IDをめぐる争い

最近、Skype、Google Voice / Phoneといったインターネットを使った通話に関する話題が(十年ぶりぐらいに)盛り上がっている(Cisco、Skype買収に名乗りか)。この背景にあるのはユーザーのIDをめぐる熾烈な競争だ。

電話番号は死んでいる、気付いていないだけだ

電話番号は長年、個人のIDとして機能してきた。ある人にコンタクトできるということは直通の電話番号を知っていることである。携帯電話は、その属人性と統合されたコンタクトリストによって固定電話を主たるIDの地位から追い落とした

AT&T、Verizon、Apple、Googleらがこの夏一杯を費して、世界征服の計画を模索している一方で、われらが愛しいキャリアーたちに決定打を与える絶好の位置にいるのは、Facebookのようだ。始めにまずあの電話番号から。

ここではFacebookが電話番号の地位を脅かすという予想が行われている。確かに、Facebookは個人と個人とをつなぐシステムとして動作しており、ダイレクトメッセージ機能はほとんどメール代わりに使われている。チャット機能もあり、電話機能を実装する日も近いだろう。

しかし、Facebookが(携帯の電話番号にかわる)主たるIDとなるかについては大きな疑問がある。その理由は上の記事においてFacebookが推されている根拠を見れば分かる:

  1. 制御不能 誰でもその10桁をダイヤルできる。別れた彼女も、選挙運動員も、押し売りも。番号非掲載、ナンバーディスプレー、着信拒否リスト等々でこの問題を解決しようとしたが、いずれの方法も望まれない電話を防いでくれない。
  2. 電話番号は人ではなく電話機と繋がっている。誰もが複数の番号を持ち、家の電話は共用なので、かける側は接触する方法を推量するはめになる。
  3. ユーザー体験が非常に限定される。電話は、番号をダイヤルして、会話をするための道具として設計された。誕生以来未だにそうなっている。それ以外の体験には適していない。留守電や三者通話が面倒なのも、フライト状況を調べると歯の神経を抜くよりひどい目にあうのはこのためだ。

まず、制御機能の有無だが、電話が望まれない電話を完全に防がないのは技術的に不可能だからではなく、それが不都合だからだ。Facebook式にしたいのであれば最初の通話は取らずメッセージを聞いて知ってる人ならアドレス帳に追加、知らなければブロックすればよい。それでは不便すぎるだろう(コールドコールだって有益なことはある)。

電話番号が人ではなく電話機につながっているのは確かだ。固定電話はある番号がある人につながるわけではないので携帯電話に大きく劣った。しかし一つの人間が複数のIDを持つことには大きな不都合がないばかりか、必要なことでもある。仕事とプライベートを分離はもちろん、さまざまな用途でIDを使い分けたいということは多い。

最後のユーザー体験は何をいっているのか良く分からないが、携帯電話の機能・ソフトウェアの問題だろう。

逆に当分の間電話番号が主なIDとして使われ続けると信じる根拠も多くある。若年層においてはSMSの利用が相変わらず盛んなことはその一つだ。SMSでは電話番号がIDとなっている。またスマートフォンが普及しそこでFacebookを含め多くのサービスが利用できることがこのような議論の前提であるが、スマートフォンにはデフォルトで電話番号というIDがついている。携帯端末で誰もがFacebookにログインしてコミュニケーションをとる未来よりも、Facebookは一つのIDとして利用し(Facebookには一人一つしかIDがない!)重要な相手は電話番号をキープするという未来のほうが想像しやすい。

IDをめぐる争い” への3件のコメント

  1. ピンバック: Tweets that mention IDをめぐる争い » 経済学101 -- Topsy.com

  2. ピンバック: プライオリティ・インボックス » 経済学101

  3. ピンバック: Facebookの携帯進出 » 経済学101

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