ノンレジデント

我が校が州からの資金不足で州外からの学生を増やすそうで:

The Daily Clog » UC Berkeley Aims For More Diversity, Also Dollar Signs

Chancellor Robert Birgeneau announced last week that next year UC Berkeley will be admitting even more international and out-of-state students—because they need the cash.

まあ記事にある通りもともと予算の1/4しか州から来ない州立大学なのでこの流れは当然か。現在、州民$9,750・州外$32,400ということで州民であっても日本の国立大学よりは高め。まあそれでも私立よりは安いわけですが。一番の議題はこれにより学生の多様性が失われるのかどうか。突き詰めると、学生が地域(及び付随する文化)によって異なるの、社会経済的立場によって変わるのかということになるか。

アファーマティブアクションの是非など問題点はあるが、日本での自分の大学生活からするとある程度の多様性は絶対に不可欠だと思う。かれこれ四つの異なる分野を専攻しているが、いろいろなバックグラウンドの人が集まっている方が遥かに有意義な教育だった。日本の大学がバランスを取りつつ頭のよさ以外の指標をどうやって取り入れるかは重要な課題だ。

学生とSNS

San Diego State Universityとマーケティング会社のYouth Pulseによると、回答者の2/3が自分たちの世代は自信過剰でナルシスティックだと認識しているそうで。

Students Say Social Networking Is All About Themselves – The Paper Trail (usnews.com)

This morning, my Facebook news feed was filled with posts like this:

“[Name erased] is exhausted but ready for school to start on Monday after she enjoys a three-day weekend.”

あるある。

Who cares?

Exactly! とはいえ、このような内容のステータスが多いのは、単なる世代による違いというよりは「何かを更新しない限りフィード上には何も表示されない」という主流SNSの構造的問題だろう。上のようなステータス更新をするかは人によるのであって、世代によって決まっているとは思われない。

“And students are right about the influence of social networking sites—research has shown that narcissistic people thrive on sites like Facebook, where self-centered people have more friends and post more attractive pictures of themselves.”

単にシステムの仕組みを理解して適応しているだけとも言える。現代社会において貴重な財は情報ではなく、ユーザーの時間である。多くの時間を割かなければ活用しにくい仕組みにすることでユーザーをロックインしているのかもしれない。

(若者という)世代に絞ってマーケティングをするのもいいが、ある世代をみているだけではある特徴がその世代特有なのかは分からない。

費用効用分析の運用改善

UCLAのMark Kleimanによる費用便益分析への提案:

The Reality-Based Community: Reforming regulatory benefit-cost analysis

彼が挙げているのは三つ:

  1. 所得分配を考慮しない
  2. 間接的・長期的・不確実な要素の排除
  3. 市場の存在しない財の評価における問題

一番目の点については理論上は関係ない。日本においてはむしろ利点だろう。アメリカでは共和党を中心に福祉政策や累進税への支持が少ないが、日本では政治家・官僚による利益還元的な行動の方が問題だ。当然、確実に便益がマイナスな低所得者向け住居提供のような政策は非常に打ちにくくなるがそれは事実便益がマイナスである以上より説得力のある理由が必要というだけの話だろう(例えば、住居であればお金で渡すよりも確実に対象を特定できるとか)。

二番目の問題についてはより精密な確率の推定を提案しているがもっと根本的な難点がある。それは不確実性を計算に入れた後何を指標に政策を選ぶかだ。極端な例でいえば、費用や便益が平均値を持たないような分布もありえる。国がどの程度リスク回避的な政策選択をすべきということもある。

三番目はやはり理論上は問題ないのだが、現実には難しいパターンだ。例に挙げられている命の価値だがこれは生活の質で調整された余命を用いることで対処できる。環境の価値となると現実的に測定するのは非常に困難になるが、少なくともその他の費用便益の計算をするだけでも価値はあるだろう。費用効用分析にも費用がかかるのであまり期待できない調査をしてもしょうがないということはある。

日本ではまだ費用効用分析の導入があまり進んでいないのでこのような弊害はあまりないが、将来的には同じ問題が発生するだろう。しかし、最大の問題は教育だ。費用便益分析には様々な理論的・現実的問題があるが最終的な正当性はそれが一つの情報源に過ぎずそれ自体で政策を決定しない点にある。問題点はあるが、最終的には民主主義によって決定するのだから情報は多いに越したことが無いだろう、ということだ。但し、このディフェンスが有効であるためには国民、少なくとも政治家が何が仮定されていて、どのような問題があるかを知っていてかつ最終的な決定権が自分にあると認識している必要がある。政策決定に費用便益分析の導入が進むにつれて、基礎となる経済学を含めその読み方を一般に知ってもらうのが重要だ(これは統計分析の結果を利用するのにある程度の統計の知識が必要なのに似ている)。

Facebook | Grad Students グループ

よくある“you might be a grad student if…”系のリストだけど個人的には非常に笑える。まあ国による違いとか専攻による違いもあるけどいくつか好きなのを:

Facebook | Grad Students: they’re Not Bad People, they Just Made Terrible Life Choices

5.You have ever brought a scholarly article to a bar.

バーに学術論文を持っていったことがある。

これは誰でもやったことあるよね?本より運びやすいからね。

20.you write programs for classes that have nothing to do with programming.

プログラミングとは何の関係もないクラスでプログラムを書く。

あるある。むしろ習ったことないよ。

24.you procrastinate on one project by working on another project.

違う仕事に取りかかることで今の仕事を先延ばす。

ティーチングとか。

37.people (non-grad students) ask you “Are you going to be done soon?” and you laugh but inside a little part of you dies.

この中で一番お気に入り。原文のテンポがポイントなので訳はなし。読んでください。

49. you can’t help but sigh with envy when you overhear undergrads stress over 10 pg final papers in the elevator

エレベーターで10ページの期末レポートに愚痴る学部生をみて羨ましく思う。

てか宿題をタイプするだけでそれぐらい普通だよ。

60. you are startled to meet people who neither need nor want to read.

ものを読む必要もなければ読みたいとも思わない人に驚愕する。

ありえない。まああまり会わないけど。

69. you have accepted guilt as an inherent feature of relaxation.

罪悪感は息抜きと表裏一体だと知る。

これは一番嫌な部分だなぁ。

80. the professor doesn’t show up to class and you discuss the readings anyway.

教授が講義に現れなくても取りあえず文献について議論する。

あるある。逆に学生が遅刻するとみんなが待ってたりする。

90. you’ve ever sent a personal letter with footnotes.

個人的な手紙に脚注を使ったことがある。

ブログでも標準搭載すべき機能だ。あと巻(章)末注は絶滅するべき。

94. you actually _hope_ your professor assigns homework.

宿題が課されるのを心から希望する。

道具的なクラスは宿題必須でしょう。

95. you get a 3-hour final with 5 questions or less.

三時間の試験に五問以下しか問いがない。

えっと、三時間だと二問当たりでしょうか。

鶏が先か卵が先か

Chicken & Eggという問題はネットワーク効果の強い市場では非常に重要である。とくに双方向性市場(two-sided market)では顕著だ。例えばアマゾンがそうだ。本を買う顧客がいなければ出版社は商品を卸さない。

以下のエントリーで起業家でベンチャーキャピタリストであるChris DixonがChicken & Egg問題への対策を挙げている。

cdixon.org / Six strategies for overcoming “chicken and egg” problems

彼の提案は六つだ:

  1. Signal long-term commitment to platform success and competitive pricing.
  2. Use backwards and sideways compatibility to benefit from existing complements.
  3. Exploit irregular network topologies.
  4. Influence the firms that produce vital complements.
  5. Provide standalone value for the base product.
  6. Integrate vertically into critical complements when supply is not certain.

一つ目は人々の期待を変えるものだ。アマゾンの例でいえば出版社が商品を卸すのに必要なのは顧客が来るだろうという期待だ。別に卸す時点で客がいる必要はない。コミットメントデバイスとしてGoogleのオープンソースソフトウェアが挙げられている。より適切な例としてはIntelのIntel Architecture Labが挙げられるだろう。Intelはx86という自社が実質支配するプラットフォームに関連する投資を行った。IntelがIALにおいて如何にコミットメントの問題にを注意していたかはPlatform Owner Entry and Innovation in Complementary Markets: Evidence from Intelに詳しい。

二つ目は互換性を持たせることで既存のネットワーク効果を利用するというものだ。個の場合もコミットメントが問題になる。MicrosoftがMac互換のOfficeを提供する際、それがいつまで維持されるかはユーザーにとって重要だ。Silverlightも同様だ。この戦略はEmbrace, extend and extinguishと呼ばれる。しかし必ずしもうまくいくとは限らない。OS/2の例もある。この戦略がどのような場合にどうやって成功するかも興味深い。

三つ目はとくに興味深い。一部のグループに的を絞ることで既存のネットワークを打ち破るというものだ。ここでは大学生が多いfacebookがどうやってFriendsterを追い抜いたかが例として挙げられている。いかに特定のグループを発見するかが鍵となる。

四つ目はプラットフォームの問題だ。不可欠なコンポーネントを持っている企業を味方につければ確かに競争には勝てるだろう。しかし、それを提携相手の企業はそれを知っているのでそれなりの見返りがなければ協力しないため、最終的に利益になるかは微妙だ。Sony / PhilipsのCDが事例として挙げらているが、この場合最も重要な点は交渉のやりかただろう。複数いる提携相手に別々に交渉していくことで「見返り」を減らすことができる。

五つ目は見落とされがちだが、要するにネットワーク性を減らしてしまうということだ。ユーザーがリスク回避的であれば有効だ。

最後の六つ目もやはりコミットメントが問題になる。AppleはMac OSX上で多くのアプリケーションを持っているがこのことは外部のデベロッパーにとっては大きな脅威となる。