サッカーのルールを変えよう

ワールドカップが盛り上がっている中、サッカーのルールを変えてもっと面白くできないかという提案。

Soccer Done Right

But it is only a matter of time before disappointed fans will start grousing about low scores, frequent draws, bad penalty calls and the penalty shoot-outs that can decide (and have decided) World Cup championships.

サッカーは世界で最も人気のある競技の一つだが、もちろん完璧ではない。サッカーの点数は大抵0,1,2程度で引き分けも多い。ペナルティーの審判もよく問題になるし、ペナルティーキックで試合が決まってしまうこともままある。

But these squabbles are all artifacts of the silly and counterproductive rules that have governed an ossified soccer community for all too many years.

こういう問題はサッカーに付き物という風に流され気味だが、ルールを帰れば緩和・解決することも可能なはずだ。ルールは所詮人間が決めたものに過ぎない。

Soccer instantly becomes a much better game when it awards two points for a goal and one point for a penalty shot.

一つ目の提案はゴールの点数をペナルティーキックとそうでない場合で変えることだ。これによってペナルティーキックで結果が決まることが減り、審判ミスによる被害も抑えられる。点数がタイになる可能性も減る。

The first is that minor penalties should carry a three-minute penalty, not a two-minute penalty. Major penalties that carry a five-minute penalty in hockey could carry seven minutes and 30 seconds in soccer.

もう一つはホッケーを見習ってペナルティー制度を見直すことだ。反則の度合いに応じた時間数退場を促す。現在の制度ではペナルティーキックか退場かで、審判ミスの場合の被害も大きい。反則の程度に合わせたペナルティーを与えることである意味公平なゲームになる。

The strongest objection to them is inertia. Soccer’s international format slows down rule changes.

歴史のあるゲームのルールが変わることは極めて難しいし、これらの提案が最適とは限らない。しかし、いろいろなルール変更を試してみてどれが面白いか探る試みがあってもいいかもしれない。

スポーツリーグにも競争政策

NFLは反トラスト政策の対象になるとの判決が出たそうだ。

Supreme Court denies NFL’s request for broad antitrust protection

American Needle, Inc. sued, claiming the league violated antitrust law because all 32 teams worked together to freeze it out of the NFL-licensed hatmaking business and gave Reebok an exclusive 10-year license.

NFLの全チームがReebokに対する十年間の独占契約を結んだため、ビジネスを失った企業がNFLを訴えたケースだ。NFLの各チームが普通の企業であれば、これは半競争的な行動となる。

Major League Baseball is the only professional sports league with broad antitrust protection.

スポーツリーグではMLBだけが反トラストの適用除外を受けている。これはあるリーグのチーム同士は互いを補完する機能があるためだ(一般的に補完関係にある企業同士の協調行動は競争政策上の問題にはならない)。例えば、チームの実力差がありすぎれば試合がつまらなくなるため、それを防ぐような協調行動は許容される。しかし、チーム同士がファンを惹きつけるために競争しているのも事実で、それを妨げるような協定はファンの利益を損なう=競争政策の対象となる。

The argument that NFL teams also need each other to play an NFL season also doesn’t work, Stevens said. “A nut and a bolt can only operate together, but an agreement between nut and bolt manufacturers is still subject to” antitrust scrutiny, Stevens said.

NFLはこのチーム間の相互依存を反トラストの適用から逃れる口実としているが、判事はナットとボルトを作る企業の関係を挙げてそれを否定している。両者は互いを必要としているが、それだけで反トラストの対象とならないわけではないからだ。

“The fact that NFL teams share an interest in making the entire league successful and profitable, and that they must cooperate in the production and scheduling of games, provides a perfectly sensible justification for making a host of collective decisions,” he said.

それでは何でも反競争的になるという反論については、ゲームの運営などは協調行動をとる正当な理由になるから問題ないと撥ねのけている。これはスポーツリーグに対して、ケースバイケースで(反)競争性を経済的に判断する合理の原則(Rule of Reason)の適用を示唆するものだ

また、スポーツリーグが協調的行動を取っているのは観客に対してだけではない。スポーツ選手の採用においてもチーム同士が協力して行っている。これは選手のキャリアを大幅に制限する買い手独占であり、雇用主としてのスポーツチームに関する競争政策がどうなるかも興味深い

スポーツ観戦と政治

政治的な傾向に関する記事の連投になるが今回はスポーツファン:

Sports Viewers Largely Republican – Hotline On Call

母集団が若干不明確だが、レーティングエージェンシーが広告の効果を測るために行った20万人近くに及ぶインタビューの結果だ。横軸が民主・共和の支持度合いで縦軸が投票する可能性だ。個々の円はスポーツ毎の規模を表しており、濃い赤が共和党よりで投票可能性が高く、濃い青は民主党よりで投票可能性が高い。薄い色は投票可能性が低いグループだ。次のようなことが見て取れる:

  • スポーツファンは基本的に共和党よりである(母集団の取り方で程度は変わるだろうが)
  • ゴルフ・ナスカー・フットボールなどはかなり共和党より
  • バスケットボール・テニス・プロレスなどが民主党より
  • ゴルフファンは投票に一番積極的で逆にプロレスファンは投票に行かない可能性が高い

この結果に基づけば、共和党はスポーツ関連メディアに投資をすべきで特にPGAが効果的であるとか、民主党が投資するならバスケットやテニスがいいことが分かる(プロレスファンは民主党贔屓だがそもそも投票に行かない)。それどころか民主党はスポーツ以外のメディアを狙った方がいいかもしれない。

プロスポーツにおけるミニマックス

最近複数箇所で見たような気がするFreakonomicsのSteven LevittがKenneth Kovashと共著した論文の紹介:

Matthew Yglesias » Minimax Strategies in Professional Sports

pitch selection in Major League Baseball and play-calling in the National Football League. Authors Kenneth Kovash and Steven Levitt find that: “Pitchers appear to throw too many fastballs; football teams pass less than they should.”

プロスポーツはゼロサムゲームでもあるにも関わらずミニマックス戦略をとらないというのが結論だ(注:ゼロサムゲームとは利害関係が完全に対立しているゲームで、合理的なプレーヤーはミニマックス戦略をとることが示されている)。これは別にプロスポーツでもなくても同じだ。

They opt for the “minimax” solution — the set of plays that minimizes their maximum possible loss – and their play selection does not follow a predictable pattern that might give their opponent an edge. But minimax predictions typically have not fared well in lab experiments.

実験室でも被験者はミニマックス戦略をとらない。こちらは進化論的に説明できるだろう。自然界はゼロサムで出来ていないので人間が自然にミニマックス的行動をとるとは思えない。また、実験では勝敗にかかる利害が小さいし参加者がルールを完全に理解しているかもわからない。

ではプロスポーツの場合はどうだろう。プロ選手は勝敗に強い利害関係があるし、ゲームの内容を完全に理解しているのでより理論に近い行動をとると考えられる。よって上記の理由で合理的行動から乖離する可能性は低い。よってプロスポーツでミニマックスが観測できないことは合理性仮説に疑問を投げかけるというわけだ。

しかしプロスポーツがゼロサムだという仮定の正当性はどうなのだろう。プロスポーツの勝敗結果はゼロサムだが、スポーツチームは勝率を最大化しているわけではないし、ましてやここの選手は言うまでもない。勝敗結果を多少犠牲にしてでもファンの支持を得る行動をとるのが、犠牲が小規模に抑えられるのであれば、最適な行動だろう(本当に期待勝敗結果を最大化すると思っているのだろうか??)。

文献紹介によるとテニスのサーブの左右やサッカーのPK戦のキーバーの行動、ポーカーではミニマックスと整合的な行動をとるとされている。テニス選手の成果がほぼ完全にランキングで決まること、PK戦では結果が全てであること、ポーカーはそもそもファンが評価するものでないことからすれば野球やフットボールの試合より遥に完全なゼロサムになっており、特に矛盾はない。

論文本体へのリンクはこちら。詳しい方のコメント募集。