ネットワーク中立性vs価格差別

ネットワーク中立性がない世界ならISPのプランはどうなるかという思考実験がPacket Lifeから:

Why network neutrality is a big deal – Packet Life

without_net_neutrality

この図は、ネットワーク中立性の議論がミクロ経済学の教科書にある第二種価格差別(second-degree price discrimination)を規制すべきか否かという問題であることを示している。

例えば、二種類の潜在的顧客がいるとする。顧客Aはインターネットでショッピングをしたいのに対し、顧客Bはショッピングするつもりはないとしよう。Aは$40払うつもりがあり、Bは$20しか払うつもりがない。Bの顧客の割合がAにくらべ極端に少なくない限り、全員に$20課金するのが最も大きな利益になる。

ネット上でのショッピングには暗号化通信が必要だ。ISPは例えばこのことを利用して二種類の顧客に別々の料金を支払わせる(第二種価格差別)ことができる。誰がAで誰がBかを知っている必要はない。単に暗号化プロトコル(https)をブロックするプランを$20、ブロックしないプロトコルを$40で提供すればよい。Aは後者を選択肢、Bは前者を選択するためISPは利益を劇的に増やすことができる。

しかしこの様なことは実際には起こっていない。なぜならこの様な価格差別はISP間で競争が存在する場合には導入するのが困難だからだ。上の例でいえば競争相手はAに$40よりも安い価格を提供すればよい。競争の度合いにもよるが日本のようにISP間の競争が激しい場合にはまず無理だろう。これがネットワーク中立性問題がアメリカでだけ取り沙汰される理由である。

だがネットワーク中立性が必ずしも望ましいわけでないことには注意が必要だ。例えばある街ではAとBがともに1000人存在するとしよう。この街全体ではインターネットに対して最大[latex]\$ 40 \times 1000 + \$ 20 \times 1000=\$ 60,000[/latex]支払ってもよい=それだけの価値を認めていることになる。しかしネットワーク中立性が義務付けられていた場合、ISPの最大収入は[latex]\$ 20\times 2000=\$ 40,000[/latex]にしかならず、接続を提供するための費用が$40,000を越えているが$60,000を下回っている場合には社会的に望ましい投資が行われないことになる。

もちろんISPにとっては価格差別が行えることはプラスなので、常に上記のような問題が存在すると主張するだろうからどちらが望ましいかについての判断は慎重に行わなければならない。判断に必要な費用についての情報をISP側が持っていることにも注意する必要がある。

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