日航責任追及の不思議

世間を騒がした日航の破綻の責任はどこにあるのか。

日航破綻「歴代経営者の不作為が要因」 調査委が結論

日本航空の破綻(はたん)原因を調べている同社の独立機関「コンプライアンス(法令順守)調査委員会」(委員長・才口千晴元最高裁判事)が、「(重大な事態に対する)歴代経営者の不作為が要因で破綻した」との結論を出したことがわかった。ただ、刑事と民事の両面での法的責任を問うのは難しいと判断した。

日航の独立機関が破綻原因を調査したそうだ。コンプライアンスを謳い元最高裁判事を長に据えているということで単なる原因究明が目的ではなく、実際に責任を追求するのが目的だろう。その意味で法的責任を問うのが難しいという結論は失敗と言える。

調査委は報告書で、歴代経営陣の経営判断の欠如や危機意識のなさを厳しく指弾。…長年に及ぶ日航の問題が、外部専門家によって改めて浮き彫りにされる。

実際の報告書がどこまで詳細なものかは知らないが、こんな問題点は「外部専門家」でなくても分かる話だし、そもそもコンプライアンス委員会はそういった経営問題の専門家でもないだろう。

このような経営判断の間違い・不作為で法的責任を問うのが難しいのは自然だ。結果が出ないからといって一々責任を追求されるのではリスクのある行動は取れないし、それは株主にも都合が悪い。

また、テロや金融危機、新型肺炎のSARSなどで乗客が減って財政的な危機が生じたのに、緊急融資でその場をしのぐだけで、大胆なリストラなどをして財務体質を改善することを先送りした点も指摘。歴代の経営者が、こうした問題を抜本的に解決しようとしないまま放置し続けたことが経営破綻につながったと結論づけた。

また、テロや金融危機・SARSがあったのは昨日のことではない。株主はパフォーマンスの低い経営者の首を斬る人事権を持っているわけで、問題を抜本的に解決しようとしないまま放置し続けたのは株主も同じだろう

もちろん少数意見は反映されないが、誰も日航の株主でなければいけないと強制しているわけではないので、それで被害を被ったとは言えない(最初から価格に織り込まれている)。

さらに、問題の背景として、「ナショナル・フラッグ・キャリア」(国家を代表する航空会社)という「おごり」があったと分析。「誰かが助けてくれる」といった無責任体質につながったとみている。

これもまた、経営者にだけ当てはまるものではない。従業員や株主を含めたほとんどのステークホルダーが大丈夫だろうと思い込んで行動した結果が日航破綻だ。それが実際に破綻した今、そのつけを誰が払うべきかという話で揉めてるという構図だろう最大の被害者は物言わぬ一般納税者だ

ではこのような「無責任体質」を作ったのは誰か。それは政治・行政だろう。航空会社同士が競争する環境を整えず、コントロールしようとしたことが「誰か(=政府)が助けてくれる」という期待を生んだのではないだろうか。

アル・ゴアの顕示選好

顕示選好(revealed preference)というのは消費者の行動からその消費者の好み=選好を捉えるという考え方だ。エコバッグをもって車でスーパーに行く人がエコとは言えないのと同じだ。

Sub Specie Æternitatis via The Big Questions

温暖化対策でノーベル賞を受賞したアル・ゴアに関する小さなニュースがある:

Former Vice President Al Gore and his wife, Tipper, have added a Montecito-area property to their real estate holdings, reports the Montecito Journal.

via Los Angeles Times

ゴア夫妻がカリフォルニアのモンテシートに900万ドル近い豪邸を購入したと言うこと。まあ有名人が高級住宅街に家を買うというつまらないローカルニュースだ。

So its minimum elevation above sea level is 0 feet, while its overall elevation is variously reported at 50ft and 180ft.

しかし、このモンテシートはかなり標高の低い地域で大体50フィートから180フィートしかないということだ。これはアル・ゴアと彼の主張にとって都合が悪い。

The elevation of San Francisco is variously reported at 52ft up to high of 925ft.

「不都合な真実」などで温暖化によって水没する危険があるとされたサンフランシスコは52フィートから925フィートで、モンテシートよりもかなり高い。もしサンフランシスコに水没の危険があるなら彼の新邸宅は確実に沈むはずだ。

もしこれが本当なら、温暖化による海水面が上昇すると彼が本当に信じていると考えるのは難しくなる。誰も藻屑と消える運命にある家に900万ドルを投じるはずが無い。

Please note that this is far stronger evidence of Mr. Gore’s lack of sincerity than his willingness to engage in a very carbon-intensive life-style of multiple mansions, private jets, and the like.

複数の家を所有したり、プライベートジェットに乗ったりすることへの批判よりも遥かに強力な批判となる。何故なら、個人で努力しても意味がないと論じることやプライベートジェットは効率的な啓蒙活動に必要だと論じることもできるのに対して、個人資産の購入は彼にとって損にしかならないからだ。

唯一考えられるまともな(?)正当化は、自分が温暖化対策に奔走するというコミットメントとしてというものだが、それなら大々的に発表するだろう。

このことと実際に温暖化は存在するかとは関係ないし、対策の必要性がなくなるわけでもないが、彼は(善悪は別として)話をかなり誇張と考えるのが妥当なように思える。

意味のないテロ対策

インターポールの事務総長のインタビュー記事「The World’s Top Cop – A Talk with Ronald K. Noble」からの一節。インタビュー自体も短いが、皮肉がきいている。

Aguanomics: Bureaucratic or effective?

What frustrates me […] is that in 2009 there were over 500 million international air arrivals where passports were not checked against Interpol’s database, which contains records on over 11 million stolen passports and 9 million other identity documents.

昨年、到着旅行客数でのべ5億人がインタポールにあるパスポートなどの身分証明書盗難リストへ照合されていないとのこと。これは既に電子的に出来ることだ。

At the same time, if you or I are traveling internationally via the United States or Europe, we are required to take off our shoes and belts, give up our bags and our computers, and sacrifice whatever liquids we might not have consumed before passing through security. We do that for everyone.

その一方で国際線に載ると、靴を脱いでベルトを外し、液体は何ミリリットルとかいう規制がある。費用対効果から考えて実におかしなことだ。こういった規制が必要かどうかという議論をすると、感情的な議論になりがちだが、より効果的な方法があるのにやっていないという点をつくのは効果的だろう。

火山噴火とケニヤ

朝、アイスランドの火山噴火の影響について以下のようにコメントしたところ、現地からの情報を頂いたのでご紹介(ht @tmatsumo & @ryu_saito)。

火山灰の影響で空港に足止めされてる旅行者の苦労が報道されるけど、一番やばいのはアフリカの高付加価値一次産業だよね。取材とかしないのかな。

被害が想定されるのは、船便ではなく航空便が輸送に利用される高付加価値で容量のないフルーツや野菜などだが、特に被害を受けているのはケニヤの切花産業のようだ。

背景|ケニアの切り花産業|主要産業|ビジネス情報|駐日ケニア共和国大使館

ケニアの農業部門の中では、花卉栽培は紅茶に次ぐ第2外貨獲得産業です。年間2億5,000万ドル強を生み出します。そして、5万人~7万人を直接雇用し、150万人強を間接的に雇用しています。

若干古いデータではあるがケニア大使館でも花産業の重要性が強調されている。伸び率も高いようで、現在では一段と重要な産業になっているはずだ。

欧州市場向けの輸出は1970年代に増加し始め、最大の輸入国オランダは、全体量の71%を占めるまでになりました。流通の大半にオークション制が用いられました。英国が20%でこれに次ぎ、さらにドイツが6%で続きます。

輸出先は欧州が殆どで、特にオークションが行われるオランダを通じて輸出される割合が非常に高い。

The Standard | Online Edition :: Emirates increases cargo space for Amsterdam flights

Flower farmers and exporters will get a major boost with the introduction of daily Emirates Airline flights between Nairobi and Amsterdam from May 1.

来月からはエミレーツ航空が首都ナイロビとアムステルダムと間で毎日運行を開始するということになっているなど、ケニヤにとっては明るいニュースもあったがこの状況では予断を許さない。

“The Netherlands is a crucial market for Kenyan flower exporters and the fact that consignments are re-exported to countries as far and wide as Japan and the United States gives flower farmers market diversity out of their European stronghold,” Ahmad asserted.

アムステルダムに輸出された花はそこから日本やアメリカにまで再輸出されているそうだ。

Daily Nation: – News |Volcano in far-off Iceland hurting Kenya

The head of the Fresh Produce Exporters Association of Kenya, Mr Stephen Mbithi, said 3,000 tonnes of flowers and vegetables worth $9 million (Sh693 million) were stuck at Nairobi’s Jomo Kenyatta International Airport.

当然火山灰によるヨーロッパでの航空システム停止はケニヤの産業に深刻な影響を与えている。すでにナイロビの空港に輸出できなくなった花や野菜が大量に留まっている。

The Standard | Online Edition :: Horticulture hit hard as Europe airspace crisis persists

“Our cold stores are filled to capacity and we have no alternative but to start destroying some of the roses on Monday (today),” he said.

貯蔵には限界があり、既に輸送出来ない花の廃棄が始まっている。

Kneppers said the cancellation could not have come at a worse time, as farms were gearing up for Mothers day in three weeks.

花産業は既に母の日に向けて増産に入っており、これ以上悪いタイミングはないとのことだ。

ハイブリッドの売上

日本・アメリカ・その他でのハイブリッド自動車の売上の推移があったのでご紹介。

The Polk Blog – What Drives Global Hybrid Sales? via InfectiousGreed

2009年のハイブリッドの割合は僅か1.28%とのことだが、日本とアメリカが圧倒的なシェア(合わせて84%)を誇っている。特に日本は2008-2009にかけて爆発的に売り上げが伸びた。これはグリーン税制による減税の影響だろう。ヨーロッパが少ないのはディーゼル車が普及しているためだ。