https://leaderpharma.co.uk/ dogwalkinginlondon.co.uk

利益率の規制

健康保険をどうするかで盛り上がるアメリカで大きな規制が話題になっている。

New Premium Rules Could Be Game Changer for Health Insurers

The medical-loss ratio measures how much of premiums insurers pay out for medical care versus administrative costs. The new law requires that insurers use at least 80% of the premiums from individuals and small businesses to pay for medical care and profit-taking, and 85% of premiums from larger employers.

規制の対象となっているのはmedical-loss ratioという指標で、保険料収入のうちどのくらいの割合が保険金の支払いに宛てられているかを測るものだ。新しい法律はこの割合を80%以上(大規模な雇用主については85%以上)にすることを要求しており、基準を満たさない場合には契約者へのリベートが必要なる模様だ。

Health insurers are waiting for regulators to clarify how companies must account for the numbers—whether they can average the MLRs of their subsidiaries, for instance.

明確な指標のようにも見えるがそうでもない。例えばこの指標を測る単位を広くとれば、部分的には数値が低くても全体では基準値を上回ることもありうるし、逆に、極端な話、病気になっていない人だけについてこの指標を取れば0%になる。

That process is already happening, though. American National Insurance Co., of Texas stopped marketing individual policies last month. A spokesman for the company said it operates its plans at about a 60% MLR, and didn’t want to retool its business model to meet the new requirements.

そして、もちろん最大の問題は一種の利益率の上限を定めることによって、規制対象となって財が提供されなくなることだ。この場合、経費の割合の多い個人向けが提供されなくなったり、商品説明にかける費用を減らすという懸念もある。

どういう経緯でこんな法律ができたのかは分からないが指標の公開を義務付けるというような穏当な規制の方が好ましいように思える。

ホワイトハウスの給料

ホワイトハウスの職員給与が公開されたそうだ。

Federal Eye – White House salary information released

トップはオバマ大統領の40万ドル、職員は21,000ドルのパートタイムから18万ドルまでで、シニアスタッフは172,200ドルとのこと。オバマ政権はホワイトハウス高官の給与を凍結しているので前年と変わらない。

一般職員は40,000ドルから60,000ドルで平均は84,000ドルとなっている。これはワシントンDCの物価・給与水準からすれば決して高くなく、高級官僚については政府部門の方が民間部門よりも給与が低いという一般的な傾向だ。役人の給料が高いと批判されがちだが、政府部門から民間部門に移って大稼ぎする高官も多く、一概に高いことが悪いとは言えない。

Powered by Socrata

レストランのチップ

ブランチを食べながら暇そうなサーバーを見ていたらチップについて書こうと思い立った。以下、アメリカのレストランについて(バーテンとかにはドリンクの難易度に応じて1,2ドル渡せばいい)。

チップの払い方

まず、チップ(tip; gratuity)を払うのはサービス料が含まれていない場合だ。18% of gratuity includedとか書いてある場合には払う必要はない。

チップの額は一般的に総額の15-20%とされているが、適当でよい。レシートに適当なチップの額が段階的に記載してある場合もある。本来、税引き前の請求額に対して計算すべきだが、あまり差はでないいので好きにすればよい。では何%がいいのかという話だが、本当に適当でいい。どうしても決めたければ15%にでもしとけばいいだろう。

後述するが、チップが全てウェイターに渡るわけではないので、ウェイターの態度だけで決めることはない

クレジットカードで払う場合には、伝票と一緒に渡す。するとお店がクレジットカードをスワイプしたあとにサインするための領収書を持ってくるので、そのうちの一枚にチップの額と合計額を書いて戻す(もう一枚は控え)。カードはその時点で財布にしまう。既にカードのデータはお店にあるのでチップを決定したあとにカードを渡す必要はない。勝手に好きな額請求できそうだが、クレジットカードの番号さえあればいくらでもできるので、他のカード利用に比べて危ないわけではない(実際ちょっと多めに請求する店はなくはない)。カードがとれなくなったら大抵の飲食店は終わりなので不正の可能性はほぼない。カード利用の場合にはフィーが掛かるので少し多めにしたければしてもいい。

ちなみにアメリカでクレジットカードが使えないレストランはほとんどない。一部の個人経営のお店程度だ。但し、10ドル以下では使えないとかいう(安い)店はあるので現金の保有量に注意(アメリカにいると現金は本当に持たなくなる)。あと20ドルを超える紙幣は普通の場所では使わない。100ドル札なんか安い店でみせたら、店を出てからつけられていてもおかしくない。

チップの分配法

よくチップというのはウェイターの評価のためにあると思っている人がいるが、渡したチップがウェイターの収入になるというのは不正確だ。大抵の場合、ジャーに集められてあとで分配されるので、自分のテーブルについたウェイターにあげるというわけではない。

The Truth Behind Tips | The Restaurant Blogger

Casual Dining

  • 3.5% to the kitchen staff
  • 96.5% to the waiter

一つのタイプとしてはチップをほぼウェイターで分け合う。この場合、チップはほぼウェイターに渡る。ウェイターが得をしているようにみえるが、店側はチップ収入の変動リスクを取らずに済む。また調理スタッフはサラリーなので問題ない。

Dinner

  • 3.5% of waiter’s gross sale when one person is on the floor
  • 3.0% of waiter’s gross sale when two waiters are on the floor
  • 2.0% of waiter’s gross sale when three waiters are on the floor
  • 1.0% of waiter’s gross sale when four waiters are on the floor

こちらのケースではウェイターの収入はチップの額に連動しておらず、総売上に連動している。但しウェイターの人数によってその割合は調整される。

これに加えてウェイターは固定給を受け取る。但し、普通の飲食店であれば、この固定給はチップを受け取る労働者(tipped employee; 基本的に月$30以上のチップを受け取る労働者)の最低賃金に近い。この最低賃金は通常の最低賃金よりも低く、連邦レベルでは時給$2.13しかない(通常は$7.25)。

但し、チップを通じた支払いを含めて一定期間ごとに通常の最低賃金を下回る場合には、雇用主が補填する必要があるので実質的な最低賃金が低いとは言えない。州レベルでこの額を積みましているケースや、カリフォルニアのように固定給を通常の最低賃金($8.00)以下にするのを禁じている州もある。

この給与体系を見れば、チップというのは基本的に客がウェイターを評価するためのものではなく、むしろレベニューシェアとしての要素が大きいことが分かるレストランは客の変動が大きく、客の数によってウェイター業務の負荷が大きく変わるため、チップという形で売上の一部を払うことで労務費を変動化するメリットがある(チップの額はサービスの質よりも売上に連動する)。チップを受け取る労働者の最低賃金が別枠で定められていることで、この変動幅が大きくなり使い勝手がよくなる(というかチップという形にしないとこの制度が利用できない)。

#写真はCC Attribution 2.0でこちらから。SapporoとかAsahiとかいってるけど私のレシートではありません。

スポーツリーグにも競争政策

NFLは反トラスト政策の対象になるとの判決が出たそうだ。

Supreme Court denies NFL’s request for broad antitrust protection

American Needle, Inc. sued, claiming the league violated antitrust law because all 32 teams worked together to freeze it out of the NFL-licensed hatmaking business and gave Reebok an exclusive 10-year license.

NFLの全チームがReebokに対する十年間の独占契約を結んだため、ビジネスを失った企業がNFLを訴えたケースだ。NFLの各チームが普通の企業であれば、これは半競争的な行動となる。

Major League Baseball is the only professional sports league with broad antitrust protection.

スポーツリーグではMLBだけが反トラストの適用除外を受けている。これはあるリーグのチーム同士は互いを補完する機能があるためだ(一般的に補完関係にある企業同士の協調行動は競争政策上の問題にはならない)。例えば、チームの実力差がありすぎれば試合がつまらなくなるため、それを防ぐような協調行動は許容される。しかし、チーム同士がファンを惹きつけるために競争しているのも事実で、それを妨げるような協定はファンの利益を損なう=競争政策の対象となる。

The argument that NFL teams also need each other to play an NFL season also doesn’t work, Stevens said. “A nut and a bolt can only operate together, but an agreement between nut and bolt manufacturers is still subject to” antitrust scrutiny, Stevens said.

NFLはこのチーム間の相互依存を反トラストの適用から逃れる口実としているが、判事はナットとボルトを作る企業の関係を挙げてそれを否定している。両者は互いを必要としているが、それだけで反トラストの対象とならないわけではないからだ。

“The fact that NFL teams share an interest in making the entire league successful and profitable, and that they must cooperate in the production and scheduling of games, provides a perfectly sensible justification for making a host of collective decisions,” he said.

それでは何でも反競争的になるという反論については、ゲームの運営などは協調行動をとる正当な理由になるから問題ないと撥ねのけている。これはスポーツリーグに対して、ケースバイケースで(反)競争性を経済的に判断する合理の原則(Rule of Reason)の適用を示唆するものだ

また、スポーツリーグが協調的行動を取っているのは観客に対してだけではない。スポーツ選手の採用においてもチーム同士が協力して行っている。これは選手のキャリアを大幅に制限する買い手独占であり、雇用主としてのスポーツチームに関する競争政策がどうなるかも興味深い

グレード・インフレーション

アメリカの大学の平均成績が話題になったのでご紹介。

National Trends in Grade Inflation, American Colleges and Universities

アメリカでは大学の成績が、少なくとも日本に比べると、重視されるというのは有名な話だ。特にコミュニティカレッジからのトランスファーや、メジャーの選択においては平均成績=GPA (Grade Point Average)が主な判断基準となる。就職活動の時にも履歴書(resume)にGPAを記載するし、足切りに使われることもある。

就職活動で使われるとなると、当然問題になるのが学校ごとの違いだ。特によく指摘されるのは公立と私立の差だ。上のグラフは一世紀近くに及ぶGPAの推移だが、どの大学も戦後急激にGPAが上昇し、それから徐々に上がっていっているのが分かる。特に私立と公立との差は開く一方だ。有名な大学を例にとると、Harvard 3.45 (2005), Yale 3.51 (2008), Stanford 3.55 (2005)に大して、Berkeley 3.27 (2006), UCLA 3.22 (2008) となっている。

ちなみに日本の大学を卒業するとやたらと低いGPAになってたり、成績の付け方がアメリカと異なっていたりする場合もあるがアメリカの大学はそのことを知っているので無闇に心配することはない。