Sonyは何の会社?

何やらSonyについて盛り上がっているようですが、Sonyが今どんな会社かはIR情報を見れば分かる。

これが2010年第二四半期のビジネス分野別売上だ。青い部分がSonyと聞いてまず思い浮かぶ電気製品の類で、緑はPlayStationのようなゲーム機本体やゲームソフトだ。後はSony PicturesやSony Music Entertainment、そしてソニー生命・ソニー損保・ソニー銀行といった金融業務となっている。こうみると一般の消費者のイメージ通りエレクトロニクスとプレステの会社かな?と思われる。

しかし、会社にとって売上よりも大事なモノがある。それは利益だ。各セクションの売上高と利益が上のグラフにまとめられている。利益を一番稼ぎ出しているのは金融業務で、エレクトロニクス関係は利益率が相当低い事がわかる。映画にいたってはマイナスで、かろうじてプラスのゲーム関係もようやく黒字化といったところだ。IBMのように収益性の低い業務を切り離すというのもありえない話ではない(但しソニーの強みが本当に金融なのかと言われると…)。

有名人カードビジネス

何故かくっだらない記事を眺めていたら、あまりにもせこいビジネスの話が出てきて面白かった。

Pre-Paid Kardashian Kard is Not Your Best Option

どうしようもないゴシップ記事なんだけど目が止まったのはデビットカード。

カーダシアン姉妹(※)が作ったプリペイド式のデビットカードだが、消費者や専門家の批判ですぐに取りやめになったそうだ。そもそも誰がこんなカード作るんだよ、と思いつつもどんな内容だったのかチェックしてみるとなかなか強烈だ。

  • 半年のフィーを含めた初期費用が$59.95
  • 月会費$7.95
  • 請求書を払う度に$2
  • ATMから現金を引き出す度に$2.50
  • サービスセンターに電話する度に$1.50

カード自体は明らかに頭の緩めな10代をターゲットにしており、商魂たくましいとしか言いようがない。プリペイドのデビットカードをお小遣い用に使うというのはそれほど悪くないアイデアだが、プリペイド式ならいくらでも選択肢はある。また、子供に渡すにしても、普通のチェッキング口座にデビットカードのほうが余程勉強になりそうだ。

日本でもクレジットカードが普及すると、子供やオタク(AKBとかジャニーズあたり)を狙ったやたらと高くつくカードがどんどん出てきそうだ。AKBのために48枚のカードを作ったなんてスレが登場する日も遠くはないか。

(※)何故有名なのかと言われるとよく分からない有名人。パリス・ヒルトンとかの亜種か。

おかしなことばかりの「奨学金」

どうしようもない記事なのでブログでも。

奨学金の条件「社会貢献活動への参加」追加へ

文部科学省は、国費を財源とする無利子奨学金の貸与を大学生らが受ける際の条件について、成績や世帯収入に加え新たに「社会貢献活動への参加」を追加する方針を固めた。

税金が入った無利子奨学金を受ける際の基準に社会貢献活動が追加されるというニュースだ。ツッコミどころがありすぎて何から始めたらいいか分からない程のダメさ加減だが三点ほど。

名称がおかしい

まずは、何度も指摘しているが、「奨学金」という言葉遣いだ。無利子奨学金というのはあくまで貸与であって、政府の補助は「無利子」の部分でしかないはっきり教育ローンと呼ぶべきだ

目的に対して手段がおかしい

次に、この政策はその目的を果たすと思えない。

同省は、公費で学ぶ学生に社会還元の意識を根付かせたいとしている。

どうも希望と現実が混同されているようだ。社会貢献活動を義務付けると社会還元の意識が芽生えるというメカニズムを教えて欲しい。税金を払わせると寄付の心が芽生えるだろうか。

目的自体がおかしい

また、目的を達成するかどうか以前にその目的の設定に問題がある。奨学金や教育ローンの政策目的は社会的に望ましい(教育)投資に対して、補助金や流動性を提供することだ。決して「社会還元の意識を根付かせる」ことではない。条件・義務を増やすことはこの本来の目的に反するし、二つの目的があるとそれが達成されているかを測定するのも難しくなる。

ちなみにこのように一つの政策で複数の目的を達成しようという試みは、しばしばやりたいことがあるにも関わらず他人を説得できる策が思いつかないときに行われる。この場合であれば、「社会貢献活動を増やす」という目的があるのに、それを達成する有効な策がないために教育ローンという入れ物を利用している(どっかの外郭団体が無料ボランティアをほしがっているのだろうか?)。

社会貢献活動がそんなに重要なら、兵役のように全国民に義務付けてしまうこともできる(みんなが社会還元意識をもったほうがいいだろう)。それをしないのはそれだと支持を得られないからで、かわりに立場の弱い教育ローン受給者だけに絞ったのだろう。

最期に一文だけ繰り返し引用する。

成績や世帯収入に加え新たに「社会貢献活動への参加」を追加する方針を固めた

貧しい家庭の出身で一定の成績を修めている人にたった今から(!)社会貢献をしろと言っているようにしか読めない。よくもまあそんなことが言えると思う。

Bloombergのオンライン戦略

Bloomberg(ブルームバーグ)といえば、金融機関向けの端末をリースする会社だが一般向けのニュース配信にも乗り出そうとしているそうだ。

Bloomberg’s move into consumer media

Said Doctoroff, “We want to gain a greater audience for Bloomberg News, which translates into greater influence, which translates into more market-moving news, which enables us to sell more terminals.”

CEOによるとBloombergがニュースを一般に公開することでより大きな影響力を持ち、それが端末のさらなる販売につながるとのこと。

Those professionals really don’t care if the news is on a Bloomberg website or not; as far as the market is concerned, the information is public as soon as it hits the terminal in any case.

これは妥当な戦略だ。まず、ニュースは一度公開されてしまえば、それに従って市場取引が行われる。そもそもニュース自体には著作権の保護はほぼ(※)ないわけだから、例えネットに公開しなくても誰かがそうするのを止めることはできない。よってそうするのがBloomberg自身であってもいい。

(※)一応、Hot News Doctrineなんかはあるが…。

The web is simply too big: no matter how much beefed-up Bloomberg content is “dumped” onto it, that’s never going to suddenly make it a much more attractive alternative to a purpose-built news and information terminal designed very specifically for financial professionals.

Bloomberg自身がニュースをウェブに公開することでウェブ全体の情報が優位に増えるわけではなく、自社の情報端末の売上がそれによって左右されることはない。ネットに情報があるなら端末を買わないという客はすでに客であるはずはないわけだ。

The point is that Bloomberg can profit from an asymmetry: if a Capitol Hill staffer reads B Gov a lot, she’ll be more likely to talk to the Bloomberg commodities reporter calling from New York or Sao Paulo.

逆に、Bloombergが金融以外の分野で影響力を上げることは、端末を利用するユーザーにとって重要な情報を手に入れる上でプラスに働く

Bloombergは本業である金融機関・専門家という市場への外部性を狙って一般的なニュース配信市場に参入するという形だ。端末が扱う情報は極めて時間にセンシティブなのでこれが可能となる。新聞社や放送局が情報流通経路へのコントロールを失うなかで、それ自体で利益を生むことの難しいニュースを誰が担うのかに注目したい