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フランスがトービン税を支持

トービン税自体の是非よりも、大統領が自らその単語を利用していることが驚きだ。日本の政治家がトービン税を持ち出すなんて全く想像できない。

BBC NEWS | Business | Sarkozy to press for ‘Tobin Tax’

Mr Sarkozy wants a levy known as a Tobin Tax to be applied to every financial transaction.

The move is aimed at cutting excessively speculative trades and encouraging long-term decision-making.

サルコジ仏大統領が投機抑制のためにトービン税の導入を呼びかけている。

But senior EU officials told the BBC that the chances of getting a global agreement were “less than minimal”.

実際に世界的な導入がなされる可能性は低いとしているものの、政治の主流に取り上げられたのは大きな出来事だ。

トービン税とは国境を通貨取引に非常に小さな税金を掛けるという案だ。税率は元々1%が提案されているが0.005%まで様々だ。投機家以外にはほとんど影響を及ぼさない額だが、一日に大量の通貨を売り買いする投機家にとっては大きな障害となる。

Foreign Exchange Trade

元々の目的は為替市場の安定だが、通貨の取引高は一日3兆ドルを越えており僅かな税率であっても莫大な税収が見込める。そのため、主に途上国支援・貧困根絶・環境改善などを目指す多くの団体が税収目当てにトービン税の導入を訴えている。記事中でも

While it was originally supposed to be used for aid for developing countries, it could now be used to fund some of the bailouts in the financial industry or the multi-billion dollar stimulus packages under way to kick-start economies around the world.

そもそもの目的が途上国支援かのように扱われている。確かに世界規模の公共財の提供にはまたとない税金ではあるが、先の引用にあるよう多くの国々の協力が必要であり実際に導入される見込みはない。

タックスヘイブン

タックスヘイブン(租税回避地)による税収減についてEuropean Financial Service Technology Newsから:

Tax havens: Keeping the rich richer whilst devastating the poor

The cost of tax havens' from Financial Services Technology

The cost of tax havens' from Financial Services Technology

特に開発途上国における国外への不当な資金流出による税金ロスは先進国による援助の十倍に渡るという部分は刺激的だ。アメリカにおいては一千億ドルの税収ロスだとされている。

しかし、租税回避の問題はタックスヘイブンには止まらない。大統領選の際にはアメリカにおける法人税の高さが議題の一つに上がった。アメリカの法人税は35%で他の国々に比べて高すぎるというものだ。しかし、実効的な税率を計算するとアメリカは全く税率の高い国ではない:

Corporate Tax Revenue As % of GDP from the Wonk Room (Think Progress)

Corporate Tax Revenue As % of GDP from the Wonk Room (Think Progress)

法律上の税率は35%でもGDP比でみれば2%強に過ぎず日本と大差ない。これは税法上の抜け道によるものだ。例えば、多くの企業は設立してからしばらく全く利益を生まない。この間の損失は繰越税金資産(deferred tax asset)として計上して、将来利益が出た場合に相殺する。このように様々な方法で税金の支払いを避けることができる。タックスヘイブンが絡むような国際取引においては、移転価格を利用してより巧妙に租税回避ができる。

結局のところ、法人税・所得税という枠組みで基本的税収をまかなうのは無理があるように思う。そもそも利益という多くの場合社会的にプラスである指標に税金をかけるというインセンティブ上の問題に加え、会計上定義が難しいという問題もある。徴収が簡単な消費税や、外部性対策にもなる炭素税のようなものに出きるだけシフトしていくことが必要だろう(そもそも途上国では国民の所得の正確な把握が困難であり直接税は適さない)。