まさかこのブログでリンジー・ローハンを取り上げるとは思わなかったが、面白い話なので。
It Could Take Ten Years for Lindsay Lohan’s Career to Recover, Experts Say
アルコール・薬物依存の更生施設から出たばかりで早速、コカイン・アンフェタミンで捕まったリンジー・ローハンの女優としてのキャリアが終わったというストーリーだが、その理由は麻薬使用それ自体ではない(それならとっくに終了しているはずだ)。
“She is absolutely uninsurable even if a studio was willing to take the risk and hire her, so in this case its only time that can heal.”
問題は保険だ。映画制作のためには多額の資金が必要で、これは銀行からの借入や投資によって賄われるが(※)、お金を出すからには映画が予定通りに完成することを確かめる必要がある。しかし、投資家は映画制作の詳細を知らないので、代わりに保険(completion bond)を利用することになる。
保険会社は予定期間内に映画が完成しない場合には投資家に支払いをするか、強制的に制作に介入して映画を完成させる約束をする。もちろんそうなってしまっては困るので業界経験者を使って制作の細かいところに首を突っ込んで時間内に完成するように努力するわけだ。しかし、彼らも全てのリスクをコントロールできるわけではない。例えば、俳優が突然失踪してしまえばどうにもならない。ここでさらに俳優に関する保険(cast insurance)が必要となる。
この保険は俳優(や監督などキーパーソン)が何らかの理由で出演できない場合に支払いを行う。例えば、ターミネーター3制作に際しては主演のアーノルド・シュワルツェネッガーに200万ドルの保険金が掛けられたそうだ(万が一の場合の支払いは1億5000万ドル)。保険会社はリスクを軽減するために、病歴を調べたり、健康診断をしたりするだけでなく、スタントの利用を強制することまでする。このようなハリウッドにおけるお金の流れについては、「The Hollywood Economist: The Hidden Financial Reality Behind the Movies」に詳しい。
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2000年のムーラン・ルージュでひざを負傷し、続くパニックルーム(2001年)で降板したニコール・キッドマンは、次の映画主演に際し保険をかけるため、自身が100万ドルをエスクローに入れる必要に迫られたということだ。ニコール・キッドマンですら、保険がなければ主要な役を演じることはできないわけで、今回のリンジー・ローハンの俳優生命が絶望的なのは明らかだろう。保険がかけられるようになる頃には年齢的な問題もある(特に薬物中毒であることを考えると深刻だろう)。
Lindsay Lohan’s Failed Drug Tests Could Derail Upcoming Film | TMZ.com
A source close to the film tells us shooting the picture in Los Angeles instead of Louisiana “would radically change the budget” and force producers to try and secure additional financing.
主演予定のInfernoもこの様子では完成するかどうか疑わしい。撮影が予定されていたルイジアナ州は映画産業への減税措置で人気の場所で、裁判所からの移動制限でカリフォルニア州での撮影を余儀なくされれば制作費用は大きく膨らむ。制作会社が怒り狂っているのは間違いない。
(※)まあ大手なら必要ないかもしれないが、メジャーが保険なしのリスクをとってまで薬物中毒の俳優を使う理由もない。
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