Twitterへ斬り込むFacebook

FacebookがTwitterとの連携を強めているようだ。

FacebookからTwitterをアップデート

Facebook近況アップデートを選択的にTwitterへと流す仕組みが公開されている。Facebookのパブリッシャーは近況(ステータス)だけでなく、リンク・写真・動画などをフィード・掲示板に流すことができるので、その中で必要なものを選ぶということだ。パブリッシャーの機能はアプリケーションで拡張することもできる。

もちろんFacebookの狙いは、Twitterへの投稿をFacebookへの投稿の一部とすることだ。現状ではTwitterの更新をFacebookに自動投稿することはあっても逆を行っている人は少ない。FacebookからTwitterへのチャンネルを作ることで、メインで使うプラットフォームをTwitterに移行するユーザーを引きとめようということだろう。

Facebookがこの機能でTwitterの領域へ本格的に手を伸ばそうとしているのは、今のところ「ファンページ」にしかこの機能が提供されていないことにも表れている。ファンページとは企業や芸能人のための特殊なプロフィールだ。いわば法人や芸名に相当し、ほぼ個人のプロフィールと同じように使うことができる。

しかし、ファンページでは「友達になる」の代わりに「いいね!」(Like)というボタンがついていて閲覧者が一方的に支持を表明できる。これは相互の承認を必要しない点でTwitterのフォローに似ている。

一対多の関係はFacebookでは成立しにくい、有名人とそのファンというブロックを囲い込んだ。

Wave開発中止のポイント」で述べたように、Twitterが独自のプラットフォームとして成立したのはこの一対多という新しい関係を提示したためであり、Facebookはそれに対してファンページにより「有名人とそのファン」的なつながりを作って対抗しているわけだ。そのファンページにTwitterとの連携機能を加えることはこれをさらに進めるものだ。

Facebookには以前よりファンページによく似た機能としてグループという仕組みを提供してきたが、最近ファンページへと比重を移してきており、ファンページを推進していく強い姿勢が窺える。

Twitterのこの性質は、個人が一種の有名人となりファンを獲得するという環境を提供し、それにのった「プチ」有名人が次々にファンを呼びこむことでTwitterは拡大した。

ただ、この作戦がすんなり進むとは限らない。その理由は個人のプロフィールと著名人・ブランドのファンページという区別だ。Twitterは個人も企業も区別せず一対多のコミュニケーションを提供する。そのため個人が自然に一対多の関係を築いていくシステムが出来上がった。Facebookのファンページも個人で作成できるが、それは個人のプロフィールの延長線上にはない。あくまで個人レベルでの繋がりは相互的な友達関係、企業・ブランドと個人とのは一方的な支持関係という区別は残ったままだ。既に有名な人であればこれでいいが、普通の個人がいつのまにかブランドを作っていく環境にはなっていない。

Wave開発中止のポイント

GoogleがWaveの開発中止を発表したのニュースになった。では何故上手く行かなかったのだろうか。

Google’s struggles

Google’s struggles both with Wave and also with Buzz and Knol are that these are ventures with strong network effects and so that technology adoption is a great challenge.

Wave、Buzzであれば、FacebookやTwitter、KnolであればWikipediaと非常にネットワーク効果の高い市場を相手にしている。既に相当のユーザーがいなければサービスの価値はほとんどない。

それに対して成功したGoogleの製品の多くは強いネットワーク効果がない。広告であればユーザーが少なければ価格が低いだけだろうし、GMailやGoolge Doc (App) にしてもファイルレベルでの互換性は取れる。MapやReaderにいたってはスタンドアローンで利用出来る。

For Facebook, it was college students. For Twitter, it was celebrity following (this is a form of connectivity through a ‘star’ graph — the star being a source of many connections).

ネットワーク効果の強い業界への参入には、関連性の強い「ブロック」をおさえることが必要だ。Facebookは大学生をターゲットにした。学生にとって他の学生とのコミュニケーションは極めて重要であり、しかもそのやり取りの多くはそのグループ内で終わる。大学生だけ押さえればとりあえずはサービスとして価値が出てくる。そして大学生というブロックを確保し、そこから広がっていった大学生という集団が卒業という形で自然に拡散していく点がこの発展を後押ししたわけだ。

TwitterはFacebookによってすでに固められた友達関係という繋がりを使わなかった。友達という性質上双方向的な関係ではなく、フォローによる一対多の関係をネットワークの基本としている。一対多の関係はFacebookでは成立しにくい、有名人とそのファンというブロックを囲い込んだ。Twitterのこの性質は、個人が一種の有名人となりファンを獲得するという環境を提供し、それにのった「プチ」有名人が次々にファンを呼びこむことでTwitterは拡大した

For Wave, Google tried to do this by having invites and referrals initially.

GoogleはWaveで招待制度を使うことで人間関係をサービス内に模倣した。Waveのユーザーは最初から知り合いと繋がっているということだ。

Put simply, those people were already connected and Wave didn’t offer something that was interconnected or of extra value

しかし、この「つながり」はブロックとしては利用できない。何故なら、その人間関係は既に成立している=つながっているからだ。Twitterのように知らない人と繋がるという機能には欠けるし、Facebookのように昔知っていた人を見つけるということもない。既存のネットワークに比べて新しいコネクションを提示できなければユーザーは留まらずいつまでたってもネットワーク効果は発生しない

つまり、Google Waveの一番の問題はネットワーク効果の強い市場において、まず確保するブロックを特定しそこから広げていくという戦略に欠いたことだ

But Google needed to have interconnectivity from the start and a strategy. Wave seemed to have promise as a one stop shop.

さらに既存の競合サービスとの接続も万全だったとは言いがたい。Twitterのように棲み分けを狙うのであればまだしも、全てを包括する機能を提供する=競争相手をひっくり返すのであれば可能な限り互換性を取る必要はあっただろう。

ただ、この事例がGoogleの評価にマイナスかというとそうでもない。むしろ、強い競争相手のいる市場でもとりあえず動く製品で参入してみるのは重要であるし、それがうまくいかなければ直ぐに撤退するという判断も的確だろう。次の試みに期待したいところだ。

Openbook

ソーシャルネットワークねたが続きますが、Openbookというのは新世代のオープン型ネットワークではなく、Facebookのパロディだ:

Openbook – Connect and share whether you want to or not

OpenbookはFacebookで全世界に公開されているステータスを検索できるサイトだ。上のスクリーンショットでは「おはよう」を検索してみた(ちなみにRecent Searchesにある日本語は私が入力したものではない)。日本人以外にもなかなか人気の単語であることが分かる。Facebookにしては本人の顔写真が少ないのも特徴だ(日本語が好きな外国人を想像すればわかるが)。

このサイトの目的は別にこうやって遊ぶためではなく、Facebookにおけるプライバシーを啓蒙することだ。「Facebookの使い方」に書いたように、Facebookにはかなり細かいプライバシー設定機能がある。きちんと利用すればかなり思い通りのアクセスコントロールが可能だ。しかし、デフォルトでのプライバシー設定は徐々に甘くなっており、設定を変更しないと相当な情報が世界中に検索可能な形で公開されるので気を付けたい。

レピュテーションとプライバシー

実名・匿名の問題は、名前を売ってレピュテーションを上げることとプライバシーとの兼ね合いだ。実名利用が一般的なアメリカではどのようなバランスがとられているのだろう。

How people monitor their identity and search for others online

  • 57%のネットユーザーが、自分に関する情報を検索してモニターしている
  • 46%が、ソーシャルネットワークにプロフィールを持っている
  • 46%は昔の知り合いを、38%が友達について検索している

どの数字も上昇傾向にあり、ネット上で他人の情報を集めると同時に自分もまたその対象となっていることを認識されている様が見て取れる。

  • 18-29歳の44%はネットに公開する情報を制限している
  • 71%はソーシャルネットワークでのプライバシー設定を変更している

若い世代の話かと思えばそうでもない。18-29歳のの28%はFacebook, MySpace, LinkedInなどのソーシャルネットワークを全く信用しておらず、これは他の世代よりも高い数字だ。プライバシーは若者にも重視されており、情報をオンラインにすると同時にその管理に力を入れている。

  • 31%のネットユーザーは同僚や専門家、競争相手を検索している
  • 16%はデートの相手や交際相手を検索している

このような状況で、自分の情報がどうオンラインで流れているかに慎重になるのは自然なことだろう。ECサイトがSEOに労力を割くのと変わらない。

  • 27%の仕事を持っているユーザーは職場でオンラインでの活動についてルールがあると述べている
  • 12%は業務の一環としてオンライン上で自分を売り出す(market)する必要があると述べている(男性は15%、女性は7%)

さらにオンラインでのあり方が仕事にも繋がり始めている。多くの人は情報を限定的に公開し、その流れを自分でコントロールできるようなプラットフォームを求めているともいえ、Facebookが最大のソーシャルネットワークになったことも頷ける。

Facebookの使い方

追記:このポストをキッカケにFacebookのガイドブックを執筆しました。よろしくお願いします。

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最近、Facebookの使い方が分からないという声を(主にTwitterで)耳にするので使い方を簡単にまとめてみる。私自身別にヘビーユーザーではないので、正しい(?)使い方かどうかは知らないがとりあえずはこんな感じでどうぞという程度にとって頂きたい。

寮の部屋

日本人が最初にFacebookを見たときによく分からないのがWallというものだ。壁って何だよという感じだ。単にメッセージ送るのと何が違うのか。

これは寮の部屋の扉だと思えばいい。寮の扉にホワイトボードをぶら下げたり、紙を貼ったりするのは一般的だ。

イメージとしては上の写真(CC)のホワイトボードのような感じだ。メモを扉の下から入れるのと比べると通りすがりの人に見えるという違いがある。実際、書き込んだ人と書き込まれた人が両方友達ならニュースフィードに表示される。書き込まれた人しか知らなくてもその人のプロフィールまで行けば内容は読める(この辺はTwitterと変わらない)。返事は自分の壁にしてもいいが、相手の壁に書き込みに行ってもいい。

別に単なるメッセージボード以外の使い方も出来る。上の例(CC)ではアンケートを取っている。扉には好きな物を貼りまくって自己主張してもいい。学生寮が想像しにくければオフィスのデスクを想定してほしい。

部屋の飾り

自己主張の場所は扉だけではない。友達が部屋に来たことを考えよう。このとき間取りも家具も固定な寮で、自分をアピールできるのは壁だ。大学生が壁に貼るといえば何か、一番に来るのは写真やポスターだろう。

上の写真のように(CC)自分が見るためでなく、自分がどんな人と仲がいいかなどを訪問者にもお伝えするわけだ。但し、ネット故に違うこともある。

他の人が自分が入った写真をアップロードし、タグすることもできる(タグというのは写真に人物を関連付けること)。プライバシー設定によっては自分がタグされている他人の写真も自分のプロフィールから見えるようになる。上の例では飲み会に森伊蔵が出てきて一人盛り上がる私が写っていた(写真自己規制)。

自分の趣味をポスターなんかでアピールする人もいる(CC)。Facebookだと、自分な好きな音楽・映画・言葉を登録したり、好きなバンドのファンになったりできる(何のファンかは友達などに見える)。

例えば日本酒が好きならSakeグループに入ってもいい。他の日本酒好きと知り合うこともできるだろう。

プライバシー

Facebookでよく問題となるのがプライバシーだ。メンバーは自分の情報を友達などに見てもらいたいが、誰にでも見せたいわけではない。上の例で言えば、ホワイトボードはドアの外=同じ寮の人は見れる、写真・ポスターは室内=友達しか見えない、という風になっているのが普通だ。

とはいえ、物理的にドアが存在するわけではないので、その区切りは自分で設定することができる。会社の人にはプライベートの写真は見せないとか、親しくない知り合いにはWallにも書き込ませないとかいう風に設定する。

友達まで、友達の友達まで、同じ学校の人といった大まかな設定から、ユーザーごと・リストごとの細かい設定まで可能だ。デフォルトではかなりの部分が一般公開になっているので、新しく始める場合にはプライバシーの設定に注意したい(アカウント>プライバシー設定)。

ポーク

Facebookの分かりにくい機能にPokeがある。Pokeというのは突っつくことだが、これはワン切りのようなもので、相手に自分がアクションをとったことだけが分かる。それを見てどうするかは受け手次第だが、頻繁にやると単なる変質者にしか見えないので注意。

フレンド

Facebookを始めると色んな人からフレンド登録申請がやってくるようになる。特に知らない人から来ると最初はビックリするが無視して構わない。間違って押したとか、向こうも使い方が分かってないとか、(女性なら)単なるナンパであることが多い。

ではフレンド登録は慎重にかというとそういうわけではない。会ったことがある人は登録というのが普通で、アメリカ人なら500とか1000とかフレンドがいることが多い。もちろん全員を同じように扱う必要はなく、上述のプライバシー設定を活用するとよい。

ありがちな例としては十年前の同級生が突然フレンドになって、今の友達に知られたくないことを壁に書き始めるとか、昔の卒業アルバムの写真にタグしはじめるなどという災害がある。

名刺・ローロデックスとしての利用

以上のようにFacebookは基本的に自意識過剰な大学生のためのSNSなわけだが、そんな時期を過ぎた人にとっても利用価値がある。

一つは名刺としての利用だ。Facebookは本名と自分の写真で登録する(注:それ以外のプロフィールは著しく胡散臭いのでやめたほうがいい)ので名刺の代わりになる。イベントなどで会ったときに名前だけ教えておけば、検索して簡単に(Facebook)フレンドになれる。

そこから他の情報を交換することもできるし、後で連絡する時にも便利だ。ステータス更新をしていれば相手に忘れられないという効果もある(あまり更新頻度が高いと邪魔で隠されること必至なので避けた方がいい;コロラリーとしてTwitterの更新をFacebookのステータスと同期するのもお勧めしない)。

逆に自分のフレンドリストは高機能なローロデックスとして利用できる(写真はCC)。時々自分の知り合いの近況を眺めつつ連絡をとってみる。年賀状を書くようなものだ。

Twitterとの違い

ではFacebookとTwitterの違いは何か。一番の差は利用目的だ。Facebookは例え薄い関係であっても現実に知っている人を登録、管理するものだ。面識のない人を登録することは基本的にない。デフォルトのプライバシー設定は段々緩くなってきているが、あくまで友達の友達まで公開といったレベルが基本だ。これについては以前「Twitterでは「つぶやく」な」というポストで述べた。

ではTwitterがFacebookのステータス更新やMixiの日記と違うのは何か。それはTwitterの仕組みの根底にある一方向性だ。従来のSNSでは友達になるためには相手の承認が必要だ。昔の友達を発見したり、最近会った人を見つけたりするのには役立つが、あくまで既存の人間関係を補完するものに過ぎない。見ず知らずの人間が友達リストにたくさんいる人は少ないだろう。それはまさに「友達」リストなのだ。

Twitterがデフォルトで誰にでも見え誰でもフォローできるのに対して、Facebookはあくまで仲良しグループでやりとりしたり、昔の知り合いを探したりするためのネットワークだ。現実の交友関係が基礎となっている。

もちろんTwitterで知りあった人と実際にあってみることもあるし、Facebookで友達の友達と知り合うこともあるのでその境界は曖昧だが、システムの違いはネットワークの形成に影響を与える

冒頭のFacebookが流行っているらしいのでアカウントを作ってみたが使い方が分からないというのはその典型だ。既存のネットワークを管理するのが基本なFacebookは自分の知り合いもFacebookにいなければ活用出来ない。TwitterなどでFacebookフレンドを募集してもいいが、フレンド同士は面識があるという想定のもとで作られたシステムなのでどうしても使用時に違和感が出てくる。これはまず面白そうな人を一方的にフォローしてみるTwitterとは対照的だ。現状では外国人の知り合いが多いのでなければ突然Facebookを活用してみるというのは難しいかもしれない。