また内部留保を雇用に回せという言説が話題になっている(参考:「株主至上主義って?」)。
Togetter – 「城繁幸氏、池田信夫氏ら、元経済記者三宅雪子女史の「経済音痴ぶり」を聞いて、あきれる」
継続審議になっている派遣法。まさに、小泉構造改革のときに規制緩和などで、派遣社員が大幅に増えました。私は内部留保がある会社が派遣切りをするのが許せません。菅さんが、もっと財界にパイプを持ち、圧力をかけるべきだと思います。
民主党の三宅雪子議員のツイートが発端だ。派遣切りと規制緩和や企業の業績との関係以前に、「内部留保」という概念が理解されていないのが批判が集まった原因だ。ご本人はそういう指摘に対して完全否定の姿勢だが分かっていないのは明らかだろう(例えば、会計が分かっていないという指摘に対して、「多額に、という意味です」と答えているが、分かっていないことが一段と強調されただけだ)。
詳しくは会計の専門家に任せるとして、ポイントは内部留保が資本=BS(貸借対照表)の右側だということだ。BSの右側は基本的にお金ないし資産がどこから入ってきたかをメモっておく場所であって、企業がお金持ち(=資産が多い)であることを示すわけでもお金儲け(=利益が多い)をしていることを示すわけでもない。内部留保が多い企業は資産や利益が多い傾向があるとしてもそれは間接的な関係に留まる。資産が多いかどうかはBSの左側を見れば分かるし、利益が多いかはPL(損益計算書)を見れば分かる。
一般家庭で考えれば分かりやすい。サラリーマンにとっての利益とは給料だ(生活費は経費かという難しい話はおいておく)。入ってきたお金のうち使われなかった部分は家計に残り貯蓄となり、その積み重ねが資産だ。貯金する額が多い家計は給料が多かったり、既に貯めた金額も多いかもしれないがそうとは限らない。単に倹約家なだけかもしれないし、子どもの将来の教育費用を積み立てているのかもしれない。
内部留保が多いから負担をしろという考えは、こういった人々も十把一絡げに金持ちなんだからもっと税金払えといっているようなものだ。金持ちかどうかを知りたければ保有資産や年収で判断するのが自然だし、インセンティブを歪めない。先の例で言えば、教育費用を先に貯蓄すると貯金額(≒内部留保)は増えるが、教育ローンを組んで後で返済すれば貯金にはならない(負債が増え、支払利子という費用が発生する)。後者を前者よりも優遇する理由はない。
議員は経済部記者だったとのことだが、こんな話は利益処分の仕訳を切ったことがあれば分かることだろう。
長い説明が必要だからですよ。はい、終了 RT @A_xtu: 経済の話がツイート向きでないのはなぜか。国民を愚民扱いするのか RT @miyake_yukiko35: えー内部留保は私の言葉足らずですみません。経済の話はツイート向きではないのでこれにて終了にしましょう(^.^)。
上のまとめにある批判の数を考えると素晴らしいスルー力だが国会議員の姿勢としては如何なものだろうか。