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中国の翻訳サイト

June 26th, 2010

コラボレーションに基づく中国の翻訳サイトが紹介されている。

The Wikipedia of news translation: Yeeyan.org’s volunteer community

Aside from reading stories, users can perform two basic actions: recommend a story or a URL for translation, or translate a recommended story.

Yeeyan.orgは英語のサイトを中国語に翻訳して公開するサイトだ。読者は訳して欲しいページを送ったり、逆にそういったページを翻訳することができる。

The site’s design encourages participation in a number of different ways. The front page prominently displays a staff-curated selection of recommended but as-yet-untranslated articles.

もちろん翻訳者を集める方が難しいので、そのために一通りの工夫がしてある。ユーザーごとに翻訳したストーリーのリストやコメントの数、バッジを表示するなど、大抵のフォーラムにあるサイトへの貢献を促す仕組みを備えている。

Beginning translators tend to produce rough texts and make many mistakes, says Kitty, but “it is cruel if we don’t even provide a chance.”

さらに、翻訳の質にはこだわっていない。厳しい管理をすると翻訳を始めようとするひとを遠ざけてしまう。これはQ&Aベースのフォーラムなどで重要な視点で、初心者を上手く取り込むための試みだ。フォーラムであれば初心者向けの専用ページを作るのもその一つだ。

Under international law, permission from the copyright holder is generally required to create or publish a translation. By publishing user-supplied translations of arbitrary news material, Yeeyan creates a public good in a legally dubious fashion.

しかし、勝手に翻訳を公開するのは、翻訳権の侵害である。これは日本でも英語サイトを全訳する場合に問題となる(例えばこのブログでは全訳は避け、常に自分の意見が主になるように心がけている)。

Even so, Yeeyan is actively seeking agreements with copyright holders to create and publish translations of their work.

そのため、Yeeyanは著作権者に対して翻訳を作成・公開する合意を取り付けるべく努力していて、既に有名サイトであるReadWriteWebの中国版を公開している。

But there’s money to be made offline if you have access to a huge pool of translation talent, and connections to publishers on both sides of the language divide.

Yeeyan自身は著作権の問題もありあまり広告収入を上げていないが、翻訳家のプラットフォームとして機能することで収益をあげているようだ。翻訳で稼ぎたい人が集まりYeeyan上でニュースなどを翻訳、そこで認知され、実際の仕事を受注する。仕事を手に入れる評判作りとスキルアップのために、公共財を提供するというのは(仕事につながらない)Wikipediaよりもオープンソース開発に近いだろう。

NYT有料化を擁護する

January 17th, 2010

ライブドアが始めた新しいメディアというTech Waveでニューヨーク・タイムズの一部有料化が取り上げられている。

Tech Wave : ニューヨーク・タイムズ、いよいよ有料化へ。絶対失敗するだろうけど

「絶対失敗するだろう」という過激なタイトルになっているが何を持って失敗とするのだろう(ht @Lingualina)。それを定義しなければこの予想には意味がない。例えば、現在収益が上がっていなければ赤字が減るだけでも成功だろう。

また、一部有料化というなら、The Wall Street JournalもFinancial Timesも既に導入している。WSJもFTも一部有料化を続けており、これは一部有料モデルが少なくとも彼らにとっては全部無料モデルよりも利益になるということだろう。多くの新聞社が経営難で廃刊になる中でこれは成功といえる。同じことがNYTには当てはまらないとする根拠はなんだろうか

で、なぜ僕が新聞の有料化が失敗すると思うのかというと、時代の流れをまったく無視しているから。ほかのネット上のサービスはテクノロジーを使ってものす ごいスピードでその価値を高めているのに、新聞は何の改良も加えずにただ読みづらくしようとしている。読むのに手間をかけようとしている。そんなの受け入 れられるはずがない。

挙げられている理由はどれもNYTにだけ当てはまるものではない。ほかのネット上のサービスがテクノロジーの利用で価値を高めているのはそうかもしれないが、NYTの記事のクオリティは日本の新聞社の記事や世にあふれるブログとは比べるまでもなく高い。全てを有料化するならともかく、FT式の一定以上のアクセスに対する課金がうまくいかないとするには時代の流れよりは強い根拠が必要だ。

ちなみにライブドアの田端氏はTechWave開始に際して「良質」のコンテンツを次のように説明している(ht @fukui_dayo)。

極めて斬新な「問題提起」型の記事のほうが、退屈で無難な「模範解答」型の記事よりも、遥かに「良質」だと言えるのが分かるだろう。

もし既存のメディアがこの意味での「良質」な記事に駆逐されるのであればジャーナリズムの将来には懸念を覚える。テクノロジーを利用して利便性という意味での価値を高めようとするのもいいが、まず記事の内容を高めるという発想が必要だ。本当に質の高い記事を社会に提供している人たちがいかにそのコストを回収するかを必死になって考えているのだ。それが難しいことだとしても、ただ「絶対失敗するだろうけど」と評することには賛同できない。費用を下げて収益を求めるのも悪くないが、質を保つためになんとか収益率を高めようとする試みは応援したい

P.S. 若干攻撃的な書き方になってしまったが、これもまた「良質」なのだから許されるだろう。

コピペからペーパーミルへ

December 27th, 2009

アメリカではかなり普及しているコピペ発見ソフト(Anti-Plagiarism Software)が日本でも登場した模様:

コピペ見破るソフト実用化 「学生らの悪癖なくす」 – 47NEWS(よんななニュース)

ソフト名は「コピペをするな」をもじって「コピペルナー」。論文の中にネット上に同じ文章がないか検索。完全に一致する部分は赤く表示され、単語を置き換えたり、語尾を変えた文章も度合いによって、該当部分がオレンジ色や黄色に表示される。コピペした部分が占める割合や転用した元の文献も割り出せるという。

大学での成績が重視されるアメリカでは、この問題は遥かに深刻だ。単なるコピペでは、同じ場所からコピーする人が多いので有料でレポートを販売するサイトも多い。日本でもハッピーキャンパスのようなサイトがある(よく検索で引っかかる)。

アメリカではさらに進化して、カスタムでレポートを作成してくれるペーパーミルが多い。例えば、Perfect Term Papersでは納期別に価格が設定されている:

5 Days & above

$7.95 per page

3-4 Days

$14.95 per page

2 Days

$19.95 per page

24 Hours

$26.95 per page

Next Morning

$34.95 per page

もはや一つの産業と化している。意図的に完成度を下げるサービスも存在し、こうなると発見は非常に困難だ。これは英語の場合ゴーストライターの確保が簡単であることが一因だろう。大学での成績を重視しない日本でこの手の商売はどの程度はやるだろうか。

何故雑誌は新聞よりうまくいくか

December 9th, 2009

デジタル化した市場で雑誌の未来は新聞のそれよりも明るいという話:

雑誌の未来、新聞よりは明るい? 光沢は失えど先行きに希望 JBpress(日本ビジネスプレス)

データベースのメディアファインダー・ドット・コムの試算では、北米では今年1~9月期に383誌が廃刊になった。だが、ここ数カ月、生き残った雑誌は意 外な自信を見せ始めている。紙媒体についてもデジタル版についても、雑誌の命運は必ずしも一緒にスタンドに並ぶ新聞と同じではないと考えるようになったの だ。

新聞より雑誌がうまくデジタル化に対応できるのはその通りだろう。しかし、元記事で挙げられているその理由はあまり正確なように思えない:

  • 時間に敏感でないのでアグリゲーターの影響を受けない
  • E-bookリーダーが雑誌なみに画質を再現

私は雑誌の未来が明るい理由は次のようなものだと考える:

  1. デジタル化は市場を広げるためニッチなセグメントで雑誌が活動するのを容易にする
  2. 新聞はもともと様々な情報を集めるアグリゲーターなのでGoogle Newsのようなアグリゲーターと競争になるが、雑誌は直接競争にはならない
  3. 雑誌の内容はニュースではなく著作物であり知的財産として保護される

1はネットがない時代を考えるとわかりやすい。紙媒体がカバーできる面積には限界がある。大都市でニッチな産業が発展するように、ネットは情報面での人々の距離を縮めニッチなビジネスを可能にする。

2は見落とされがちな点だ。新聞各社はGoogle Newsを批判する。それは単に彼らがGoogle Newsと同じ土俵で戦っており負けているからだ。もともと新聞というビジネスの本質は、情報の生産者というよりもアグリゲーターだ新聞社が記者やコラムニストを囲っていたのは単なる垂直統合に過ぎない。垂直統合を有利にしていた技術・経済的背景が変化し、記者やコラムニストがデジタル時代に新聞社から分離していくのはその帰結だ。もともとアグリゲーターとしての機能が小さい雑誌はGoogle Newsのようなサービスとの競争を心配する必要がない。

3は何度か述べているが、ニュースという事実を保護するのは技術的に難しい。雑誌の内容は普通の著作物なので単純にコピーされる心配はないだろう。

追記:はてなブックマークで

Google Newsには新聞は勝てないが雑誌は著作権というアドバンテージで勝てるという話。いまひとつ腑に落ちない。

とあるが著作権の話がメインではない。最大のポイントはGoogle Newsと新聞は競争相手だが、雑誌は勝てる・勝てない以前に同じ土俵にはいないってこと。もちろんそれゆえに雑誌は成功するっていうわけでもない。ニッチを狙うビジネスとメインストリームを狙うビジネスとでは最適な戦略が全然違う。

Big Sister:風俗の多方向市場化

November 30th, 2009

最近Freemiumなんていう言葉が話題になっている。わかりやすく(?)言うと、ネットワーク効果のある市場で、マージナルな価格をゼロにすることで利用者を増やし、収益は価格差別によりインフラマージナルな利用者から回収すればいいというビジネスモデルだ。これはネットワーク効果が大きく、支払意志額の小さな消費者が多く(=需要曲線が強く下に凸で)、価格差別が容易な場合には有効な戦略だ。

しかし、収益をあげるのが無料で財・サービスを手に入れるユーザーの一部でなければならない理由はない。三種類以上の参加者のいるマーケットであれば、財・サービスのやりとりをする以外の第三者から利益をあげることも当然可能だ

無料の新聞がそれはその一例だ。新聞はニュースなどを読者に提供する一方、広告主から収益をあげる。読者が増えれば増えるほど広告収入が増えるため一定の条件下では読者には何も課金しないことも正当化される(例:小額の支払のための費用が高い)。

Big Sister(NSFW)はこの収益体制を風俗に適用したものだ(「夜のオンナ」の経済白書という本で紹介されているそうだ via Feel Like A Fallinstar)。かなり有名なもののようでBloombergでも記事になっているしWikipediaにも説明がある。Big Sisterのビジネスモデルは次のようなものだ:

  • 無料で風俗サービスを提供する
  • 引きかえに行為を撮影する
  • 映像はネットで有料で公開する

これが、サービス提供者、サービス需要者、ネット会員という三種類のアクターを一つのプラットフォームで結びつけるビジネスであるのが分かる。

誰が誰にお金を払うかは、ネットワーク効果がどのように発生するかによって決まる。サービス提供者は多い方がよいので企業は賃金を支払う。閲覧者は少ない方がいいので料金を徴収する。需要者は特殊で、売春が法律で禁止されているため無料となる。需要者は撮影に必要だが簡単に見つかるので経済的にもそれほど間違った価格(=0)ではない。

このビジネスモデル自体は古典的な覗き部屋と同じだがインターネットがそのスケールを飛躍的に拡大させた。こういったニッチは市場は通常大都市でしか成り立たないが、インターネットがあれば多くの顧客を同時に相手にできる。また低コストな地域で営業して高所得な地域で収益をあげることも可能だ。これにより、映像からの利益が上がったことでサービス自体の価格をゼロにできれば、売春に関する規制も同時に回避できる(基本的にその場での金銭のやりとりさえなければ売春には該当しない以上取り締まりは不可能だろう)。