OECD諸国のジニ係数と相対貧困率

相対貧困率で検索してくる人がいるので追補でも。

OECD諸国の相対貧困率とジニ係数についてはWikipediaにも掲載されている(一次文献はOECD Social, Employment and Migration Working Paper No. 22 Selection of figures from OECD Questionnaire on Income Distribution and Poverty)。

以下がそれを棒グラフにしたものだ:

inequality

せっかく入力したのでGnumericのデータcsvファイルも置いておく。

相対貧困率であれジニ係数であれ一つの統計を計算して所得分配を表すという主張に無理がある。比べるなら所得の分布をヒストグラムなどで示すほうがわかりやすい。また前回述べたように、所得分配を全人口(ないし全世帯)について見ると、年齢・経験による所得の増大と個人・世帯間の格差の区別がつかない。世代毎に所得分配を示した上で所得階層間の移動の度合いを説明する必要がある。

また個人・世帯ごとの所得は国内での物価の差で調整されていないだろう。例えばニューヨークやサンフランシスコは非常に物価・家賃が高いので同じ給料ではまともに暮らせない。国内に特別に物価の高い地域があれば名目所得の分布はより不平等に見える。通常の財であれば裁定取引により価格が国内で劇的に異なることはないだろうが、土地やサービスではそうはいかない。

P.S. これぐらい新聞社なんなりがやるべきだろう。またアメリカ在住者からすると、アメリカと日本との間に大きな差のでない不平等さの指数に意味があるとは思えない。

追記:物価調整(PPP)については前回のポストへのコメントWillyさんからご指摘があったことに気づきました。感謝。

追記:さらに言えば高齢化が進むとこの手の指数はどれも悪化する。年齢が上がるにつれ所得に差がつくからだ。

国名  ↓ ジニ係数  ↓ 相対貧困率  ↓
AUS オーストラリア 30.5 11.2
AUT オーストリア 25.19 9.29
BEL ベルギー 27.16 7.76
CAN カナダ 30.09 10.34
CZE チェコ 25.96 4.25
DEN デンマーク 22.48 4.32
FIN フィンランド 26.1 6.36
FRA フランス 27.3 7.04
GER ドイツ 27.75 8.89
GRC ギリシャ 34.47 8.89
HUN ハンガリー 29.34 8.2
IRL アイルランド 30.37 15.4
ITA イタリア 34.71 12.9
JPN 日本 31.38 15.25
LUX ルクセンブルク 26.06 5.46
MEX メキシコ 47.97 20.26
NLD オランダ 25.06 6
NOR ノルウェー 26.1 6.33
NZL ニュージーランド 33.67 10.4
POL ポーランド 36.74 9.85
POR ポルトガル 35.61 13.67
SPA スペイン 32.91 12.1
SWE スウェーデン 24.28 5.25
SWI スイス 26.66 6.74
TUR トルコ 43.91 15.88
UKG 英国 32.56 11.42
USA 米国 35.67 17.09


OECD諸国のジニ係数と相対貧困率」への4件のフィードバック

  1. OECDの意義の一つは加盟各国の統計を規準化することにあると思いますが、所得格差に関しては各国データがあれば独立にジニ係数や相対貧困率が計算できてしまうのであまり価値は高くないですね。

    関連記事を書かせて頂きました:
    「分布を一つの統計量で表すこと」:
    http://wofwof.blog60.fc2.com/blog-entry-163.html

  2. 国民生活基礎調査のデータを使って、等価可処分所得を計算し、その分布をグラフにしてみましたが、必ずしも「わかりやすく」はなりませんでしたよ。

  3. こんにちは。

    >必ずしも「わかりやすく」はなりませんでしたよ。

    何がどういう意味でわかりやすくならなかったのでしょうか。

    本文中の「比べるなら所得の分布をヒストグラムなどで示すほうがわかりやすい」という部分の「わかりやすい」のことでしょうか。ここで「わかりやすい」と述べたのは、

    ・分布の方が情報量が多い
    ・所得という一つの変数なので視覚的に分布を比べるのが容易である

    という意味においてです。

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