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Craigslistの経営方針

Craigslistの創設者であるCraig Newmarkと現在のCEOであるJim Buckmasterに関するWiredの記事が非常に面白い。ウェブビジネスやサービスデザインに興味のあるにはかなりおすすめ:

Why Craigslist Is Such a Mess

Craigslistのデザイン上の特徴はまさに何の特徴もないことだ。

This is old-fashioned. But craigslist is old-fashioned in any number of ways. It relies on email and the telephone in an era of SMS and social networks. It sticks to traceless transactions in an industry that makes its living collecting data from every touch. And just as people who run technical companies are reaching an apex of confidence in their ability to invent new forms of community based on sharing everything, craigslist still treats social life as dangerously complex, deserving the most jaded caution.

これは近年のウェブビジネスの流れとはまさに逆である。

Besides offering nearly all of its features for free, it scorns advertising, refuses investment, ignores design, and does not innovate. Ordinarily, a company that showed such complete disdain for the normal rules of business would be vulnerable to competition, but craigslist has no serious rivals. The glory of the site is its size and its price.

にも関わらず、競争を勝ち抜いているのは何故か。それは規模と価格だという。しかし、Craig Newmarkはそれとは異なることを述べている:

“People are good and trustworthy and generally just concerned with getting through the day,” Newmark says. If most people are good and their needs are simple, all you have to do to serve them well is build a minimal infrastructure allowing them to get together and work things out for themselves. Any additional features are almost certainly superfluous and could even be damaging.

彼にとってはシンプルで何の機能もないことこそが強みだというわけだ。結局記事の中ではどちらが本当の理由なのかは追求されていない。

ぱっと思いつくのは、スイッチングコストとコーディネーションの問題だ。Craigslistの競争相手がいるとしよう。ユーザーにとってどちらのサイトを訪れるかはほぼ投稿の数及び訪問者の数に依存している。片方を使っているひとが次にものを売る・買う時に違うサイトを使うための費用は使い方を覚えるぐらいなものだ。

大した機能があるわけではないが、案内広告を利用するひとは多岐に渡り、コンピュータに堪能とは限らない。また多くのユーザーは頻繁にサービスを利用するわけではないのでなるべく簡単なものが好まれるだろう。最終的な選択はユーザー数に依存していたとしてもなるべくわかりやすいインターフェースであるにこしたことはない。

もう一つ考えられるのがコーディネーションだ。スイッチングコストが低い市場では一気にシェアが入れ替わるということは十分にありえる。現在のシェアがどうであれ、将来競合相手が支配的になりそうだとみんなが思っているなら急にユーザーが入れ替わっても不思議は無い。実際ソフトウェア市場では支配的と思われている企業が没落することが過去いくつもあった。

ユーザーの期待を変えるのは困難ではあるが、企業理念のようなものが影響することは十分に考えられる。それなりの数のユーザーが片方の企業を何の理由であれ支持するのであれば、他のユーザーにとってもその企業のほうが成功する可能性が高いと信じる理由となるからだ。次の一節はこの考えと符合する:

But in the battle with MetroVox he had an asset that more than compensated for these shortcomings: For years he had worked on his site with an uncanny, machine-like constancy, doing all the painstaking and repetitive things that would make most people desperate with frustration and boredom, and he had done them happily. And now his users paid him back in the most obvious possible way: They stopped using the List Foundation address, resumed posting their free ads at craigslist.org, and emailed Newmark when problems occurred. Less than a year later, the bubble burst and MetroVox faded away.

Craigslistの元CEOがCraigslistのトラフィックを半ば奪って(詳細は本文参照)始めたMetroVoxという類似サービスとの競争において、ユーザーは今までのNewmarkの行動を元にCraigslistを選んだとされている。少なからずそういうユーザーがいることで他のユーザーも残ったのだろう。ユーザー数が最大に重要である以上、競合相手が多少違うサービスを提供していても問題はない。

他の類似した市場においても同じ議論が当てはまるかは興味深い。

民間の研究者

理系では企業の研究所というのは珍しくないが、社会科学においては珍しい。Microsoft Researchに所属するdanah boydのブログから:

apophenia: am I an academic?

研究している分野はソーシャルネットワークで、社会学的な観点からの分析だ。企業での社会科学の研究職と大学での研究職とが対比されている。多くの相違点は理系のそれと変わらない。しかし得に興味深いのはエンジニアとの関わりに関する以下の一節だ。

Still, you have to spend time helping the company directly! Yes, I spend time working with product groups. But I like to think of it as my teaching duty. Rather than teaching Soc 101 to hung-over 18-year-olds who didn’t bother doing the reading, I teach an interactive form of Soc 101 to engineers who are filled with questions that start with “but why?” and “but how?” I have a hard time imagining that my engagement with product groups takes up more of my time than teaching, office hours, and prep. And it’s often quite fun and thought-provoking.

Microsoftはソーシャルネットワークの専門家を抱えることで、他の従業員への啓蒙を行っているわけだ。これは二つの点で合理的である。まず、この仕事は専門家を内部に抱えずに行うのが困難だ。勿論、適時大学の研究者を呼ぶ、コンサルタントを使うなどの方法は可能ではある。しかし、細かな設計に関する問題に対応したり、効果的に知識を吸収させるという意味では外部から人を呼ぶのは効率が悪い。また、全くの新しい分野について一般的なコンサルティングが役に立つとは考え辛い。例えばソーシャルネットワークの使い方について大手のファームが専門性を有しているとは思えないし、それに特化した小規模なファームについてもその知見が信用に値するかは分からない。

二つめの理由としては、専門家を研究者として雇うことにより、専門家のモチベーションを維持しつつ専門性を維持できることが上げられる。仕事上の裁量を大きく取り、研究に従事させることは、特に専門性の高い業務においては有効な雇用戦略でありうる。

同様の研究部門はGoogleやYahoo!にも存在する。民間の研究機関を考慮しているなら一読の価値があるだろう。

マイクロパトロン

マイクロファイナンスが話題になって暫くだが、今度はマイクロパトロンが出てきたそうだ。

Dollar by Dollar, Patrons Find Artists on the Web – NYTimes.com

取り上げらているのはKickstarterというスタートアップ。プロジェクト毎に出資を募るという点では、Kivaのような寄付を募るサイトに近いが、ここでは出資額に応じて商品・サービスを受け取ることができる。プロジェクトは主にアーティストによるもので、レコーディング費用を募り、出資には成果を先に届ける・ライブで演奏する・食事を振る舞うなどクリエイティブな見返りが約束される。

このビジネスの素晴らしい点は:

  • クリエーターとユーザーの距離が近いため、クリエーターがユーザーの望みをよりよく知ることができる。
  • 必要な金額がコミットされるまでプロジェクトは実行されないため、クリエーターがリスクを回避できる。
  • クリエーターは成果物に関する権利を完全に保持できる。
  • CDとコンサートといった定型的な商品だけでなくいろいろな見返りを用意できるため今まではなかった取引が可能になる。
  • そのような見返りは金銭的には小さくとも一部のユーザーにとっては非常に高い価値を持つため効率的。
  • 以上の仕組みを標準化されたフレームワークで動かせる。

これらの利点は既に成功しているアーティストにはあまり関係ないが、アマチュアで創作に励んでいる人たちには大きな助けになる。現状では、音楽業界なら次のようなキャリアステップがあるだろう:

  1. 自分の時間でアマチュア活動をする:投げ銭の類を除けば、あらゆる費用はアーティストの負担である。
  2. 仕事をやめプロになる:途端に収入源が創作活動のみになり非常に大きなリスクを負う。
  3. 大手レーベルと契約する:相対的な交渉力の欠如から著作権・演奏権などにおいて不利な契約を提示される。

このようなサービスの登場により最初の段階での費用の低減、二段階めでのリスクの低減、三段階めでの立場の向上が可能になる。

現在は収益をあげているわけではないが、アーティスト側、パトロン側をある程度集めることで課金を行うことは将来的に可能だろう。

人種別マクドナルド?

www.365black.com & www.myinspirasian.com via digg

前者がアフリカンアメリカン向け、アジアパシフィックアメリカン向けということ。ちょっと信じがたかったのでwhoisで見たみたが、前者が、

Domain Name………. 365black.com
[…]
Organisation Name…. McDonald’s Corporation
Organisation Address. 1 McDonald’s Plaza
Organisation Address. 1 Kroc Drive
Organisation Address. Oak Brook
Organisation Address. 60523
Organisation Address. IL
Organisation Address. UNITED STATES

後者が、

Registrant:
McDonald’s Corporation
2111 McDonald’s Drive
Oak Brook, IL 60523
US

Domain name: MYINSPIRASIAN.COM

ということで本物のようだ(ちなみにwhoisの出力が異なるのは仕様)。それぞれRonald McDonald House CharitiesMcDonald’s本社の住所だ。よく調べたらマクドナルド本家のサイトからもリンクされている:

http://www.mcdonalds.com/usa/fun.html

正直こんなサイトを作って何のメリットがあるのかさっぱり分からない。他の企業でも同じようなことをやっているところはあるのだろうか。

オラクル・サン合併承認

OracleとSunとの合併について、司法省はハート・スコット・ロディノ法に基づく審査を終了した模様。司法省のプレスリリース等はまだ出ていない。

U.S. Department of Justice Approves Oracle Acquisition of Sun

両者ともIT業界では非常に有名な企業なので大きな注目が集まっているが、提供する商品・サービスの面ではあまりオーバーラップがない。

Oracleは2005年にERPを提供するPeopleSoftと合併しており、司法省及び十の州政府が合併を阻止するために訴訟をおこしている。この時の司法省の論点は、ERPは対象とする企業の規模に応じて三つに分けられ、その中で最も複雑な部分は寡占的な市場であり合併は反競争的だというものだった。しかしその際、最終的に司法省は敗訴しており、前回と比較すると問題点の少ない今回のケースで訴訟に至らないとは自然というところか。

むしろ業界ではオープンソースに友好的であったSunが持つ知的財産がOracleのもとでどのように扱われるかが注目されている(下記関連ニュース参照)。

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