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新規店舗とレビューサイト

食べログの悪いレビューが新規開業店舗を潰してしまうというエントリー:

食べログが、レストランを潰す – Feel Like A Fallinstar

新規店舗はレビューも少ないので悪意のあるレビューワー(例えば競合店)によって悪いレビューがつけられると困るという話。もちろん、ユーザーもそういったレビューが存在すること自体は理解しているが、「火のないところに煙は立たぬ」的な論理で客が遠のくのは想像に難くない。

しかしこういったレビューサイトもレビューが有用でなければ成立しないわけでただ手をこまねいているわけではない

食べログのレビューを見てみれば、ユーザーには過去のレビュー数、レビューには参考票の数が表示されている。後者は新規店舗では期待できないが、前者のレビュー数はそのレビューワーが真面目にレビューしているかを知る手がかりになる。他にもお店全体の点を表示する際にこういった数字を考慮して計算したり、レビューが極端に少ない間は総合点を表示せずにレビュー絶賛募集中などと表示するのもよいだろう。

アメリカを中心に同じようなサービスを提供するYelpでは、レビュー点数の分布や推移を明らかにしている

こちらは比較的新しくレビューの少ないお店だ。星一つと二つのレビューが一つずつあって一時期平均点が急に落ち込んだのが分かる。

ただこのようなレビュー精度を高めようという企業努力も市場に競争がなければ期待できない。食べログが独走するのではなく、それに対抗するサービスの登場が期待される。

Amazonのユーザー参加

食べログが(悪い意味で)話題になったが、ユーザー参加型のサービス自体はこれからも伸びる一方だ。

What Motivates Amazons Hardcore Raters?

ユーザーレビューといえば老舗とも言えるのがAmazonだ。Amazonでは当初からユーザーが書評をアップロードする仕組みができている。この記事ではそのAmazonで大量のレビューを公開しているユーザーのプロフィールやモチベーションを紹介している。

And that explains why Amazon’s reviewer system is so successful. It’s built entirely on the back of the everyman. Cholette might call herself a fitness enthusiast, but she still spends most of her hours doing things the average Amazon shopper can relate to: working, commuting, being with family.

こういったレビューがAmazonにとって極めて重要であるのは明らかだ。一般読者による感想は、Amazonにとって費用がかからないと同時に、他のユーザーから見て分かりやすい視点で書かれている。

Under the new ranking system, Cholette places fourth because 93 percent of her comments have been chosen as helpful by readers. She also has more than 240 fan voters, or customers who frequently return to see what she has to say.

ランキングやファンといったシステムはレビューの書き手にやる気を与えるだけでなく、一般ユーザーが価値あるレビューワーを見つけるのを容易にする。役に立つレビューを見たいのなら、ランクが高いレビューワーを見ていったり、気になるユーザーがファンになっているレビューワーを探したりすればいいわけだ。

Publishers recognize the value in this system. Klausner, Grossman wrote back in 2006, receives an average of 50 free titles every week from publishers hoping to get her attention — and her review.

もちろんこのビジビリティーは何も一般ユーザーに対するものだけではない。レビューしてくれる人を探している出版社にとっても有用だ。Amazonのレビューワーランクで上位にくれば多くの出版社が評価コピーを送ってくる。

Artist representative and gallery owner Grady Harp, another twelve-year Amazon veteran, also receives galleys from new writers looking for an opinion on their work.

新人作家が意見を求めてくることもあるそうだ。

Harriet Klausner may not be a self-promotion robot for publishers, but it seems they are benefiting from the system. Send book to Beth Cholette, get review, sell more books. It’s a win-win-win, for publisher, for user and even for Cholette.

レビューワーは本をもらったり、仕事につなげたりできるし、出版社はレビューを書いてもらい本を売ることができる。ユーザーもそのレビューを参考にすることができる。こういった関係を作り出すことで、小売店たるAmazonは大きな価値を創造している。レビューはストックなので長年続けることで新規参入者にはない競争上のメリットになっている。

どうやって参加者全員に価値を提供し、コミュニティを創り上げていくのかを考えることは、「消費者」が情報発信能力を持つ(ないしこの場合持たせることができる)時代に重要なこととなっている

食べログの収益化

飲食店のレビューサイトである食べログがiPhone用アプリの課金を始めたそうだが評判はあまり良くない。

カカクコム、初の利用者向け有料サービス 「食べログ」で

検索した飲食店を、評価点数やアクセス数などで自由に並べ替えられる機能を加える。料金は月額315円。

まあ、iPhoneユーザーはブラウザでもアクセスできるし、アプリにだけ課金してもあまり害はない。しかし、こういったサービスはいかに利用者を増やすかが鍵だ。しかも、iPhoneから専用アプリを使ってまでアクセスしたいユーザーはレビューを書くようなコアユーザーである可能性が高くそこに課金するのは賢明とは思えない(アプリを使ってレビューしたら料金免除というのもありだが)。

逆にこういったユーザー層をいかに優遇するかがポイントだ。例えば同種のサービスをアメリカで展開するYelpはYelp Elite Eventというものを開催している。これは一定の条件を満たす貢献度の高いユーザーをエリートと認定し、お得な(しばしば無料の)イベントに招待するというプログラムだ。これにより、開催地となった飲食店では大きなPRが行えると同時にたくさんのレビューがYelpに追加される。コアユーザーの満足度も上がるし、エリートになろうとさらにレビューを書くユーザーもいるだろう。同時に参加者同士の交流の場ともなる。もともとレビュワー同士のつながりがレビューを投稿する理由の一つであり、直接コアなユーザー同士をマッチさせるのはいい戦略だ。

ではどこに課金すべきか。食べログの飲食店向けのページに現在の課金メニューが載っている。

  1. お店ページの強化
  2. 広告スペース
  3. 検索順位優先
  4. 特集
  5. 食べログチケット(グルーポン式)

どれも非常に妥当な課金方法だろう。さらに付け加えるとすれば、次のようなものが考えられる。

  • 客のコメントにリプライを付ける回数に課金
  • お店ページのページで競合店をサジェストしない
  • 競合店のページへのアクセス状況を含めたより広範な解析情報の提供

またグルーポン式のマネタイゼーションに関してはレビューサイトならではのやり方も可能だろう。

  • クーポンの販売対象を一定以上の貢献者(やその紹介)に限る:他の消費者の行動に大きな影響力を持つユーザーに限ることでお店にとってより有効なPRになる。食べログにとってもレビューの投稿を促す仕組みになる。
  • 割引ではなく、特別メニューを提供する:例えば、全メニューを摘み食いできるような特別コースを用意する。これによってレビューの数を効果的に増やせる。それなりの価格でも参加希望者は集まるだろうから客単価も下がりにくい。食べログはその日の利益を貰うないし折半すればよい。

レビューサイトのように二種類(以上)の顧客が存在するマーケットではどちらにどのように課金するかが重要だ。