EveryBlock

ニュースのローカル化が叫ばれているなか、ハイパーローカル(hyper local)なサービスを提供するサイトがある:

EveryBlock — A news feed for your block

We aim to collect all of the news and civic goings-on that have happened recently in your city, and make it simple for you to keep track of news in particular areas. We’re a geographic filter — a “news feed” for your neighborhood, or, yes, even your block.

Everyblockの目的は小さな地域(blockないしneighborhood)に関連する情報をフィルターすることだ。公的機関の提供する情報、ニュースの記事、ブログのエントリー、Yelp、Craigslist、Flickrに至るまで位置情報とタグされている・できる情報の総量は爆発的に増えている。情報化社会におけるキーはフィルタリングだ。膨大な情報があれば個々の情報の価値はなくなる。それらをまとめても価値はたかが知れている。有り余る情報から意味のあるものを選び出すことで価値が生じる

最初は検索エンジン式の情報収集から始められるだろう。ネット上から位置情報を持つ情報をマッピングする。重要なのはその次だ。できる限りユーザーを集め、彼らが新しい情報やコメントを書き込む環境を作る。そのエコシステムを確立できるかがこのビジネスの鍵だろう。

面白い試みだが今後の競争は熾烈だ。位置情報を持つ情報を集めることは他の企業にも可能だ。特にGoogleが同じことを始める可能性は非常に高い。また、ユーザーから情報のインプットがあってもそれ自体を他のサイトが収集してしまうこともある。この中で競争に勝ち抜き、どのような収益モデルを作ることができるのだろうか。

男女の労働比

アメリカでは男女の労働比がほぼ1:1になっているがそれを示すちょうどいいグラフがEconomixに:

Women Still Not Quite Half of Work Force – Economix Blog – NYTimes.com

genderbreakdown

とはいえここのところの急激な格差縮小は景気後退によるものだ。男性の方が景気に影響されやすい製造業や建設行についている割合が高いため、不景気になると失業率が大きく増えるからだ。

ちなみに2009年度8月の統計局の資料によれば日本における15歳以上の労働者数は男性3853万人、女性2803万人となっている。女性の割合は42.1%ほどだ。測定方法の違いがあるので一概に比較できないが、大きな差があるのが分かる。

男女労働比をどう解釈するかは読み手次第だ。性差が存在する以上、男女労働比が1:1に収束する理由はない(性差の存在自体をなくそうというのであれば別だが)。そもそも自由に働けるかと働かなくては生活が維持できないかとは違うことだ。以前であれば夫が高所得であった場合妻の労働率は低かったが、同等の社会経済水準内での結婚が増えその傾向はなくなってきている。これは高所得カップルが(仕事をやめる機会費用が高すぎるので)共働きし、低所得カップルが(生活のために)共働きするという現象を生む

男女比自体に注目するよりもという個別の指標ではなくより大きな政策目標(社会余剰・格差改善など)からそれらの数字を分析する必要がある。

グーグルの入社試験

The Business Insiderがグーグルの入社試験を集めたブログ記事から15個を選んで説明している:

15 Google Interview Questions That Will Make You Feel Stupid (GOOG)

どんな能力・知識がグーグルで求められているのだろう。個人的に気に入ったのは以下の四つだ。

  • In a country in which people only want boys, every family continues to have children until they have a boy. If they have a girl, they have another child. If they have a boy, they stop. What is the proportion of boys to girls in the country?
  • Why are manhole covers round?
  • How many times a day does a clock’s hands overlap?
  • Explain the significance of “dead beef”

一つ目は以前、男女格差指数のエントリーで説明したものだ。男子を好む国で、全ての家庭が男の子を生むまで子供を作り続けるとしたら、その国の男女比はどうなるか?答えは1:1だ(一人生むのときの男女比なので厳密には1:1ではない)。男が多くなると答えたら一発アウトだろう。以下以前書いた説明:カップルの数が[latex]N[/latex]で、男児が生まれる確率が[latex]p\in(0,1)[/latex]だとする。1人目は全カップ ルが生み、男[latex]N p[/latex]人で女[latex]N(1-p)[/latex]人だ(整数問題は考えない)。2人目を生むのは1人目が女だった [latex]N(1-p)[/latex]組みのカップルで、男[latex]N(1-p)p[/latex]人・女[latex]N(1- p)^2[/latex]人を生む。[latex]n[/latex]人目として生まれる男は[latex]N(1-p)^{n-1}p[/latex] 人で女は[latex]N(1-p)^n[/latex]人だ。何人目であっても生まれる子供の男女比は[latex]p:1-p[/latex]であ り、当然その無限和の比も[latex]p:1-p[/latex]だ([latex]\sum_{n=1}^{\infty}N(1-p)^{n- 1}p=N[/latex]人対[latex]\sum_{n=1}^{\infty}N(1-p)^n=N \frac{1-p}{p}[/latex]人)。

二つ目はマンホールが丸い理由だ。これはマンホールが穴に落ちないためだ。四角かったら、辺を対角線に持ってくれば下水溝にマンホールを落とすことができる。

三つ目は時計の分針と時針が一日に重なる回数を聞いている。小学校でやったことがあるだろう。分針は一分間に[latex]\frac{360}{60}=6[/latex]度回転し、時針は一分間に[latex]\frac{30}{60}=0.5[/latex]度回転するので前者が後者に一周差をつけて追い越すには[latex]\frac{360}{6-0.5}=\frac{720}{11}\approx 65[/latex]分かかる。よって24時間の間に[latex]\frac{60\times 24}{720/11}=\frac{1440\times 11}{720}=22[/latex]回重なるはずだ。

最後が一番難しいだろうか。dead beefというのは別に牛のことじゃない。これが十六進数だと分かれば合格だろう。歴史的にデバッグのために使われきた数でHexspeakという。

おもしろいと思った方は他の問題もどうぞ。

Eventbrite

Can Eventbrite Shine in Ticketmaster’s World? – Bits Blog – NYTimes.com

The San Francisco company, which has less than 30 employees, announced this week it raised its first round of venture capital: $6.5 million from Sequoia Capital.

Eventbriteがセコイア・キャピタル(Sequoia Capital)からのベンチャー投資を得たというニュース。これがニュースになるのはセコイアがシリコンバレーでは極めて名声の高いベンチャーキャピタルだからだ。Cisco, Oracle, Apple, YouTube, Google, NVIDIA, Paypalなどの有名企業が投資先として上がっている。他にも Dropbox, imeem, LinkedIn, Mahoro, OpenDNS, Rackspaceなど多くの気になる企業がポートフォーリオに含まれている(Amazonに買収されたZapposにも投資している)。

If the organizers sells tickets, Eventbrite charges them, taking a 2.5 percent cut plus a dollar fee per ticket.

イベントのオーガナイザーがチケットを売り、Evenbriteは$1プラス売上の2.5%を徴収するという仕組みだ。

They say they will use the cash to focus on smaller markets like conferences and nightclubs, as well as to further integrate their event planning tools into mobile phones and social networks like Facebook and Twitter.

既存ビジネスが相手にしていない小規模マーケットを狙い、ソーシャルネットワークを最大限活用する点は最近出てきたプラットフォームビジネスにどれも共通するものだ。Eventbriteは商用イベントをターゲットにしているが、システム的にはevitemeetupと大差ない。違うのは収益の方法だ。eviteは広告、meetupはオーガナイザーのメンバーシップフィー、Eventbriteは基本的に利用量に応じたフィーを収入源としている。

現実の市場において、どの試みがもっとも成功するかはプライシング以外の様々な条件によって決まってくるが、似たようなプラットフォームが全く異なる収益ストリームを持っていることは興味深い。

スポーツ面は必要?

The New York Timesがスポーツ面の必要性について議論しているようだ:

Marginal Revolution: How to save The New York Times?

More radical moves, like dropping the sports section, have been rejected because they would undermine the quality of The Times or would not save much money, Keller said.

明らかにスポーツが強みではない新聞にスポーツ面がある理由はバンドリングの理論で説明できる。スポーツ面を追加することによる限界費用(紙面の増加による費用)は小さい。しかし一部の顧客はスポーツ面に大きな需要を持っている。そのような客のスポーツ面以外への需要は他の顧客より少ないだろう。よってスポーツ面を加えることで顧客全体の支払い意志額を平準化できる。支払い意志額が均一ということは需要曲線にフラットな部分があるということであり、独占的な生産者は総余剰のより大きな部分を単一価格で取り込むことができる

ではなぜ今、スポーツ面の是非が問われているのか。それはニューヨークタイムすがスポーツ情報の供給を独占していないからだ。新聞におけるスポーツ面に限ろう。以前であればある街で売られている新聞の数は少なかった。ある新聞社がスポーツ面に力をいれてニューヨークタイムスから顧客を奪おうとすることは可能だが非常に難しい。新聞の流通費用が大きく、利益を挙げるためには上に述べたように様々な情報を集めて売る必要がある。しかしそうなると、スポーツ面を売りにしている新聞も新聞全体としての価値でニューヨークタイムスと競争する必要があるからだ。よってそのような新聞はいつのまにか総合紙となっているか、スポーツに極めて関心のある層だけを対象とした新聞になるだろう。

この構造は新聞による情報流通の独占と共に崩れた。スポーツ情報だけを提供したい企業はスポーツ情報だけのウェブサイトでも運営すればよい。スポーツにさほど関心のない人間であっても新聞をまるごと買わなくてもよいのであれば利用する。ニューヨークタイムスがそのような競争相手以上のスポーツ情報を提供できなければ、スポーツ面を残すことは彼らの利益にならない。それどころかバンドリングによる支払い意志額の均一化がうまくできなくなり、スポーツ面に止まらず全体としての利益は一段と減少する

私はこのような情報のアンバンドリングが新聞業界衰退の最大の理由だと考えている。インターネットの普及は新聞社による情報のバンドリングとそれにより効率的な価格戦略を不可能にした。おそらくもとからニュースという財はそのような戦略がなければ固定費用をカバーするだけの収益を得られない産業だったのではないだろうか。