https://leaderpharma.co.uk/ dogwalkinginlondon.co.uk

絵で見るコミュニケーション手段の拡大

Facebookの携帯進出」について過去記事(「IDをめぐる争い」、「プライオリティ・インボックス」)を参照していたら、図にしたほうが分かりやすいきがしたのでサクっと追加してみる(「金儲け=悪」の話を絵で説明してみる)。

前ID時代

郵便

個人識別としてIDが生まれる前の時代には、個人とのコミュニケーションは基本的に対面に限定されていた。対面でのやりとりするのは非常にコストがかかるためコミュニケーション自体が少なかったことは容易に想像できる。宛名を指定して郵送することで個人にメッセージを送ることも出来たが、住所はあくまで「家」を指すもので個人のIDとは言い難い

ちなみにアメリカで他人宛の郵便物を開封するのが厳罰だ。これは郵便というプラットフォームを擬似的な個人IDシステムと稼働させるための措置であり、そういったシステムの重要性を示している。

電話

固定電話の普及は、郵便に変わる比較的安価なコミュニケーション手段の登場を意味した。電話であればその場で応答が得られるので、紙が必要である場合以外は、電話が主な連絡手段となった。しかし、固定電話は基本的に家や会社に属するものでまだ個人のIDとは言えない

ID時代

携帯電話

携帯電話は、郵便や固定電話と異なり、完全に属人的なコミュニケーション手段を提供し、ある人の連絡先といえば携帯の電話番号を意味するようになった。また電話番号を使った文字情報の伝達=SMSは郵便に似ているが遥かに効率的な非同期型のコミュニケーション手段となった。携帯電話が爆発的に普及したのも頷ける。

Facebook

Facebookを代表とするソーシャルネットワークはある意味で「薄い」コミュニケーション手段をユーザーに提示した。別に電話したりメールしたりするほどの用事はないけれど、ステータスぐらい見せてもいいという間柄だ。もちろん、既に電話やメールを直にやり取りする相手にも追加のコミュニケーション手段は有用だ。個人ベース(プロフィール)でありながら、ステータス更新という一対多のチャンネルを提供した点が新しい(※)。

Facebookがダイレクトメッセージやチャット機能、携帯への進出で狙っているのは、上の図で言えば内側への侵攻作戦と捉えられる

(※)メールを複数人に送信するニュースレターなどはステータス更新に近く、実際にそれを勧めるネットワーキングの本などもある。しかし、メーラーのインターフェースはそういったメール利用にうまく対応できていないためうまく機能することは少なかった(自分でフィルターを設置しない限り、全てのメールが同じ場所に放り込まれる)。しかし、これはあくまでソフトウェア的問題であり、Googleのプライオリティ・インボックスはそれに対する一つの回答となっている。

Twitter

Twitterもまた同じ図の上で表現することができる。TwitterはFacebookにおける自分対友達という一対多の側面を拡大し、もはやフォローする側とされる側に何のレシプロカルな関係も(少なくともシステム上は)求めない。もちろんユーザーがTwitter上でフォローしあったり、ダイレクトメッセージを使って次の段階に進む(=他のIDの交換や実際に会ってみる)のを妨げるものではない(※)。

FacebookはファンページとLikeを使ってこの領域に踏み込もうとしているが(例えばこのブログのファンページ)、友達関係を基本としたネットワークにうまくTwitter的な人間関係を組み込むのに苦労しているようだ。

(※)出会い系と称されるサービスのように、この絵で内側に進む場所を提供することは非常に価値がある。

おまけ:ブログとの関係

このような個人のコミュニケーション手段とマスメディアとの中間に位置するのがブログだ。ブログはマスコミ的手法を個人で利用できるように低コスト化するという方向性だが、FacebookやTwitterが担っている領域をカバーしてきた面もある。多くのブログが補助的な手段としてTwitterを利用するように境界は曖昧だ。特にブロガーがTwitterを個人として利用する場合その区別はほとんどなくなり(例えばこのブログのアカウント)、Twitterのさらに外側に位置するコミュニケーション手段の一種として捉えることもできる。個人を起点としたコミュニケーション手段がさらに拡大していけば、そもそもマスコミ的手法の必要性自体が薄れてくるだろう(ニュースを提供するというサービスとしては必要だが、意見を世間に発表する場としての地位は揺らぐ)。

注:当たり前ですが、コミュニケーション手段の利用法は人によって様々なのでこんな簡単に切り分けられるわけではありません。例えば知らない相手にコールドコール・ナンパ・飛び込み営業すればすっ飛ばすこともでき、ゆえにそういった能力は貴重(だが難しい)と考えられるわけです。あくまで分かりやすくするため便宜的に分けたものとお考えください。

Twitterへ斬り込むFacebook

FacebookがTwitterとの連携を強めているようだ。

FacebookからTwitterをアップデート

Facebook近況アップデートを選択的にTwitterへと流す仕組みが公開されている。Facebookのパブリッシャーは近況(ステータス)だけでなく、リンク・写真・動画などをフィード・掲示板に流すことができるので、その中で必要なものを選ぶということだ。パブリッシャーの機能はアプリケーションで拡張することもできる。

もちろんFacebookの狙いは、Twitterへの投稿をFacebookへの投稿の一部とすることだ。現状ではTwitterの更新をFacebookに自動投稿することはあっても逆を行っている人は少ない。FacebookからTwitterへのチャンネルを作ることで、メインで使うプラットフォームをTwitterに移行するユーザーを引きとめようということだろう。

Facebookがこの機能でTwitterの領域へ本格的に手を伸ばそうとしているのは、今のところ「ファンページ」にしかこの機能が提供されていないことにも表れている。ファンページとは企業や芸能人のための特殊なプロフィールだ。いわば法人や芸名に相当し、ほぼ個人のプロフィールと同じように使うことができる。

しかし、ファンページでは「友達になる」の代わりに「いいね!」(Like)というボタンがついていて閲覧者が一方的に支持を表明できる。これは相互の承認を必要しない点でTwitterのフォローに似ている。

一対多の関係はFacebookでは成立しにくい、有名人とそのファンというブロックを囲い込んだ。

Wave開発中止のポイント」で述べたように、Twitterが独自のプラットフォームとして成立したのはこの一対多という新しい関係を提示したためであり、Facebookはそれに対してファンページにより「有名人とそのファン」的なつながりを作って対抗しているわけだ。そのファンページにTwitterとの連携機能を加えることはこれをさらに進めるものだ。

Facebookには以前よりファンページによく似た機能としてグループという仕組みを提供してきたが、最近ファンページへと比重を移してきており、ファンページを推進していく強い姿勢が窺える。

Twitterのこの性質は、個人が一種の有名人となりファンを獲得するという環境を提供し、それにのった「プチ」有名人が次々にファンを呼びこむことでTwitterは拡大した。

ただ、この作戦がすんなり進むとは限らない。その理由は個人のプロフィールと著名人・ブランドのファンページという区別だ。Twitterは個人も企業も区別せず一対多のコミュニケーションを提供する。そのため個人が自然に一対多の関係を築いていくシステムが出来上がった。Facebookのファンページも個人で作成できるが、それは個人のプロフィールの延長線上にはない。あくまで個人レベルでの繋がりは相互的な友達関係、企業・ブランドと個人とのは一方的な支持関係という区別は残ったままだ。既に有名な人であればこれでいいが、普通の個人がいつのまにかブランドを作っていく環境にはなっていない。

Wave開発中止のポイント

GoogleがWaveの開発中止を発表したのニュースになった。では何故上手く行かなかったのだろうか。

Google’s struggles

Google’s struggles both with Wave and also with Buzz and Knol are that these are ventures with strong network effects and so that technology adoption is a great challenge.

Wave、Buzzであれば、FacebookやTwitter、KnolであればWikipediaと非常にネットワーク効果の高い市場を相手にしている。既に相当のユーザーがいなければサービスの価値はほとんどない。

それに対して成功したGoogleの製品の多くは強いネットワーク効果がない。広告であればユーザーが少なければ価格が低いだけだろうし、GMailやGoolge Doc (App) にしてもファイルレベルでの互換性は取れる。MapやReaderにいたってはスタンドアローンで利用出来る。

For Facebook, it was college students. For Twitter, it was celebrity following (this is a form of connectivity through a ‘star’ graph — the star being a source of many connections).

ネットワーク効果の強い業界への参入には、関連性の強い「ブロック」をおさえることが必要だ。Facebookは大学生をターゲットにした。学生にとって他の学生とのコミュニケーションは極めて重要であり、しかもそのやり取りの多くはそのグループ内で終わる。大学生だけ押さえればとりあえずはサービスとして価値が出てくる。そして大学生というブロックを確保し、そこから広がっていった大学生という集団が卒業という形で自然に拡散していく点がこの発展を後押ししたわけだ。

TwitterはFacebookによってすでに固められた友達関係という繋がりを使わなかった。友達という性質上双方向的な関係ではなく、フォローによる一対多の関係をネットワークの基本としている。一対多の関係はFacebookでは成立しにくい、有名人とそのファンというブロックを囲い込んだ。Twitterのこの性質は、個人が一種の有名人となりファンを獲得するという環境を提供し、それにのった「プチ」有名人が次々にファンを呼びこむことでTwitterは拡大した

For Wave, Google tried to do this by having invites and referrals initially.

GoogleはWaveで招待制度を使うことで人間関係をサービス内に模倣した。Waveのユーザーは最初から知り合いと繋がっているということだ。

Put simply, those people were already connected and Wave didn’t offer something that was interconnected or of extra value

しかし、この「つながり」はブロックとしては利用できない。何故なら、その人間関係は既に成立している=つながっているからだ。Twitterのように知らない人と繋がるという機能には欠けるし、Facebookのように昔知っていた人を見つけるということもない。既存のネットワークに比べて新しいコネクションを提示できなければユーザーは留まらずいつまでたってもネットワーク効果は発生しない

つまり、Google Waveの一番の問題はネットワーク効果の強い市場において、まず確保するブロックを特定しそこから広げていくという戦略に欠いたことだ

But Google needed to have interconnectivity from the start and a strategy. Wave seemed to have promise as a one stop shop.

さらに既存の競合サービスとの接続も万全だったとは言いがたい。Twitterのように棲み分けを狙うのであればまだしも、全てを包括する機能を提供する=競争相手をひっくり返すのであれば可能な限り互換性を取る必要はあっただろう。

ただ、この事例がGoogleの評価にマイナスかというとそうでもない。むしろ、強い競争相手のいる市場でもとりあえず動く製品で参入してみるのは重要であるし、それがうまくいかなければ直ぐに撤退するという判断も的確だろう。次の試みに期待したいところだ。

ツイッターでは○○

昨日は首相辞任のニュースが駆け巡ったが、それに関する不思議な報道:

asahi.com(朝日新聞社):ツイッターも首相辞任一色「当然」「小沢さん道連れに」 – 政治

書き込みには、「当然」「賞味期限の書き換え」「どっちみち選挙は大敗しそう」「政治とカネの問題からいうと、本当は議員辞職だろ」「辞められてほっとしているのでは」などと、驚きよりも、当然だと受け止める冷静なコメントが多かった。一方で、「鳩山さんは小沢さんを道連れにしたなあ」「最後まで努力したんだろうけど、結果がついていかなかったな」「任期途中じゃ、できる仕事もできないだろうに」などと鳩山首相に同情する声もあった。

ツイッターの書き込みを大手新聞がニュースソースとして挙げるのはどうだろう。ツイッターでユーザーが目にするのは自分が選んでフォローした人たちの発言だ(TL=タイムラインと呼ばれる)。よって構造上ツイッターで目にするコメントは自分が聞きたい意見だったり、自分と同じ考え・レベルの人(しばしばクラスターと呼ばれる)の意見だったりする。

ツイッターでこんな発言が多かったというのはユーザーの代表的見解よりも、本人がどんな人達と絡んでいるか=どんなクラスターにいるかについてより多くの情報を与えてくれるのだ

もしツイッターの構造が分かっていない読者に自分の意見を一般的であるかのように装って報道しているのであれば悪質だし、そもそも自分が目にする内容は自分の選択の結果であることに気付いていないのであれば報道している本人がツイッターの構造を理解していないということになる。

Twitterで見る、鳩山首相辞任表明

Twitterでよく書かれている単語を拾う「buzztter」(ばずったー)も、「鳩山辞意表明」「小沢幹事長も辞任」といった関連語で埋め尽くされている。

それでもツイッターの一般的意見を採用したいというならこちらのITMediaの記事のように何らかのアグリゲーターの情報を利用する必要があるだろう。但しこの場合でもRTした場合など賛否が不明な発言も数多いので単にどんな言葉が多かっただけを見てもユーザーの意見を代表しているとは限らないことには注意する必要がある。

Twitterの曖昧な収益戦略

Twitterが収益源を探していることについては過去に触れたが、また新しい動きがあったようだ。

Fees Coming for Firms Earning Income From Twitter

TwitterのAPI TOSが5/25付けで更新された。その中の一節が問題だ。

In cases where Twitter content is the basis (in whole or in part) of the advertising sale, we require you to compensate us (recoupable against any fees payable to Twitter for data licensing).

Twitterのコンテンツをもとに広告収入を得ている場合にはTwitterに支払いをするという項目だ。しかし、実際にどのような形態で広告収入を分け合うのかについての規定は全くない。

“We’re not trying to prevent people from building businesses,” says Tony Wang, a Twitter business development executive who joined my call with Costolo today.

もちろん、Twitterエコシステム自体を壊してしまってはしょうがないことはTwitterも認識してはいるが、不透明なTOSは新しい試みを難しくする。事後的=成功した場合に、Twitterがその分け前を要求するインセンティブがあり、起業家はそれを見越して行動するからだ。

“We’re saying if there’s this thing you’re doing, and you’re selling ads against it, and it’s really big, we want to participate in that.”

例え収益が大きい場合と口約束したところで、埋没費用の大きなビジネスを展開するのは難しいだろう。

After a day of discussion, Twitter has tweaked its language in its terms of service, swapping out  “In cases where Twitter content is the basis (in whole or in part) of the advertising sale” with “In cases where Twitter content is the primary basis of the advertising sale”.

現在、Twitterが単に利用されているだけでなく、それが主要なコンテンツである場合という風に文言が変更されている。これで単にTwitterのウィジェットを利用しているブログなんかは除外された。しかし、その境界が曖昧なことは変わらない。Twitterの収益源の模索はどう続いていくだろうか。