Posts Tagged ‘Health’

利益率の規制

July 4th, 2010

健康保険をどうするかで盛り上がるアメリカで大きな規制が話題になっている。

New Premium Rules Could Be Game Changer for Health Insurers

The medical-loss ratio measures how much of premiums insurers pay out for medical care versus administrative costs. The new law requires that insurers use at least 80% of the premiums from individuals and small businesses to pay for medical care and profit-taking, and 85% of premiums from larger employers.

規制の対象となっているのはmedical-loss ratioという指標で、保険料収入のうちどのくらいの割合が保険金の支払いに宛てられているかを測るものだ。新しい法律はこの割合を80%以上(大規模な雇用主については85%以上)にすることを要求しており、基準を満たさない場合には契約者へのリベートが必要なる模様だ。

Health insurers are waiting for regulators to clarify how companies must account for the numbers—whether they can average the MLRs of their subsidiaries, for instance.

明確な指標のようにも見えるがそうでもない。例えばこの指標を測る単位を広くとれば、部分的には数値が低くても全体では基準値を上回ることもありうるし、逆に、極端な話、病気になっていない人だけについてこの指標を取れば0%になる。

That process is already happening, though. American National Insurance Co., of Texas stopped marketing individual policies last month. A spokesman for the company said it operates its plans at about a 60% MLR, and didn’t want to retool its business model to meet the new requirements.

そして、もちろん最大の問題は一種の利益率の上限を定めることによって、規制対象となって財が提供されなくなることだ。この場合、経費の割合の多い個人向けが提供されなくなったり、商品説明にかける費用を減らすという懸念もある。

どういう経緯でこんな法律ができたのかは分からないが指標の公開を義務付けるというような穏当な規制の方が好ましいように思える。

結婚とダイエットのインセンティブ

June 16th, 2010

結婚や離婚が適正体重を維持するインセンティブに大きな影響を与えるという(当たり前の)話(NYTの元記事参照論文):

The divorce diet

まずは結婚を境にしたBMIの変化がグラフになっている。非常に分かりやすく結婚を機にBMIが急上昇していく様が見て取れる。結婚相手を探す必要がなくなるためにダイエットするインセンティブが減るという以外にも多くの理由が考えられる:

  • 共同生活によって自炊をして食べる量が増える
  • 二人だとデザートを食べることが多い(これはデート中でも同じか)
  • 結婚と出産が重なっている
  • ホルモンの影響
  • 同居によるストレス

逆に離婚後のBMIの急減も明らかだ。特に女性で体重減少が甚だしい。これもまた、結婚市場での価値だけでなく様々な要因で説明できる:

  • 別居によるポーションの現象
  • 離婚に伴なう心理的な要因
  • そもそも太り過ぎてたのが離婚の一因

さらっと眺めた限りでは特にこれらのファクターを分離している様子はないが、結婚相手を探しているかがダイエットするかどうかに強い影響を与えているのは明らかだろう。

エイズを減らす新しい仕組み

June 12th, 2010

サブサハラでのエイズを減らすための新しい政策が提案されている

Economic Logic: Fight AIDS with life insurance

In short, there is strong evidence HIV/AIDS is not only a health problem, but a serious economic problem in sub-Saharan Africa.

エイズは人的投資を逸失させるだけでなく、平均寿命の低下を通じてそもそも人的投資を行うインセンティブを減少させる。人口が減ることによる一人当たり資本の増加を計算に入れても、経済成長にネガティブな影響がある。

Because the main mode of HIV transmission in sub-Saharan Africa is through heterosex-ual sex, eorts to contain the spread of the disease has entailed educating individuals not tohave lots of unprotected sex, to be faithful to their partners, and to use condoms every time.

アフリカでHIV感染を防ぐためには、コンドームの利用や不特定多数との性交渉を抑える必要がある。しかし、HIV感染のリスクを啓蒙する政策がうまくいっているとは言い難い。

Some studies suggests the only feasible way to contain the pandemic is by creatingopportunities for these countries to surpass a certain development threshold where life ex-pectancy and wealth are increased to levels in which the incentive to engage in risky sexualpractices is reduced.

その理由の一つは、リスクが認識されたとしてもそれを避けるとは限らないことだ。平均寿命が元々短くしかも貧しい国においては、エイズによって寿命が短くなることの機会費用が比較的小さい。どうせ長生きはできないし貧しいに決まってるなら好き放題するのも合理的でありうるということだ。経済が発展し、寿命が伸び所得が伸びればこの問題は自然と解消されるが、エイズの蔓延が肝心の経済発展を阻害するのでうまくいかない。

a government provided lifeinsurance benet that is payable for deaths that are not the result of AIDS.

しかし、エイズにかかることの機会費用を人為的に上げることはできる。ここでは、エイズ以外での死亡に対して政府が生命保険のようなものを支払うことが提案されている。生命保険の支払いが自殺行動に影響を及ぼすことは知られており、家族のいる男性に限ればこういった仕組みがリスクの高い行為を抑制するだろう。家族のいる男性の婚外性交渉はアフリカでのHIV伝播の大きな要因となっている。

インフォグラフィック

April 4th, 2010

最近目にすることの増えたインフォグラッフィクの問題点を具体的に指摘している次のポスト:

The gulf remains wide – Junk Charts

インフォグラッフィク(infographics)というのはWikipediaによると次のように定義されている。

インフォグラフィック(英: Inforgraphics)は、情報、データ、知識を視覚的に表現したものである。インフォグラフィックは情報を素早く簡単に表現したい場面で用いられ、標識、地図、報道、技術文書、教育などの形で使われている。また、計算機科学や数学、統計学においても、概念的情報を分かりやすく表現するツールとしてよく用いられる。科学的情報の可視化にも広く適用される。

要するにデータをヴィジュアル化した、統計で出来ているグラフの派手なバージョンのようなものだ。題材となっているのはMashableの記事(”5 Amazing Infographics for the Health Conscious”)で取り上げられているインフォグラッフィクだ。


サプリメントの効果が上から下に並べられている。上の方は効果が臨床的に確認されているもので、下にいけばいくほど健康な大人が経口摂取した場合の健康増進効果が未確認となっている。よく見かけるGojiやacaiは微妙なのかなど、内容自体は結構面白いが、ヴィジュアライゼーションとしては問題もある。

If the location and cluster membership of the substances depicted have some meaning, I might even feel ok about the effervescence. But I don’t think so.

それはサプリメント同士の位置関係に特に意味が見出せないことだ(ちなみにeffervescenceというのは気泡のことだ)。

こちらは水道水に含まれるバクテリアの数なんかを表したインフォグラフィックだ。問題とされているのは右側にある、各水道がカバーする人口のグラフだ。

The fact that the four buildings are not considered one complete unit also trips me up. The Truckee Meadows is depicted as 7 buildings, not divisible by 4. In addition, if 2 short buildings + 1 tall + 1 medium = 200,000 people, how many people live in 2 tall + 1 medium + 4 short buildings?

右下にはグラフの単位(?)がつけられている。
しかし、建物の高さが均一でないためグラフの読み方が分からない。棒グラフの長さが人間を表しているのか、面積なのかはっきりしない。さらに±サインを約という意味で使われているのも分かりにくい。日本なら≒だしアメリカなら~を使うのが標準的だろう。

They belong to the class of “pretty things” that are touted all over the Web but from a statistical graphics perspective, they are dull.

インフォグラフィックは見栄えこそいいが統計学的に見ると怪しいことは気に留めておく必要がある。

食べ過ぎ大国

March 19th, 2010

アメリカ人の肥満具合はよくネタにされるが、一体どのくらい食べているのか。データがあったのでちょっと覗いてみよう。

ERS/USDA Data – Food Availability (Per Capita) Data System

As with the basic food availability data, the Loss-Adjusted Food Availability Data series does not measure actual consumption or the quantities ingested.

農務省のEconomic Research Serviceから公表されている情報だ。普通の栄養学的な情報とちょっと違うのは、このデータは実際の食事に関するデータに全く基づいていないところだ。

They are calculated by adding total annual production, imports, and beginning stocks of a particular commodity and then subtracting exports, ending stocks, and nonfood uses.

このデータは食糧の生産量・輸入量・期首の在庫から輸出量・期末の在庫・非食用利用を引いて計算されている。そこから実際に消費者の口に入るまでに生じるロスを推定して一人当たりの摂取カロリーを作るわけだ。そのため地域別データもないし、男女別の数字すらない(よって例えば南部の州の男性だけ取り出せばこれよりも遥かに多い数字になるはずだ)。

そこから七種類の分類別にカロリー摂取量の推移をグラフにしたものが上だ。最新の2008年で平均摂取カロリーは2,674Kcalとなっている。これは2002年のピーク時における2730Kcalよりは低いが、四十年前に比べると30%の増加だ。推定ロス率を掛ける前の消費量は約3,900Kcalとなっている。

国会図書館のページによると、日本の平均消費カロリーは厚生労働省調べで1,891Kcalとされていてアメリカよりも1,000Kcal近く少ない。

『World health databook 2007/2008』の「Japan: Nutrition and obesity 1999-2006」のデータソースは“Source: WHO/OECD/Euromonitor International”となっていますが、食い違いの原因は不明です。

ちなみに上記ページではWHOによる日本の摂取カロリー2875.3Kcalと厚生労働省の数字との食い違いが指摘されているが、これはロスを計算に入れているかどうかの違いだろう。おそらくWHOの数字は単純な食糧消費(経済から消えた食糧量)から計算しているのに対して、厚生労働省の数字は実際に口に入れたカロリー量を計算していると思われる。