アメリカのクレジットカードフィー

Credit-Card Fees: Retailers Are Fighting Back – TIME

Americans are being forced to pay significantly higher swipe fees whenever they use their credit cards than any of their peers in the industrialized world, according to a report by the Merchants Payments Coalition.

アメリカではクレジットカードを利用した際のフィーが有意に高いそうだ。記事によれば購入価額の2%に当たり、これは他の数倍にもなるらしい。

不思議なことに、記事では何故そうなっているのかについては言及されていない。それを説明しないでどうしてフィーが高すぎるか議論できるのだろうか。クレジットカード業界が寡占的であるのは事実だが、それはどこの国でも大差ない。VisaとMastercardがほぼ全てといってもよい。

アメリカと日本の違いを考えればフィーの差がどこから来るかは明白だ。アメリカの消費者は基本的に現金を持っていない。カードが使えることを当然だと思っているし、多額の現金を所持するのは危険だとされている。お店側も同様で多くの顧客はカードで買い物をすると見越しており、カードを受け入れないことは大きな売上のロスを意味する。また、商店主にとってもキャッシュレジスターに多額の現金を持つことは防犯上望ましくない。よってお店側は高めのフィーを払ってでもカードを受け入れるようになる。カードが使えないのは小額決済がメインな飲食店ぐらいである。この意味での比較的高額なフィーは特に問題ではない。

The merchants contend that if interchange fees are lowered, they would pass on the cost savings to consumers through lower prices for goods — at least that’s the theory.

加盟店はフィーのために小売価格が上がっていると主張しており、ロビー活動をしているようだが、これは非常に怪しい主張だ。費用が価格にどのような影響を及ぼすかは市場の構造に依る。完全に競争的であれば、限界費用=価格なので完全に消費者へ移るが、市場支配力がある場合には異なる。消費税をかける場合同様に、需要の弾力性や価格差別の有無によって決まる。極端な話、例えば、ある商品に対し消費者がいずれも一万円支払う意志があるなら価格は費用に依らず常に一万円であり費用の小売価格への影響はゼロだ。

時価総額推移

ニューヨークタイムズにアメリカにおける主要金融機関の時価総額推移を示したムービーがあった:

How the Giants of Finance Shrunk, Then Grew, Under the Financial Crisis – Interactive – NYTimes.com

How the Giants of Finance Shrunk, Then Grew, Under the Financial Crisis

How the Giants of Finance Shrunk, Then Grew, Under the Financial Crisis

各金融機関の面積が時価総額を表しており、市場全体の縮小の様子から個々の銀行の相対的な大きさまで視覚化されている。短いムービーなどで是非ご覧あれ。

しかしこの配色は頂けないなぁ。

生命保険の証券化

ウォールストリートの投資銀行が新たな金融商品の開発を行っている:

Back to Business – Wall Street Pursues Profit in Bundles of Life Insurance – Series – NYTimes.com

The bankers plan to buy “life settlements,” life insurance policies that ill and elderly people sell for cash — $400,000 for a $1 million policy, say, depending on the life expectancy of the insured person.

基本となるのは生命保険だ。現在生命保険に加入している人からその保険を買い受ける。

That is because policyholders often let their life insurance lapse before they die, for a variety of reasons — their children grow up and no longer need the financial protection, or the premiums become too expensive. When that happens, the insurer does not have to make a payout.

加入者の中には加入し続ける理由がなくなったり、保険料が高すぎたりで途中で解約を望む人がいるのに対し、

Insurance companies, they note, offer only a “cash surrender value,” typically at a small fraction of the death benefit, when a policyholder wants to cash out, even after paying large premiums for many years.

保険会社は途中解約者に非常に小さな金額しか支払わない。高齢や病気により死ぬ前にお金が必要なひとも該当する。それら途中解約を望む加入者は引き続き保険料を支払ってくれる人を求めている。買い取った人は加入者に一定の金額を支払った上で保険料を納め、元々の加入者が死亡した際に保険金を受け取る。早く死亡すれば利益が大きく、長生きすれば利益が小さくないし損失を出す金融商品だ。

Then they plan to “securitize” these policies, in Wall Street jargon, by packaging hundreds or thousands together into bonds.

投資銀行はこの商品にお得意の証券化を行う。複数の保険契約を合わせて債権として証券市場での売買を可能にする。

“These assets do not have risks that are difficult to estimate and they are not, for the most part, exposed to broader economic risks,” said Joshua Coval, a professor of finance at the Harvard Business School. “By pooling and tranching, you are not amplifying systemic risks in the underlying assets.”

この商品は、保険計算でリスクを推定できるし、他の金融資産の価格変動と相関しないので魅力的なようだ。

In many ways, banks are seeking to replicate the model of subprime mortgage securities, which became popular after ratings agencies bestowed on them the comfort of a top-tier, triple-A rating. An individual mortgage to a home buyer with poor credit might have been considered risky, because of the possibility of default; but packaging lots of mortgages together limited risk, the theory went, because it was unlikely many would default at the same time.

While that idea was, in retrospect, badly flawed, Wall Street is convinced that it can solve the risk riddle with securitized life settlement policies.

しかし問題も多い。まず挙げられているのは、この手法が現在の不況をもたらしたサブプライムと同様の手法であることだ。

But even with a math whiz calculating every possibility, some risks may not be apparent until after the fact. How can a computer accurately predict what would happen if health reform passed, for example, and better care for a large number of Americans meant that people generally started living longer? Or if a magic-bullet cure for all types of cancer was developed?

またリスクが計算できるという前提も疑わしい。健康保険制度の改革やガンの治療法の発見などが起きれば生命保険を元にした商品の価格が暴落するのは間違いない。

それ以外には二点ほど大きな疑問がある。一つは、この商品の取引が市場の効率性を高めるがゆえに利益を生むわけではないことだ。利益が生まれる最も大きな理由は、前述の通り、生命保険の途中解約が経済的に不利であることだ。これは保険会社が保険の引き継ぎを想定していないことに起因する。もちろん計算に入れていないことをもって保険会社を批判するのは結構だが、単に保険会社から投資銀行にお金が移動しても社会的な余剰は増えない。また、保険会社側もこのような取引が一般化すれば保険料の増額に踏みきるだろう(保険契約の引き継ぎを完全に禁止するのは現実的でない;お金渡して本人に払わせれば継続できる)。引き継ぎによって最大の利益を得るのは身寄りのない高齢者や死期の近い病人であり、保険料の増額の影響を最も強く受けるだろう。

もう一つの問題はインセンティブだ。保険金殺人などというように、生命保険を赤の他人が購入することは潜在的な問題がある。ここで提案されている生命保険を用いた証券を購入した人々は元々の契約者が早く死亡することによって利益を得る。これがどう社会的に許容されるのかも興味深い。

Bill Me Later

Bill Me Laterを利用する顧客の平均購買価額は通常のクレジットカードを利用する顧客のそれに比べ有意に高いそうだ。Bill Me Laterというのはファイナンスオプションの一つで、基本的には支払いをずらす代わりに利子を払うというものだ。

Live From eTail: Alternative Payments Becoming Mainstream | PayPal, Bill Me Later, JTV.com.

Giving ballpark figures, Wolansky said Orvis’s average online order is about $150. But the average order for Orvis customers using Bill Me Later is $175. And those Bill Me Later customers who take the 90 days same-as-cash option spend more than twice that amount, just under $400.

Orvisはアウトドアアパレル関連の通販会社。この記事によると顧客全体の平均購入額$150に対し、Bill Me Laterを利用する顧客は平均$175消費する。さらにBill Me Laterの90日間以内に支払えば利子がかからない”the 90 days same-as-cash”オプションを利用する顧客にいったっては平均$400近くも使うそうだ。

“The 90 days same-as-cash”オプションを利用する人の平均がBill Me Later利用客の平均から大きく乖離しているのは、実際に90日以内に支払い(返済)する人が少なく、かつそのグループの支払額が非常に高いためだ。期日以内に支払う人の割合は1/4程度だと言われている。

ちなみに、90日以内に支払いがない場合には購入日に遡って利子が計算されるのが通例だ。その場合の利率は24%以上になる。