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ホワイトスペース特区

久しぶりに○○特区というフレーズを聞いた。色々な特区が過去に提案されてきたが結果がどうであったのか興味がある。ちなみに昨年末の第二十一回認定では以下のようなものが認定されている:

  • 釧路市:釧路市阿寒湖温泉地区共生型福祉サービス特区
  • 遠野市:遠野市民センター 学びのプラットホーム特区
  • 市川三郷町:より安全で安心できる給食特区
  • 南国市:南国・土佐のまほろば どぶろく・リキュール特区
  • 四万十町:四万十町どぶろく特区
  • 多良木町:多良木町どぶろく特区

あまり斬新なものは見当たらないというか、半分どぶろくなのだが、どうなっているのだろう。

今夏にも「ホワイトスペース特区」 空き電波で地域活性化

今回取り上げられているのは、ホワイトスペース、即ち使用されていない電波帯に関する特区だ。

内藤副大臣は「ホワイトスペース特区を先行的に始めるエリアを通じ、研究開発や実証実験を開始し、制度化を進めていきたい」と語った。

もちろん現在使用されていない電波を利用するというのは素晴らしいことだ。

テレビなど放送電波の空いた周波数帯を有効活用し、地域経済の活性化を図る「ホワイトスペース特区(仮称)」を7月以降に創設する方針を明らかにした。

しかし、その有効活用というのは「地域経済の活性化」であると結論付けるのは早計だ。本当に有効活用するのであれば、開いた周波数帯をオークションするのはするのはどうだろう。一番多くのお金を払うつもりのある団体は最もその周波数を必要としている、つまりその周波数から多くの価値を引き出せる集団だ。もちろん「地域経済の活性化」が優れた利用方法だと知っている団体は結果的にその周波数を取得し活用するので問題ない。限られた資源を有効活用できるだけでなく、財政難の政府の収入にもなって一石二鳥だろう。

曖昧な目的へ貴重な資源を無償供与するぐらいなら、オークションによりそれを一番活用できる事業者に割り当てた方がよい。これはホワイトスペースに限らず、テレビ局などが専有する周波数帯についても当てはまるはずだ。

Googleの市場支配力

ちょっと前に「タブレットと新聞業界 by Google」というエントリーでGoogleが広告市場で行使する市場支配力に触れた:

Googleが圧倒的なシェアを握る広告市場において、Googleはオークションの設計を通じて市場支配力を行使できる

この点は意外に理解されていないような気がするので、関連するリンクと共に紹介したい。

The University of Chicago Law School Faculty Blog: Google’s Search Auctions and Market Power

Google-Yahoo!やYahoo!-Microsoftの提携の際に問題となるのは検索市場の競争環境だ。検索自体は無料なので普通の意味での価格支配力は問題とならない。よって焦点となるのは検索結果に対する広告市場となる。ここでのGoogleの弁護は基本的に次のラインだ。

The Journal (Wallstreet Journal) has drunk the Google Kool-Aid on pricing in search markets: “search providers like Google and Bing also don’t determine ad prices, which are set through auctions.”

GoogleやBingのような検索エンジンは広告スペースをオークションで売却するので自分たちで価格を決めているわけではない(から価格支配力は問題にならない)という主張だ(ちなみにdrink the Kool-Aidというのは安易に他人の言う事を信じてしまうという意味だ)。

しかし、このことは検索エンジンと広告オークション市場が競争政策とは無縁であることを意味しない。ある商品のオークションが一つの場所でしか行われていないか、複数の場所で行われているかはその価格に影響を及ぼすということだ。例えば、入札者が一人でオークション主が一人なら全ての余剰を最低価格を通じて回収することも(理論的には)可能だ。ここでは三つほどの懸念が提示されている:

  1. 最低入札価格の設定
  2. 広告スロットの数の制限
  3. 他社(Ask.com & AOL)とのバンドリング

1,2は価格支配力を行使するためのチャンネルだ。オークション主は最低入札価格を挙げたり、スロットの数を減らすことで落札価格に影響を与えることができる。もちろん、独占それ自体は違法ではないのでこの事自体は問題とはならないが、オークション故に価格支配力はないというのは間違いとなる。よって検索エンジンの(水平的な)契約・合併に対して競争当局が関与する必要があるということだ。

Google-Yahoo Ad Deal is Bad for Online Advertising — HBS Working Knowledge

Google’s purchase of substantial advertising inventory from Yahoo would increase prices for many advertisers that currently buy ads from Yahoo.

こちらは、Google-Yahoo!の協定に反対する文章として書かれたものだが、両者の取り決めによる広告スポット価格の上昇を指摘している。ちなみに前者を書いたChicago Law SchoolのRandal Pickerも後者を書いたHBSのBenjamin EdelmanもGoogle-Yahoo!の件に関してMicrosoftにコンサルタントとして雇われていた。Yahoo!-Bingに関してどのような意見なのかも気になる(Googleとはシェアが違うということか)。

私もGoogleのサービスを数多く利用しているし、Googleの社会貢献は素晴らしいと思うが、それとこれとは別の話だ。

発着枠の「配分」

滑走路拡張による羽田の新発着枠を日航へ多めに配分するというニュース:

NIKKEI NET(日経ネット):経済ニュース −マクロ経済の動向から金融政策、業界の動きまでカバー

国土交通省は4日、10月の滑走路拡張に伴って増やす羽田空港の国内線発着枠(1日37便)の配分を固めた。全日本空輸に11便前後、日本航空に8便前後 を割り振る。日航は経営体力が低下し、リストラに専念する必要があると判断。日航より全日空を多くする。スカイマークなど新興航空会社にも全体のおよそ半 数と手厚く配分する。

一見、配分内容に目がいきがちだが、ポイントは国土交通省が発着枠の配分を決めて無料で航空会社に提供していることだ。発着枠の配分に関する審議会の資料も国土交通省のサイトで公開されている(毎度のことだが、こういう情報をニュースに載せないのはどういうことなのだろう)。次のページにある論点整理なんかは各社の考えがわかりやすい。話題のJALの意見を見てみよう。

航空:羽田空港発着枠の配分基準検討懇談会(第4回) – 国土交通省

今回増枠数(37便/日)では必要な地方路線ネットワークの構築、増便には不十分であり、最終形(72便/日の内数)で最大限国内線に配分されることが必須。(JAL)

地方便を優先してほしいという姿勢が伺える。

地方路線ネットワークの維持・拡充の観点から、前回回収分(20便)を従前使用社(大手)にまず戻し、地方路線の増便に充てるべき。(JAL)

そして地方便の優先については自分たち大手に便数を戻せと主張している。ちなみにこの論点整理には航空会社と全空協の意見しか掲載されていない。

既に各所で提案されているが、発着枠にはオークションの導入が必要だろう。オークションにより社会的に望ましい発着枠の分配が可能になるし、政府収入も生じる。高い値段で売れた場合にはそれにより更なる拡張を行えばよい。

地方便の維持や共謀などの問題はあるが、それはオークションのデザインや競争政策として対応できる。また、配分ルールが明らかになるので、官僚・政治家・航空会社などの癒着を防ぐという大きなメリットがある

アメリカでも導入はなかなか進んでおらず(参考:Court Order Delays Auction of Landing Slots at Airports – NYTimes.com)道のりは遠いが莫大な社会的利益があり政策転換が期待される。

ダラー・オークション

しばらく前からSweepoでお馴染みのダラー・オークションが実際にどう儲かるのかをよく示したビデオがある:

Aguanomics: The Political Economy of Lobbying

ダラー・オークションでは主催者が$1をオークションする。最も高い入札を行った参加者が$1を獲得するが、入札者はそれぞれ自分が最終的に提示した額を主催者に支払う。最適な行動はそもそもオークションに参加しないことだが実際には上記のビデオのように主催者がオークションにかけた物品以上の収益を挙げることが多い。参加者同士が手を組めば逆に参加者が大きな利益を得られるが参加が自由なら儲かると思って入ってくる人が出てしまう。

Swoopoというオークションはこのダラー・オークションに入札フィーを加えたビジネスモデルを展開している。繰り返し参加すればこのオークションに参加することが利益にならないことは分かるだろうが、新しい客が入ってくる限り(そして違法化されない限り)は続くのだろうか。

最も高価な検索キーワード

MediaPostに今最も高価な検索キーワードが紹介されている:

MediaPost Publications Report: Top Keyword Price Nears $100 Per Click 10/15/2009

先月の最も高いキーワードはGoogleとYahoo!で同じでなんとそれぞれ1クリック$99.44と$60.68となっている。そのキーワードとは、

The report released Wednesday pegs Mesothelioma as the highest-selling keyword in September.

Mesotheliomaだ。スペルチェッカーが文句を言うぐらいなので余り知られていない英単語かもしれないが、中皮腫のことだ。中皮腫はアスベスト被爆によって生じる(悪性)腫瘍で極めて生存率が低い。

As for the word “mesothelioma,” it seems lawyers have ramped up paid-search ads based on lawsuits related to the asbestos-causing lung cancer.

Mesotheliomaキーワードを購入しているのは主にアスベストを利用していた雇用者への訴訟を専門にしているローファームと考えられている。多くの人が利用するキーワードではないが、顧客を見つけるには極めて効果的な方法である。