確定申告は必要?

日本ではサラリーマンの源泉徴収は納税意識を希薄にするというような論調もあるが、オーストラリアの場合は逆に進んでいるようだ。

Generating a social surplus

This Budget includes a measure that is long over-due: taxpayers will no longer have to file tax returns.

ついに確定申告の義務がなくなったというニュースだ。

A 2000 estimate by researchers at the University of NSW put the time cost of tax filing at any average of $346 per person (roughly 8.5 hours times the average hourly pay; adjusted to closer to the present day). That comes to a total cost of $3.7 billion per annum to the economy […]

もちろんこの変更には根拠がある。確定申告を行うために平均8.5時間が費やされており、時給から計算すると一人当たり平均346ドル、国全体で37億ドル(おそらくAUD)の費用がかかっている計算になる。

Of course, there is a catch – if you choose this option you will have to accept a standardised deduction ($500 rising to $1000 in a few years). So this is likely to attract lower income households; so the pure financial saving will be less.

義務がなくなっても、収入の高い人ほど確定申告をするため実際の効果は上の額よりは少なくなるが、それでもこれは莫大な改善と言える。

Already, there are claims that this will harm smaller tax agents. If they were existing because of an inefficient government regulation, they are part of the problem.

小規模の税理士が困るという批判もあるが、彼らが非効率な政策ゆえに存在するのであればそれは理由に非効率の解消に反対するのは無理がある。

確定申告を行うことで自分の払っている税金への意識が高まるというのはその通りではある。しかし、同時に確定申告を義務化するのにどれだけの社会的費用がかかるかを考え、「意識が高まる」という曖昧な目的にそれだけの費用をかける価値があるのかを吟味する必要があるだろう。

ミルクにもインフォグラフィック

牛乳パックにもインフォグラフィックスを入れたらどうなるか。

Nutritional facts redesigned

デザインを行っているのはモントリオールのデザイン事務所だ。牛乳パックのデザインとしてはなかなかカッコいい。ちなみにアメリカによくある牛乳のデザインは次のようなものだ:

ちなみにこれはAmazon.comで売られているミルクだ。一体生乳をアマゾンがどう売るのかはよく分からないが、どうも製造元関係者にしか見えない絶賛コメントに溢れている。サイズは1ガロンなので訳3.8リットルとなっている(よって本当は下のボトルの方が上のパックより4倍近く大きい)。まあこの二つがスーパーに並んでいたら上を買いたくなる。

しかし、デザインとはいえ気をつけることもある。キレイな栄養情報の表示が必ずしも分かりやすい、誤解のない表示方法とはいえないからだ。具体的なラベルは読めないが以下のような問題がある:

  • 視覚化が標準化されていないため比較が困難(逆に標準化されるとデザインとしては意味がない)
  • 同時に誤解を招く表示になっていないかの規制も難しい

もちろんメリットとしては栄養情報が分かりやすくなるというものもあるが、これなら情報を規格化して例えばQRコードのような形で貼っておくだけでもよい。消費者は自分の端末や視覚化ソフトウェアで好みの表示方法を選べる。毎回同じソフトウェアを使えば比較は可能だし、製品の数よりソフトウェアの数の方が少ないので規制やレビューも容易だろう。

デトロイトの縮小

追記:Willyさんのコメントが大変参考になります。

アメリカで最も急激に衰退していっている都市がデトロイトだ。世界的に見ても大都市が縮小していくというのは珍しい現象だ。

Goodspeed Update » Detroit

Since the middle of the 20th Century, no American city has experienced the severe economic shock experienced in Detroit.

デトロイトの没落が始まったのは二十世紀中盤だ。現在でも全米11位で100万人近い人口を誇るが、ピーク時には全米4位の都市だった。経済圏としては依然450万人近いが、人口の大半が郊外にスプロールしている。

Millions of jobs left, but new jobs were not easily accessible and often required high education levels. These so-called spatial and skill mismatches resulted in skyrocketing jobless rates among central-city blacks.

製造業の職がなくなったことにより、低スキルの労働者が都市中心から動けない状態で大変なことになっている。

それでも人口の流出は止まらず、今回の不景気で大量の空き家が発生している(ht @gshibayama)。

人の住まなくなった土地・建物では税金が支払われずに政府の所有になることも多く、市内にはやたらと政府の土地があるようだ。

こうした住居は段々と建て壊されており、市内の住居数は四十年間着々と減っていっている。

産業の転換により、ある産業に特化した都市が機能を終え縮小して行く。この時にどのようなことが起きるのか、どうすればできるだけ問題を起こさずに新しい均衡へ移っていけるのか、デトロイトはとても興味深い都市だ。

追記:デトロイトでは年収の1.5倍で家が買えるそうです(ht @Kelangdbn & @gshibayama

ネット選挙

ネットはマーケティングに欠かせない存在だが、政治活動にも必要だ。

ネット選挙 まずはホームページ更新から

選挙中のホームページ更新やメール送信は、はがきやビラ以外の「文書図画」の頒布を禁じる公職選挙法に抵触するというのが、現在の法解釈だ。

ウェブサイトの更新を認めるというのは妥当だろう。有権者が自ら閲覧するという点が単なるメールとは異なる。メールの場合はスパムを考えれば分かるように、送り手はコストを負担せずに勝手に送り付けることができるため慎重になる理由がある。同様の理由で自らフォローしない限り見ることの出来ないTwitterや登録が必要なメールマガジンも問題ないだろう(但し、後者については解除の方法を平易かつ画一にする必要はありそうだ)。

一方、ネット選挙の解禁に慎重な議員たちの間には、メールは他人が候補者の名をかたる「なりすまし」が容易で、虚偽情報を広めることに悪用される、と懸念する声が少なくない。

「なりすまし」を懸念する声もあるようだが、適切な手段を講じればいいだけの話だ。でなければオンラインショッピングなど出来るはずがない(注)。これを気に、ネット上でのセキュリティやアイデンティティの問題について包括的な啓蒙を行ってはどうだろう。

利用者が急増している簡易投稿サイト「ツイッター」でも、本人認証の仕組みが未整備のため、鳩山首相のなりすましが“登場”したばかりだ。

未整備なのは本人認証の仕組みではなく、議員やマスコミのリテラシーなのだから。

(注)SMTP自体はセキュアではないが、電子署名したりセキュアなサイトへ呼び込めいい。

追記:改変してRT=流布される可能性はあるが、それは他のメディアでも同じだ。それどころかネット上であれば一次ソース=発言を確認することもできる。ネットが使われている国でも政治家のなりすましが大きな問題となっているニュースは聞かない。

地域ブログ

地域をキーとした情報サイトが大きな注目を集めているそうだ。

「街興し」の切り札目指す 「地域ブログ」田舎に続々登場

「地域ブログ」を開設する目的はズバリ「街興し」だ。地元の人が自分達の持つ情報を交換しコミュニティー力を高めながら、全国、そして世界に情報発信しようという。

上の画像は最もアクセスが多いという沖縄のてぃーだブログだ。運営側が情報を提供するだけでなく、参加者がブログなどを通じて情報を発信できるようにもなっており、沖縄に関する情報のハブとして機能している。

運営しているのは1人から数人。それぞれ他に仕事を持っていて、いわばボランティア感覚でブログ運営に携わっている。「しーま」を運営するのは、奄美出身の30代の5人。それぞれ独自で奄美関係の情報を発信していたが、それを一箇所に集めることでパワーアップ、奄美の一大コミュニティーの場を作ろうと考えた。

こちらの奄美大島「しーま」の場合は仕事の傍ら五人で運営しているとのこと。ここでのポイントは地域での協力のありかただろう。こういった地域全体の振興というのは、自分が参加しなくても恩恵を受けられる。そのため地域振興は地方政府の仕事であることが多い。ウェブはそれを個人で行うことを可能にした。しかし、低コストゆえに一人で運営できても情報はある程度集まらないと価値がでないし、一人で運営していると話題を絞るのも難しい。

もちろんローカル情報へのシフトは日本だけではない。例えば上のサイトはBerkeleysideというバークレー市に特化したサイトだ。但し、これはごく典型的なブログで、読者の参加はコメントや、ポストのサブミッション程度だ。

このような地域ブログを組織化している企業もある。上はPatch.comというサイトで、地域レベルでの情報発信を行っている(@ayakomieさん就職おめでとうございます)。こちらの場合は地域振興というよりも、いかにローカルなジャーナリズムを維持していくかというのが主眼となっている。

地域レベルでの情報集約・発信への関心は高まっている。どのような目的・やり方ならうまくいくのか、地域といったときそのサイズはどの程度が望ましいのかなど、いろいろな課題はあるが地域という切り口で情報がより多く発信されより広範に広まるのであれば素晴らしいことだ。

追記

福岡には「よかよか」というブログサイトがあるそうです(ht @keitabo):