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将来売ります

March 11th, 2010

自分の将来所得を担保に投資を募る実業家の話題が盛り上がっている。

Entrepreneurs offer their life’s future earnings for an investment

Kjerstin Erickson, a 26-year-old Stanford graduate who founded a non-profit called FORGE that rebuilds community services in Sub-Saharan African refugee camps, is offering 6 percent of her life’s income for $600,000.

NPOの創設者が自分の所得の6%の見返りに$600,000の投資を募集しているそうだ。6%で$600,000ということは、所得のリスクも割り引いた現在割引価値(≠生涯所得)が$10,000,000必要なわけで、普通に考えたら割に合わない。

それだけでなく、持分への投資ということで、株式会社などが持つガバナンス上の問題点を共有している:

  1. 94%は本人という社長兼大株主が所有しているわけで、少数株主たる投資家との間に利害対立がある
  2. 公開会社のような上場審査や法定監査があるわけではなく、所得の6%といっても所得の数字自体信頼できない
  3. そもそも意思決定に加わるわけではない

その結果次のような問題が考えられる:

  1. 所得の限界効用が落ちるので働く気が失せる
  2. なるべく所得に現れない便益を優先する、例えばお金にはならないが楽な仕事しかやらない

このような懸念に対して、

The transparency afforded by social networking is making it easier for investors to vet people’s reputations and hold them accountable.

ソーシャルネットワーキングによって透明性が増しているから何とかなるのではと述べられているが、会社法を考えれば分かるようにそんな簡単な話ではないだろう。

ただこの個別事例が成功するかと言われればおそらく成功すると思われる。このような議論を呼ぶ募集を行うことは本人やそのプロジェクト(そしておそらく投資する側)にとって大きなPRになるからだ。これを弾みに成功していけば割に合う投資になる可能性はそれなりにあるだろう。

また、この取引を投資ではなく寄付の一種だと考えることもできる。将来所得と引換に融資を受ければその個人は金銭的な報酬を優先するインセンティブを失うが、これはNPOが自ら利益を配分しないことと似ている。もともとNPOは属人的な正確が強いので、組織ではなく個人に投資するという考えもありうるだろう。

データ匿名化の落とし穴

February 16th, 2010

前のポストを書いたときに、一体どこからデータを集めたのかが気になった。公開されていれば適当にスパイダーでも書けば集められるが、そんなに情報が公開されているのだろうか。ちょっと検索してみたら、面白いエントリーが出てきた:

Why Pete Warden Should Not Release Profile Data on 215 Million Facebook Users

先に紹介したエントリーを書いたPete Wardenを批判する記事だ。

[...] he exploited a flaw in Facebook’s architecture to access public profiles without needing to be signed in to a Facebook account, effectively avoiding being bound by Facebook’s Terms of Service preventing such automated harvesting of data. As a result, he amassed a database of names, fan pages, and lists of friends for 215 million public Facebook accounts.

ログインせずにFacebookの公開プロフィールにアクセスできる欠陥を利用して2.15億ものアカウントの名前・ファンページ・友達リストを収集したという。ログインしないことによって自動的にデータを収集することを禁じるFacebookの規約(Terms of Service)を回避したということだ。

二つの論点が提起されている:

First [...] just because these Facebook users made their profiles publicly available does not mean they are fair game for scraping for research purposes.

一つ目は、公開プロフィールの意味付けだ。この情報は検索エンジンに収集されるし、Facebook内で検索すれば見ることができる。しかし、規約により自動収集は禁じられており、ユーザーもそういう目的に使われていることを想定しているわけではない。

Second, Warden’s release of this dataset — even with the best of intentions — poses a serious privacy threat to the subjects in the dataset, their friends, and perhaps unknown others.

データが収集されても、それが悪用されるのでなければ気にする人は少ないだろう。これはアメリカ人のプライバシーに対する一般的な態度だ。しかし、Pete Wardenはデータを研究目的で公開する予定であり、それを悪用する方法がある。

What is most dangerous is its potential use to help re-identify other datasets, ones that might contain much more sensitive or potentially damaging data.

そこで指摘されているのは、このデータが他の匿名化されたデータセットで個人を特定するのに利用できるのではないかということだ。この懸念は過去にNetflixが行っているコンテストで指摘されている。

Breaking the Netflix Prize dataset

In October last year, Netflix released over 100 million movie ratings made by 500,000 subscribers to their online DVD rental service. The company then offered a prize of $1million to anyone who could better the company’s system of DVD recommendation by 10 per cent or more.

DVDレンタル(及びストリーミング)を行うNetflixはユーザーにリコメンデーションシステムを改善するアイデアをコンテストを通じて募集し、そのために50万人のユーザーのデータを匿名化した上で公開した。

turns out that an individual’s set of ratings and the dates on which they were made are pretty unique, particularly if the ratings involve films outside the most popular 100 movies. So it’s straightforward to find a match by comparing the anonymized data against publicly available ratings on the Internet Movie Database (IMDb).

しかし、How To Break Anonymity of the Netflix Prize Datasetという研究はその匿名データからユーザーを特定する方法を明らかにした。ユーザーがつけたレーティングはユーザーごとに特徴的であり、それをネットで公開されているレビュー(IMDb)のレーティングと比べることで匿名化されているNetflixユーザーとIMDbのユーザーとを結びつけることができるという。

Netflixのレビューを非公開前提で書いた場合、この方法によってそれがIMDb上の個人のものと特定されてしまう。IMDbで実名を使用していた場合には現実の人物にまでたどり着く。(公開されていない)政治色・宗教色の強い映画に対するレビューから政治的・宗教的立場まで特定可能であり、これがプライバシーの観点から非常に重要な問題だということが分かる。

Warden’s rich dataset of 210 million Facebook users, complete with their names, locations, and social graphs, is just the ammunition needed to fuel a new wave of re-identification of presumed anonymous datasets. It is impossible to predict who might use Warden’s dataset and to what ends, but this threat is real.

Facebookの話に戻ると、個人名・所在地・興味・友達リストというデータが公開されれば、それらの情報(と関連する情報)を含む他の匿名データから個人を再特定する人・集団が出てくるだろう。今後、人間関係を含むデータが増えるのは確実でそういったデータを悪用されるおそれがある。日本で同じような事例があれば、遥かに大きな社会問題になるのは確実だ。

Facebookで地図を色分け

February 16th, 2010

Facebookのデータを使って、アメリカを七つに分けてみたというエントリー:

PeteSearch: How to split up the US

My latest visualization shows the information by location, with connections drawn between places that share friends.

点はユーザーが存在する都市で、線はfriend関係を指しているようだ。州レベルや国レベルのバージョンも用意されている。friendが出来るのはその場所に学校・仕事などで住んだことがある場合がほとんどなので、人々がどう地域間を移動しているかを間接的に表している。さらに、クラスター毎にどのような人やグループが人気なのかも分かる。

ニューヨークからミネソタにかけてはあまり移動がないようでStayathomiaと名付けている。この地域はGodの人気がなくビールやスポーツが人気だそうだ。

Dixieはアトランタを中心とした地域で同じく閉鎖的。南にフロリダだけは別枠で東海岸の都市と強いコネクションがある。これはフロリダに移住する人が多いからだろう(Facebookには中年以上のユーザーも多いし、子供もいれば反映される)。この地域はGodがファンページのトップにくる宗教色の強い地域だ。

Greater Texasは名前通りTexasのDallasを中心としたクラスター。どの都市もDallasと強いコネクションがある。やはりGodが人気。ルイジアナのAlexandriaではAhmed、Mohamedが二番目、三番目に多かったり、テキサスのLaredoではJuan, Jose, Calros, Louisが最も多かったり、地域色が出ていて面白い。

Mormoniaはモルモンとの関連があると思われる地域で、外部とのコネクションが少ない。

Nomadic Westは中西部のだだっ広い地域で、コネクションが遠距離に渡っているのが特徴。外に出て行くほかないということだろうか。Starbucksが人気(?)だそうだ。

Socalistanはカリフォルニアをカバーする。公立大学のシステムからいって州内での(特に若い世代)の移動は盛んなので人口の多いカリフォルニアがクラスターになるのは理解出来る。Socalというのは南カリフォルニアのことでLAが中心であることを示している。ちなみにサンフランシスコではオバマが最も人気のある人物だそうだ。

最後はPacificaでこれはシアトル近辺のクラスターだが、特筆すべき情報は公開されていない。

この分割は数学的アルゴリズムで得られたものではなく、目視で色分けした程度のもののようだが、コメント欄などから察するにアメリカ人の感覚には近いようだ(逆にその感覚によって色分けが影響されている面があるのだろう)。

進む非正社員化

February 9th, 2010

非正社員化はアメリカでも進んでいるというストーリー:

You’re Hired. At Least for Now. – Kiplinger.com

What’s different about this recovery is that companies, many of which cut staffs to the quick, seem committed to staying flexible in the long term by using contingent workers to manage everything from special projects to whole departments.

テンポラリな職が増えるのは雇用回復時には自然なことだが、今回はその流れが定着しているという。企業は正社員を雇うのではなく、何でも契約社員(contingent worker)で対応し、なるべく雇用に柔軟性を持たせようとしている。

Companies now spend $425 billion annually on contingent labor, which accounts for about 11% of the workforce, or 14 million people.

その規模は年間4,250億ドルで、労働力の11%・1,400万人に相当するというのだから大したものだ。そもそもアメリカは「正社員」でも数年で転職するのがごく普通なので、労働市場の流動性は日本の比ではない

Littler predicts that half of the new workers added in 2010 will be contingent

2010に加わる労働者の半分は派遣形態になるという予測も取り上げられている。

It’s getting easier to maintain an upward career trajectory as a contingent worker. Professional connections are easy to make and maintain via electronic networks, such as Facebook, LinkedIn and Twitter, and via plain old e-mail.

しかし、それに対する論評は批判的なものではない。ネットを通じたネットワーキングはどんどん簡単になっている。そのような状況で転職が増え、派遣のような雇用形態が広がるのは自然なことだ

success depends on your skills and the demand for them instead of on the fortunes of a single company or even an entire industry. [...] “It’s a different kind of job security.”

このような社会では個人の成功はたまたま勤めている会社ではなく、本人のスキルとそれに対する需要で決まる。企業が従業員の雇用を保証する時代が終わることは、企業の命運に個人が巻き込まれないことでもある。一つの企業で働き続けることが最も大きなリスクになる時代に変わりつつあるのだろう。

日本では、派遣の規制や正社員化促進などこのような流れに真っ向から対立する政策が推進されている。しかし、この流れが技術的進歩に伴なうものであればそれを押し止めるのは難しい他国の流動的な労働市場がさらに柔軟になっていくなかで、取り残されてしまう危険がある

Twitterでは「つぶやく」な

January 19th, 2010

注意:Twitterの仕組みに関する記事なので利用したことのない人には分かりにくいかもしれません。とても良くできた仕組みなので、ぜひ利用されることをお勧めします。よろしければフォローください

最近、「Twitterを「つぶやき」と翻訳した罪」なんて記事を読んだ。記事中には次のように「つぶやき」という訳の問題が指摘されている:

「140文字限定」、「つぶやき」、「フォロワーにのみ伝える」。こうしたキーワードだけで判断すると、いかにも閉じた空間の自己満足的なツールにしか見えない。

これは確かに残念なことだ。何故ならTwitterがFacebookやMixiのようなSNSと異なる点がまさにその開放性にあるからだ。Twitterも元々はFacebookにおけるステータス更新をSMSで行う仕組みだった(参考:Wikipedia)。Twitterのオフィシャルサイトでの質問が”What are You Doing?”だったことがそれを象徴している。

ではTwitterがFacebookのステータス更新やMixiの日記と違うのは何か。それはTwitterの仕組みの根底にある一方向性だ。従来のSNSでは友達になるためには相手の承認が必要だ。昔の友達を発見したり、最近会った人を見つけたりするのには役立つが、あくまで既存の人間関係を補完するものに過ぎない。見ず知らずの人間が友達リストにたくさんいる人は少ないだろう。それはまさに「友達」リストなのだ。

逆にTwitterにおける「フォロワー」は一方向的な概念だ。相互にフォローすれば「友達」と変わらない状況になるが、最初は常に一方通行で始まる。例え現実に友達同士だったとしてもどちらかがフォローを始めるのには変わりない。この一方的にフォローし始めるのがデフォルトという仕組みがTwitterの革新的なところだ

まず私が誰かをフォローし始める場合を考えよう。これはFacebookやMixiではまずうまくいかないがTwitterではごく自然なことだ(だからTwitterがSNSと何が違うかを知りたければまず一方的にいろんな人をフォローしてみよう)。この状態ではフォローした相手のTweetが自分のタイムライン(TL)に表示されるだけでブログをブックマークしたりRSSで購読しているのと大差ない。しかし、ここから相手に@でメッセージを送ったり、Retweetで相手のTweetにコメントすることが可能だ。意味のあるコメントをすれば相手がフォローし返すこともあり、何の関係もなかった人間と「友達」になることができる。相手は決まっているのでこれは「つぶやき」でも「フォロワーにのみ伝える」でもない。しかしこの特性を生かすためには、できるだけ有益なコメントをする必要がある

逆に自分が誰かほかの人にフォローされるのはどんな場合か。それは自分のTweetに価値がある場合だ。現実の友達であれば朝何を食べたかにだって興味があるかもしれない。しかし、既に有名人でもなければ見ず知らずの人間があなたのごく普通の日常に興味を持っていることはない。他人にフォローしてもらうためには、なるべく有益な情報や興味深い議論を提供する必要がある。しかも、Twitterは多くのネット上のシステム同様にストリーム型のコンテンツであり、紙媒体とは異なりぱっとみて取捨選択するには一工夫(リスト・フィルター・ボットなど)が必要だ。ストリームの価値を上げるにはノイズ比を下げる必要があり、それは大した意味のない「つぶやき」をしないことを意味する

これらの特徴はブログにもそのまま当てはまり、Twitterがミニブログ(microblogging)に区分されるのも頷ける。旧来のブログと異なるのは、情報の送り手・受け手という関係が固定的でないこととリアルタイムであることだ。ブログでもコメント欄などを通じて読者と交流することは可能だが、相手もブログを持っていない限りやりとりは限定的だし、常に非同期な形でしかない。Twitterはその交流を自然な形で拡げることができるという点で、ブログを書いている人にとってコメント欄を代替する必要不可欠なチャンネルになりつつある(TopsyのようなTwitterのアグリゲーターが役に立つ)。

先ほど、MixiやFacebookについて「既存の人間関係を補完するもの」と述べた。これは別の見方をすれば非常に不自然なシステムだ。現実の人間関係は常に新しい可能性へと開かれている。その意味でTwitterは「既存の人間関係の在り方をネット上で再現するもの」と言えるかもしれない

ちなみに、相互にフォローしあっている、つまり「友達」状態の場合には@でやりとりすることで、両者をフォローしている人以外のTLにはTweetが表示されなくなる。これにより、そのやりとりに関係ない人に対しての自分のストリームの価値を下げないで済むし、既存の友達との間のインスタント・メッセンジャーとしての役割も果たせる。