欧州新聞社のオンライン戦略

新聞の話題が続いているが、ヨーロッパのストーリーは珍しいので取り上げたい。

Lessons for U.S. Media From European Paid-Content Plays

Le Monde in France, for example, has been charging for premium content since 2002, and has racked up 100,000 subscribers steadily paying $8 a month — even though its traditional newspaper circulation is barely more than 300,000.

フランスの代表紙であるLe Mondeはプレミアムコンテンツに対して月$8相当の料金を課しているが、十万人もの顧客がいるそうだ。これは紙媒体の購読者の三分の一で相当な数字だ。英語ではなくローカルな情報を伝える点でアメリカの新聞社に比べると利益を上げるやすい面はある。これは日本にも当てはまるはずだ。

Le Figaro’s approach, 14 months in the making, keeps the main newspaper content free but offers two other options at $10 and $20 a month. Premium users get access to in-depth information, special offers, twice-daily newsletters, roundtable discussions with journalists, the opportunity to see their own content on the home page of the site and a concierge service that can arrange everything from theater tickets to shirt cleaning.

Le Figaroは基本的な内容を無料で公開した上で$10/$20相当の二段階のオプションを用意している。ここで面白いのはそのプレミアムコンテンツの内容が単なる情報に留まらないことだ。記事ではジャーナリストとの討論やコンシェルジュサービスが挙げられている。

Two regional titles in Germany, Berliner Morgenpost and Hamburger Abendblatt, have put up pay walls around premium content. But two big national titles, Bild and Die Welt (owned by publishing company Axel Springer), are keeping their websites free while selling iPhone-app subscriptions for $2 to $5 a month.

ドイツではBerliner MorgenpostとHamburger Abendblattがペイウォールを採用する一方で、大手であるBiltとDie Weltはウェブを無料でiPhoneアプリを$2から$5で提供しているとのこと。これは課金の容易さ・iPhoneを利用した価格差別の観点からも妥当な戦略だ。

The Guardian, Britain’s most-visited newspaper website, launched a $3.73 iPhone app — despite outspoken rejection of the pay-wall model — it sold 70,000 in the first month.

The Gurdianも同様のiPhoneを用いた戦略を採用している。

“In the long run, though, the industry has no choice. It has to find a way to get people to pay for content. It’s a great experiment.”

どの新聞社にも共通しているのは、長期的にはデジタル化に対応するしかないと理解した上で如何に収益をあげるかを試していることだ。日本でも日経による本格的なデジタルコンテンツの提供が始まったが既に大きく遅れを取っている。寡占的な企業がイノベーションを採用しないというのはよく知られた話だ。競争政策を含めた対策が必要かもしれない。

ホワイトスペース特区

久しぶりに○○特区というフレーズを聞いた。色々な特区が過去に提案されてきたが結果がどうであったのか興味がある。ちなみに昨年末の第二十一回認定では以下のようなものが認定されている:

  • 釧路市:釧路市阿寒湖温泉地区共生型福祉サービス特区
  • 遠野市:遠野市民センター 学びのプラットホーム特区
  • 市川三郷町:より安全で安心できる給食特区
  • 南国市:南国・土佐のまほろば どぶろく・リキュール特区
  • 四万十町:四万十町どぶろく特区
  • 多良木町:多良木町どぶろく特区

あまり斬新なものは見当たらないというか、半分どぶろくなのだが、どうなっているのだろう。

今夏にも「ホワイトスペース特区」 空き電波で地域活性化

今回取り上げられているのは、ホワイトスペース、即ち使用されていない電波帯に関する特区だ。

内藤副大臣は「ホワイトスペース特区を先行的に始めるエリアを通じ、研究開発や実証実験を開始し、制度化を進めていきたい」と語った。

もちろん現在使用されていない電波を利用するというのは素晴らしいことだ。

テレビなど放送電波の空いた周波数帯を有効活用し、地域経済の活性化を図る「ホワイトスペース特区(仮称)」を7月以降に創設する方針を明らかにした。

しかし、その有効活用というのは「地域経済の活性化」であると結論付けるのは早計だ。本当に有効活用するのであれば、開いた周波数帯をオークションするのはするのはどうだろう。一番多くのお金を払うつもりのある団体は最もその周波数を必要としている、つまりその周波数から多くの価値を引き出せる集団だ。もちろん「地域経済の活性化」が優れた利用方法だと知っている団体は結果的にその周波数を取得し活用するので問題ない。限られた資源を有効活用できるだけでなく、財政難の政府の収入にもなって一石二鳥だろう。

曖昧な目的へ貴重な資源を無償供与するぐらいなら、オークションによりそれを一番活用できる事業者に割り当てた方がよい。これはホワイトスペースに限らず、テレビ局などが専有する周波数帯についても当てはまるはずだ。