Posts Tagged ‘Tax’

日本経済の現状

March 4th, 2010

経済産業省が公表しているスライドがよく出来ているのでここでも紹介(ht @kazemachiroman)。日本が抱える問題とここに至るまでの経緯が丁寧に解説されている。ではどうしたらいいのかという部分になると急に説得力がなくなるが、日本語だし全部読む価値はあるように思う。特に興味深いグラフを幾つか抜粋する。

日本の産業を巡る現状と課題

まず各国の貯蓄率の推移だ。日本は貯蓄率が高く、アメリカは借金だらけというイメージを持つ人が多いと思われるが、日本の貯蓄率はアメリカを下回っている。高齢化や社会保障によって貯蓄率が下がるのはしょうがないが、それにしても衝撃的な数字だ。

最近、株主主権の問題と絡めて話題となった労働分配率だがここでも日本は英米独仏などよりも高い水準を保っている。特にドイツが一番低いのは興味深い。

企業の海外移転に関するアンケート結果だ。多くの企業が生産機能移転を決定ないし検討しているとのこと。生産コストを考えればその流れは当然だろう。日本で働く人は開発・研究・本社機能で能力を発揮出来るようにならないと厳しい。

こちらは三大都市圏及び地方の人口推移だ。全体に人口が減っていくものの、相対的に地方での人口減少が深刻となる。

特に地方圏では、今後急速に人口減少。地域経済の立て直しが深刻な課題。

とはいえ、既に莫大な予算をつぎ込んでいる地方経済をどう立て直すというのだろうか。

実質失業率は急激に伸びている。日本の比較的低い完全失業率は企業による抱え込み=保蔵によって維持されているに過ぎない。

当然これだけの余剰人員を抱えていれば労働生産性で他国に引けをとるのは当然の帰結だろう。

企業内部で再配分が行われているような状況であり、雇用者報酬も伸び悩む。国境を越えられるような人材の確保はますます難しくなりそうだ(こっちも購買力平価だよね?)。

では日本の問題は何か。まず挙げられているのが実効法人税率の圧倒的な高さだ。どこの国で始めても良いような産業があえて日本を選ぶことはないだろう。儲かりそうであるほどそうだ。運輸の関する費用も高く事業コストが足かせになっている状況が分かる。

資本市場としての魅力もない。シンガポールの躍進をみればアジアでの地位は完全に失われたといっていいだろう(追記:資本市場の地位という意味)。

資料では、これらの経緯・現状を踏まえた上でさらなる産業政策の重要性が強調されているが、現状はその産業政策の失敗とも捉えられる。まずは企業活動がしやすい環境を整え、国内での競争を促進することで生産性を上げることが重要だろう。そうすることで、政府が成長産業を決め打ちしなくても、優秀な産業が競争に生き残る。

結論部分こそ微妙だが、全体として非常によく出来た資料なので、時間のある時にでも是非読んでみてほしい。

税金かキャップ&トレードか

November 28th, 2009

温暖化対策は国毎の排出量を決めるキャップ&トレードをベースに進んでいるがそれが望ましい方法なのか:

FT.com / Weekend columnists / Tim Harford – Political ill wind blows a hole in the climate change debate

The incentives provided by the two approaches are similar. Both will lead to a higher carbon price and lower emissions, and both could be tweaked over time to produce much the same trajectory of lower emissions. Either system would work well from an economic perspective.

まず税金による規制と数量規制は大差ない。望ましい水準さえ分かっていれば価格を規制しようが数量を規制しようが構わない。温暖化を抑制するために二酸化炭素がある水準以下である必要があるなら、それを基準にキャップを割り当ててトレードさせようが、そういう水準になるような税金を課しても同じだからだ。

不確実性のありかたによっては優劣があるが、現状ではそのことがキャップ&トレードの根拠としてあげられているということはない。

The trouble with cap-and-trade is that countries must agree how to divide the allocation of permits.

キャップ&トレードの大きな問題はそのキャップをどう決めるかだ。世界全体での排出量に合意がえられたとしてもその配分で合意するのは難しい。他国のために率先して削減するというおめでたい国がたくさんない限りはなかなかうまくいかない。

もちろん税方式ならうまくいくかというとそうでもない。税率を国際的に決めてしまうとそれぞれの国が国内での再分配を一般的な税金を通じて行う必要がある。キャップ&トレードであれば各国で税方式にするか国内でもキャップ&トレードにするかは自分で選択することができる。またそもそも国際的な再配分なしに合意が得られるかという問題もある。個人的には税方式にして国際的な再配分が必要であればそれを明示的に処理するのが望ましいように思う。

日本は税金少ないらしい

November 24th, 2009

いまさら題名にするようなことでもないけどOECD加盟国では下から六番目の税収GDP比だそうで:

Tax Burdens, Around the World – Economix Blog – NYTimes.com

OECDtaxrev

日本は26.9%。アメリカの26.9%に比べれば高いがヨーロッパの国よりはだいぶ少ない。よく似ていると指摘されるどいつでも36.5%もあり、ヨーロッパの先進国では40%越えが普通のようだ。

実効税率

November 23rd, 2009

アメリカでは法律上の税率は高くても、実際に企業が払っている税金の額は少ない(参考:タックスヘイブン)。そのいい例があった:

Goldman Sachs’s Tax Rate Drops to 1%, or $14 Million (Update1) – Bloomberg.com

The company’s effective income tax rate dropped to 1 percent from 34.1 percent, New York-based Goldman Sachs said today in a statement. The firm reported a $2.3 billion profit for the year after paying $10.9 billion in employee compensation and benefits.

政府から支援を受けながら、高額なボーナスを支払ったとして批判されているゴールドマンサックスの実効税率が明らかになった。その数字はと言うとなんとわずか1パーセントだという。

Goldman Sachs, which today reported its first quarterly loss since going public in 1999, lowered its rate with more tax credits as a percentage of earnings and because of “changes in geographic earnings mix,” the company said.

担当者はこの現象を利益の地理的な分布の変化によるものだとしている。

“I was definitely taken aback,” Willens said. “Clearly they have taken steps to ensure that a lot of their income is earned in lower-tax jurisdictions.”

わかりやすく言うと、利益を税率の低い州で発生させることで税金を回避しているということだ。州によって税制が異なるアメリカでは税金を減らすためのコンサルティングなどが一つの産業として成立している(多国籍バージョンが移転価格プラクティスだ)。

貨物船による大気汚染

November 22nd, 2009

センセーショナルなタイトルの次の記事:

How 16 ships create as much pollution as all the cars in the world | Mail Online

十六隻の船が世界全体の自動車よりも汚染を生み出してるというのはどういうことだろう。

As ships get bigger, the pollution is getting worse. The most staggering statistic of all is that just 16 of the world’s largest ships can produce as much lung-clogging sulphur pollution as all the world’s cars.

問題となっているのは硫黄汚染だ。なぜそんなことがありえるのか。

But, unlike power stations or cars, they can burn the cheapest, filthiest, high-sulphur fuel: the thick residues left behind in refineries after the lighter liquids have been taken. The stuff nobody on land is allowed to use.

それは船の燃料に対する規制が非常に緩いためだ。陸上では既に違法とされているような精製の残りかすが燃料として利用されている

Bunker fuel is also thick with sulphur. IMO rules allow ships to burn fuel containing up to 4.5 per cent sulphur. That is 4,500 times more than is allowed in car fuel in the European Union. The sulphur comes out of ship funnels as tiny particles, and it is these that get deep into lungs.

国連の一部である国際海事機関(International Maritime Organization)による船の硫黄の許容量はEUの自動車燃料のそれの4500倍だそうだ。

For decades, the IMO has rebuffed calls to clean up ship pollution. As a result, while it has long since been illegal to belch black, sulphur-laden smoke from power-station chimneys or lorry exhausts, shipping has kept its licence to pollute.

IMOは海洋運送を行う企業の利益団体のようになっていて、船の燃料に関する規制を悉くはねのけているそうだ。

Smoke and sulphur are not the only threats from ships’ funnels. Every year they are also belching out almost one billion tons of carbon dioxide. Ships are as big a contributor to global warming as aircraft – but have had much less attention from environmentalists.

もちろん二酸化炭素も大量に排出される。こんなことが可能となっている大きな原因は、自動車や飛行機に比べて船の環境汚染への注目が薄いことだという。

ここでは指摘されていないがもう一つの理由は規制のあり方だろう。環境汚染物質の排出量に関しては数量規制がかけられることが多い。リッター何ミリグラム以内といったものだ。しかし、数量規制は非常に非効率なことが多い。この例のように一部の用途が抜け落ちていたり、建材のホルムアルデヒドのように注目が集まると過剰な規制が起きたりする。炭素税のような価格によるコントロールをより積極的に利用すべきだろう。