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ブックスキャン

April 16th, 2010

スキャニング代行合法化には賛成だが、理由はちょっと違う。

本のスキャニング代行サービスはもうそろそろ合法としようか

だって、代わりにやって欲しいもの(笑)。

スキャン代行合法化のメリットは個々の人間が合法とされている個人複製を外注、分業できることだけではない。本当のメリットは、もし代行が合法でならスキャンされる書籍の権利者・出版社がデジタルデータを提供するということだ。スキャン代行を合法にすることでスキャン代行自体必要なくなる。

理由は簡単でスキャン代行というのは社会的にみて異常に非効率だからだ。既に印刷されおそらく劣化した紙媒体を裁断した上でスキャン、OCRという作業には費用がかかる。だからこそ今回低価格を売りにする業者の登場が話題になった。しかし、代行業者が幾ら費用を切り詰めようと出版社には勝てない。元のデータを持っているのだからそれを販売すればいいだけだ。但し幾つかクリアすべき壁がある。

一つの問題は、単にデジタルデータを販売するだけでは、書籍を購入した人ととそうでないひととの間に価格差をつけられないことだ。紙媒体所有者は再び全額を払いたくないので低価格を望むが、市場のなかで既に紙媒体を所有していてかつ電子化を望む人の割合が小さければ、出版社にとっては単に彼らを無視しているほうが利益になる(均一価格かそもそも電子版を出さない)。しかしこの問題は単に紙媒体を出版社に提出させれば解決する。スキャン代行でも原本は商品価値を失う程度に破壊されるので消費者としても問題はないだろう。

もう一つは、出版社が原本をデータとして保有していない場合だ。実際にそのような例がどれくらいあるのかは知らないが、そういうケースでは出版社自身がスキャンする必要があるかもしれない。しかしこの場合でも、出版社ないし出版社が委託した業者(Googleでもいい)が行えば一度電子化するだけで終わりなので、紙媒体一つずつをスキャンするという膨大な無駄は回避できる

著作権制度は、コンテンツを作成するために私的独占を通じてインセンティブを与える制度だ。どの程度の権利を著作者に与えるかはインセンティブと独占の弊害とのバランスによって決まる

今、本のスキャニング代行という極めて非効率なサービスが注目を浴びているというのはそこに需要があるということであり、それを妨げる制度の弊害が大きくなっているということだ。独占の弊害というコストが増大しているのであれば、ベネフィットが変わっていなくてもそのバランスは再調整される必要がある

ニュースは儲からない

March 9th, 2010

メディアが陥っている問題について非常によくできた記事の紹介。

News is a lousy business for Google too

There is a widespread myth that search engines have taken profits away from news websites.

サーチエンジンがニュースを提供する企業から利益を横取りしているという主張はよく聞く。しかし、ネット上でニュースが儲からないことはサーチエンジンがなくても十分説明できる。

The internet upended this model by 1) providing a new delivery method for classified ads (mainly Craigslist), 2) increasing the supply of newspapers from 1-2 per location to thousands per location, thereby driving the willingness-to-pay for news dramatically down, and 3) unbundling news categories, making cross subsidization increasingly hard.

三つの理由が挙げられている。一つはCraigslistを代表とするクラシファイド広告の登場だ。こういった広告は旧来の(アメリカの)新聞にとって大きな収益源であった。二つ目に地域独占が解消し、ひとつの地域でたくさんの新聞を購読できるようになった。三つ目はニュースを分けて販売できるようになったためニュース以外で稼いでニュースでお金を使うということできなくったことだ。

これらはどれも紙媒体に存在した紙媒体のボトルネックがなくなったことにより生じている。配布コストが下がれば地域独占はなくなり競争はまし、バンドルを維持できなくなる。クラシファイド広告もまた旧来はバンドルされていたコンテンツの一つだ。

ここまではこのブログでも何度も述べてきたことだが、次の話が面白い。

Even Google doesn’t make money on it.

ニュースはGoogleにとってすら儲からないという。実際にAfgranistan warで検索しても広告が表示されない。あまりにも収益が少ないからだ。

Big money-making categories include travel, consumer electronics and malpractice lawyers. News queries are loss leaders.

Googleが利益をあげるのは旅行や電化製品、それに訴訟ネタだという。実際、去年の最も高いキーワードはMesotheliomaだった。ニュースで利益を出せないのは検索エンジンに横取りされているからではなく、そもそもニュースが生み出す利益が非常に小さくなったためだということがよく分かる。

GBSの課題

February 22nd, 2010

あまり日本では見かけないGoogle Book Settlement (GBS)の記事があったので個人的なコメントでも。

マイクロソフト、アマゾンが猛反発 グーグルの書籍デジタル化問題、米公聴会で結論出ず JBpress(日本ビジネスプレス)

いくつかの問題点が指摘されている。

(1)世界中の作家からの明確な承諾が得られないまま、グーグルが書籍をデジタル化し、それを公開してしまうという問題

これは著作権の国際的調和とアメリカにおけるクラスアクション制度の奇妙な重なりによって生じる。アメリカの外で生じた著作物も、アメリカ国内で保護されるが、これは当然アメリカの著作権法による。例えばフェアユースなんかも適用されるし、訴訟になればクラスアクションの対象にもなる。よってグーグルは国外の作家をまとめてクラスとして和解することができることになる。

(2)作家などの権利保有者の行方が分からなくなっているいわゆる “孤児書籍” についても、グーグルが勝手に公開してしまうという問題

孤児書籍(Orphan Works)とは著作権が存在しているにも関わらず著作権者が発見できないような著作物のことだ。著作権者に連絡が取れなければ二次利用することもできない。

但し、このような著作物が公開されることは基本的には望ましいことだ。書籍自体はグーグルがスキャンしていることからも分かるように提携している(大学の)図書館に存在しており、公開されて困るという類の話ではない。より広く公開されることはプラスだ。

問題は、そこで生じる社会的便益を誰が得るかということだ。権利者が見つからない以上、便益はグーグルと和解の一環として設立されるBook Rights Registryで山分けされることになる。しかし、デジタル化を行うGoogleはともかく、他の作家が孤児書籍からの収益を得る理由はない。これはクラスアクションを使ってGoogleと作家協会(Author’s Guild)が孤児書籍を乱用するようなもので正当性を欠く。Googleがこのような利益を作家協会に供与することで、独占的な形態を確保しているように見える。

そもそも連絡を取ることので出来ない主体をどうクラスとして定義するかという問題もあり、むしろ立法的に対処することの方が望ましいだろう。

他にも、グーグルとBBRとの利益の分配方式など検討事項は多いが、書籍、特に絶版本や孤児書籍、がネットや図書館で簡単に検索できるようになることは素晴らしいことであり、これがうまく解決されることが望まれる

アメリカのブロードバンド

February 17th, 2010

このネタは何回かすでに取り上げた気もするが、あまりにもひどいのでもう一回。うちはAT&Tだが、昨日も複数回ダウンしていたようだ。

FCC to propose faster broadband speeds | Reuters

The FCC wants service providers to offer home Internet data transmission speeds of 100 megabits per second (Mbps) to 100 million homes by a decade from now, Commission Chairman Julius Genachowski said.

2020年までに100Mbpsの接続を1億世帯に届けろという連邦通信委員会の要求が業界に波紋を読んでいる。アメリカの世帯数は2000年のCensusによると105,480,101世帯なので基本的には殆どの家庭に100Mbpsのブロードバンドを提供しろということだ。こう書くとすごいことに聞こえるが、日本のFTTH利用可能世帯率は80%を超えている

この発言に対するISPの反応はどうしようもない。

“A 100 meg is just a dream,” Qwest Communications International Inc Chief Executive Edward Mueller told Reuters. “We couldn’t afford it.”

“First, we don’t think the customer wants that. Secondly, if (Google has) invented some technology, we’d love to partner with them,” Mueller added.

Qwestによれば100Mbpsは夢物語でそんな金はないし、そもそも客が欲しがってない(!!!)とのことだ。Googleがいい解決策を持ってるなら一緒にやってやってもいいよというところだ。

AT&T, the top broadband provider among U.S. telecommunications carriers, said the FCC should resist calls for “extreme forms of regulation that would cripple, if not destroy, the very investments needed to realize its goal.”

AT&Tは規制によって投資をするインセンティブがなくなると主張している。ちなみにそのAT&Tがうちの地域で提供している最速のブロードバンド(?)は不安定なDSL 6Mbpsだ。

Industry estimates generally put average U.S. Internet speeds at below 4 Mbps.

しかし平均的なスピードは4Mbpsとのことでこれでも50%も上回っているとのこと。

Verizon, the third-largest provider, and one that has a more advanced network than many competitors, said it has completed successful trials of 100 Mbps and higher through its fiber-optic FiOS network.

唯一前向きなVerizonはバックボーンに光ファイバーを使うFiOSサービスを提供しているが、ほとんどの地域では提供されていない(FiOSの最高速度は50Mbpsだが、これが提供される地域は一段と小さい)。

New data: 40 percent in US lack home broadband

Lack of broadband availability is only part of the challenge for Washington, however – because even in places where broadband is available, not everyone subscribes.

アメリカではブロードバンドが提供されていたといしても、それが利用される率が低い。そもそも必要を感じない家庭や高すぎるからと契約しない家庭がたくさんある。

The FCC also wants to use the universal service fund, a U.S. subsidy program for low-income families to gain access to phone service, to get more people high-speed Internet access.

こういった問題にユニバーサルサービスファンドを使おうというのは正しい動きだろう。固定電話サービスの必要性は著しく低下した。ブロードバンドがあれば電話もできるわけで、そちらに集約するのは妥当だ。

Googleの市場支配力

February 14th, 2010

ちょっと前に「タブレットと新聞業界 by Google」というエントリーでGoogleが広告市場で行使する市場支配力に触れた:

Googleが圧倒的なシェアを握る広告市場において、Googleはオークションの設計を通じて市場支配力を行使できる

この点は意外に理解されていないような気がするので、関連するリンクと共に紹介したい。

The University of Chicago Law School Faculty Blog: Google’s Search Auctions and Market Power

Google-Yahoo!やYahoo!-Microsoftの提携の際に問題となるのは検索市場の競争環境だ。検索自体は無料なので普通の意味での価格支配力は問題とならない。よって焦点となるのは検索結果に対する広告市場となる。ここでのGoogleの弁護は基本的に次のラインだ。

The Journal (Wallstreet Journal) has drunk the Google Kool-Aid on pricing in search markets: “search providers like Google and Bing also don’t determine ad prices, which are set through auctions.”

GoogleやBingのような検索エンジンは広告スペースをオークションで売却するので自分たちで価格を決めているわけではない(から価格支配力は問題にならない)という主張だ(ちなみにdrink the Kool-Aidというのは安易に他人の言う事を信じてしまうという意味だ)。

しかし、このことは検索エンジンと広告オークション市場が競争政策とは無縁であることを意味しない。ある商品のオークションが一つの場所でしか行われていないか、複数の場所で行われているかはその価格に影響を及ぼすということだ。例えば、入札者が一人でオークション主が一人なら全ての余剰を最低価格を通じて回収することも(理論的には)可能だ。ここでは三つほどの懸念が提示されている:

  1. 最低入札価格の設定
  2. 広告スロットの数の制限
  3. 他社(Ask.com & AOL)とのバンドリング

1,2は価格支配力を行使するためのチャンネルだ。オークション主は最低入札価格を挙げたり、スロットの数を減らすことで落札価格に影響を与えることができる。もちろん、独占それ自体は違法ではないのでこの事自体は問題とはならないが、オークション故に価格支配力はないというのは間違いとなる。よって検索エンジンの(水平的な)契約・合併に対して競争当局が関与する必要があるということだ。

Google-Yahoo Ad Deal is Bad for Online Advertising — HBS Working Knowledge

Google’s purchase of substantial advertising inventory from Yahoo would increase prices for many advertisers that currently buy ads from Yahoo.

こちらは、Google-Yahoo!の協定に反対する文章として書かれたものだが、両者の取り決めによる広告スポット価格の上昇を指摘している。ちなみに前者を書いたChicago Law SchoolのRandal Pickerも後者を書いたHBSのBenjamin EdelmanもGoogle-Yahoo!の件に関してMicrosoftにコンサルタントとして雇われていた。Yahoo!-Bingに関してどのような意見なのかも気になる(Googleとはシェアが違うということか)。

私もGoogleのサービスを数多く利用しているし、Googleの社会貢献は素晴らしいと思うが、それとこれとは別の話だ。