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ホワイトスペース特区

March 1st, 2010

久しぶりに○○特区というフレーズを聞いた。色々な特区が過去に提案されてきたが結果がどうであったのか興味がある。ちなみに昨年末の第二十一回認定では以下のようなものが認定されている:

  • 釧路市:釧路市阿寒湖温泉地区共生型福祉サービス特区
  • 遠野市:遠野市民センター 学びのプラットホーム特区
  • 市川三郷町:より安全で安心できる給食特区
  • 南国市:南国・土佐のまほろば どぶろく・リキュール特区
  • 四万十町:四万十町どぶろく特区
  • 多良木町:多良木町どぶろく特区

あまり斬新なものは見当たらないというか、半分どぶろくなのだが、どうなっているのだろう。

今夏にも「ホワイトスペース特区」 空き電波で地域活性化

今回取り上げられているのは、ホワイトスペース、即ち使用されていない電波帯に関する特区だ。

内藤副大臣は「ホワイトスペース特区を先行的に始めるエリアを通じ、研究開発や実証実験を開始し、制度化を進めていきたい」と語った。

もちろん現在使用されていない電波を利用するというのは素晴らしいことだ。

テレビなど放送電波の空いた周波数帯を有効活用し、地域経済の活性化を図る「ホワイトスペース特区(仮称)」を7月以降に創設する方針を明らかにした。

しかし、その有効活用というのは「地域経済の活性化」であると結論付けるのは早計だ。本当に有効活用するのであれば、開いた周波数帯をオークションするのはするのはどうだろう。一番多くのお金を払うつもりのある団体は最もその周波数を必要としている、つまりその周波数から多くの価値を引き出せる集団だ。もちろん「地域経済の活性化」が優れた利用方法だと知っている団体は結果的にその周波数を取得し活用するので問題ない。限られた資源を有効活用できるだけでなく、財政難の政府の収入にもなって一石二鳥だろう。

曖昧な目的へ貴重な資源を無償供与するぐらいなら、オークションによりそれを一番活用できる事業者に割り当てた方がよい。これはホワイトスペースに限らず、テレビ局などが専有する周波数帯についても当てはまるはずだ。

アメリカのブロードバンド

February 17th, 2010

このネタは何回かすでに取り上げた気もするが、あまりにもひどいのでもう一回。うちはAT&Tだが、昨日も複数回ダウンしていたようだ。

FCC to propose faster broadband speeds | Reuters

The FCC wants service providers to offer home Internet data transmission speeds of 100 megabits per second (Mbps) to 100 million homes by a decade from now, Commission Chairman Julius Genachowski said.

2020年までに100Mbpsの接続を1億世帯に届けろという連邦通信委員会の要求が業界に波紋を読んでいる。アメリカの世帯数は2000年のCensusによると105,480,101世帯なので基本的には殆どの家庭に100Mbpsのブロードバンドを提供しろということだ。こう書くとすごいことに聞こえるが、日本のFTTH利用可能世帯率は80%を超えている

この発言に対するISPの反応はどうしようもない。

“A 100 meg is just a dream,” Qwest Communications International Inc Chief Executive Edward Mueller told Reuters. “We couldn’t afford it.”

“First, we don’t think the customer wants that. Secondly, if (Google has) invented some technology, we’d love to partner with them,” Mueller added.

Qwestによれば100Mbpsは夢物語でそんな金はないし、そもそも客が欲しがってない(!!!)とのことだ。Googleがいい解決策を持ってるなら一緒にやってやってもいいよというところだ。

AT&T, the top broadband provider among U.S. telecommunications carriers, said the FCC should resist calls for “extreme forms of regulation that would cripple, if not destroy, the very investments needed to realize its goal.”

AT&Tは規制によって投資をするインセンティブがなくなると主張している。ちなみにそのAT&Tがうちの地域で提供している最速のブロードバンド(?)は不安定なDSL 6Mbpsだ。

Industry estimates generally put average U.S. Internet speeds at below 4 Mbps.

しかし平均的なスピードは4Mbpsとのことでこれでも50%も上回っているとのこと。

Verizon, the third-largest provider, and one that has a more advanced network than many competitors, said it has completed successful trials of 100 Mbps and higher through its fiber-optic FiOS network.

唯一前向きなVerizonはバックボーンに光ファイバーを使うFiOSサービスを提供しているが、ほとんどの地域では提供されていない(FiOSの最高速度は50Mbpsだが、これが提供される地域は一段と小さい)。

New data: 40 percent in US lack home broadband

Lack of broadband availability is only part of the challenge for Washington, however – because even in places where broadband is available, not everyone subscribes.

アメリカではブロードバンドが提供されていたといしても、それが利用される率が低い。そもそも必要を感じない家庭や高すぎるからと契約しない家庭がたくさんある。

The FCC also wants to use the universal service fund, a U.S. subsidy program for low-income families to gain access to phone service, to get more people high-speed Internet access.

こういった問題にユニバーサルサービスファンドを使おうというのは正しい動きだろう。固定電話サービスの必要性は著しく低下した。ブロードバンドがあれば電話もできるわけで、そちらに集約するのは妥当だ。

配給のコスト

February 8th, 2010

最近、援助の問題に関するポストが続いたので、前向きな記事も紹介:

Aguanomics: The Cost of Rationing

Rationingというのは配給のことだが別に戦時中だけの言葉ではなく、限られた資源を(価格メカニズム以外で)割り当てることを指す。例えば、水や電気の価格を規制で低く抑えれば、超過需要が発生する。短期的には影響が小さくても、設備投資が減ることで長期的には容量不足が引き起こされる。供給よりも需要が多いということは、財・サービスを価格以外の何らかの基準で割り振る必要があるということであり、Rationingの登場となる。ランダムでも先着順でも政治家への献金のランキング順でもいい。

しかし、(限られた)資源の最も効率的な配分というのは、一番その資源を必要としている人間から順番に割り当てていくことだが、価格メカニズム以外でこれをうまく達成するのは難しい。必要な順といったら多くの人は自分が一番必要としていると答えるだろう。それを確認する方法がないからだ。市場は必要という人間にお金を支払わせることによってこの問題をクリアする。

電力では特に限界費用は極めて高く(1000倍というようなオーダー)、そのまま価格に反映させることが政治的にも困難で適切な投資を担保しにくい。水資源についてもしばしば農業用水が異常に安く設定されている。適切な価格付けがなされていない場合、それで大きな便益を受けているグループが政治力を持っているが多い

Effects of Improving Infrastructure Quality on Business Costs: Evidence from Firm-Level Data

it is found that the total benefit for the economy from eliminating the existing electricity outages ranges from 0.5 to 6 percent of gross domestic product. If all water suspensions are removed, the economy could receive a gain of about 0.5 to 2 percent of gross domestic product.

紹介されているワーキングペーパーによると、調査の対象となったヨーロッパと中央アジア26ヶ国において停電をなくすことによる便益はGDPの0.5から6%にも当たるという。水供給についても0.5から2%の効果が予想されるとのこと。市場を整備し適切に運営することでこれだけの膨大な効果があるのだ。財・サービスを提供するような支援もいいが、制度を作るのを助けることで大きな成果を上げることもできる。この問題は途上国だけに限るものではないが、こういうタイプの支援が増えていくとよいのではないだろうか。

資本家の反資本主義

February 1st, 2010

ダボス会議に関連してDon BoudreauxがThe Washington Postに送ったレターがCafe Hayekに掲載されている。

Don’t Throw Me Into that Briar Patch!

題材となったのはこちらの記事の以下の部分だ:

When Sarkozy had finished his anti-capitalist rant, he got a standing ovation from an audience made up mostly of wealthy capitalists.

サルコジ仏大統領が反資本主義的な演説をし、まさに裕福な資本主義者であるはずの参加者がスタンディングオベーションをしたという。サルコジ氏の演説内容は以下のように記述されている。

The leading rabble-rouser was French President Nicolas Sarkozy, who opened the conference with a speech urging global citizens to reform the system. “From the moment we accepted the idea that the market was always right,” he said, “globalization skidded out of control.” An overemphasis on free trade had “weakened democracy,” he argued. Human values had been undermined by soulless speculators for whom “the present was all that mattered.”

市場原理主義(!)を受け入れたときからグローバリゼーションは手が付けられなくなったとか、自由貿易は民主主義を弱体化を招いたとか、さらには今現在しか見ない魂のない投機家が人間の価値を蝕んでいるとか、なかなか香ばしい内容だ。どうしてこのような内容に名だたる経営者が賛成するのか。リンク先ではそれを明快に説明している。

Nothing is surprising about this fact. To the extent that trade – both national and international – is restricted, incumbent capitalists are shielded from what Joseph Schumpeter called the “gale of creative destruction.”

既存の企業にとって交易が制限されることはシュンペーター的な創造的破壊を免れることになる。これは既に成功している企業にとっては現状を維持する素晴らしい手段だ。

Such “anti-capitalist” protection harms not only upstart entrepreneurs; most importantly, it hurts the countless unseen and unrepresented consumers who are denied the gains they would have enjoyed from the innovation and competition that are squelched by the “anti-capitalist” restrictive policies that seem so in vogue today at Davos.

しかも、そういった「反資本主義」的な保護政策はこれから企業を作る起業家への逆風となるだけでなく、新しい企業がもたらすはずだったイノベーションや競争の利益がなくなることで消費者を害する

便乗値上げの被害?

January 26th, 2010

便乗値上げという概念の掴みどころのなさについては前に紹介した(便乗値上げの規制)が、さらによく分からない法律ができようとしているという続報があったのでこれも紹介:

A private right of action on price gouging « Knowledge Problem

To that end, “the purpose of this bill is to grant citizens who are victims of illegal price gouging in times of emergency the right to directly sue the responsible party.” The proposal would allow a victim to sue to recover up to “actual damages” or $1000, whichever is greater, and give the court discretion to award a prevailing plaintiff up to $5000 and reasonable attorneys’ fees.

話題になっている法律は、便乗値上げが起きた時に司法(Attorney General)しか訴えを起こせなかったものを、被害者にも可能にするというものだ。「被害者」は「実際の被害」か$1,000のどちらか大きい方で訴えられるようにするそうだ。裁判所はさらに$5,000と弁護士費用を課すこともできるとのこと。

The bill does not specify who is considered a “victim” under the law. I can imagine a few problems that may result.

当然問題となるのは一体、誰が「被害者」で何が「実際の被害」なのかということだ。

the definition seems to apply in cases in which the “victim” incurs the hazard, i.e. could have purchased at other prices but chose to buy from a merchant offering the good or service for a much higher price.

法律の定義によれば、他の商人よりも有意に高い価格で購入すれば「被害者」となるようだが、これは消費者にゲームの機会を与える。消費者はわざと高い商店を探して商品を購入し後で訴えることができる。

what about consumers that would have purchased the good or service but for the unconscionably excessive price at which it is offered?

逆に、高すぎて変えなかった消費者はどうか。彼らもまた「被害者」となるはずだが、それが認められれば商人にとって災害地で商品を提供することのリスクは莫大なものとなる。

Well, nothing in New York’s anti-price gouging law requires merchants to remain open for business during market disruptions associated with declared emergencies.  And if remaining open might expose the store to large but hard-to-define liabilities, the store’s owner might reasonably just close up shop.

便乗値上げを防ぐという意味ではこの法律は非常に効果的だ(逆に今までの便乗値上げ規制は実効性がなかった)。しかし、災害時に商品を提供する義務はないので、商人はリスクをとってまで商売をしない。結果は目に見える「便乗値上げ」の害はなくなる代わりに、本来災害時にも供給されていたものが消えてなくなるということだ。