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配給のコスト

February 8th, 2010

最近、援助の問題に関するポストが続いたので、前向きな記事も紹介:

Aguanomics: The Cost of Rationing

Rationingというのは配給のことだが別に戦時中だけの言葉ではなく、限られた資源を(価格メカニズム以外で)割り当てることを指す。例えば、水や電気の価格を規制で低く抑えれば、超過需要が発生する。短期的には影響が小さくても、設備投資が減ることで長期的には容量不足が引き起こされる。供給よりも需要が多いということは、財・サービスを価格以外の何らかの基準で割り振る必要があるということであり、Rationingの登場となる。ランダムでも先着順でも政治家への献金のランキング順でもいい。

しかし、(限られた)資源の最も効率的な配分というのは、一番その資源を必要としている人間から順番に割り当てていくことだが、価格メカニズム以外でこれをうまく達成するのは難しい。必要な順といったら多くの人は自分が一番必要としていると答えるだろう。それを確認する方法がないからだ。市場は必要という人間にお金を支払わせることによってこの問題をクリアする。

電力では特に限界費用は極めて高く(1000倍というようなオーダー)、そのまま価格に反映させることが政治的にも困難で適切な投資を担保しにくい。水資源についてもしばしば農業用水が異常に安く設定されている。適切な価格付けがなされていない場合、それで大きな便益を受けているグループが政治力を持っているが多い

Effects of Improving Infrastructure Quality on Business Costs: Evidence from Firm-Level Data

it is found that the total benefit for the economy from eliminating the existing electricity outages ranges from 0.5 to 6 percent of gross domestic product. If all water suspensions are removed, the economy could receive a gain of about 0.5 to 2 percent of gross domestic product.

紹介されているワーキングペーパーによると、調査の対象となったヨーロッパと中央アジア26ヶ国において停電をなくすことによる便益はGDPの0.5から6%にも当たるという。水供給についても0.5から2%の効果が予想されるとのこと。市場を整備し適切に運営することでこれだけの膨大な効果があるのだ。財・サービスを提供するような支援もいいが、制度を作るのを助けることで大きな成果を上げることもできる。この問題は途上国だけに限るものではないが、こういうタイプの支援が増えていくとよいのではないだろうか。

便乗値上げの規制

October 22nd, 2009

アメリカでは多くの州に存在する便乗値上げ(price gouging)の規制について:

Not helping out due to anti-price gouging laws « Knowledge Problem

便乗値上げの規制が何故必要なのか、以前に大抵のエコノミストはそもそも「便乗」値上げが何かと言われると返答に困るだろう。災害時(アメリカではハリケーン、日本なら地震だろうか)に必需品の価格が上がるのは単なる需給の問題だ。

Gasoline consumers in the state would obviously be better off with more supply brought into the state rather than less, and with these stations offering gasoline at a high price rather than not offering gasoline at all.  The law impedes activities by gasoline retailers that would help gasoline consumers.

便乗値上げの禁止という一種の価格規制を導入することは、災害時の供給を減らすことにつながる。短期では、サプライチェーンを全て規制しない限り小売店は在庫を売りきったら終わりだ。長期では、社会的に最適な投資(余分な在庫)が行われない。

この構造は電力市場のメカニズムと似ている。電力は貯蔵不可能でかつ需給がミリセカンド単位で一致する必要がある。しかも個人宅ではリアルタイムで価格を確認することができないので短期価格弾力性はほぼゼロだ。ピーク時と非ピーク時の需要量も劇的に異なり、一部の発電施設は僅かなピーク時にしか起動されず限界費用が極めて高くなる。

電力の供給曲線=限界費用曲線は容量いっぱいのところでほぼ垂直に立ち上がるので、価格規制がなければ需給量が容量限界に達すると一気に価格が跳ね上がる。短期ではこれにより電力会社の費用が上がるわけではないので一種の便乗値上げとも言えるが固定費用が莫大な産業なのでここでレントが発生しなければ容量への投資が行えない。

電力市場ではこのピーク発電能力の確保とピーク時の市場支配力の増大とのバランスを保つためにプライシングの工夫・予備電源の義務付け・連絡線強化・長期契約推進・資産売却命令(divesture)など様々な努力がなされている。便乗値上げについても、単純な値上げ規制より踏み込んだ対策が必要だろう。

P.S. 災害時の便乗値上げを監視するガイドラインをもつ地方自治体は見つかるが、肝心の根拠法が見当たらない。地方レベルの政策なのだろうか?

電力会社と消費者保護

October 4th, 2009

電力市場における消費者保護について良質な記事があったので紹介:

Is consumer protection lacking in Texas retail electric power market? « Knowledge Problem

The two customer hardship cases described in the story – a heart patient who relied upon an oxygen machine, a paraplegic – both lost power after failing to make payments.

ここで取り上げらている問題は、電力会社が支払いの滞っている契約世帯への配電を止めていることだ。特に心臓病患者に対する電力供給停止のケースが大きく取り上げられている。

the article doesn’t link the heart patient’s troubles to any shady practices.

しかし、それらのセンセーショナルなケースについて電力会社が規則を破っているという報道はなされていないことが指摘されている。これはもっともで、いかに(テキサスのように)自由化されても電力市場には数多くの規制が正当な理由で行われている。

The paraplegic customer’s power company was among the five companies bankrupted by high wholesale power prices, but he only lost power after he failed to pay a deposit to the new company to which he had been assigned by the state’s transitioning policies.

特に取り上げられているケースにおいての詳細が記されている。患者は電力卸売市場の価格高騰により破産した電力会社から新しい電力会社へ州の規則で移行している。しかし新しい会社へ保証金を支払っていないため電力が供給されなかったとのことだ。ちなみに卸売市場の高騰により価格規制を受けている小売電力会社が潰れるのは電力市場においてはよくある失敗だ。新しい電力会社にとって患者はそもそも客ではなく、お金を払えない客への供給は無理に止めたというのは言い過ぎになるだろう。

But this news article mixes in stories about the hardship of being poor with problems of PUC licensing review, various other regulatory policy discussions, and numerous but not-well-detailed customer complaints.

最後に著者のMichael Gibersonは、貧困問題をライセンス・規制・消費者保護政策とをごちゃ混ぜにして論じることに警鐘を鳴らしている。

この間違えは様々な政策分野で見られるものだ。電力市場の例では、自由化された市場において企業は規則にしたがって競争を行っている。もし消費者保護をしたいのであれば規則に盛り込むべきであって、事後的に取り上げるのはおかしなことだ。また、支払い能力がない所帯に対する電力供給の問題はそもそも所得が足りないことが根本的な課題だ。直接所得補填を行うほうが効率的な対策となる。