政治では事実よりもストーリー

最近興味のある話題にぴったりの記事がBBCから:

BBC News – Why do people often vote against their own interests?

マサチューセッツで民主党が議席を失ったことは大きな反響をよんでいる。これによりオバマ政権が医療・健康制度改革を成し遂げることはより難しくなっている。そして、医療制度改革に反対している人々の多くは、まさに新しい制度により助けられる人々だ。どうしてこのような事態が生じるのか。

If people vote against their own interests, it is not because they do not understand what is in their interest or have not yet had it properly explained to them.

人々が自分の利益に沿わない投票を行うのは、自身の利害を理解していないからでも適切な説明がなされていないからでもないという。

They do it because they resent having their interests decided for them by politicians who think they know best.

There is nothing voters hate more than having things explained to them as though they were idiots.

有権者は政治家が知った顔で選択を押しつけることに憤っているし、何よりも子供相手のようにいちいち説明されるのが嫌いなのだ。

As the saying goes, in politics, when you are explaining, you are losing.

説明をしている時点でもう負けているという。気が滅入るような話ではある。

Gore: “Under the governor’s plan, if you kept the same fee for service that you have now under Medicare, your premiums would go up by between 18% and 47%, and that is the study of the Congressional plan that he’s modeled his proposal on by the Medicare actuaries.”

Bush: “Look, this is a man who has great numbers. He talks about numbers. I’m beginning to think not only did he invent the internet, but he invented the calculator. It’s fuzzy math. It’s trying to scare people in the voting booth.”

Mr Gore was talking sense and Mr Bush nonsense – but Mr Bush won the debate.

しかし例として挙げられているブッシュとゴアのやりとりを見れば頷かざるをえない。ゴアはメディケアのプレミアムについて数字を出して論じ、ブッシュはそれを皮肉っている。ブッシュの発言部分なんて読んでいて吹き出してしまうレベルだが、ディベートに勝ったのがブッシュだが笑ってもいられない。

[…] stories always trump statistics, which means the politician with the best stories is going to win […]

統計よりもストーリーが大事であり、勝つのは最もいいストーリーを持っている政治家なのだ。間違ったことをいってはいけないが、本当に人を動かそうとするならうまい話を考えることの重要性も忘れていはいけない。政治はこの微妙なバランスで成り立っている。そしてそれゆえに、支持の得られない正論・道を踏み外したポピュリズムがどこの国にでもあふれているのだろう。

政治では事実よりもストーリー” への5件のコメント

  1. 正論以外のもの、ここでいうところのストーリーで人は操作できますが、そうだとすると操作する側に論理的に正しいことをする必要性がないですよね。
    操作しうる能力を持った人の善意に期待するというあまり心地よくない結論になるのでしょうか?

    • 基本的にそういうことになりますね。制度を変更すれば状況は変わりますが、その制度を変更する理由が政治家にあるかという話になります。

  2. 私たちの業界でも、表向きはEvidence based medicineなんてエラソーに言ってますが、実際の現場で通用しないことも多々あります。そこでこっそり持ち出すのがNarrative based medicine(物語に基づく医療?)。これがなかなか有効な場面も多いようです。

    もっとも、ここで触れられているストーリーとは少し違います。話し手のストーリーでは無く、聞き手の本来持っているストーリーという意味だからです。つまり、聞き手側に既に構築されているフレーム座標(参照点)を推定し、伝えたいことをこの座標の中に一度変換してから話すと言うやり方です。
    この記事を読んで、このようなことを連想しました。

    • 医療の場合、患者を説得する必要がありますし、あまりevidenceを強調すると保守的な治療になってしまう危険がありそうです。

      相手の座標の中で語るというのは政治にも当てはまるとは思います。ただ、医療とは利害の度合いが違うので議論の心地良さで決まる部分が大きいのではないでしょうか。

  3. ピンバック: Tweets that mention 政治では事実よりもストーリー » 経済学101 -- Topsy.com

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