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夫婦採用

共働きが一般化すれば、夫婦が同じ場所で仕事を得られるかという問題が生じる。

The Intricacies of Spousal Hiring – Run Your Campus

And when I finished, I realized, to my astonishment, that of the 17 I had picked, no fewer than eight had spouses who also taught at the university—seven of them as tenured professors.

ジョンズホプキンスの元ディーンが、17人のファカルティについて紹介を書こうとしたところ、そのうちの8人が配偶者が大学で働いていることに気付いた。しかもうち7人はテニュア付きの教授だった。アカデミックなキャリアを選ぶ人基本的に大学の外にでないので夫婦揃ってアカデミックというのはよくあるパターンだ(アメリカでは36%)。

Spousal hiring is often described as a “problem” to be solved, or as “the next great challenge facing universities,” to quote “Dual-Career Academic Couples,” an influential 2008 report published by Stanford University.

一般に夫婦での採用というのは大学にとって難しい問題だ。大学のポストの数はそう変えられないし、テニュア審査との兼ね合いもある。例えば有名な学者を採用するために、その配偶者を採用すると本人にとっても同僚にとっても微妙な空気が流れるだろう。

この問題はアメリカで深刻だ。共働きが一般化しているだけでなく、結婚において似通った学歴の配偶者を選ぶ傾向が強まっている。大学の場合特に顕著だが、都市が散らばっているのも二人の仕事を地理的にマッチするのを難しくする

この傾向は都市への集積を加速する。都市化の大きなメリットの一つは雇用主と労働者とのマッチングだが、同じ場所で二人が専門職を探すとなれば、それだけ分業の進んだり巨大な都市が望ましい。例えば東京経済圏であれば通勤圏内に数多の大学が存在するため、一つの大学が夫婦同時採用を考える必要はない(注)。

(注)外国人研究者を呼びたいならこの点をアピールできるかもしれない。ただ外国人が複数の大学でポストを探したり、普通の大学が外国人を受け入れたりするのは現状では難しいので専門にマッチングサービスを提供すべきだろう。

キャリアとコーリング

経済と何の関係があるのかは疑問だが、昨日ブローカーの飲み友達と似たような話題になったので:

Ben Casnocha: The Blog: Do You Want a Family or a Calling?`

仕事についてキャリア(Career)とコーリング(Calling)との区別をした上で、仕事と家庭とのバランスについて論じている。

First, let’s review Michael Lewis’s distinction between a “career” and a “calling”:

A job will never satisfy you all by itself, but it will afford you security and the chance to pursue an exciting and fulfilling life outside of your work. A calling is an activity you find so compelling that you wind up organizing your entire self around it — often to the detriment of your life outside of it.

普通、仕事というのはそれ自体で幸せになるとかいうものではなく、仕事の外での人生を追求する上での土台を与えてくれるものだ。それに対しコーリング(天職?)はどうしてもやらないといけないもので、自分の人生がそれを中心に回るようなものだという(日本ではそもそも仕事は全てコーリングであって生活は仕事を中心に回るべしというような信仰があるような気もするが…)。

If you have a job / career you have plenty of time and energy for your own family, but it’s maybe harder to change the world with your professional work. If you want a calling, you don’t have time for a family.

ワーク・ライフ・バランスで問題となるのはコーリングの方だ。単なるキャリアであれば家族のための時間もエネルギーもあるが、世界を変えるようなことはできない。コーリングとなると家族に割く時間はなくなる。

To me “family” means kids. If you are parenting children, it’s virtually impossible to have a professional calling as Lewis defines it. “Family” can also mean having a spouse who’s pursuing his or her professional calling — then, even without kids, it’s impossible for you to do the same. (Power couples rarely work out.)

ここでいう家族は子供のことで、子どもがいると仕事を自分の生活の中心にするのは難しい。配偶者が仕事中心の生活を送っている場合も同様だ。

I believe the unvarnished reality about work-life-balance is this: the only people who successfully follow an all-consuming, high-impact professional calling are: a) either single or married to a someone who has a “career” (or less) and not a “calling” and, b) do not have kids.

全力を仕事に傾けるためには、独身か単なるキャリアを持っている相手と結婚していて子どもがいないことが必要なのだろうと述べている。これは時間だけでなく、地理的な条件を考えても妥当に思える。仕事を中心にすれば住む場所は仕事で決まってしまうが、配偶者がそれに合わせて仕事を選べない限りうまくいかない。子供がいる場合はさらに難しい。

Many men, including some of Silicon Valley’s most famous, do their “calling” early in life and then “career” later in life with kids. Men have the luck of being able to organize their lives in a way that this can work. Women, not so much. Damn biological clock.

一つの方法は、最初に自分の仕事=コーリングに没頭し、後で子供を含めた家族を普通の仕事=キャリアで養うというものだ。ここで男女の違いが生じる。女性の場合、生物学的な理由で子供を先延ばしするには限界がある。先に子供を育てるとキャリア上のギャップが生じるし、ある程度手間がかからなくなっていたとしても子供がいれば完全に仕事を生活の中心にするのは難しい。そうすると時間との勝負になってしまう。

女性の出世は何故遅い

結構微妙な記事が多いHBSだが、女性の出世に関する面白いネタがあった。

Women in Management: Delusions of Progress

アメリカでは女性の社会進出は目覚しく、労働人口においても肩を並べている。しかし、社内での出世に関しては有意な差があるようだ。

Even after adjusting for years of work experience, industry, and region, Catalyst found that men started their careers at higher levels than women. […] Among women and men without children living at home, men still started at higher levels.

その差は職務経験・産業・地域・子供の有無を調整しても変わらないとのこと。では何が原因なのか。面白い調査結果が挙げられている。

A quarter of the women in our study left their first job because of a difficult manager—nearly as many as those who moved on for more money (26%) or for a career change (27%). Only 16% of the men left because of a difficult manager.

最初の職を辞めた理由を調査したものだ。こちらも条件付されているのか分からないが、上司とうまくいかなかったという理由が男性に比べて多い。

Of course, these results suggest that women and men may be treated differently by their first managers.

とはいえ、ここから男女が上司に違う扱いをされているのはOf courseとか言われると何だろうか?という気にはなる。女性のほうが人間関係を重視するだけかもしれない(多分にありそうだ)。

Companies must acknowledge their failure on this front, learn why they haven’t succeeded, and come up with better programs to help talented women advance.

その挙句、企業はこの問題を解決して有能な女性の進出を助けなければならないとまで言われるとどうだろう。もし男女の出世における差が単なる差別に基づくものであるなら、差別されている人を優先的に雇う企業は競争で優位に立つはずなので市場にまかせておいてもいいはずだ。

などと少し真面目に考えてしまったものの:

Catalyst works with businesses and the professions to build inclusive workplaces and expand opportunities for women and business.

記事を書いた人たちは女性のための職場環境を整える団体にいるようで、この記事自体が単なる広告のようだ。何か悔しいが書いてしまったのでポストしてみた。

アメリカのボランティア参加

アメリカ人のボランティア参加に関するデータがNYTで紹介されている:

Where Do You Volunteer? – Economix Blog – NYTimes.com

元データはBereau of Labor StatisticsのVolunteering on the rise: September 2008-September 2009だ。人口の26.8%がボランティアに参加しており、これは大体6,340万人ほどになる。2007年から上昇基調だ。不況のせいと考えられるが、参加が増えているのは不況による失業の比較的少ない女性で(注)、男性は横ばいとのこと。

参加しているボランティアの種類はパイチャートになっている:

宗教(Religious)が1/3以上を占めており印象的だ。

Among all volunteers, the demographic group most likely to report that they mainly volunteer for their religious organizations were those without a high school diploma. Among volunteers who didn’t graduate from high school, 47.1 percent say that they mainly volunteer for a religious organization.

宗教をボランティアの対象と選んだ人の割合は高校を卒業していない層で最も高く、なんと47.1%にのぼっている。日本で似たような統計はあるのだろうか。

(注)In a First, Women Surpass Men on U.S. Payrollsによると、史上始めて給与所得者数で女性が男性が上回ったとある。これは男性の方が景気に左右されやすい業種についているということもあるが、男女差が消滅しつつあるのは事実だ。

いい職場って何?

どんな職場がこれからの世代に必要なのか。日本が追いつくのはまだ先だろうがアメリカの状況について丁度とってもわかりやすいエントリーがあったのでご紹介:

Announcing: Brazen Careerist Top 50 Places to Work | Penelope Trunk’s Brazen Careerist

1. Salary negotiations are over.

サラリーの交渉の時代は終わった。

Gen Y doesn’t consider salary to be a huge factor in choosing a place to work because Gen Y knows that salary data is public. The days when a company can screw you by underpaying you are over.

今やサラリーの情報は共有されている。どこの会社がどのポジションにいくら払っているかなんてネット上で調べることができる(注)。情報がオープンで労働者が仕事を選べるのであれば、サラリーは自動的に市場の水準になる。競争市場に近づいている。

日本ではいまだに成果主義の是非を論じている人が多数いるが、時代遅れもいいところだろう。成果主義は流動的な労働市場と組み合わせでなければ機能しないそして流動的な労働市場の行き着く先は市場による労働者の評価だ。「主義」のはいる余地はない。ものを売り買いするときに普通主義主張は登場しない。そういうことだ。日本でもこの方向性は変わらない。

(注)日本ではどこにあるのだろうか。これはビジネスになる。

2. Social entrepreneurship is stupid.

社会起業家なんてものはない。

It’s stupid because you don’t’ need to be calling yourself a social entrepreneur in order to save the world. We no longer divide the world into non-profit people who are do-gooders and for-profit people who are money-grubbers. We are all here to do good. After all, what else is worth living for?

これは最近社会起業家に関する論争「金儲け=悪」の話を絵で説明してみるビジネスをしてお金を稼いで社会のためになろうなどで繰り返し主張していることだ。営利が悪・非営利が善という時代は終わり(参考:非営利と営利との違い)、誰もが何か社会のためになることをしようとしている。逆に自分たちは社会起業家だと謳うことは、ものの捉え方が古いということだ。新しい優秀な人材を採用したいならやめたほうがいい。

3. Self-reported flexible workplaces are BS.

自称フレキシブルな職場なんて意味ない。

Flexibility is not something that Gen Y wants. It’s something everyone wants. The idea that we are going to run our lives around our work is ridiculous. It doesn’t work. We want to make each aspect of our life work well with the other aspects.

フレキシビリティは新しい世代の特徴ではなく、誰もが必要とするものだ。仕事が人生という生き方はうまくいかない。

In our Top 50 list we judge by how close a company gets to hiring 50% women. This is not scientifically proven, but it is true that while all demographics complain about inflexible hours, women will leave the company over it.

どの会社もフレキシビリティを主張しているのだから、言葉に耳を傾けてもしょうがない(みんなが欲しがっているならチープトークは何の情報も伝えない)。実際の行動をみる必要がある。その簡単な判定方法として女性の比率を挙げている。女性が多いかそれ自体が問題なのではなく、それで職場の環境を判定するのだ。これは非常に経済学的なものの見方だ。