日本でのGoolgeとYahoo!との提携について何だかよく分からない記事。
危惧を強調する側は次のように主張した。「Yahoo! Japanがグーグルの検索エンジンを利用すれば、ますます個人情報がグーグルに集積される。この分野はネットワークの外部性が強いので、他企業が対抗することはむずかしくなるだう。独占企業の登場は長期的にはイノベーションの可能性を減じるものだ。」
GoogleとYahoo!が提携することで個人情報が云々というのは競争上の問題と分けて考えるべきであろう。現状の個人情報保護法が過剰ならそれは適正化するのが筋だ。個人情報を持ち出さなくてもこの提携に対する公正取引委員会の対応に問題があることは変わらない。
「提携の是非はYahoo! Japanの株主が決めればよいことであって、外からあれこれ言う必要はない」という意見もあった。
逆に反対論はというと、競争政策の問題を株主が決めればいいなどという反対意見はお話にならない。JALとANAが合併するのはJALとANAの株主が決めればいいことではない。価格がつりあがって困るのは消費者だ。
これに対して「グーグルの創業者は、世の中のあらゆる情報が連携し利用されることは人々の利益になる、と無邪気に信じているだけだ」という意見が出た。[…] 無邪気に信じて規模を拡大しただけだとしても、市場に悪影響を与える力を持つようになり、それを行使すれば、独占禁止法上の問題になるということだ。
こちらも何を言いたいのだろう。子どもの責任能力の話をしているのではない。企業が「無邪気に信じて」他の大企業と弁護士が念入りに作った契約を結んで実質的なシェアを伸ばし顧客たる広告主に対する価格を吊り上げたらそれは競争政策の対象だ。「無邪気に信じて」いるかは関係ない。大体、企業について無邪気かどうかをどう判定すればいいのかも分からないし、世界有数の大企業がそんな法律知らなかったで済むわけないだろう。
個人情報保護法が過剰でイノベーションを阻害するという論点は分かるし、知的財産に関してもGoogle Booksのような試みはアメリカでなければできなかっただろう。しかし、過剰な規制を問題にするなら、実際に過剰であるケースに正当な批判を加えるべきで、正当なケースに対する的外れな反論を紹介するのは逆効果だろう。