最近、企業がもっと従業員に利益を分配しろという意見が多い。しかし、重要なのはどのような資源配分が最も効率的かだ。
トヨタもキヤノンも内部留保を使うが雇用には使えない? -10年で2倍増の内部留保こそ“埋蔵金”
企業の内部留保が2倍以上になった1998年から2008年の10年間で、労働者の非正規化が進み、ワーキングプアが3人に1人に激増し、労働者の給与は35万円も減ったということです。
内部留保が倍増する中で労働者の取り分が減ったということから次のような疑問が提示されている。
普通に考えて、いくらなんでも内部留保が10年前の2倍以上というのは溜め込み過ぎでしょう。少しは労働者や社会に還元してもいいのではないでしょうか。
「普通に考えて」と言えば、考えなくてもいいわけではない。企業は従業員に給与を払っているし、利益を上げる過程で社会に便益をもたらしている。「少しは」が何を意味しているのかよく分からない。たくさんあるんだから少しよこせという話ではない。
日本経団連は、「内部留保は生産設備などに使われており、現金に換えることはほとんど不可能」などといって、雇用にも賃上げにも使えないと主張し続けています。
当たり前だが内部留保と現金は違う。内部留保は会計上の利益が配当されずに留保されたものだ。企業会計は現金主義ではないので、利益の発生と流動性資産の発生とは一致しない(そもそもそれを分離するのが目的だ)。当然、内部留保は支払原資の存在を意味しない。もちろん、不存在も意味しないがそれなら保有している流動性の高い資産の存在を問題にすべきで、内部留保を槍玉に上げるのは焦点がずれている。まあこの辺は会計畑の人に任せたい。
しかし、素朴に考えて、10年前の2倍以上にもなっている内部留保を使えないというのはおかしな話です。
「普通に考えて」を「素朴に考えて」に変えて同じことを提案してもだめだ。
トヨタは、2009年3月に、13兆9,322億円あった内部留保を取り崩して、株主配当3,135億円を払っています。
キヤノンは、2009年12月に、3兆9,436億円あった内部留保を42億円取り崩して、株主配当の一部に使っています。
確かに膨大な内部留保から配当が行われている。この数字を見て私が素朴に考えると、もっと株主配当をすべきだと感じる。
内部留保は、株主配当には使えるが、雇用・賃上げには使えないという決まりでもあるのでしょうか?
企業が人件費を増やせば利益が減るので内部留保は減っていくだろう。それを内部留保を「使う」というのであればそれは可能だ。
本題に移ろう。企業が実際に多額の資金を溜め込んでいるとしよう。確かにそれは問題だ。事業を営むことが目的の営利企業が必要以上に資産を持っているのは、資源が有効に活用されていないことを意味するからだ。例えば経営者が個人的に企業を大きくしたいだけとか、自分を含めた従業員が不景気でも大丈夫なようにお金を貯め込むとかいろんな理由が考えられる。株主による経営者の監視は極めて不完全なので、こういったことが生じる。
では日本企業が不必要に資金を保有しているとしてこれをどう使うのが望ましいだろうか。もし企業の雇用・賃上げに使えば、不景気に関わらず利益を出している好調な企業にいる社員やそこで運良く採用された人は喜ぶだろう。しかし、それが社会全体からみて効率的な活用方法だとは思えない。労働者を助けるというなら、失業者や不調な企業の従業員が先だろう。
必要なことは逆に内部留保を株主配当で資本市場に戻すことだ。有効利用のできていない資金を生産性が高い、成長の見込みのある企業へと移すことで経済全体のパイを大きくすることができる。それにより新しい産業で雇用が生まれ、労働者にとってもプラスだ。資金の有効な使い道が分からない企業に人材を集めてもしょうがない。
>社会全体からみて効率的な活用方法だとは思えない。
基本的に内部留保をどう使うかは当該企業が決めればいいんです。
引用の人は労働組合の人だから「もっとカネ寄越せ」と主張するのは当然でしょう。給料は雇用者と被雇用者の力関係で決まるんだから。大きな声張り上げれば少しは給料増えるかもしれないからナンセンスじゃない。
それに対してあなたの言う社会全体から見て効率的に活用せよなんて、効率全体主義という一種のファシズムですよ。自由主義経済の否定だ。
>基本的に内部留保をどう使うかは当該企業が決めればいいんです。
それは現行制度を所与とした場合の話でしょう。
>引用の人は労働組合の人だから「もっとカネ寄越せ」と主張するのは当然でしょう。
しかしその主張が独善的なものであれば批判されて当然ではないでしょうか?
>大きな声張り上げれば少しは給料増えるかもしれないからナンセンスじゃない。
それなら、賄賂を受け取る公務員も見つかる可能性がなければナンセンスではありませんね。
>それに対してあなたの言う社会全体から見て効率的に活用せよなんて、効率全体主義という一種のファシズムですよ。
社会全体からみて効率的な仕組みを作ることにどう反論するのでしょうか。ファシズムというラベルを貼っても何も変わりません。
>自由主義経済の否定だ。
私は「自由主義経済」とやらを信奉しているわけではありません。株主による経営者の監視は費用がかかるので、自由にすればいいとは言えないはずです。
自由な経済制度はその結果によって支持されるのであって、自由であることそれ自体によって支持されるのであればそれこそ原理主義でしょう。
>逆に内部留保を株主配当で資本市場に戻すことだ。有効利用のできていない資金を生産性が高い、成長の見込みのある企業へと移すことで経済全体のパイを大きくすることができる
成長の見込み有る企業が国外だったら?
日本は衰退しろってことですかね?
自社が見込みある企業になり
雇用を増やし賃金を増やすことを目指すべきなのでないでしょうか?
>成長の見込み有る企業が国外だったら?
そこに投資することで、利益が日本に入ってきます。
>日本は衰退しろってことですかね?
投資水準の適正化は衰退を意味しません。既存企業の縮小も国の縮小を意味しません。
>自社が見込みある企業になり雇用を増やし賃金を増やすことを目指すべきなのでないでしょうか?
もちろん、自社の業績が上がれば、資本市場から資金をキープすることができるでしょうから特に矛盾しません。
逆に業績を上げなくても資金をプールできる状態では業績を改善するインセンティブが歪むのではないでしょうか。
すみません。純粋に質問です。MBAまで取ったのに、内容がよく分かりませんでした。What a shame…
さてさて。前半の企業の主張は、内部留保が生産設備に使われていて、現金化できないヨという理解でいいのでしょうか。巷間日本の生産設備の30%以上過剰だみたいなことが言われていますが、ということは、内部留保の1/3は無駄に使われているってことになりますよね。
後半の議論を「株主に還元する」という風にされているので、だったら流動資産として持っているわけ?というように読めてしまいます。
もし、流動資産がないなら、過剰設備を従業員に解放して、何か作ってもらえばいいんじゃないでしょうか。駄目なのかな。駄目なんだろーな。
さて、ここから先はつぶやきですけど。役員の在任期間が3年で、経営している会社の1/3の資産が「過剰」になっていたとして、あなたならどうします?
>後半の議論を「株主に還元する」という風にされているので、だったら流動資産として持っているわけ?というように読めてしまいます。
「企業が実際に多額の資金を溜め込んでいるとしよう」とあるように仮定です。内部留保は現金とは違うけれど、とりあえず(先方の主張通り)現金があるとしてそれでも労働者に回そうというアイデアは正当化しにくいのでは、ということです。
>もし、流動資産がないなら、過剰設備を従業員に解放して、何か作ってもらえばいいんじゃないでしょうか。駄目なのかな。駄目なんだろーな。
流動資産がないなら、従業員にまわせ云々は最初から当てはまりませんね。
過剰設備を使っていないのは使うよりも利益が多いからでしょうから(競争政策的な問題は例外として)企業の判断ではないでしょうか。
>さて、ここから先はつぶやきですけど。役員の在任期間が3年で、経営している会社の1/3の資産が「過剰」になっていたとして、あなたならどうします?
報酬のスキームと「過剰」の定義によりますね。
なるほどー。
ぶっちゃけて言いますと、主張したかったのは次のようなことです。
実は「資産」として持っていることになっているものを仕分けして行くと、もう使い物にならないガラクタばっかなんじゃないの?ということです。
故に、過剰設備を使っていないのは使うよりも利益が多いからではなく、すでに使い物にならなくなっているからのように思えます。そしてそれが外から見えなくなっているのでは?ということです。
もちろん、ここまでは全てアサンプションなのですが、IFRSが導入されると事情がもう少し明らかになると思います。資産がどうレベニューに結びつくかが問題になってくるからです。
そのときに、投資家に分配する資産が残ってるといいですね。(と、穏当にまとめてみる)
はじめまして。
エントリー拝読しました。教えてください。
「有効利用できていない資金」「生産性が高い」「成長の見込みのある企業」をそれぞれ具体的に判断するには、どういう指標で比較すればいいのでしょうか?
任天堂のように内部留保及び流動性資産(CASH)が潤沢で、比較的少ない投資で成長を続けている企業はどう解釈すればいいでしょう?
あと株主への還元策を配当のみに限定しているのはなぜでしょう?自己株式の取得でもいいのでは?
>「有効利用できていない資金」「生産性が高い」「成長の見込みのある企業」をそれぞれ具体的に判断するには、どういう指標で比較すればいいのでしょうか?
それは投資家が判断することです。資本市場の主な機能でしょう。
>任天堂のように内部留保及び流動性資産(CASH)が潤沢で、比較的少ない投資で成長を続けている企業はどう解釈すればいいでしょう?
彼らはコストの小さな内部留保を使って経営を行っていますね。成長しているのだから、それで株主も問題はないということです。
>あと株主への還元策を配当のみに限定しているのはなぜでしょう?自己株式の取得でもいいのでは?
いいと思います。
最後の一段落以外は賛成です。
とくに「労働者を助けるというなら、失業者や不調な企業の従業員が先だろう」というのはこういった主張をする人々は常に考慮すべきことだと思います。
ただ、
>必要なことは逆に内部留保を株主配当で資本市場に戻すことだ。
は必ずしも株主配当でなくとも良いのではないでしょうか。例えば従業員の給与として還元した場合でも、その従業員達の消費や貯蓄を通じて資金は資本市場に還元されます。どちらが良いかはマクロのモデル次第かと思います。
直接投資家に戻すより既存従業員に戻した方が良いという条件は何になるんでしょうね。失業者との公平性の問題、人材の問題もあるので余程のことがなければ投資家に直接戻すのが効率的に思えますが。
「資本市場への還元」だけを目的とするならば、投資家に戻し再投資させるよりも消費を通じて直接既存企業に資金を還元させる方が、投資家による非効率な投資の可能性が排除されるため一般に効果は高いのではないでしょうか。
「失業者との公平性の問題、人材の問題もある」はその通りかと思います。
企業が内部留保を雇用者に還元したら法人税が減るから、国家公務員はリストラしないといけないな っていったらどんな顔するだろうな(笑)
まぁ、労組がアホなのは分かるが、アカデミックな立場にいるならアホマジョリティでも納得する手段を考えたらどう?
PCが使えないやつをバカにするのと同じで、アホをアホと言うのは簡単。
もし、エンジニアだったら分かりやすい説明書を作ったり、アホでも使えるように努力するよ。
経済学者はアホマをアホと挑発だけして終わり。
アホマをなんとかしないことには、経済学に基づいた素晴らしい案も実行に移せないというのにさ。
>必要なことは逆に内部留保を株主配当で資本市場に戻すことだ。有効利用のできていない資金を生産性が高い、成長の見込みのある企業へと移すことで経済全体のパイを大きくすることができる。
デフォルトによる投資マインド、社会全体の信用力の低下による悪影響を織り込んでない、教科書を読んだだけの議論だな。
中小ならいざ知らず、大企業がデフォルトしても他企業のクレジットスプレッドや銀行の融資態度が変わらず、株価もジャンプしないと思ってるの?
第一、成長の見込みのある企業なんてどこにあるのか分かる?
目に見えないんだよ、これはいけると思って投資しても10社に1社くらいしか大当たりしないの。逆になんでこいつが!という企業が飛び出してくることもある。
成長の見込みのある企業というのは結果論なの。
だから成長するかしないか分からないヘンテコな企業に対するリスキーな投資が成長投資になるんやけど、そういう投資に対する資金流入というのは、「大企業が内部留保抱えているから減る」なんてものじゃないの。投資マインド、社会全体の信用力(アニマルスピリッツとか言ったっけ?)にめっちゃ敏感で何かあった時には真っ先に逃げちゃうの。それでも生き残る企業が強い成長企業なんだけど、あまりにも落ち込み方がひどいとそうもいかないわけ。
何が言いたいかというと、大企業はつぶれて世間に迷惑かけないようにバッファとして金持っとけ(純資産を厚くしとけ)ということ。配当はそこそこあれば良い。配当増やしても投資マインドの限界効用は小さいだろうし、それよか不況時の配当減によるマインド悪化の方が怖い。
使い道のない流動資産があったら、配当なんかで体力削るよりも、成長するかもしれない変ちくりんな企業を買い漁った方がずっと良い。
育て上げられるVCがない日本では特に。
大企業にとってはバッファにも若返り薬にもなるしね。
>企業が内部留保を雇用者に還元したら法人税が減るから、国家公務員はリストラしないといけないな っていったらどんな顔するだろうな(笑)
内部留保は既に法人税を払っているのでは。配当になればそれに(良いか悪いかは別として)課税されますし。
>アホマをなんとかしないことには、経済学に基づいた素晴らしい案も実行に移せないというのにさ。
おかしな考えを批判することはその第一歩でしょう。
>第一、成長の見込みのある企業なんてどこにあるのか分かる?
分からないから投資家にまかせるのでしょう。分かるなら政府が投資すればいい話です。
>何が言いたいかというと、大企業はつぶれて世間に迷惑かけないようにバッファとして金持っとけ(純資産を厚くしとけ)ということ。
それが現状ですね。ただ既存企業が潰れないことはいいことだとは限りません。
>配当増やしても投資マインドの限界効用は小さいだろうし、それよか不況時の配当減によるマインド悪化の方が怖い。
マインド云々は何を言っているのか分かりません。
批判コメントされてる方へ
内部留保=現金・預金ではありません、トヨタやキャノンだったら建物・設備だったりするので、これを削ったら雇用の場が無くなると思うのですけど。機械をもらっても邪魔なだけでしょ。
しかも最先端の会社は競争のため研究開発にも資金が必要ですので、キャッシュは意外と少ないんですよ。
元記事が国家公務員一般労働組合か、彼らは勝手にお金が入ってくるとでも思っているのでしょうね。やっぱ「会計原理」より「簿記3級」です(笑)
>やっぱ「会計原理」より「簿記3級」です(笑)
簿記は重要ですよね。つまらないですが。
一企業だけが内部留保を取り崩して賃上げに使った場合は経済全体の底上げにはなりませんが、すべての企業が同時に内部留保を取り崩して賃上げすれば、40兆円あると言われるデフレギャップで苦しむ日本経済にとってプラスになりうる可能性はあるのではないでしょうか?
全ての企業に潤沢な内部留保があるわけではありませんし、既存ルールをねじ曲げて強制的に賃上げに使えというのは弊害の方が大きいと思います。
こういうのは「可哀想な労働者の賃金を上げろ」という自然な感情を
逆撫でするものなので、理解されない経済学の典型です。
そもそもバッファである留保を削って労働者に分配していたら、
留保が無くなったとたん企業が倒産してしまうのは
僕のような素人でも解る。
労働者、経営者、株主の三者の内、
最も大きなリスクを取っているのは当然株主なのですから、
利潤の取り分が最大になるのは当然の帰結です。
>最も大きなリスクを取っているのは当然株主なのですから、
利潤の取り分が最大になるのは当然の帰結です。
そこまでいかなくても、現行ルールからしてそうですよね。そして内部留保が莫大ということはそれが行われていないということでもあります。
大企業が搾取している、小泉のせいで格差が拡がった(実際は縮小)などなど。
政府とマスコミで敵作りしてますが、中国共産党の反日教育みたいで気持ち悪いですね。
そんな誤魔化している余裕は日本にないと思うんですが。
>大企業が搾取している、小泉のせいで格差が拡がった(実際は縮小)などなど。
この搾取という言葉はゼロサム前提という感じでよくないですね。そんな話より成長戦略をというところですが、それも政府が出すとおかしなことになってます。
過去10年間に日本企業の内部留保が大きく増えたことは、私が一番気になっている経済問題の一つです。内部留保が現金でなかったとしても、今までは半分借金(日本企業の負債/資産比率は確か50%前後)して設備投資をしていたものを100%自己資金で賄うようになったらお金を溜め込んでいるのと同じでしょう。
大きな理由として私が考えつくのは、(1) サラリーマン経営者と出資者の間で利益相反が起こっている、(2)デフレ下で企業の内部留保に対するインセンティブが増加している、(3) 成長率の低下で正社員を雇用し続けるリスクに対するバッファが必要になった、(4) 配当税制と法人税制が二重課税になっていることで余剰資金が成長産業に還元されない、といった点です。
(1)に対しては年金基金などが保有する株主の権利を行使し、(2)は金融緩和を行い、(3)に対しては雇用を流動化し、(4)に対しては配当課税を引き下げることで、対応してはどうかと思います。
近年、総合商社の業績が好調なのは、(天然資源関係の利権が大きいことは事実ですが)、成長産業への投資が適切に行われたという面が大きいと思います。そのあたりを研究して他の企業も見習っていくというのも良いかも知れません。
補足です。ちなみに内部留保は少なすぎると企業が倒産しやすくなりノウハウの蓄積にマイナスですが、多すぎるのも事業の構造転換を進むのを遅延させてしまうので問題ですね。
どの理由も妥当ですね。特に(4)はさっさと改善できる話ですから何とかしてもらいたいです。日本だと(1)も深刻そうです。それにしても全ての点において逆行するような政策が実行されようとしているのは困ったものです。
>近年、総合商社の業績が好調なのは、(天然資源関係の利権が大きいことは事実ですが)、成長産業への投資が適切に行われたという面が大きいと思います。
さすが目が利くといったところでしょうか。私は、既存企業の新規分野への投資能力には期待していないうので、通常は投資家に戻すのが効率的と思いますが。
>搾取という言葉はゼロサム前提という感じでよくないですね
言葉の印象だけだとそう感じるかもしれませんが、搾取=ゼロサムゲームとは限りません。別にパレート最適と両立する概念です。例えば何らかので、Aさんが1万円得をして、Bさんが1億円得をしたら誰も損をしないですが、格差は広がってます。
普通にはそんな取引は起きないでしょう。その例はゼロサムでパレート最適ではありませんし。
企業で財務部に所属してます。
Willyさんから色々意見が出てますが、ここ10年で内部留保が増えた一番の理由は、懐かしいですが、「M&Aブーム」という言葉が会社役員に与えた心理的影響でしょうね。
敵対的買収への対抗策という名目で内部留保が進みましたし、(健全な経営をする上では)ある程度の正当性はあったと思いますが、幾分保有できた現在では少しやりすぎ感があるため、
何かに使用すべきだというのは同意します。
ただ現実問題としては来年以降ですね。ちょっと時期外れの感があります。
来年には、退職給付部分に国際会計基準の適用されてこれまで簿外債務だった未認識の退職給付債務が一度に債務化します。
(JALで大騒ぎになったあれです。)
大企業では単体で数千億単位の債務が新規発生しますし、関連会社を含めたらその額は倍増します。
またその影響で株価が低下し評価損を発生するから、健全に企業経営するために、労働者分配も投資家分配も無理で内部留保はそれまでは確保しておきたいのが企業で財務をしている立場からすれば本音だと思います。
もちろん短期投資家の視点からならば、「債務化の前に配当せよ。」はありだと思いますが。
間接金融が銀行の融資ではなく、国債購入スタンスで従来のように信用創造できてないことを
踏まえると、実施するかはさておき、全体からみた場合直接金融や投資家に回すのも一理あると感じました。
>ここ10年で内部留保が増えた一番の理由は、懐かしいですが、「M&Aブーム」という言葉が会社役員に与えた心理的影響でしょうね。
こんな理由で内部留保が増やせてしまうというのはいかに株主のモニタリングがうまくいっていないかという話でもありますね。
>健全に企業経営するために、労働者分配も投資家分配も無理で内部留保はそれまでは確保しておきたいのが企業で財務をしている立場からすれば本音だと思います。
おっしゃる状況ではその通りだと思います。配当すべきというのは、仮に過剰な流動資産があると仮定した場合の話で、そもそも流動資産の寮が適切であるなら配当する必要もないと思います。
>間接金融が銀行の融資ではなく、国債購入スタンスで従来のように信用創造できてない
間接金融のチャンネルが機能していないことを考えれば、他の方法をもう少し活用しようという方向になるはずだと思うんですが、なかなか現実には難しいようです。
ianさん、横レス失礼します。
>敵対的買収への対抗策という名目で内部留保が進みましたし、
ちょっと違和感を感じたのですが、企業内に流動資産が沢山あると、逆にLBOによる買収の標的にされやすいという危機感についてはどうなのでしょうか。
>退職給付部分に国際会計基準の適用されてこれまで簿外債務だった未認識の退職給付債務が一度に債務化
これは仰る通りだと思います。
>もし企業の雇用・賃上げに使えば、不景気に関わらず利益を出している好調な企業にいる社員やそこで運良く採用された人は喜ぶだろう。しかし、それが社会全体からみて効率的な活用方法だとは思えない。労働者を助けるというなら、失業者や不調な企業の従業員が先だろう。
どうして好調な企業の労働者の給料を上げることが社会的に見て
効率的でないのですか?
不調な企業の労働者より好調な企業の労働者の給料を上げるほうが
原理的に正しいと思いますが。
業績は好調な企業なのに不遇な待遇を受けている労働者と、
不調な企業ゆえに低い待遇を受けている労働者の区別をつけることはナンセンスです。
どちらも同じ労働者なのですから、どっちを優先すべきだというのは感情論にしか過ぎません。
それに社会的な冨のバランスを考えることは政治の仕事です。
どちらにせよ労働者の給料が上がれば社会全体の消費も増えます。
株式配当によって裕福な投資家たちが更に儲けても消費の増加は大して期待できません。
社会全体の消費の増加による経済の活性化を考えれば、
富裕層にお金を持ってもらうより労働者にお金を使ってもらったほうがいいでしょう。
何をもって社会的に効率的とするのか。
消費が増えないない限り日本の経済成長はありえないと思うんですが、
Rionさんは株式投資が活発になりさえすれば消費もそれに伴って増えていくとお考えですか?
>どうして好調な企業の労働者の給料を上げることが社会的に見て効率的でないのですか?
正確には過剰に資金を溜め込んでいる企業のことです。企業は給料を上げることがプラスならすでにしているでしょう。
>どっちを優先すべきだというのは感情論にしか過ぎません。
公平性の議論であればどちらを優先すべきかという話です。
>それに社会的な冨のバランスを考えることは政治の仕事です。
相対的に貧しい方を助けるのが正しいと思います。政治だから何も言わないのは民主主義ではないですよね。
>どちらにせよ労働者の給料が上がれば社会全体の消費も増えます。
それよりも資本市場での配分が効率的かと思いますが。
>株式配当によって裕福な投資家たちが更に儲けても消費の増加は大して期待できません。
投資家が裕福だと決めるのはどういうことでしょう。投資家は戻ってきた資金をさらに投資するでしょう。
>何をもって社会的に効率的とするのか。
余剰が大きくなることです。
>消費が増えないない限り日本の経済成長はありえないと思うんですが、
マクロの問題を混ぜて考えるのは避けた方がいいと思います。消費が必要なら政府が使ってもいいでしょうし。
>Rionさんは株式投資が活発になりさえすれば消費もそれに伴って増えていくとお考えですか?
資本が適切に分配することで需要のある新しいセクターにお金がまわり消費も増えるのでは?
こんにちは。面白い記事をいつも有難うございます。今回の内部留保の話も面白いですね。またコメントも参考なります。Willyさん、Ianさんのコメントが私には面白かったですね。
私は現在は海外在住ですが、日本でサラリーマンをしていた90年代から2000年半ばまでの感覚で言いますと内部留保が増えたのはバブル以降銀行の貸し渋りもあるかもしれません。例えば新規の投資案件があっても銀行がお金を貸してくれない。本来負債でまかないたい資金を内部留保を流用せざるを得ない状況と言うのはあったと思います。
あと、Willyさんの(1)にも関係しますが、日本のサラリーマン経営者の「無借金は良いことだ」の考え方があると思います。ある程度は負債を抱えることは会社の価値を上げる効果もあるという考え方よりは負債をなるべく減らす方向ばベターであるという考え方があるように思います。以前私の勤めていたいわゆる大企業の社長も「わが社は無借金経営のエクセレントカンパニーをめざしています」と明言していました。結果、資金の調達は内部留保に頼る傾向が出てくる。
まあ、全ての会社が上の動きが当てはまるわけでは無いと思いますし、あくまでも感覚的な話しで恐縮ですが、日本独特な動きの1つとしてあるかもしれません。
有意義なコメントをくださる方が多く感謝しております。企業の中からの情報ありがとうございます。
どうすべきかは企業によって違うと思いますが、公開会社であればそれは資本市場の規律によって選択されればいいのではないかと思います。
アメリカを持ち出して行き過ぎという主張が、これでいいのだという主張にすり変わっていることが多いと感じます。
>公平性の議論であればどちらを優先すべきか
それぞれの企業の労働者の待遇が同条件と仮定したら、今まで余剰を作ってきた会社の労働者の給料を上げるほうが労働者の観点からは公平でしょう。
誰にとっての公平を目指しているのかがはっきりしません。
>どちらにせよ労働者の給料が上がれば社会全体の消費も増えます。
それよりも資本市場での配分が効率的かと思いますが。
この論理の根拠がわかりません。どちらが効率的かわかるとでも?何か確信的なデータがあってのことでしょうか?
それともRionさんのTheoryに基づく独断的なものでしょうか?
もし根拠がないとするならば、Rionさんが労働者の賃上げ要求に反対するのも感情的、または独断的な根拠のないものだということになりませんか?
>投資家が裕福だと決めるのはどういうことでしょう。投資家は戻ってきた資金をさらに投資するでしょう。
余剰資金を蓄積してきた優良企業の株を配当目的で保有している、という時点でその投資家はある程度裕福であると考えられますが私の思い違いですかね。
もしくはそうした企業の株式を大量保有しているのは銀行などの機関投資家だと
思われますが、どのみちよりお金を持っている人により大きな配当が与えられる
という点は間違いないと思います。
そしてより余剰資産がある人ほど、消費性向は小さくなるはずです。
投資が増えれば消費も増えるのか、というのはまた別問題です。
>マクロの問題を混ぜて考えるのは避けた方がいいと思います。消費が必要なら政府が使ってもいいでしょうし。
政府による消費っていわゆる財政政策のことですか?そんなの不効率の極みだと思うんですが。本気でおっしゃってます?
マクロで考えるからこそ、労働者の待遇改善には意味があるんです。
>資本が適切に分配することで需要のある新しいセクターにお金がまわり消費も増えるのでは?
新しいセクターだろうがなんだろうが、結局最終的にお金を使うのは消費者です。現在の日本では活発な消費が行われてません。これは国全体に需要がないわけではなく、富裕層がお金を使わないからです。つまり富裕層の需要はほぼ満たされている。
そこで新しいセクターといっても、富裕層がどれだけお金を使ってくれるかあまり期待できません。
消費の底上げをしようと思ったら、消費性向の高い人たちにお金がまわるようにしてあげるのが一番効率がいいと思います。
つまり資源の最適配分のためにはは投資サイドの効率化ではなく、
消費サイドの効率化を目指すべきです。
余剰を生み出しているのが従業員の努力かどうかは分かりません。もしそうなら企業が必要な手当をするように思います。
資本市場を使ったほうがいいというのは、既にコメント欄でも指摘がありましたが、間接金融がうまく動いていないのではないかということがあります。
株式を保有しているのは個人だけではありません。お金を集めて投資を行っている場合にはそのお金の出所がお金持ちとは限りません。
>マクロで考えるからこそ、労働者の待遇改善には意味があるんです。
失業者が増えるだけのように思いますが。何かモデルがあるのであれば提示ください。
>新しいセクターだろうがなんだろうが、結局最終的にお金を使うのは消費者です。
企業も投資を行いますが。
>そこで新しいセクターといっても、富裕層がどれだけお金を使ってくれるかあまり期待できません。
富裕層とその他という二分論は生産的ではないと思います。
>消費の底上げをしようと思ったら、消費性向の高い人たちにお金がまわるようにしてあげるのが一番効率がいいと思います。
それなら企業の行動を歪めるよりも単純に所得再配分を行えばいいのでは。
>つまり資源の最適配分のためにはは投資サイドの効率化ではなく、
消費サイドの効率化を目指すべきです。
これは投資の効率化をしなくていい理由にはなりません。また、消費サイドが重要な理由は富裕層の限界消費性向の低さだけですか?
>もしそうなら企業が必要な手当をするように思います。
これが必ずしもそうでない場合があるので、労働者が不遇を感じれば当然賃上げを要求する権利はあります。実際の待遇がフェアかそうでないかは、完全に客観的には判断できません。人間の全ての発言は政治的なものですからね。
>間接金融がうまく動いていないのではないかということがあります。
現在銀行が格安の金利で資金を調達できるのに与信が拡大していかないということは、やはり需給ギャップがあるということだと思います。直接金融であろうが間接金融であろうが、供給側である投資資金を増やすことの効果に疑問を感じます。
これは需要があって供給が生まれるのか、供給がなされて需要が生まれるのか、鶏と卵の議論になりますが、私としましては、基本的には需要がなければ投資、融資は行われないと考えますので、どれだけ配当を上げて余剰資金を増やしたところで投資は増えません。(投資が行われる前提条件としてその市場において需要>供給でなければならない。)
もちろん短期的な採算を無視した投資によって生まれるイノベーションで新しい市場が開拓される場合もありますが、運の要素も強いので、私としては国民の大多数である労働者の消費増加による既存の需要の底上げをしたほうが需給ギャップの解消には役立つと思います。
企業に賃上げを強制するのではなく、経営に余裕のある企業が”自発的に”賃上げをしていくのが理想的です。もちろん人件費増加の分利益は減りますが、投資家たちが「デフレ脱却までは賃上げを優先してあげて」というくらいの態度を見せるのが理想的ですね。まあ理想論ですけど。実現は無理ですね。
>失業者が増えるだけのように思いますが。何かモデルがあるのであれば提示ください。
需給ギャップ解消により日本がデフレを脱却して再び経済成長を始めることを期待しているだけです。モデルなどは必要でなく、投資が行われる条件として需要の拡大が必要という直観的な意見です。
長々と失礼しました。
追加。
>単純に所得再配分を行えばいいのでは。
所得再配分といいますとやはり政府を通してという形になりますので、効率的な配分は期待できません。また当然個人資産には課税できませんから、現在の余剰資金はそのまま国債に流れ続けるでしょう。
私のポイントは余剰資金を金融市場ではなく、実際の生産物市場に回すということに尽きますから。
再度すみません。私の説明が下手なのかもしれません。
1万円と1億円は極端な数値例として挙げたまでです。
貧者の効用は一定のままで、富者の効用が増加するような取引はパレート改善になりますよね。
搾取をどう定義するかによりますが、パレート基準とは別の厚生概念として定義可能と言いたかっただけです。
一方の効用だけが増加するような取引でもパレート改善ですが、それを搾取と呼ぶのは語弊があるように思います。
>内部留保は既に法人税を払っているのでは。配当になればそれに(良いか悪いかは別として)課税されますし。
確かに剰余金は税金を払ったあとの金だから、配当する分にはなにもかからない。
でも、労組の要求通りに雇用や定期昇給の維持をする形で雇用者に還元したら人件費に計上され、税引前利益が減るでしょ。
一般労働者の実質的な所得税・住民税は法人税よりかなり低いから税収減るってことにならない?
>おかしな考えを批判することはその第一歩でしょう。
そういった批判を受け入れ、学習してくれると思うの?
反発され、左翼化を進めるだけでしょ。
>分からないから投資家にまかせるのでしょう。分かるなら政府が投資すればいい話です。
これはちょいとずれた話をしたなと思う。
ただ、よく分からんリスキーな投資へ流れる金額は大企業の配当の多寡には反応しないよ。
>それが現状ですね。ただ既存企業が潰れないことはいいことだとは限りません。
既存の企業は新興勢力の邪魔さえしなければ、適当にやってりゃいい。できることならちょいと育ててくれと思う。
トップ層の雇用が流動化してないから、既存企業に助けてもらいながら新興企業は能力アップしていくしかないのよ。
既存企業の潰れ方としては、徐々に新勢力にシェアを奪われるなどして、ゆっくり衰退し、最終的にはどこかに食べてもらうのが社会亭には一番やな。勢力を大きくしたまま、ちょっとのミスで死なれると困る。
筋肉も適度な運動で筋繊維を破壊するなら、超再生でかえって強くなるけど、肉離れしたら元も子もないしな。
>マインド云々は何を言っているのか分かりません。
よく分からんリスキーな投資へ流れる金額は大企業の配当の多寡には反応しないよ。投資家のマインドに影響される。
投資家のマネーが増えれば、その数%がそういった投資に流れてくれると思ったら大間違い。
好況期なら確かに流れてくれるし、それが正のフィードバックになるさ。不況のない世界では正しい。
不況期、さらに大企業が潰れるような状況では、そんなよくわからん投資にはほとんど流れないし、既存の投資家が質への逃避をし出して、合計の投資金額はがくっと減っちまう。
バッファにせずに配当に回すと、ただでさえでかい新興企業への資金のボラティリティを増大させることになる。それはよくないことでしょ。
ふたたびどうも。
コメントを含めてたいへん興味深く拝見しました。特にianさんの現場からの観測は興味深かったです。結局、私の疑問は解決しませんでしたが、こうした議論が進み、政治家や企業の行動に影響を与えるようになるといいですね。
自分のブログの記事の参考にさせていただきました。基本的には「自分の無知を棚に上げた悪口」なのでお読みいただかなくても構わないのですが、お礼までお知らせさせていただきます。
ありがとうございました。
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