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マイクロクレジットの危機

New York Timesからインドのマイクロクレジットが陥っている危機についてのレポート。

India Microcredit Sector Faces Collapse From Defaults – NYTimes.com

Microcredit is the extension of very small loans (microloans) to those in poverty designed to spur entrepreneurship. These individuals lack collateral, steady employment and a verifiable credit history and therefore cannot meet even the most minimal qualifications to gain access to traditional credit. [Wikipedia; emphasis mine]

ご覧の通り、マイクロクレジットというのは他に借りるあてのない貧困層に少額の資金を融資することだ。これによって、貧困のトラップにはまっているひとを救える可能性がある。

しかし、その利率は低くはないどころか普通に見れば非常に高い。例えば「Are Microcredit Interest Rates Exploitative? 」というインタビューによると、2006年の調査でメジアン利率は30%(インフレ調整後22%)となっている。かなりの高率ではあるものの、マイクロクレジットの融資先は他で融資を受けられない信用の低い層であるためプレミアムがつくのは避けがたい。

But microfinance in pursuit of profits has led some microcredit companies around the world to extend loans to poor villagers at exorbitant interest rates and without enough regard for their ability to repay.

問題は融資側が返済能力を調べずに融資を提供し、返すあてのない人がそれを受け入れていることだ。記事中ではこれをアメリカで金融危機の原因となった低所得者層への住宅ローンになぞらえている。

Responding to public anger over abuses in the microcredit industry — and growing reports of suicides among people unable to pay mounting debts — legislators in the state of Andhra Pradesh last month passed a stringent new law restricting how the companies can lend and collect money.

自殺の増加などに対し、政治家は融資や回収について新しい規制を導入した。日本でも似たような話があったのは記憶に新しい。

If the trend continues, the industry faces collapse in a state where more than a third of its borrowers live. Lenders are also having trouble making new loans in other states, because banks have slowed lending to them as fears about defaults have grown.

結末も同様で、多くの融資が回収不能になり融資する側が経営危機に晒されている。

The collapse of the industry could have severe consequences for borrowers, who may be forced to resort to money lenders once again.

もちろんこれは借り手にとっても難しい問題で、昔ながらの金貸しから資金を調達する必要に迫られる。

microfinance firms had lost sight of the fact that the poor needed more than loans to be successful entrepreneurs. They need business and financial advice as well, she said.

結論としては、一般に融資を行う際には返済能力を吟味する必要があり、マイクロファイナンスの場合であれば、貧困層が事業で返済するためには単なる融資以上のものが必要であるということだろう。また、融資側が返済できないような融資を行うおかしなインセンティブを持たないような仕組みも必要だろう。

マイクロパトロン

マイクロファイナンスが話題になって暫くだが、今度はマイクロパトロンが出てきたそうだ。

Dollar by Dollar, Patrons Find Artists on the Web – NYTimes.com

取り上げらているのはKickstarterというスタートアップ。プロジェクト毎に出資を募るという点では、Kivaのような寄付を募るサイトに近いが、ここでは出資額に応じて商品・サービスを受け取ることができる。プロジェクトは主にアーティストによるもので、レコーディング費用を募り、出資には成果を先に届ける・ライブで演奏する・食事を振る舞うなどクリエイティブな見返りが約束される。

このビジネスの素晴らしい点は:

  • クリエーターとユーザーの距離が近いため、クリエーターがユーザーの望みをよりよく知ることができる。
  • 必要な金額がコミットされるまでプロジェクトは実行されないため、クリエーターがリスクを回避できる。
  • クリエーターは成果物に関する権利を完全に保持できる。
  • CDとコンサートといった定型的な商品だけでなくいろいろな見返りを用意できるため今まではなかった取引が可能になる。
  • そのような見返りは金銭的には小さくとも一部のユーザーにとっては非常に高い価値を持つため効率的。
  • 以上の仕組みを標準化されたフレームワークで動かせる。

これらの利点は既に成功しているアーティストにはあまり関係ないが、アマチュアで創作に励んでいる人たちには大きな助けになる。現状では、音楽業界なら次のようなキャリアステップがあるだろう:

  1. 自分の時間でアマチュア活動をする:投げ銭の類を除けば、あらゆる費用はアーティストの負担である。
  2. 仕事をやめプロになる:途端に収入源が創作活動のみになり非常に大きなリスクを負う。
  3. 大手レーベルと契約する:相対的な交渉力の欠如から著作権・演奏権などにおいて不利な契約を提示される。

このようなサービスの登場により最初の段階での費用の低減、二段階めでのリスクの低減、三段階めでの立場の向上が可能になる。

現在は収益をあげているわけではないが、アーティスト側、パトロン側をある程度集めることで課金を行うことは将来的に可能だろう。