中国の発展と政治

ノーベル平和賞でまた中国の政治的問題が浮かび上がる一方で、中国の発展は続いている。この経済と政治との乖離をどう説明するべきか。面白いグラフが紹介されている:

William Easterly Is Shrill!

中国の経済成長に関して独裁的な体制がプラスに働いているという人は多い。確かに、あれだけの大きさの国が秩序を維持しているのは強権的な体制によるものだろうが、経済成長自体から独裁制を擁護するのは難しい。

これは紀元後のアメリカと中国の一人当たり精算を表したグラフだ(元データはこちら)。1800年当たりからアメリカが爆発的な成長を始める一方で、中国は1500年ぐらいのレベルで停滞している。

こちらは1900年から1970年までの推移だが、相変わらず中国は停滞し続けている。

そして最期がここ四十年のグラフだ。中国が遂に経済成長を見せている一方で、絶対的水準は依然として低いままだ。これらのグラフから分かるのは、中国の経済成長について驚くべきは最近の成長ではなく、五百年にも及ぶ停滞ということだろう。

中国の翻訳サイト

コラボレーションに基づく中国の翻訳サイトが紹介されている。

The Wikipedia of news translation: Yeeyan.org’s volunteer community

Aside from reading stories, users can perform two basic actions: recommend a story or a URL for translation, or translate a recommended story.

Yeeyan.orgは英語のサイトを中国語に翻訳して公開するサイトだ。読者は訳して欲しいページを送ったり、逆にそういったページを翻訳することができる。

The site’s design encourages participation in a number of different ways. The front page prominently displays a staff-curated selection of recommended but as-yet-untranslated articles.

もちろん翻訳者を集める方が難しいので、そのために一通りの工夫がしてある。ユーザーごとに翻訳したストーリーのリストやコメントの数、バッジを表示するなど、大抵のフォーラムにあるサイトへの貢献を促す仕組みを備えている。

Beginning translators tend to produce rough texts and make many mistakes, says Kitty, but “it is cruel if we don’t even provide a chance.”

さらに、翻訳の質にはこだわっていない。厳しい管理をすると翻訳を始めようとするひとを遠ざけてしまう。これはQ&Aベースのフォーラムなどで重要な視点で、初心者を上手く取り込むための試みだ。フォーラムであれば初心者向けの専用ページを作るのもその一つだ。

Under international law, permission from the copyright holder is generally required to create or publish a translation. By publishing user-supplied translations of arbitrary news material, Yeeyan creates a public good in a legally dubious fashion.

しかし、勝手に翻訳を公開するのは、翻訳権の侵害である。これは日本でも英語サイトを全訳する場合に問題となる(例えばこのブログでは全訳は避け、常に自分の意見が主になるように心がけている)。

Even so, Yeeyan is actively seeking agreements with copyright holders to create and publish translations of their work.

そのため、Yeeyanは著作権者に対して翻訳を作成・公開する合意を取り付けるべく努力していて、既に有名サイトであるReadWriteWebの中国版を公開している。

But there’s money to be made offline if you have access to a huge pool of translation talent, and connections to publishers on both sides of the language divide.

Yeeyan自身は著作権の問題もありあまり広告収入を上げていないが、翻訳家のプラットフォームとして機能することで収益をあげているようだ。翻訳で稼ぎたい人が集まりYeeyan上でニュースなどを翻訳、そこで認知され、実際の仕事を受注する。仕事を手に入れる評判作りとスキルアップのために、公共財を提供するというのは(仕事につながらない)Wikipediaよりもオープンソース開発に近いだろう。

中国の大気汚染と情報集約

中国の環境(大気)汚染についてthe Atlanticから:

The Atlantic Online | November 2009 | How I Survived China | James Fallows

著者のジャーナリストJame Fallowsが中国滞在注に体調を崩したのをきっかけに大気汚染の問題について論じている。

The health situation for ordinary Chinese people is obviously no joke. After stalling, the Chinese government recently accepted a World Bank estimate that some 750,000 of its people die prematurely each year just from air pollution. Alarming upsurges in birth defects and cancer rates are reported even in the state-controlled press.

中国の健康問題は実際深刻である。ここでは世銀による推計として年間75万人が大気汚染が原因でなくなっていると指摘されている。奇形やガンも激増しているが国有のメディアはそれを報道しないそうだ。

The Chinese government does not report, and may not even measure, what other countries consider the most dangerous form of air pollution: PM2.5, the smallest particulate matter, tiny enough to work its way deep into the alveoli. Instead, Chinese reports cover only the grosser PM10 particulates, which are less dangerous but more unsightly, because they make the air dark and turn your handkerchief black if you blow your nose. (Spitting on the street: routine in China. Blowing your nose into a handkerchief: something no cultured person would do.)

環境問題は報道されないだけではなく、そもそも測定すらされていない。大気汚染の指標である浮遊粒子状物質の量のうちPM2.5がそれだ。PM2.5は直径2.5μm以下の粒子のことで健康被害が大きいとされている。測定されているのは目に見えるPM10だけだ。非公式な数値がアメリカ政府(大使館)から提供されているが、そのレベルは非常に危険なものとなっている。

この事例は民主主義の情報を集める(aggregate)機能を示している。共産主義におけるメディア規制はよく問題になるが、影響はそこに止まらない情報の流通・利用が妨げられるということはそもそも情報を集めようというインセンティブをなくなるということだ。この例では中国政府は自分に都合の悪い情報、PM2.5、の流通を阻止しているが、そのために政府にとって他の有用な情報が入ってこないこともありうる。政府が自ら必要な情報を秘密裏に集めようというのは非効率どころか不可能だ。

逆にテクノロジーはこの情報収集機能を強化している。一つの例はウェブでありTwitterだろうが、CitySourcedなど新しい取り組みもある。政府と国民の情報の非対称を解決することは社会にとって大きなプラスを生み出す

People seem to feel alive.” That made sense when I heard it—in China I had felt terrible, but alive—and makes me say that foreigners who want to go should not be deterred. They could even work on the environmental problems affecting the billion-plus permanent residents.

このような大気汚染にも関わらず中国は活気づいており、尋ねる価値はある、それどころか外国人が環境問題に取り組むことができると締めている。

しかしこの結論はあまりに楽観的過ぎるように思う。現地の人々が環境問題に気付いていないわけではない。気付いているがそれがビジネスにならないと知っているだけだろう。