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オンラインニュースの心理学(1)

スタンフォード、Persuasive Technology LabB. J. Higgsのインタービュー記事。お題は「オンラインニュースは如何に収益をあげるか」。

What a Persuasive-Technology Psychologist Can Tell Us About Paying for News Online

筆者はニュースサイトを(アクセス権限と課金の関係に基づき)三つに分類する:

  1. アクセスを全般的に制限し、全ユーザーに支払いを求める。
  2. 一部のコンテンツへのアクセスに対し課金する。広告も利用。
  3. アクセス制限は行わずに、寄付を元に運営する。

その上で三つめの寄付モデルが推奨される。理由としては次の四つが挙げられている:

  1. オンラインでのニュースは今まで無料であったため、ユーザーに支払い意志がない。
  2. 有料のサイトが増えると、サイト運営者にはコンテンツを無料にしてユーザーを奪うインセンティブが生じる。
  3. 大抵のユーザーは質が多少低くても無料のニュースを選ぶ。
  4. 特に若い層にその傾向が強く長期的な見込みがない。

しかし、これらの理由はかなりお粗末だ。支払い意志がなくとも必要なものは買わざるをえないし、質に差がありさえすれば二つめ・三つめの根拠は当たらない。また若い人の支払意志額が低いのは何についても同じである。むしろ、重要な問題は

  1. ニュースに関する法的保護は弱く、コンテンツを差別化するのは困難である。
  2. ニュースは消費するまで価値が分からない経験財であり、余程ブランドが確立していない限りアクセスを制限して売るのは困難である。
  3. ニュースの価値は消費者によって大きくことなるのでバンドリングなどを用いなければ差別化ができても十分な収益が得られない。
  4. そもそも多くのニュース記事はAPのようなニュースエージェンシーによって配信されていて差別化されていない。

ということだろう。一つ目はHot Newsの著作権保護が該当する。事実としてのニュースは一般的に著作権の保護対象ではないが、一部はHot News Doctrineで保護される。近年APがこれを根拠にニュースアグリゲーターを訴えている(e.g. AP vs All Headline News)。しかし、APのような大組織でなければこのような方策はとれないし、1918年のHot Newsが現代何を意味するのかは明らかではない。

二つ目は書籍などにも共通する。伝統的な対処法は評判を確立することである。WSJやEconomistのような出版物はすでにその価値が一般に理解されているためコンテンツをアクセスして課金することができる。また記事の内容も専門化されており、ユーザーも均質的だ(次の点に関連する)。

三つ目は一つ目と関連している。ニュースの配信が物理的な流通に縛られなくなったことにより、ニュースを纏めて売るというモデルは維持するのが困難である。スポーツ好きなユーザーはスポーツ記事だけを選んで読み相場情報は読まない。すると個々のニュースに対する需要は非常に弾力性が高くなり、たとえ独占的に供給されたとしてもたいした利益が上がらない。記事の選り好みが困難な紙媒体であればいろんな記事を混ぜることで、新聞全体への支払い意志をかなり均一にできる。この場合にはかなりの利潤を得ることができるのは明らかだろう。デジタル配信はこれを極めて困難にした。

四つ目の問題はそもそも問題なのかが定かではない。新聞各社は現在デスクの人数を減らしてコストを圧縮しているが、そもそもニュースが事実であるなら誰が見つけても同じなのでなるべく共有するというのは経営上も社会的にも妥当である。但し二つほど懸案がある。一つは、競争政策上の問題である。ニュースの仕入先が統合されていくことで価格が上がる恐れがある。これは、通常の競争政策として、効率性の向上と比べて判断されるべきである(Rule of Reason)。二つ目は民主主義との関係だ。ニュースソースが集中していくことは政府による言論の抑圧を容易なものにする。ニュースに関しては避けて通れない問題である。

次回は記事中で挙げられている、寄付をもとにしたいくつかのビジネスモデルについて考える。

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