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利益率の規制

健康保険をどうするかで盛り上がるアメリカで大きな規制が話題になっている。

New Premium Rules Could Be Game Changer for Health Insurers

The medical-loss ratio measures how much of premiums insurers pay out for medical care versus administrative costs. The new law requires that insurers use at least 80% of the premiums from individuals and small businesses to pay for medical care and profit-taking, and 85% of premiums from larger employers.

規制の対象となっているのはmedical-loss ratioという指標で、保険料収入のうちどのくらいの割合が保険金の支払いに宛てられているかを測るものだ。新しい法律はこの割合を80%以上(大規模な雇用主については85%以上)にすることを要求しており、基準を満たさない場合には契約者へのリベートが必要なる模様だ。

Health insurers are waiting for regulators to clarify how companies must account for the numbers—whether they can average the MLRs of their subsidiaries, for instance.

明確な指標のようにも見えるがそうでもない。例えばこの指標を測る単位を広くとれば、部分的には数値が低くても全体では基準値を上回ることもありうるし、逆に、極端な話、病気になっていない人だけについてこの指標を取れば0%になる。

That process is already happening, though. American National Insurance Co., of Texas stopped marketing individual policies last month. A spokesman for the company said it operates its plans at about a 60% MLR, and didn’t want to retool its business model to meet the new requirements.

そして、もちろん最大の問題は一種の利益率の上限を定めることによって、規制対象となって財が提供されなくなることだ。この場合、経費の割合の多い個人向けが提供されなくなったり、商品説明にかける費用を減らすという懸念もある。

どういう経緯でこんな法律ができたのかは分からないが指標の公開を義務付けるというような穏当な規制の方が好ましいように思える。

確定申告は必要?

日本ではサラリーマンの源泉徴収は納税意識を希薄にするというような論調もあるが、オーストラリアの場合は逆に進んでいるようだ。

Generating a social surplus

This Budget includes a measure that is long over-due: taxpayers will no longer have to file tax returns.

ついに確定申告の義務がなくなったというニュースだ。

A 2000 estimate by researchers at the University of NSW put the time cost of tax filing at any average of $346 per person (roughly 8.5 hours times the average hourly pay; adjusted to closer to the present day). That comes to a total cost of $3.7 billion per annum to the economy […]

もちろんこの変更には根拠がある。確定申告を行うために平均8.5時間が費やされており、時給から計算すると一人当たり平均346ドル、国全体で37億ドル(おそらくAUD)の費用がかかっている計算になる。

Of course, there is a catch – if you choose this option you will have to accept a standardised deduction ($500 rising to $1000 in a few years). So this is likely to attract lower income households; so the pure financial saving will be less.

義務がなくなっても、収入の高い人ほど確定申告をするため実際の効果は上の額よりは少なくなるが、それでもこれは莫大な改善と言える。

Already, there are claims that this will harm smaller tax agents. If they were existing because of an inefficient government regulation, they are part of the problem.

小規模の税理士が困るという批判もあるが、彼らが非効率な政策ゆえに存在するのであればそれは理由に非効率の解消に反対するのは無理がある。

確定申告を行うことで自分の払っている税金への意識が高まるというのはその通りではある。しかし、同時に確定申告を義務化するのにどれだけの社会的費用がかかるかを考え、「意識が高まる」という曖昧な目的にそれだけの費用をかける価値があるのかを吟味する必要があるだろう。

ミルクにもインフォグラフィック

牛乳パックにもインフォグラフィックスを入れたらどうなるか。

Nutritional facts redesigned

デザインを行っているのはモントリオールのデザイン事務所だ。牛乳パックのデザインとしてはなかなかカッコいい。ちなみにアメリカによくある牛乳のデザインは次のようなものだ:

ちなみにこれはAmazon.comで売られているミルクだ。一体生乳をアマゾンがどう売るのかはよく分からないが、どうも製造元関係者にしか見えない絶賛コメントに溢れている。サイズは1ガロンなので訳3.8リットルとなっている(よって本当は下のボトルの方が上のパックより4倍近く大きい)。まあこの二つがスーパーに並んでいたら上を買いたくなる。

しかし、デザインとはいえ気をつけることもある。キレイな栄養情報の表示が必ずしも分かりやすい、誤解のない表示方法とはいえないからだ。具体的なラベルは読めないが以下のような問題がある:

  • 視覚化が標準化されていないため比較が困難(逆に標準化されるとデザインとしては意味がない)
  • 同時に誤解を招く表示になっていないかの規制も難しい

もちろんメリットとしては栄養情報が分かりやすくなるというものもあるが、これなら情報を規格化して例えばQRコードのような形で貼っておくだけでもよい。消費者は自分の端末や視覚化ソフトウェアで好みの表示方法を選べる。毎回同じソフトウェアを使えば比較は可能だし、製品の数よりソフトウェアの数の方が少ないので規制やレビューも容易だろう。

意味のないテロ対策

インターポールの事務総長のインタビュー記事「The World’s Top Cop – A Talk with Ronald K. Noble」からの一節。インタビュー自体も短いが、皮肉がきいている。

Aguanomics: Bureaucratic or effective?

What frustrates me […] is that in 2009 there were over 500 million international air arrivals where passports were not checked against Interpol’s database, which contains records on over 11 million stolen passports and 9 million other identity documents.

昨年、到着旅行客数でのべ5億人がインタポールにあるパスポートなどの身分証明書盗難リストへ照合されていないとのこと。これは既に電子的に出来ることだ。

At the same time, if you or I are traveling internationally via the United States or Europe, we are required to take off our shoes and belts, give up our bags and our computers, and sacrifice whatever liquids we might not have consumed before passing through security. We do that for everyone.

その一方で国際線に載ると、靴を脱いでベルトを外し、液体は何ミリリットルとかいう規制がある。費用対効果から考えて実におかしなことだ。こういった規制が必要かどうかという議論をすると、感情的な議論になりがちだが、より効果的な方法があるのにやっていないという点をつくのは効果的だろう。

金融規制キャリア

ちょっと変わったキャリアアドバイスがあった。金融市場の規制に関するキャリアについてだ。

Financial Regulation Career Advice | TRUTH ON THE MARKET

Knowing substantive law is an important part of a legal career, a necessary pre-req to get going.  But it’s by far the least important item in your toolkit.  Being excited about what you’re doing, also good.

仕事に関する知識ややる気はさほど重要ではないと言う。何故か。

There are, however, too many smart and passionate lawyers in the world.

それは賢くて熱心な人間なんていくらでもいるからだ。10代での学校・受験の影響か、頭の良さというを絶対視ないし過大評価する人というのはとても多い。しかし、そういう意味で頭の良いひとはそれほど珍しくなく、勉強ができることが人生で成功する最も重要ではないのは大学なんかで色んなひとを観察すれば明らかだろう(それどころかプラスに働くのかも疑わしい)。

Two things distinguish the more successful lawyers from the rest of the pack: networking and salesmanship.  If you don’t develop skills in these two areas, you’ll never really own your career and someone else will.

では何が重要か。それはネットワーキングとセールスマンシップだという。何のことはない。どこの業界でもキャリアで必要なことは変わらないようだ。

You’ll be surprised at the ways you can help people connect with each other, and both sides will owe you one.  You’ll also be surprised at how often people offer to share their connections with you for precisely the same reason.

ABAに行くとか、in-house counsel(法務部?)と知り合うといった業界特有のアドバイスもあるが、この一節にもあるようにどの業界にも当てはまるものもある。自分の知り合い同士をつなげる機会は豊富だし、そうやって新しいコネクションを作ることも多い。

Put your rolodex on your christmas list.  Spam them will mass emails that update them about developments in your area of the law, or with emails that let them know about your accomplishments

季節の変わり目には近況や業界のニュースをメールで配信するといいというアドバイスもある。

On salesmanship:  Realize that you are first and foremost a salesman. Your wares are legal services.

セールスマンシップについて専門家は忘れがちだ。専門家もまた特定のスキル・イクスパティーズをそれを持たない(ないし機会費用的に自分でやりたくない)人に売っている存在だ。専門家としての威厳を保つためにはあまりあからさまに売り込みをすべきではないし、仕事は勝手に入ってくるというイメージを保つべきだろう。しかし、それはあくまでマーケティング上の戦略たるべきであって、実際には売り込みをせず仕事が歩いてくるということはない。

Before you can sell anything to anyone, you need to do your homework and know what drives your target. Where they make most of their money, what risks they are afraid of, what problems they have on the horizon that they don’t even know about.  Then you need to let them know how your skills can solve their problem.

クライアントがどこで稼いでいて、何を恐れているか、どんな道の危険があるか、そしてどうやって自分のスキルが彼らの問題を解決できるかを考える。この業界に特有の話は何もない。

勤務先別アドバイスもあるので、該当者はおそらくいないでしょうが、実際にこの業界で働く気のある人は元記事を御覧下さい。