本当の失業率

失業率ってのは結構当てにならない統計なんだけど、もし知らない人がいたら次のビデオをどうぞ:

Mintが本当の失業率は(10.0でなく)17.2%だと主張するビデオを作った

四種類のありがちな「失業者」が実は失業率にはカウントされないってのを面白おかしく説明している。元データは労働統計局(Bureau of Labor Statistics)のこちらにある。以下が六種類の失業率だ。公式な失業率はU3で10.0%となっている。

  • U1: 5.9%
  • U2: 6.6%
  • U3: 10.0%
  • U4: 10.5%
  • U5: 11.3%
  • U6: 17.2%

これらの定義はBLS introduces new range of alternative unemployment measuresにあり、BLSは1995年から六種類の数値を公開している。簡単に要約すると:

  • U1: 長期求職者(15週間以上)の労働人口に対する割合
  • U2: 解雇された求職者の労働人口に対する割合
  • U3: 25歳以上の求職者の労働人口に対する割合
  • U4: フルタイムの求職者のフルタイム労働人口に対する割合
  • U5: 16歳以上の求職者の労働人口に対する割合
  • U6: パートタイムの労働者・求職者を考慮
  • U7: 仕事がみつからないので職探しを止めた人を考慮

U6, U7はU5に足し算する形で作られているがU1-U4は全く違う指標と考えられる。但し、アメリカでは景気悪いから大学院に通うという人もいるのでこれでもどれだけ実態がつかめているか分からない。日本のデータは統計局にある。

ちなみに個人財務管理サービスを提供するMint.comが公開したビデオだ。もちろんこれは自社のプロモーション活動の一環であり、経済的な動機に基づいている。このクオリティのビデオを作るのは趣味・ボランティアでは難しく、やはりウェブのコンテンツが充実するためにはこういった経済利益に基づく行動が重要なように思われる(参考:日本のウェブが残念なのは当然)。

本当の失業率」への6件のフィードバック

  1. 世の中の多くの経済統計は前月比や前年比での動きが重要なので、そうした動きがもっとも捕らえやすい指標を主に用いるのが望ましいということでしょう。物価にしても、エネルギーや生鮮食品を除いて算出したりするのはそれらの価格変動が重要でないというよりは、それらを含めると動きが分かりにくくなるからです。

    しかし、水準自体にスポットをあててみるということも大事なことですね。婚活ブームの今は、未婚率だけでなく「完全失恋率」などを計算するのも面白いかもしれません。結婚したくない人を含まない比率、結婚していても離婚して再婚したい人を含む比率など様々な指標が作れそうです。

  2. >そうした動きがもっとも捕らえやすい指標を主に用いるのが望ましい

    全くその通りですね。絶対的水準よりも推移が重要な指標が多いです。

    >婚活ブームの今は、未婚率だけでなく「完全失恋率」などを計算するのも面白いかもしれません。

    そうするとパートタイム労働者よろしく、結婚してるけどいい相手がいないので適当な相手とくっついたという層もM6(?)あたりで考慮しないとw。

    しかしこっちは失業率より測るのが大変だ。

  3. Mint.comってこういうこともやっているんですね。面白いです。

    金融機関に勤めていると、financial planningのツールを提供するventureということでmint.comを知ることになるわけですが、こういうのを見ても、日米の金融機関の違いがわかりますね。

    僕の会社が大手であることもあるかもしれませんが、こういう政府を批判するようなものを作ることは日本では考えられませんね。特に日本のエコノミスト自分の言いたいこともいえない悲しい商売です。

  4. コメントありがとうございます。

    ほんと、日本では考えられないですね。金融関係は大手ばっかりでベンチャーが出てくる気がしません。まあアメリカは確定申告の関係でこの手のサービスの需要が高いというのもあると思いますけど。

    >こういう政府を批判するようなものを作ることは日本では考えられませんね。特に日本のエコノミスト自分の言いたいこともいえない悲しい商売です。

    これは凄いですね。それにこの程度で批判するようなものになってしまうのも困ったものです。失業率の定義を説明しているだけなのに。。。

  5. いや~、外野からみると、そう思えそうなんですけどね。社会人として発言する場合、その波及効果が見えないため、すごい怖いんですよ。失業率の不正確性を指摘して、社内で損をする人がいるかもしれないし、社長などの偉い人の発言と矛盾するかもしれない。

    僕もブログをやっているわけですが、本当は本名でやりたいわけですが、それはだめなんですよ。社外に出すものは、原則、ボスや会社が目を通すことになっているのです。

    もっとも、外野からみれば、非常にくだらないわけで、そして、それは正しい印象なんです。とはいえ、経済学者も似た面があって、たとえば、経済学者は、経済学者の終身雇用制をなくそうとしないじゃないですか。経済学者の業績は、他の職業に比べすごいわかりやすいため、論文を書かない人はクビにすればいいわけなんですね。そうすれば、若い人の雇用機会にもつながる。

    そんなに僕としては自らの産業を変化することでその正しさを示してほしいんですよね。しかし、それはできないわけです。これは、結局、僕がお金をもらっている会社や政府に強く出られないことと同種の問題だと思います。

  6. >社会人として発言する場合、その波及効果が見えないため、すごい怖いんですよ

    これはまさに労働市場が硬直的なせいですよね。最近、日本での問題の多くがこの労働市場にあるような気がしてなりません。

    >とはいえ、経済学者も似た面があって、たとえば、経済学者は、経済学者の終身雇用制をなくそうとしないじゃないですか。

    これについては前に書きました(テニュアの経済学)がもうちょっと複雑です。

    >これは、結局、僕がお金をもらっている会社や政府に強く出られないことと同種の問題だと思います。

    避けられない問題ですね。例え、特定の機関からお金をもらっていないジャーナリストがいても読者の意向には沿わないと生活費が稼げないわけで。

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