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民主党政権の経済政策はどれもおかしなものばかりだが、またすごいのが出てきた:
NIKKEI NET(日経ネット):経済ニュース −マクロ経済の動向から金融政策、業界の動きまでカバー
官民の研究開発投資を国内総生産(GDP)比4%、食料自給率と木材自給率を50%にする目標も明記する。来年春に具体策をまとめる。
少し前に「木材の自給率は、食糧自給率よりも深刻かも。」というエントリーが話題にのぼった。
食糧よりも、深刻な問題になってきているのが、木材のほうじゃないでしょうか。木材の日本国内で消費される総需要に占める国産材の比率は、平成20年で24%ですから、ほぼ四分の三は輸入材に頼っています。
林業が抱える問題については次のように指摘している:
日本の林業の問題は、第一は価格競争力がないこと、第二は、日本の木材は水分を多く含んでおり、長期に乾燥させないと反ってしまうなど品質が安定しないこ と、さらにもっとも重要だと思うのは産業化が遅れており、技術開発や長期的な視点で林業経営を行うプレイヤーがいないということのように思います。
しかし先進国である日本に第一次産業である林業の比較優位がないのはごく自然なことだ。お金をばらまいても無駄になる。逆に世界的に木材が足りなくなれば国内林業の相対的な競争力は勝手に上がり、生産は増える。原油価格が上がれば採掘コストの高い地域でも商売になるのと同じだ。このメカニズムには政府の助けは必要ない。上の指摘のように産業化進めるのが適切だろう。
食料自給率同様に有事の際の供給問題は存在するが、食料程の説得力はない(注)。木材は貯蔵可能だし、戦略資源でもなく、いざとなれば切り出せばよい(貯蔵不可能という指摘があるが、植えとくのは貯蔵の一種だろう)。
一方、木材の自給率をあげようという政策には多くの問題がある。まず、市場で決定される国内供給量を変えるのだから生産者か消費者(ほぼ確実に前者)へ補助金を出す必要がある。これは市場を歪め死加重損失を出すし、税金が必要なので課税によるそれに伴う死加重損失も生じる。しかも、一部の生産者が莫大な利益を上げ、ほとんどの消費者には大きな影響がでないのでロビー活動の恰好の目標でもある。利益の一部を政治家に供与することで見返りとして補助金を導入させるのだ。
今回の木材自給率を上げようという方針の根拠は報道されないが慎重に吟味する必要がある。適当な理由をつけて自給率を上げようというやり方が認められるなら、好きなように生産者に補助金をばらまくことが認められるも同然だ。
(注)食料でもほとんどないだろう。一番問題なのはエネルギーだろうがそちらはまともな解決策がない。
追記
新しい情報があった:木材自給率10年で50%へ 政府の再生プラン。
日本の林業は零細な森林所有者が多く、作業道の整備も不十分で、木材の大量、安定供給が課題となっている。このため人工林の3分の2程度を対象に、1ヘクタール当たり100メートルの密度で作業道を整備。林業先進国のドイツ並みとし、低コスト化を図る。伐採作業を集約化するため、森林所有者や流通関係者と連携して収益の出る作業計画をつくれる専門家を、11年度までに2100人育成する。
問題は「日本の林業は零細な森林所有者が多く」という部分だろう。よって森林の売買を簡単にし企業が参入できるようにするというのが標準的な解答なはずだ。規模があれば作業道の整備も内部化され、勝手に低コスト化を図るはずだ。国が出てくる必要はない。
参考
この話がTwitterに出た時のny47thさんの次の発言は以上の内容を一行で表している。
自給率という言葉は比較優位性のない分野への補助金誘導や保護貿易政策を正当化するための方便ではないかと昔から思っていたりする。
全くその通りとしか言いようがない。補助金誘導・保護貿易正当化に使える以上、こういった政策をとる場合には通常よりも重い説明責任があってしかるべきだ。
コメント
- 「競争すれば生産が増える←これ笑ってもいい?」:切り出してくる量は増えるのでは。常に整備が必要という意見はありそうですが、価格の高騰が予測されるならそれを見越して需要が低い間も整備を行うかと。どうぞ盛大にお笑いください。