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ソーシャルゲームの戦略

追記:そもそもの前提が正しくないという意見もあるようですが、自分でTVCMを見ていないので判断がつきかねます。サラ金パチスロ云々の話は着想のネタと捉えて頂ければ幸いです。メインストリーム化に伴い、自制心が低く割引率の高い層の取り組みが重要となり、ソーシャルゲームはそこに適応しているというのがポイントです。

テレビ広告を実施する企業はどんな企業かについての議論が面白かった。

Togetter – 「佐々木俊尚@sasakitoshinao氏の、ソーシャルゲーム評、ソーシャルゲームネタと、それに対するツイートまとめ」

RT @igi: サラ金(消費者金融)→パチスロ→法律事務所→ソーシャルゲームとTVCMに出稿する広告クライアントの主流は21世紀以降移り変わってきたけども、業態は違えど”これらのビジネスターゲット”が全く変わっていないことに注目すべき

テレビを使って広告を打つ企業はサラ金、パチスロ、法律事務所(債権回収など?)、ソーシャルゲームと移り変わってきたが、そのターゲットは変わっていないという指摘だ。

これはテレビという媒体がターゲットとしている層はほぼ決まっていることを考えれば自然だ。十年ぐらいでテレビの主な視聴者が変わることはない。

RT @shinjifukuhara: 20年近くテレビの前線にいますが、いくつかの視聴者クラスターが消えていることに気付きます。。でもボリュームゾーンはほぼ変わってないと思います。RT @rionaoki: 先程からテレビ広告のターゲットに関するツイートがRTされていますよね。

これについてはテレビ局で働く人の発言からも裏付けられている。消えたクラスターは今は主にインターネットでニュースなどをチェックし、娯楽番組ではなくYouTubeやニコニコ動画を楽しむような層だろう

テレビでの広告は非常に高くつくので、サラ金・パチスロ・法律事務所・ソーシャルゲームといった業界はテレビでしかリーチできない集団を相手にしていると考えていいだろう。但しテレビの主な視聴者がその集団であるとい考えるのは早計だ。例えこういった広告がターゲットとしている人が視聴者の少数派であっても、他の手段でリーチできず、かつ大きく利益に貢献すればよい。

では、過去にテレビ広告に出稿していたサラ金・パチスロ・法律事務所に共通する顧客はどのような人々だろうか。ギャンブルに興じ、借金を重ねてしまうという人間像が浮かび上がる。自制心が弱く、割引率の高いグループだ。ソーシャルゲームはこういった消費者相手の商売と考えると実によく出来ていることが分かる:

  • 基本ただ:最初は課金せず、どんどん特典を用意する。今後、ゲーム内アイテムを後払いで購入可能にしたり、一ヶ月以内にキャンセルしなかった場合だけ費用が発生するといった課金方法が登場するだろう(もうしてるかもしれないが)。
  • 育成系:どれだけ自分がハマるかを予想できない。ソーシャルゲームのほとんどはだんだん面白くなっていく育成系だ。これは旧来のネットゲームとも共通する。
  • 招待制度:ソーシャルゲームは、友達を招待させることで拡散する。自制心が弱い人は、自分が友達を招待すると、それが原因で辞めることもできなくなる(ピアプレッシャー)。これもネットゲームと同じだ。マルチ商法じみた招待制度も登場するかもしれない。
  • 仮想通貨:Facebookなどでは既にプラットフォーム独自の仮想通貨がつくられている。これはゲーム内で通貨を稼ぎ、他のサービス・物品の購入に当てることができることを意味する。パチンコの景品交換所に近い仕組みを創りだすことが可能だろう。

プラットフォームはソーシャルゲームをさらに流行らせるため、共通仮想通貨制度の普及、課金システムの改善を行う必要がある。例えば、仮想通貨制度に加わりクレジットカードなどの決済手段とリンクさせると一定の金額をプレゼントしたり、残高がマイナスの場合にはプラットフォーム自体のアカウントを停止するといったことが考えられる。

サッカーのルールを変えよう

ワールドカップが盛り上がっている中、サッカーのルールを変えてもっと面白くできないかという提案。

Soccer Done Right

But it is only a matter of time before disappointed fans will start grousing about low scores, frequent draws, bad penalty calls and the penalty shoot-outs that can decide (and have decided) World Cup championships.

サッカーは世界で最も人気のある競技の一つだが、もちろん完璧ではない。サッカーの点数は大抵0,1,2程度で引き分けも多い。ペナルティーの審判もよく問題になるし、ペナルティーキックで試合が決まってしまうこともままある。

But these squabbles are all artifacts of the silly and counterproductive rules that have governed an ossified soccer community for all too many years.

こういう問題はサッカーに付き物という風に流され気味だが、ルールを帰れば緩和・解決することも可能なはずだ。ルールは所詮人間が決めたものに過ぎない。

Soccer instantly becomes a much better game when it awards two points for a goal and one point for a penalty shot.

一つ目の提案はゴールの点数をペナルティーキックとそうでない場合で変えることだ。これによってペナルティーキックで結果が決まることが減り、審判ミスによる被害も抑えられる。点数がタイになる可能性も減る。

The first is that minor penalties should carry a three-minute penalty, not a two-minute penalty. Major penalties that carry a five-minute penalty in hockey could carry seven minutes and 30 seconds in soccer.

もう一つはホッケーを見習ってペナルティー制度を見直すことだ。反則の度合いに応じた時間数退場を促す。現在の制度ではペナルティーキックか退場かで、審判ミスの場合の被害も大きい。反則の程度に合わせたペナルティーを与えることである意味公平なゲームになる。

The strongest objection to them is inertia. Soccer’s international format slows down rule changes.

歴史のあるゲームのルールが変わることは極めて難しいし、これらの提案が最適とは限らない。しかし、いろいろなルール変更を試してみてどれが面白いか探る試みがあってもいいかもしれない。

iPadは大成功

iPadに対する賛否両論はあるが、iPadが製品として大成功なのは明らかだ。

Apple iPad Sales Could Top 2 Million a Month – DailyFinance

Apple (AAPL) iPad sales have already reached about 1.2 million a month, according to the DigiTimes, a daily Taiwanese newspaper. The figure is based on Samsung’s production of displays for the tablet, which will ship in July.

iPadは既に月120万に上っており、毎月伸びている。AAPLの株価も好調だ。少なくとも会社の利益に貢献するという点で既に成功としかいいようがない。

iPadは「残念なプロダクト」かどうかで議論白熱 | web R25 via gshibayama

iPad発売をとても楽しみにしていて、ようやく手に入れた藤沢氏が「残念」とした根拠は以下のとおり。

「iTunesがイントールされたPCがないとびくりとも動かない」――これについて藤沢氏は「iPadというのはPCを使ったことがない人でも使えるコンピュータではなく、PC、それもiTunesというAppleの集金マシーンがインストールされたPCがないと起ち上げることさえできないのです」と説明している。

これはiPadが全ての人にとって素晴らしい製品かとはあまり関係ない。私自身iPadをうまく使う方法が思いつかない。家にいるときはデスクでコンピュータを並べているし、外出時にはラップトップを持っている。wifiがつながらない場所にはいかないので3Gが必要な理由もない。

しかし、製品がある人間にとって有用かどうかと製品としての優秀さはあまり関係ない。製品が売れるのは、その製品の価値が価格より上である場合で、収益を伸ばすには次のような方法が考えられるだろう。

  1. 価格を下げることでより多く売る。但し一人当たり収益は落ちる。
  2. まだ買ってない人への価値を上げて売上台数を伸ばす。
  3. 買っている人への価値を上げてより多くチャージする。
  4. 価格差別をうまく行って購入者から製品個別単価以上の収益を上げる。

iPadの場合はどうか。Appleは自社製品を安売りするつもりはないし、生産能力にも制限がある(=安くして需要を増やしても供給が追いつかない)ので1の安売り作戦はとらない。iPadは欲しい人は欲しい、いらない人にはいらない製品なので2のように欲しくない人に欲しがらせるのは難しい。それによって元から購買意欲のある人にとっての製品価値が落ちてしまっては元も子もないからだ。

望ましい戦略は3,4を組み合わせたものとなる。非常に尖った製品を作り価格を上げる。全員に買ってもらう必要はない。買ってもらう人に高い価値を認めてもらえば良いのだ。さらに買う人の間でも非常に価値を認める人とそうでない人がいるので適切な価格差別によってより多くの余剰を収益に変える。これはiPadというプラットフォーム上でApple自身が収益を上げることで達成出来る。ビデオゲーム会社がビデオソフトの売上の一部を収益とすることで、ゲームをよりプレイする人からより多くチャージするのと同じことだ。

Oprah gifts big bonus | Welcome to S2Smagazine.com via TrinityNYC

O gifted each member of her magazine staff with an iPad and personalized iPad case with their initials.

尖った製品を作ることのメリットはマーケティングにもある。ここではオプラ・ウィンフリーが自分の雑誌を作っている社員にiPadとイニシャル入りのケース(と一万ドル)を配ったというニュースが紹介されている。オプラ・ウィンフリーはアメリカの消費者に絶大な影響をもっており、Appleは実質タダで極めて効果的なマーケティングをしたといえる。先のR.25における賛否両論も同じだ。賛否を問わず強い意見が巻き起こることはいい製品の証であり、何も意見がでてこないことが最大の失敗だ

スポーツリーグにも競争政策

NFLは反トラスト政策の対象になるとの判決が出たそうだ。

Supreme Court denies NFL’s request for broad antitrust protection

American Needle, Inc. sued, claiming the league violated antitrust law because all 32 teams worked together to freeze it out of the NFL-licensed hatmaking business and gave Reebok an exclusive 10-year license.

NFLの全チームがReebokに対する十年間の独占契約を結んだため、ビジネスを失った企業がNFLを訴えたケースだ。NFLの各チームが普通の企業であれば、これは半競争的な行動となる。

Major League Baseball is the only professional sports league with broad antitrust protection.

スポーツリーグではMLBだけが反トラストの適用除外を受けている。これはあるリーグのチーム同士は互いを補完する機能があるためだ(一般的に補完関係にある企業同士の協調行動は競争政策上の問題にはならない)。例えば、チームの実力差がありすぎれば試合がつまらなくなるため、それを防ぐような協調行動は許容される。しかし、チーム同士がファンを惹きつけるために競争しているのも事実で、それを妨げるような協定はファンの利益を損なう=競争政策の対象となる。

The argument that NFL teams also need each other to play an NFL season also doesn’t work, Stevens said. “A nut and a bolt can only operate together, but an agreement between nut and bolt manufacturers is still subject to” antitrust scrutiny, Stevens said.

NFLはこのチーム間の相互依存を反トラストの適用から逃れる口実としているが、判事はナットとボルトを作る企業の関係を挙げてそれを否定している。両者は互いを必要としているが、それだけで反トラストの対象とならないわけではないからだ。

“The fact that NFL teams share an interest in making the entire league successful and profitable, and that they must cooperate in the production and scheduling of games, provides a perfectly sensible justification for making a host of collective decisions,” he said.

それでは何でも反競争的になるという反論については、ゲームの運営などは協調行動をとる正当な理由になるから問題ないと撥ねのけている。これはスポーツリーグに対して、ケースバイケースで(反)競争性を経済的に判断する合理の原則(Rule of Reason)の適用を示唆するものだ

また、スポーツリーグが協調的行動を取っているのは観客に対してだけではない。スポーツ選手の採用においてもチーム同士が協力して行っている。これは選手のキャリアを大幅に制限する買い手独占であり、雇用主としてのスポーツチームに関する競争政策がどうなるかも興味深い

涙の効用

涙を例にどのような場合にシグナリングが信用できるか、そして進化論的に安定しているかが説明されている記事:

Credible Tears

By blurring vision, they handicap aggressive or defensive actions, and may function as reliable signals of appeasement, need or attachment.

涙は視界をボヤケされることで攻撃や防御を取りにくくするので信頼できるシグナルだという意見に対して次のように反論している。

For example if tears convince another that you are defenseless then there is an evolutionary incentive to manipulate the signal.

もし涙がそのような理由で信頼されるのであれば、進化によってそのようなシグナルを悪用するようになるはずだという。涙を流すが視界はぼやけないようになるということだ。そうならなければ涙に騙されることで生存上不利になる。

A typical exception is when the signal is primarily directed toward a family member.

但し、シグナルを送る相手が家族に限られるのであれば進化論的に安定した=誰も悪用しないシグナルになる可能性がある。何故なら家族は遺伝子の多くを共有しているからだ。

And babies of course have few other ways of communicating needs.

特に他のコミュニケーション手段を持たない赤ん坊にとっては重要な仕組みでありうる。

Not surprisingly, once the child reaches adulthood, crying mostly stops:  Nature takes away a still-costly but  now-useless signal.

実際、成長するにつれて子供は泣かなくなる。子供はいつまでも保護対象だと思われるインセンティブがあるため、涙というシグナルを利用するようになるが、親もその構造に気付くためシグナルとしては効果がなくなる。効果がないシグナルを維持する理由もないので泣かなくなるのも当然だろう。