Twitterの模索

Twitterの収益源」で書き忘れたことがあったので追加。

Twitter Has a Business Model: ‘Promoted Tweets’

Twitterを収益化する上で、豊富な資金を背景に慎重に進めることが重要だが、もう一つキーポイントがある。それは、収益化方法を探る上でもプラットフォームとしての立場をうまく利用することだ。

Twitter is rolling out promoted tweets slowly over the course of the year; initially on Twitter.com, and then to Twitter clients, which can include the ads and get a cut of the revenue.

現在Promoted Tweetが導入されているのはTwitter.comでの検索だけだ。検索結果に若干の広告が含まれることは消費者にとってそれほど抵抗がない。どの検索エンジンも広告を主な収入源にしている。

次のTwitter.comへの広告表示に関しても大きな反発はないと思われる。GMailのようなサービスでもインターフェース上には広告が入っているし、サードパーティのクライアントを使えばいいだけだ。

しかし最後のクライアントへの広告Tweet挿入、つまりTLへの広告導入は大きなステップだ。メールに広告が入るようなものだろう。だが、ここでTwitterは賢い戦略を取っている。広告をクライアント開発者とシェアするというものだ。

この戦略を採用する一つの理由は必要性だろう。Twitterがこれだけ流行ったのには、APIを公開してクライアントを含めたエコシステムを構築したことにある。APIがオープンである以上、いくら広告を挟んでもクライアント上で表示しないようにすることは容易にできるだろう。ユーザーの反発を防ぐだめにPromoted Tweetは広告である旨明記されており単純にフィルターすればよい。

しかし、これは同時にうまい収益化方法をサードパーティに探らせるための仕組みともなる。クライアント開発者は最もユーザーにとって抵抗がない方法を見つけることでクライアント自体から収益を上げなくても利益を出すことができる。これはTwitterにとってはプラットフォーム全体に対する批判を避けつつ開発者にクライアント毎での実験をさせるようなものだ。非常に効果的な方法が見つかればその開発元企業を買収すればよい(おそらく知的財産権で守られるようなものではないので模倣も可能だろうが、プラットフォーム運営や人材確保の観点からして買収が望ましいだろう)。

火山噴火とケニヤ

朝、アイスランドの火山噴火の影響について以下のようにコメントしたところ、現地からの情報を頂いたのでご紹介(ht @tmatsumo & @ryu_saito)。

火山灰の影響で空港に足止めされてる旅行者の苦労が報道されるけど、一番やばいのはアフリカの高付加価値一次産業だよね。取材とかしないのかな。

被害が想定されるのは、船便ではなく航空便が輸送に利用される高付加価値で容量のないフルーツや野菜などだが、特に被害を受けているのはケニヤの切花産業のようだ。

背景|ケニアの切り花産業|主要産業|ビジネス情報|駐日ケニア共和国大使館

ケニアの農業部門の中では、花卉栽培は紅茶に次ぐ第2外貨獲得産業です。年間2億5,000万ドル強を生み出します。そして、5万人~7万人を直接雇用し、150万人強を間接的に雇用しています。

若干古いデータではあるがケニア大使館でも花産業の重要性が強調されている。伸び率も高いようで、現在では一段と重要な産業になっているはずだ。

欧州市場向けの輸出は1970年代に増加し始め、最大の輸入国オランダは、全体量の71%を占めるまでになりました。流通の大半にオークション制が用いられました。英国が20%でこれに次ぎ、さらにドイツが6%で続きます。

輸出先は欧州が殆どで、特にオークションが行われるオランダを通じて輸出される割合が非常に高い。

The Standard | Online Edition :: Emirates increases cargo space for Amsterdam flights

Flower farmers and exporters will get a major boost with the introduction of daily Emirates Airline flights between Nairobi and Amsterdam from May 1.

来月からはエミレーツ航空が首都ナイロビとアムステルダムと間で毎日運行を開始するということになっているなど、ケニヤにとっては明るいニュースもあったがこの状況では予断を許さない。

“The Netherlands is a crucial market for Kenyan flower exporters and the fact that consignments are re-exported to countries as far and wide as Japan and the United States gives flower farmers market diversity out of their European stronghold,” Ahmad asserted.

アムステルダムに輸出された花はそこから日本やアメリカにまで再輸出されているそうだ。

Daily Nation: – News |Volcano in far-off Iceland hurting Kenya

The head of the Fresh Produce Exporters Association of Kenya, Mr Stephen Mbithi, said 3,000 tonnes of flowers and vegetables worth $9 million (Sh693 million) were stuck at Nairobi’s Jomo Kenyatta International Airport.

当然火山灰によるヨーロッパでの航空システム停止はケニヤの産業に深刻な影響を与えている。すでにナイロビの空港に輸出できなくなった花や野菜が大量に留まっている。

The Standard | Online Edition :: Horticulture hit hard as Europe airspace crisis persists

“Our cold stores are filled to capacity and we have no alternative but to start destroying some of the roses on Monday (today),” he said.

貯蔵には限界があり、既に輸送出来ない花の廃棄が始まっている。

Kneppers said the cancellation could not have come at a worse time, as farms were gearing up for Mothers day in three weeks.

花産業は既に母の日に向けて増産に入っており、これ以上悪いタイミングはないとのことだ。

iPadの弱点

iPadに手を出そうかどうか迷っている一番の理由がちょうど取り上げられていた:

Flash, Scratch, Ajax: Apple’s War on Programming

iPhoneの新しい開発者向けライセンスの一部が抜粋されている:

3.3.1 — Applications may only use Documented APIs in the manner prescribed by Apple and must not use or call any private APIs. Applications must be originally written in Objective-C, C, C++, or JavaScript as executed by the iPhone OS WebKit engine, and only code written in C, C++, and Objective-C may compile and directly link against the Documented APIs (e.g., Applications that link to Documented APIs through an intermediary translation or compatibility layer or tool are prohibited).

開発者は決められたAPIのみを利用し、Objective-C, C, C++, Javacscriptの何れかで記述されていなければならず、さらに他の言語を解釈・翻訳して実行するようなインタープリターは禁止されている。これはプログラムを書く側からすれば非常に制限的な取り決めだ。

If Apple wants to prevent competing app stores, it has to keep apps like Ed’s App World from existing.

何故このようなプログラマの手足を縛るような条項が存在するのか。それはAppleが自社のApp Storeと競合するようなプラットフォームをiPhone, iPad上に構築されるのを嫌っているためだ(引用中のEd’s Appというのは原文中で使われているインタープリターのような仮想アプリだ)。

Apple has long been trying to keep specific technologies like Adobe’s Flash off the iPhone and iPad because these technologies have EAW-like features

AdobeのFlashをiPhone/iPad上から排除しているのも同じ理由だ。

Apple’s ban on programmable apps goes beyond just Flash. This week Apple banned Scratch, a widely used educational tool that introduces students gently to computer programming by letting them construct animations.

最近も、教育用ソフトウェアであるScratchが禁止された。Scratchはプログラミングを勉強するために実際自分で簡単なアニメーションを作るソフトウェアだ。これを禁止したい理由は、App Store的なものを構築されるのを防ぐことぐらいしか思い当たらない。

What’s really interesting is that despite Apple’s best efforts to block these apps, there is an enormous EAW-type system that Apple hasn’t had the guts to block: the web. Thanks to so-called Ajax technologies, the web has become a vehicle for delivering app-like functionality (within web pages).

Appleが禁止することが出来ないでいる、App Storeのようなシステムも存在する。それはウェブ上のAJAXを採用したサービスだ。さすがのAppleもこれを禁止することはできない。

And Apple’s Ajax problem will become even worse as HTML 5 comes online, with even better support for web-based apps.

この問題はHTML5によってさらに悪化するとあるが、逆にAppleがHTML5のインプリメンテーションを遅らせる可能性もある。これはMicrosoftがIEで実際に行った作戦であり、絶対にないとはいい切れない。

To me, this is like saying that you don’t care about restaurant closings because nobody in your house knows how to cook. If you can’t cook for yourself, you should care more about restaurant quality. If all of the good restaurants close, good cooks will just make their own good meals — but you’ll be out of luck.

では何故開発者に対する制約をユーザーが気にする必要があるのか。いい比喩が挙げらている。レストランがなくなって困るのはレストランだけでなくそこに食事にくる客も困る。それどころか、自分で料理ができない人ほどレストランがなくなると大変なことになる。プラットフォームにおけるデベロッパーとユーザーの関係も同じだ。

ブックスキャン

スキャニング代行合法化には賛成だが、理由はちょっと違う。

本のスキャニング代行サービスはもうそろそろ合法としようか

だって、代わりにやって欲しいもの(笑)。

スキャン代行合法化のメリットは個々の人間が合法とされている個人複製を外注、分業できることだけではない。本当のメリットは、もし代行が合法でならスキャンされる書籍の権利者・出版社がデジタルデータを提供するということだ。スキャン代行を合法にすることでスキャン代行自体必要なくなる。

理由は簡単でスキャン代行というのは社会的にみて異常に非効率だからだ。既に印刷されおそらく劣化した紙媒体を裁断した上でスキャン、OCRという作業には費用がかかる。だからこそ今回低価格を売りにする業者の登場が話題になった。しかし、代行業者が幾ら費用を切り詰めようと出版社には勝てない。元のデータを持っているのだからそれを販売すればいいだけだ。但し幾つかクリアすべき壁がある。

一つの問題は、単にデジタルデータを販売するだけでは、書籍を購入した人ととそうでないひととの間に価格差をつけられないことだ。紙媒体所有者は再び全額を払いたくないので低価格を望むが、市場のなかで既に紙媒体を所有していてかつ電子化を望む人の割合が小さければ、出版社にとっては単に彼らを無視しているほうが利益になる(均一価格かそもそも電子版を出さない)。しかしこの問題は単に紙媒体を出版社に提出させれば解決する。スキャン代行でも原本は商品価値を失う程度に破壊されるので消費者としても問題はないだろう。

もう一つは、出版社が原本をデータとして保有していない場合だ。実際にそのような例がどれくらいあるのかは知らないが、そういうケースでは出版社自身がスキャンする必要があるかもしれない。しかしこの場合でも、出版社ないし出版社が委託した業者(Googleでもいい)が行えば一度電子化するだけで終わりなので、紙媒体一つずつをスキャンするという膨大な無駄は回避できる

著作権制度は、コンテンツを作成するために私的独占を通じてインセンティブを与える制度だ。どの程度の権利を著作者に与えるかはインセンティブと独占の弊害とのバランスによって決まる

今、本のスキャニング代行という極めて非効率なサービスが注目を浴びているというのはそこに需要があるということであり、それを妨げる制度の弊害が大きくなっているということだ。独占の弊害というコストが増大しているのであれば、ベネフィットが変わっていなくてもそのバランスは再調整される必要がある

引用と剽窃

久しぶりにリファラを覗いたところ名指しされていたので(釣られている気もするが)取り上げてみよう。

どうせならパクられて喜ぶ人の記事をパクってほしい

以前、「剽窃の検証」で説明したが、「ビジネスをしてお金を稼いで社会のためになろう」という記事がkeitaro-newsというサイトにほぼ丸々コピーされたことがあった。こちらから連絡を入れたものの、開き直りとしか取れない発言を連発するばかりで最終的には記事が削除されただけで音信不通となった。

先日、同じサイトが再び他のサイトの文章をほぼ丸写ししたということが話題になった。今回リンクしているのはそれに対する反応だ。

keitaro2272さんの特徴は、参照した記事を大幅にリライトすることだ。元の記事を自分のブログのフォーマットに変換し、わかりにくいと思った部分は大胆に書き換えたり、バッサリ削ぎ落としたりする。

著者の徳保さんは上のようにコピーを行っているサイトの運営者を特徴付けている。私の記事の場合には正直わかりにくくなっているだけだった。

原典へのリンクがあれば、fromdusktildawnさんや青木さんは、こうした記事の書き換えを認めただろうか。fromdusktildawnさんはどうかわからないが、青木さんは「引用」という形式を守ることを求めていたので、おそらく認めなかったろう。

私の考えが推測されているので答えておくと、「書き換え」は「引用」とは異なるので認めない。「書き換え」であるなら少なくとも「書き換え」だと明示するべきだ。別に難しいことではないだろう。これは「書き換え」自体を否定しているわけではない。時折記事の掲載を依頼されるが、その際には「書き換え」は了承している。ちなみに細かな修正以外はその旨表記されるし、実際の掲載前には確認の連絡が入るのが普通だ。

いまのウェブには、編集者が欠けている。カウンター文化が後退し、自分の文章が読まれる場所はRSSリーダーでもtumblrでもいいよ、という感覚が広まってはきたが、一見してパクリだとわかるような「書き換え」まで許容されるようになっただろうか。まだ、そこまでは進んでいないだろう。

編集者が欠けているのはその通りだ。自分の文章が読まれる場所はどこでもいいよという感覚も広がっている。しかし、その延長に自分の文章がパクられてもいいは含まれていないだろう。「進む」という表現はおかしい。

タイトルを変え、本文に手を入れることで、原典のままではリーチし得なかった層に届くようになる、というケースは少なくないと思う。それを「もったいない」と思う感覚は、私の中にもある。が、記事のリライトはハードルが高い。まず認められない。だからゲリラ的にやっていくんだ……しかし当然、それでは叩き潰されることになる。

「タイトルを変え、本文に手を入れ」るというのは編集者の仕事だろうが、その後に自分の名前をつけて売る編集者はいない。どうして「タイトルを変え、本文に手を入れ」た後にその旨を表示して編集者として掲載するという穏当な中間地点は考慮されないのだろうか

keitaro2272さんは、過去の多くの同種の事例とは異なり、剽窃を指摘されてもブログを畳んでこなかった。私はここにひとつの希望を見る。

私は、剽窃を指摘されてもブログを畳まないのはそれが(主に金銭的な)利益になるからだと考えるがどうだろう。法的手段に訴える人はほぼいない。

keitaro2272さんとしては非常に厳しい制約になるが、その自由に使える記事だけをネタ元として、半年くらい更新を頑張ってみてはもらえないか。もし、keitaro2272さんのリライトによって、全く注目されなかった記事が世間で大受けするといった事例が相次ぐならば、「盗用でもいいからネタ元に加えてほしい」というブロガーが少しずつ増えていくのではないかと思う。

この提案には二つの問題がある。一つは「著作者名の詐称もOK」というサイトだけでは同じような運営はできないことだ。多くの人にとって記事を書くために時間を投じるのは何らかのリターンを期待しているからだ。ブログ自体が無料であるかとは関係ない。知名度を上げるでもいいし、広告収入を見込むでもいい。前者であれば少なくとも誰の文章かすら明示されない剽窃はマイナスでしかないし、後者では(将来を含め)トラフィックが発生しなければ意味がない。

もちろん、単に自分の文章を読んでもらえれば満足という人もいるだろう。しかし、それだけの理由でまとまった費用を支払う人はあまりいない。とにかく読んでもらいたくてしょうがないか、機会費用が低いか、時間をかけずに書いている、という状況が多くなるだろうが、そうやって出来た記事をどれだけ読みたいだろうか。

文中で挙げられている2chのまとめ系ブログは確かにとても面白い記事が多い。しかし、署名なしで書き込まれた文章の(リンクなし)転載と、署名のあるブログの記事の盗用を同列に比べるのはどう考えても無理がある。

二つ目は「盗用でもいいからネタ元に加えてほしい」のであればそれはもはや盗用ではないということだ。

どうせならパクられて喜ぶ人の記事をパクってほしい

というタイトルになっているが、それなら確かに誰も文句は言わない。

パクられてもOKな人が世の中には何人もいるのだ。両者をうまくつなぐ仕組みの不在こそが問題なのである。

しかし問題は「パクられてもOKな人」とパクリたい人をつなぐ仕組みの不在ではない「パクられてもOKな人」な人の文章をパクリたいひとがいない(ないし非常に少ない)のだ。著作権に限らず知的財産権は、簡単にパクることができるものを保護する制度だ。それによってパクられることをあまり心配せずに、コンテンツを生産することができる。コンテンツからの利益とそれが配布されることの社会的便益とのバランスをとっているわけだ。一定のバランスを強制するわけでもない。ただ広まって欲しいのであれば転載・改変を許可すればよいだけの話だ。

ウェブの発達は、無料のコンテンツを増やした。これは無料でも広まってくれた方が著者にとってプラスであることが多いからだが、そのコンテンツから著者というタグを取り外してしまうというのは全く別次元の問題だ。自分の作った文章がぱくられてでも流通して欲しいというのは自由だし、現行制度・文化的にも問題なくできる。しかし、全ての文章がそうでなければならないなら世の中に流通するコンテンツは大幅に減ってしまうだろう。