発展途上国向け温暖化対策

気候変動対策における発展途上国の役割について:

Policies for Developing Country Engagement

温暖化対策となると日本を含めた先進国の責任ばかりクローズアップされるが、発展途上国が取り組める対策を考えるのも重要だ。特に、誰に道義的な(!)責任があるかという負担の擦り付け合いに終始しがちな点は残念だ。

For example, fossil fuel subsidies are common in many developing countries. Reducing or eliminating them would relieve budget pressures, promote more efficient energy use, improve energy security, and avoid unintended distributional consequences while also slowing the growth of GHG emissions.

しかし、温暖化対策になる政策の全てが痛みを伴なうものではない。例えば化石燃料への補助金は燃料価格を下げその消費を促進する。このような補助金を廃止することで、補助金のための財源(と課税に伴う経済の歪み=税の死荷重負担)が必要なくなるし、燃料の利用も適正化される。補助金には燃料の購買者の負担を減らすという再配分的意味合いもあるが、それは他の再配分手段で達成できる。また、実際には業界団体の圧力などで補助金が使われているケースも多く、温暖化対策を理由にそういった政治力を排除できるなら一石二鳥だろう。日本でも高速道路無料化なんて意味不明なことを言ってないで、気候や混雑への外部効果を計算にいれた適正な課税・通行料徴収を行うべきだ。

原油流出と金融危機

原油流出事件と金融危機を対比させつつ、予防の重要性を主張するストーリー:

Recipes for Ruin, in the Gulf or on Wall St.

For the financial crisis, it has become clear that many chief executives and corporate directors were not aware of the risks taken by their trading desks and partners.

金融危機においては、多くの経営幹部が自社・パートナーのとっている本当のリスクを認識していなかった。あまりに複雑な商品・取引や多くの関係者の間での利害対立、監督機関の能力不足などが原因として考えられている。

The story of the oil crisis is still being written, but it seems clear that BP underestimated the risk of an accident.

原油流出の全容は解明されていないが、BPがリスクを過小評価していたのは間違いない。

And while there is no way to know for sure, of course, whether BP was just extraordinarily unlucky, there is much evidence that people in general are not good at estimating the true chances of rare events, especially when human error may be involved.

BPのCEOは百万回に一度の事故だと主張してはいるが、それが正しいのかは確認しようがないし、人間が小さな確率を上手く把握できないのはよく知られた現象だ。

“Of the 126 people present on the day of the explosion, only eight were employees of BP,”

爆発に立会った126人のうちBPの社員はわずか8人であり、多くの異なる利害を持った企業の関係者による共同作業であった。社員と企業との利害が一致しているとも限らない。

Suppose we try to tax companies in advance for activities that have the potential to harm society. First, we have to have some basis for estimating the costs they may inflict.

このような悲劇を避けるためには、適切なインセンティブを与える必要があるが、事前に適切な税金を定めるのは難しい。問題が起こる確率が分からないためだ。

Alternatively, an offending party could be made to pay after the fact, by holding it responsible for the costs it imposes. BP has volunteered that it will pay for all damages it considers “legitimate,” but we can expect a fight over how to define that word.

事後的に支払いを求めるのも難しい。BPは正当な費用負担を行うと行っているが、何が正当なのかを決着するのにどれだけかかるは全く分からない。

And if we aren’t careful, we will encourage companies that have enough money for collection to leave the drilling to those that don’t.

仮に適切な定義が出来たとしても、事後的な制裁は資金負担能力のある企業の撤退を招く。賠償資力のない企業であれば、問題が起きたときには破産すればそれを免れることができるためだ。

A policy with some appeal might make drilling rights include a mandatory insurance policy with a big deductible, say $100 million, and a cap somewhere in the billions.

ここでは、原油採掘を行うために保険を強制するという政策が提案されている。保険により資力の問題をクリアしつつ、保険会社によるモニタリングを期待できる。控除を大きくとれば採掘企業の回避インセンティブを削ぎすぎることもない(保険会社が当然要求するだろうが)。

FURTHERMORE, this economic solution assumes that companies make good decisions once they’re given correct incentives. But the financial and oil crises should make us less confident that companies are up to the task.

それでも、モニタリングがきちんとに行われるとは限らないし、企業がインセンティブにうまく反応するとは限らない。ゴーイング・コンサーンを前提とする企業も中身は退職も転職もする個人の集まりだ。二つの事件に対する政府の対応を比較するのも面白そうだ。