金融規制キャリア

ちょっと変わったキャリアアドバイスがあった。金融市場の規制に関するキャリアについてだ。

Financial Regulation Career Advice | TRUTH ON THE MARKET

Knowing substantive law is an important part of a legal career, a necessary pre-req to get going.  But it’s by far the least important item in your toolkit.  Being excited about what you’re doing, also good.

仕事に関する知識ややる気はさほど重要ではないと言う。何故か。

There are, however, too many smart and passionate lawyers in the world.

それは賢くて熱心な人間なんていくらでもいるからだ。10代での学校・受験の影響か、頭の良さというを絶対視ないし過大評価する人というのはとても多い。しかし、そういう意味で頭の良いひとはそれほど珍しくなく、勉強ができることが人生で成功する最も重要ではないのは大学なんかで色んなひとを観察すれば明らかだろう(それどころかプラスに働くのかも疑わしい)。

Two things distinguish the more successful lawyers from the rest of the pack: networking and salesmanship.  If you don’t develop skills in these two areas, you’ll never really own your career and someone else will.

では何が重要か。それはネットワーキングとセールスマンシップだという。何のことはない。どこの業界でもキャリアで必要なことは変わらないようだ。

You’ll be surprised at the ways you can help people connect with each other, and both sides will owe you one.  You’ll also be surprised at how often people offer to share their connections with you for precisely the same reason.

ABAに行くとか、in-house counsel(法務部?)と知り合うといった業界特有のアドバイスもあるが、この一節にもあるようにどの業界にも当てはまるものもある。自分の知り合い同士をつなげる機会は豊富だし、そうやって新しいコネクションを作ることも多い。

Put your rolodex on your christmas list.  Spam them will mass emails that update them about developments in your area of the law, or with emails that let them know about your accomplishments

季節の変わり目には近況や業界のニュースをメールで配信するといいというアドバイスもある。

On salesmanship:  Realize that you are first and foremost a salesman. Your wares are legal services.

セールスマンシップについて専門家は忘れがちだ。専門家もまた特定のスキル・イクスパティーズをそれを持たない(ないし機会費用的に自分でやりたくない)人に売っている存在だ。専門家としての威厳を保つためにはあまりあからさまに売り込みをすべきではないし、仕事は勝手に入ってくるというイメージを保つべきだろう。しかし、それはあくまでマーケティング上の戦略たるべきであって、実際には売り込みをせず仕事が歩いてくるということはない。

Before you can sell anything to anyone, you need to do your homework and know what drives your target. Where they make most of their money, what risks they are afraid of, what problems they have on the horizon that they don’t even know about.  Then you need to let them know how your skills can solve their problem.

クライアントがどこで稼いでいて、何を恐れているか、どんな道の危険があるか、そしてどうやって自分のスキルが彼らの問題を解決できるかを考える。この業界に特有の話は何もない。

勤務先別アドバイスもあるので、該当者はおそらくいないでしょうが、実際にこの業界で働く気のある人は元記事を御覧下さい。

国際開発のキャリア

最近、就活の話題をよく目にするのでもう一つエントリーを紹介。

Blood and Milk » Blog Archive » Finding Funding

国際開発のスペシャリストがどうやってそのキャリアを始めたかを説明している。しかし、その内容は開発という特殊な分野にだけ当てはまるというよりも、「アメリカの就活」で紹介した一般的な「就活」と本質的に変わらない。

It was an unpaid position with a multilateral organization in Tashkent, Uzbekistan, and it pretty much launched my global health career.

最初はウズベキスタンでの無給での仕事から全て始まったという。ではどうやってそのためのお金をもらったかという質問が沢山くるという。

I didn’t get funding. I estimated how much it would cost me every month to live in Tashkent. I figured out how long I wanted to stay – six months. Then I got a job, saved up my money, deferred my student loans, and got on the plane to Tashkent.

答えは単にもらえなかったというものだ。月いくら掛かるかを計算し、滞在したい期間を決め、そのための費用を働いて貯金し学生ローンの返済を延期して容易したという。

I actually ended staying at my internship for a full year, funding the extra six months with a US government fellowship that no longer seems to exist.

しかし、結果的に滞在は一年に延び、延長した分の費用は政府のフェローシップによってまかなわれたそうだ。

It led to the job that led to my next job and so on and so forth until here I am now with enough experience that I believe myself capable of blogging about it.

ここから次の仕事、その仕事への繋がり、十分な経験を得るに至っている。

But I got to Tashkent on my own, and I don’t think I could have gotten that fellowship if I wasn’t already there.

しかし、同時に最初のフェローシップを得たのは既に現地にいたからだという。これはインターンシップによって経験を積み、ネットワークを作ってキャリアを形成していくというアメリカでは普通のパスだ。

日本人も国際的な場所で活躍しようというなら、これだけの条件を揃えればいつ頃に行けるみたいな皮算用をするのではなく、自分から打って出る行動力が必要だ。仮に皮算用通りに事が進んだとしても、身一つで始めた人間と同じ力がつくとも思えないし、既に築かれた信頼関係なしに同じ結果を出すことはできない(同じことを言っていたとしてどちらに説得力があるだろう?)。

アメリカの就活

この前日本の「就活」についての記事を紹介したが、今度はアメリカの「就活」についてよくまとまった日本語記事があった。

[JMM]「既卒インターン制度のすすめ」from 911/USAレポート/冷泉 彰彦

では、アメリカでは「就職氷河期」といった言い方で社会問題化がされているのかというと、少なくとも新卒に関しては特に騒ぎになっていないのです。

就職氷河期的なものが存在しないのはその通りだ。不況で就職厳しいよね、という話はそこら中で耳にするが、新卒だけを取り上げるような話はない。

大学を出てフルタイムの仕事にブランクなしで就けるのは50%ぐらいと述べましたが、残りの50%はどうしているのでしょう? 先ほど申し上げたように、 新卒など20代の若者が考えることは「キャリアの蓄積」です。そのためには、フルタイムの仕事が良いと言えば良いのですが、この雇用情勢の下では難しい、 そこで多くの若者はパートタイムの仕事に就きます。

フルタイムの仕事が見つからなければパートタイムの仕事を探す。将来のキャリアに役立つような仕事を探して働く。単純労働のアルバイトをしている大学生は比較的少なく、ペイが少なくても経験を積むことを優先する(逆に単純労働をしているのは一生単純労働に従事する層だ)。

「勉強熱心な大学を出て、就きたい職業も決めているし即戦力になるだけの知識は大学で学んだ」学生が、たまたま「縁がなくて」とりあえずフルタイムの仕事には就けなかった、そんな場合は「インターン」になるのです。

学期中は必死に勉強している学生も休みになるとインターンに繰り出す。卒業するまでに履歴書のネタを稼ぎ、その過程でネットワークを作る。

インターンはその企業への就職活動であるだけでなく、他の企業に向けてのシグナルにもなるし、将来に向けての経験・人脈にもなるわけだ。もちろん、インターン先でそのまま採用となることもあるが、転職が当たり前な世の中では経験や人脈は企業の中でも重要だ。同じような文章を送って、企業が内部で審査・面接を繰り返す日本と比べると非常に効率的に思える。

(1)既卒者の採用拒否を禁止する、
(2)既卒者の有給インターン制度を設ける、の二点を提言したいと思います。

若年層がスキルを磨かない問題について二つの提案がなされている。一つ目は特に面白い。経験のない人間を特別に優先して採用するというのはそもそも不思議な話だ。アメリカなら、経験がないと採用されないのでインターンやパートタイムで頑張る。どちらの社会で外部で通じるスキルが身につきやすいかは論じるまでもないだろう。

終身雇用前提で主に社内スキルを身につけるというなら未経験者も良いだろうが、終身雇用がなければ社員は社内でしか通じないスキルへ投資を行わない。日本の雇用慣行も変わっていくはずだ。

日本では未だに手書きの履歴書を要求する企業がごく普通に存在するという。民間企業の採用活動を規制するような流れはあまり賛同できないが、それくらいの過激な政策を取らなければ変化に何十年も掛かってしまうかもしれない。

追記:履歴書手書きについてのTogetterはこちら

進む非正社員化

非正社員化はアメリカでも進んでいるというストーリー:

You’re Hired. At Least for Now. – Kiplinger.com

What’s different about this recovery is that companies, many of which cut staffs to the quick, seem committed to staying flexible in the long term by using contingent workers to manage everything from special projects to whole departments.

テンポラリな職が増えるのは雇用回復時には自然なことだが、今回はその流れが定着しているという。企業は正社員を雇うのではなく、何でも契約社員(contingent worker)で対応し、なるべく雇用に柔軟性を持たせようとしている。

Companies now spend $425 billion annually on contingent labor, which accounts for about 11% of the workforce, or 14 million people.

その規模は年間4,250億ドルで、労働力の11%・1,400万人に相当するというのだから大したものだ。そもそもアメリカは「正社員」でも数年で転職するのがごく普通なので、労働市場の流動性は日本の比ではない

Littler predicts that half of the new workers added in 2010 will be contingent

2010に加わる労働者の半分は派遣形態になるという予測も取り上げられている。

It’s getting easier to maintain an upward career trajectory as a contingent worker. Professional connections are easy to make and maintain via electronic networks, such as Facebook, LinkedIn and Twitter, and via plain old e-mail.

しかし、それに対する論評は批判的なものではない。ネットを通じたネットワーキングはどんどん簡単になっている。そのような状況で転職が増え、派遣のような雇用形態が広がるのは自然なことだ

success depends on your skills and the demand for them instead of on the fortunes of a single company or even an entire industry. […] “It’s a different kind of job security.”

このような社会では個人の成功はたまたま勤めている会社ではなく、本人のスキルとそれに対する需要で決まる。企業が従業員の雇用を保証する時代が終わることは、企業の命運に個人が巻き込まれないことでもある。一つの企業で働き続けることが最も大きなリスクになる時代に変わりつつあるのだろう。

日本では、派遣の規制や正社員化促進などこのような流れに真っ向から対立する政策が推進されている。しかし、この流れが技術的進歩に伴なうものであればそれを押し止めるのは難しい他国の流動的な労働市場がさらに柔軟になっていくなかで、取り残されてしまう危険がある

就活のやり方

「就活」採用者の視点:「走れ!プロジェクトマネージャー!」

最終的なアドバイスは、

これは、本人のやる気とか、意気込みといった感覚的なものでしかないように思っています。「この会社で働きたい!」「絶対就職する!」といった、強い意志のようなものだと感じています。

ということだがこれはいくら何でも役に立たないだろう。大抵のひとは既にそれほどやる気がなくてもある振りぐらいしている。本当の答えは実はこの最後のアドバイス以外の部分にすべて書いてある。

新卒はポテンシャルで採用するしかないので、卒業校や成績以外に明確なものはないんですよね。

まず卒業校と成績がだけが明確(で確認できる)ものなのだからそこを改善すればよい。もちろん就活間際になってからじゃ遅い。逆に、だからこそ企業にとっては重要な情報なわけだ。

では、もう大学半分終わっている人はどうすべきか:

僕自身、最初に働いた会社は誘われて入社したので、いわゆる就活をしたことがありません。

そう、ネットワーキングで誘ってくれる人を探せばいいのだ。人付き合いが得意でなければ自分でプログラムやウェブサービスを公開したり、ブログを書いたりして名前を売ればいい。ちなみに、著者の大木豊成さんはシンガポール大学を卒業されているそうだが、留学するというのも手だ。選択肢は広がるし、ブランディング上もとても有利だろう。

ちなみに、

例えば僕が携わっている、神田外語学院のグローバルコミュニケーション科の卒業要件はTOEIC700点以上です。これは分かりやすい と思うんですよね。

とあるが、TOEIC700点では実務的には意味がないだろう。TOEICは英語の試験としては簡単過ぎるので満点近くても実際に使えるかは分からない。TOEFLであってもアメリカの大学院で要求するレベルは何とか生きてはいける程度のものだ

英語の資格というのはよく考えると非常に不思議なものだ。どの資格であっても実際に英語を運用できるかについてはさっぱり分からないが、資格がなくとも面接で簡単に分かる。私が採用活動で英語能力を見たいならその場で適当な話題について説明させる(電話でもいい)。

英語の話せる面接官が必要だが英語のできる社員がいない会社に英語の能力が必要なようにも思えない。そうすると英語能力を見るのは英語ができるなら他もできるはずというシグナリングに過ぎなくなる。その場合、英語に力を入れている学校の出身であることはマイナスに働く。なぜなら英語と他の能力の相関が明らかに期待できないからだ。