TOEFLの行方

出版大手のPearsonがついに英語能力検定業界に参入するそうで:

Quick Takes: Pearson Formally Kicks Off Test to Challenge TOEFL – Inside Higher Ed

現在のこの市場はETSのTOEFLが支配的だ。他にはIELTSがあるが、英連邦の国々以外ではあまり普及していない。

上記記事からリンクされているNew Challenge to TOEFLにTOEFLの問題として会話能力の測定が挙げられている。

“It’s a complaint we hear time and again. Candidates do very well on the written examinations, but they aren’t prepared to engage in dialogue in the classroom,” Wilson said.

TOEFLにもスピーキングが導入されているがどの程度役にたっているのだろう。自分が最初に受験したのは21の時だった。当時は学校の授業以外で英語を使ったことなど一度もなかったがほぼ全てのアメリカの大学院の要求するスコアは越えていた(受験英語も捨てたものではない)。逆に23で二度目受けたときは日常的に英語で会話していたが初回と比べそこまで大きなスコアの違いはなかった(10%も上がっていない)。二回とも特に準備して受けたわけではないので同じ条件だったように思う。

Pearson’s Anderson said that in planning the new test, the recording was viewed as key by admissions officers. The recording will not be reading, but will be of the candidate responding to a prompt requiring analytic thought and explanation — something comparable to what a student might experience in a classroom.

新しい試験では録音内容を学校側も聞けるようにするようだ。これは正しい方向のように思える。スクリーニングが目的であれば、他のスコアで可能である。少なくとも録音を提供しない理由はない。実際に議論や授業を行っているところをビデオに取れば会話ができるかどうかは一目瞭然だろう。

スピーキングの内容を専攻別に分ければより効果的だろう。その昔気まぐれで英検一級の試験を受けたが、面接での得点が足りず落ちた。その時の内容は確か、化粧品開発のために動物実験を行うことの是非について二分で喋れというものだったが、どうやったら二分でまとめられるのか全く分からず功利主義から始めて失敗した。おそらくあまり真面目に考えず、可哀想だ・エイリアンがやってきて人間を使ったらどうする、とか適当に妄想すればよかったのだろうが、そういうのは非常に苦手だ。何か専攻に関連する情報やシラバスのようなものを与えて質疑応答するなどの方がよいように思う。

内容がどのようなものになるにしろ、競争相手の登場は受験者にとっては非常に望ましい。現状のTOEFLの大きな問題には高価格と低品質なサービスがある。日本での受験料は事前予約済みで$200であり、近年上昇し続けている。またサービスのレベルはかなり低い。私が利用した際にはTOEFLのスコアが応募締切りに間に合わないことが多かった(但し、このことは大学側によく知られているのもあり、最終的に届けば問題にはならない)。

この市場への参入は比較的困難である。受験者側は最も多くの大学が受け入れる試験を受ける強い動機がある。受験予定の大学のうち一つでも新しい試験を認めていなければTOEFLを受けることになるだろう。この構造を変えることは困難だ。新規参入者は市場の反対側、大学に注力すべきだ。大学側は新しい試験を認めるのに大きな費用が必要なわけではない。多くの学生が望んでいるのであれば導入するのに抵抗はないだろう。Pearsonは新試験がTOEFL程度の信頼性があることを示し、スコアの読み方を説明し、より使いやすいサービスを提供すればよい。既にビジネススクールの集団を取り込んでいるのは正しい方向性だ。受け入れてもらうために金銭ないし教材などを提供することもありえるだろう。