was college students. For Twitter, it was celebrity following (this is a form of connectivity through a ‘star’ graph — the star being a source of many connections).

ネットワーク効果の強い業界への参入には、関連性の強い「ブロック」をおさえることが必要だ。Facebookは大学生をターゲットにした。学生にとって他の学生とのコミュニケーションは極めて重要であり、しかもそのやり取りの多くはそのグループ内で終わる。大学生だけ押さえればとりあえずはサービスとして価値が出てくる。そして大学生というブロックを確保し、そこから広がっていった大学生という集団が卒業という形で自然に拡散していく点がこの発展を後押ししたわけだ。

TwitterはFacebookによってすでに固められた友達関係という繋がりを使わなかった。友達という性質上双方向的な関係ではなく、フォローによる一対多の関係をネットワークの基本としている。一対多の関係はFacebookでは成立しにくい、有名人とそのファンというブロックを囲い込んだ。Twitterのこの性質は、個人が一種の有名人となりファンを獲得するという環境を提供し、それにのった「プチ」有名人が次々にファンを呼びこむことでTwitterは拡大した

For Wave, Google tried to do this by having invites and referrals initially.

GoogleはWaveで招待制度を使うことで人間関係をサービス内に模倣した。Waveのユーザーは最初から知り合いと繋がっているということだ。

Put simply, those people were already connected and Wave didn’t offer something that was interconnected or of extra value

しかし、この「つながり」はブロックとしては利用できない。何故なら、その人間関係は既に成立している=つながっているからだ。Twitterのように知らない人と繋がるという機能には欠けるし、Facebookのように昔知っていた人を見つけるということもない。既存のネットワークに比べて新しいコネクションを提示できなければユーザーは留まらずいつまでたってもネットワーク効果は発生しない

つまり、Google Waveの一番の問題はネットワーク効果の強い市場において、まず確保するブロックを特定しそこから広げていくという戦略に欠いたことだ

But Google needed to have interconnectivity from the start and a strategy. Wave seemed to have promise as a one stop shop.

さらに既存の競合サービスとの接続も万全だったとは言いがたい。Twitterのように棲み分けを狙うのであればまだしも、全てを包括する機能を提供する=競争相手をひっくり返すのであれば可能な限り互換性を取る必要はあっただろう。

ただ、この事例がGoogleの評価にマイナスかというとそうでもない。むしろ、強い競争相手のいる市場でもとりあえず動く製品で参入してみるのは重要であるし、それがうまくいかなければ直ぐに撤退するという判断も的確だろう。次の試みに期待したいところだ。

ウェブでの匿名性

August 6th, 2010 by Rion このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをはてなブックマークに追加 4 comments »

ウェブでの匿名性なんてそもそも存在しないというお話:

IT / ウェブの匿名性はもはや名ばかり ─ 瞬時に明かされるあなたの身元

消費者の名前は得られないが、このデータを住宅保有者や世帯収入、結婚歴、好みのレストランなどの記録と相互参照させる。その後、統計分析を施し、個々のウェブ・サーファーのし好について推測を始める。

企業が消費者のアクセスを追跡し、外部のデータと照合することで嗜好を推定する。外部のデータを使うことがアマゾンなどとは違うという。消費者の名前は得られない、とあるが十分なデータがあれば個人名まで遡れることもできると考えるべきだろう。

個人の嗜好が分かれば人によって異なる価格を提示することで売り手は収益を増やすことができるため、こういったサービスを提供する企業が次々に出てくるのは明らかだ。

このことから二つの問題が生じる

  1. 差別を禁止する規制の有名無実化
  2. プライバシー保護のエンフォースメントの困難化

まず、差別との関係だ。異なる価格を提示する価格差別は一般的に禁止されていない。価格差別が消費者や社会全体にとって必ずしも悪いことではないからだ(むしろプラスであるケースが多い)。

金融サービス業界では、公平な融資に関する法律により人種、肌の色、宗教、出身国、性別、公的支援の受け取りや婚姻暦に基づく差別が禁じられている。

但し、例外として人種などの差別を禁止する法律はある。雇用においても人種による差別は違法だ。しかし、他の情報から最適な価格を設定した結果としてほぼ人種毎に差が生じたとしてもそれを罰することはできないだろう。

もう一つはプライバシー保護のエンフォースメントだ。大抵の企業は情報を集めるときに(特別な理由がなければ)自社でしかデータを利用しないと謳っている。しかし、現実にはこのように多くのデータが参照される。データの出所(とそれを知っていて利用したこと)を立証するのは困難なので実質的にプライバシーを守ることは難しくなる。外部(海外)の企業が分析の結果だけを提供するようなスキームならもはや取り締まりようがないように思える。

個人レベルでは匿名性はないものとして行動する他ないだろうが、政策的な対応も必要だろう。