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Intel STS

トーマス・フリードマンの移民推進を謳うOp-Ed。

Op-Ed Columnist – America’s Real Dream Team – NYTimes.com

Intel Science Talent SearchはもともとWestinghouseがスポンサーしていたイベントだったが、1998年からはIntelがスポンサーとなりその名を冠するようになった。毎年40人のファイナリストが選ばれ、最大$100,000の奨学金が授与される。過去に複数のノーベル賞・フィールズ賞受賞者を輩出している。

フリードマンは今年のファイナリストの大半の名前をリストアップしている。それが以下だ:

Linda Zhou, Alice Wei Zhao, Lori Ying, Angela Yu-Yun Yeung, Lynnelle Lin Ye, Kevin Young Xu, Benjamin Chang Sun, Jane Yoonhae Suh, Katheryn Cheng Shi, Sunanda Sharma, Sarine Gayaneh Shahmirian, Arjun Ranganath Puranik, Raman Venkat Nelakant, Akhil Mathew, Paul Masih Das, David Chienyun Liu, Elisa Bisi Lin, Yifan Li, Lanair Amaad Lett, Ruoyi Jiang, Otana Agape Jakpor, Peter Danming Hu, Yale Wang Fan, Yuval Yaacov Calev, Levent Alpoge, John Vincenzo Capodilupo and Namrata Anand.

なんだ、外国人ばかりかというと全くそういうことはない。

O.K. All these kids are American high school students. […] The awards dinner was Tuesday, and, as you can see from the above list, most finalists hailed from immigrant families, largely from Asia.

全員がアメリカの高校生で、主にアジアから移民の子供達だ。

Because when you mix all of these energetic, high-aspiring people with a democratic system and free markets, magic happens.

移民が必要な本当の理由」で書いたのと基本的に同じことだ。やる気に溢れた人々を適切なシステム=民主的な政治と自由市場と組み合わせることで凄い結果が生まれる。

Today, just about everything is becoming a commodity, except imagination, except the ability to spark new ideas.

その根底にあるのは、コモディティ化で新しいアイデアを生み出す能力だけが重要になっていると言う。そしてそういった能力を持つ人材を集める有効な方法がこういったコンテストであり、適切な移民の受け入れだ。

コモディティ化を免れているもう一つの要素はネットワークだろうが、このような催しは優秀な人材がお互いを知り合う機会も同時に生む。日本でも同じような試みは行われていないのだろうか。

Googleのプラットフォーム戦略

Googleのオープン・ソース戦略について以前書いたこと(オープンソースは裏切れない)と同じ論旨のエントリーがTechcrunchにあった:

Googleの「オープン・ソース万歳」はけっこうだが、いいとこ取りなのは否めない

Googleがオープンなのは自社にとって都合がよいときだけだ。Googleが検索アルゴリズムや広告システムのソースコードやデータを公開することなどあるまい。こうした分野の秘密こそがGoogleに巨大な収益をもたらすカギだからだ。

その通りだ。Googleは利益を出すことを目的とする営利上場企業であるし、そもそも利益を出さなければ事業は維持できない(参考:非営利と営利との違い)。これについては前にこう書いた:

Googleは無料であること・オープンであることが重要・必要な場合にはオープンソースを使い、コアなビジネスはプロプライエタリにすることで利益を上げているのだ。

Googleの行っているビジネスはプラットフォームビジネスだ。プラットフォームをコントロールし利益をあげるためには、そのプラットフォームが大きくなくてはいけない。MicrosoftがWindows向けのアプリケーション開発を促進したり、Intelがx86上のシステムや関連コンポーネントを歓迎するのと同じことだ。

OSや携帯やブラウザや本や、その他あらゆる事業分野がオープン化し、無料化してもGoogleには失うものは何もない―検索と広告で収益が上がる限りは。

これは半分正しく、半分間違っている。Googleは携帯・ブラウザ・本をオープン化・無料化することでそこから得られるはずの利益を失っている。Google全体としてはオープン化・無料化した上で検索・広告で収益をあげたほうが最終的に利益が多いというだけだ。

マニフェストの中でプロダクト・マネジメント担当副社長のJonathan Rosenbergは「オープンシステムは常に勝利する」と雄弁に説き、Google社員に対して製品をデザインする際にはオープンさを重視するよう求めている。

それがGoogleが社員に対してオープン化を推奨している理由だ。ここのソフトウェアを開発する部署にとってはオープン化は利益を生まない。無料である限りそれはコストセンターだ。プラットフォーム上で動くアプリケーションから稼ごうという誘惑は常に存在する。そこで重要となるのがオープンソースだ。オープンソースは遡及的なプロプライエタリ化を著作権法により防ぐ。誘惑に乗らないことに法律を使ってコミットするのだ。以前のポストを引用すれば次の通りだ。

サービスやAPIはいつでも引っ込めることができるがオープンソースのソフトウェアを引っ込めることはできない。企業はソフトウェアをオープンソースで公開することにより、それが永遠に公開されつづけることにコミットできるのだ。

これにより、Googleは自分たちが生み出した携帯プラットフォームを後で囲い込んで課金するのではという懸念やそのプラットフォーム自体が提供されなくなるのではという不安を効果的に払拭できる

これはIntelがArchitecture Labでとった戦略と同じだ。IntelはArchitecture Labでの研究の多くを公開・オープン化し、自社内の他の事業部を贔屓しない政策をとった。これによりx86上での開発に参加する企業は安心して活動できた。

デジタル化した市場では企業の成功がネットワーク経済・プラットフォーム市場といった性質の理解に大きく左右される。製品そのものの質よりもそれをどう販売・運用するかが成功の鍵となるのは皮肉なことだ。

オープンソースは裏切れない

バークレーのMBAの方のポストより:

A Golden Bearの足跡 : GoogleがDNS事業に参入!!! (後編) メール内容と素朴な疑問(ご意見募集)

Googleが何故DNSに参入するのかという話は各所で行われているのでここでは取り扱わない。ビジネススクールの環境が垣間見れるので興味のある方はリンク先をご覧頂きたい。ここではオープンソースに関する最後の一節だけ取り上げる:

そもそも無料って、良いことなのか:
Cases for Entrepreneurshipの授業で1つ心に残った学びに、「オープンソース(無料でソースコードを公開し、皆の力を借りて開発を進めること)は、 ローエンド品を開発するには、無限のリソース・パワーを与えるが、ハイエンド品を作るためのリソース・パワーは一切与えない」というものがありました。そ のココロは、無料で提供されたサービスはどこかで必ず裏切るため、企業向けなど信用が第一のところには、無料ではかえって参入できない。なぜ裏切るか、に ついての簡単な例としては、今年のMBA生の夏のインターンでも、「無料でいいから仕事させてくれ」、という人がいっぱいいましたが、フルタイムの仕事を 賃金ゼロで探す人はいないはずですので、インターン時期が終わるとそのリソースは必ず戻ってきません。Googleは、現在個人ユーザーには無料でサービ スを、開発者には無料でAPIを公開している「オープンソース」な企業。一方、昨年から企業向けに有料サービスを展開し始めて、オープンソースからの脱却 を試みているようにも見えますが、果たして既存のハイエンドユーザーがどれだけGoogleになびくかは、興味深いです。

オープンソースが外からどのように見られているかが見えて面白い。オープンソースとビジネスの関係は複雑で分かりにくいのでこれを素材に説明してみたい。まず冒頭からだ:

「オープンソース(無料でソースコードを公開し、皆の力を借りて開発を進めること)は、 ローエンド品を開発するには、無限のリソース・パワーを与えるが、ハイエンド品を作るためのリソース・パワーは一切与えない」

文脈によるが、半分正しく半分間違っている。オープンソースで多くの参加者を集めるためには多くの人に取って有益なプロジェクトでなければならず、それが「ローエンド」であることは多いだろう。しかし、参加者の多寡とリソースとは異なる概念だ。例えばスーパーコンピュータ開発は「ハイエンド」だがオープンソースのシステムを使うことも多い。これは簡単にカスタマイズできるからだ。

無料で提供されたサービスはどこかで必ず裏切るため、企業向けなど信用が第一のところには、無料ではかえって参入できない。

これは間違いだ。オープンソースのプログラムは「サービス」ではない一度提供されたプログラムを提供側が取り戻すことはできない。もちろん今後の開発やサポートの持続は保証されない。しかしそれが必要ならば通常の契約を用いて開発やサポートを依頼すればよい。

今年のMBA生の夏のインターンでも、「無料でいいから仕事させてくれ」、という人がいっぱいいましたが、フルタイムの仕事を 賃金ゼロで探す人はいないはずですので、インターン時期が終わるとそのリソースは必ず戻ってきません。

このアナロジーが適切でないのは、ソフトウェアが公共財であり、誰かが使っても他の人が利用する障害にはならないからだ。ソフトウェアはフルタイムどころか一度にあらゆる場所で同時に働くことができるだから全ての場所で賃金をもらう必要もない

Googleは、現在個人ユーザーには無料でサービ スを、開発者には無料でAPIを公開している「オープンソース」な企業。

無料のサービスやオープンなAPIはオープンソースとは違う。そして、その違いこそがオープンソースが企業に取って重要な理由だ。サービスやAPIはいつでも引っ込めることができるがオープンソースのソフトウェアを引っ込めることはできない。企業はソフトウェアをオープンソースで公開することにより、それが永遠に公開されつづけることにコミットできるのだ。

オープンソースにすることで無料でオープンなことにコミットしてどうするのか、どこで稼ぐのかという問題はある。これは通常、当該ソフトウェアと補完関係にある財・サービスの販売によって行われる。例えばRedhatであればシステムはオープンソースでサポート契約を販売する。Intelであればx86というプラットフォーム上で有益なソフトウェアをオープンソースで公開し、x86プロセッサを売る。

一方、「無料より怖いものはない」とはよく言ったものですが、我々個人ユーザーがGoogleにいつか裏切られる日があるとしたら、いつ、どのような形で 起こりうるのでしょうか。あるいは、Googleはいずれ個人ユーザーも「顧客」とみなして、サービスを続々と有料化することがありうるのでしょうか

最後にあるこの問題は正しい。しかし、それはオープンソースが裏切るからではなく、Googleの製品の多くがオープンソースではないからだ。Googleは無料であること・オープンであることが重要・必要な場合にはオープンソースを使い、コアなビジネスはプロプライエタリにすることで利益を上げているのだ。

Redhatであれば

再コメント:NTT組織改編問題

以前、ソフトバンクモバイルの副社長である松本徹三さんが書かれた「やっぱりNTTの組織改編は必要だ」に「NTT組織改編議論」という題でコメントをさせていただいた。今日、その内容についてありがたいことに松本さんからアゴラ上で直接反論「アゴラ : NTT組織改編問題—再論」を頂いたので再コメントしたい。先日は非常に情熱的な記事と評させて頂いたが、それだけではなく細かい議論をされる方だと分かった。

Aboutにも書いたが、投稿自体は「である」調にしていることを最初に断っておきたい。

アゴラ : NTT組織改編問題—再論

構成:

  • 但し書き
  • 競争とイノベーションとの関係
  • スパコン開発
  • 共謀
  • プラットフォーム企業の垂直統合
  • マイクロソフト
  • まとめ

但し書き

まず本題と関係ない、松本さんの立ち位置に関する部分について:

しかし、私が過去1年半以上にわたってブログ上でNTT問題について論じたのは、延30回を超えていると思いますし、日頃からアゴラを読んで頂いている方は、私の経歴を熟知されていると思いますので、毎回その事を断るわけにもいきません。

私がアゴラを読み始めたのはつい最近で、自分で調べるまでは気づかなかった(松本さんのプロフィールはこちらにある)。もちろん読者との間で同意が取れている場合には構わないだろう。プロフィールなどについてはアゴラがプラットフォームとして提供するのが適当だろう。

競争とイノベーションとの関係

技術開発の「モチベーション」と「その為の最適組織」は様々であり、「競争」が全てに必要とは私も思ってはおりません。

非常に妥当な見解だ。

私が繰り返して申し上げているのは、11月11日付のブログ記事でも述べているように、「大きな組織を維持しなければ、まともな技術開発は出来ない」という従来のNTTの主張は誤りであるという事です。

その通りだ。競争=イノベーションではないし、大組織=イノベーションでもない。松本さんの前回の記事では前者が強く押し出されているようなので指摘しただけで、後者があっているわけでもない。

個人的には、どちらが望ましいかは想定するイノベーションの発生過程(参考:知的財産権はうまくいかない?Twitterとイノベーション)や必要な情報の分布(参考:日本でFacebookは生まれない)で決まると考えている。

現在のIT関連のイノベーションはアイデア指向でユーザーに近いのでNTTないしAT&Tベル研のような大きな組織よりも小さなベンチャーのほうが向いているだろう。結論としては松本さんのそれと変わらない。

スパコン開発

今、別なところで、たまたま「スパコン開発談義」が盛り上がっていますが、もし、普通の企業ではとても間尺にあわないような「基礎研究」が国として必要な のなら、それは国民のコンセンサスを得た上で、国立の研究所でやればよい事です。(或いは、国の委託研究として富士通などの会社でやればよい事です。)こ れは、「通信事業への競争原理の導入」といった議論とは全く別の次元での議論です。

ごもっとも(別なところとは「スーパーコンピューターを復活してほしい」のことで、それに対する私のコメントは「スーパーコンピューターが必要か」にある)。

共謀

寡占体制にならざるを得ない通信事業のような設備産業においては、同業者同士の「共謀」は各事業者にとっては誘惑に満ちた選択です。しかし、誰もが納得できるような理由がなければ、そんな「共謀」は利用者の目にミエミエになってしまいます。

これは、松本さんの元記事における

この問題は、NTTではなく、NTTの競争相手に聞くのが一番の早道であることに、疑問の余地はないのではないでしょうか?(NTT自身は、本当は競争なんかしたくない筈なのですから。)

に対する私のコメント

NTTの競争相手にとって最も望ましいのはNTTと共謀することであり、その際の自分の分け前を増やすことだ。

を指している。

誰もが納得できるような理由がなければ、そんな「共謀」は利用者の目にミエミエになってしまいます。

はそれほど明らかではない。生産者・監督官庁・政治家が結託して国民・利用者にとって好ましくない行動をとるのはよくあることだ。消費者・有権者が細かな問題を見過ごす点を政治が利用する。

但し、私はソフトバンク・NTTに関してそれが実際におきる・おきている可能性は非常に低いと思う。過去の経緯を考えてもソフトバンクほど競争的な会社は稀だし、NTT組織改編は目につく話題だ。またこのような議論はそれを明らかにするので共謀はさらに困難になる。ここでもまた、結論としては私の主張と松本さんの主張は変わらない。単に

この問題は、NTTではなく、NTTの競争相手に聞くのが一番の早道であることに、疑問の余地はないのではないでしょうか?

は正しくないことを指摘しただけだ。完全な回答をするなら、「疑問の余地はあるがこのケースに関して言えばNTTの競争相手であるソフトバンクに聞くのはいい方法だ」となるだろう。

「独占・寡占の弊害を防ぎ、利用者の利益を守る」為に、監督官庁としての総務省が存在しているのであるし、そうでなくても、競争環境下にある事業者にとっ ては、利用者の支持と共感を得る事がビジネスに勝ち抜くための必須条件ですから、どの事業者もそんな事を迂闊に行う事はしないでしょう。

については、監督官庁たる総務省も事業者もそこまで信用していない。特に日本の多くの官庁はいまだに産業振興といったアジェンダを持っていることもあり、独占・寡占を防ぐという競争政策の適用には消極的な印象が強い。

プラットフォーム企業の垂直統合

「光通信網」で独占的な立場にあるNTTは、全階層において圧倒的に有利な立場を占める事が出来ると言えます。青木さんご自身もおっしゃっておられるよう に、NTTは、「どうすればトータルで自社に有利になるか」を考えた上で、如何様にも利用条件を定め、全体のビジネスをどんな方向にも誘導出来るからで す。

これはシカゴ学派の単一独占利潤定理(One Monopoly Rent Theorem; OMRT)や補完的外部経済内部化(Internalizing Complementary Externalities; ICE)と呼ばれる議論だ(注)。その主な主張は「独占事業者が自社のために最善=最も利益が高いと考える垂直統合は社会的にも最善=社会余剰が高い」というものだ。よってNTTが光通信網で独占的であることは、他の階層における彼らの意思決定に規制が必要ないことを意味するということになる。

もちろん、この議論は実は穴だらけだ。例えば、独占的プラットフォーム提供者が価格規制を受けている場合や価格差別を行う強いインセンティブを持っている場合にはうまくいかない。また垂直統合を行わないというコミットメントが行えない場合にはしかたなく社会的に非効率な垂直統合を行うこともある。例えば、Intelは自分たちがアプリケーション市場(主にコンピュータ開発)に不必要に進出しないことを明らかにしている。その方法のひとつがアプリケーション層での研究開発をオープンソースにすることだ。

シカゴ学派の議論がNTT問題にそれほど関係するとは思わない。ただそういった考え方は(アメリカの)競争政策において非常に根強く、そういう考え方もあるという点を紹介した。

マイクロソフト

欧州委員会は米国司法省よりは厳しい立場を取っており、その「反競争的な行動」に対して相当のペナルティーを課しています。

その通りだ。これは欧州委員会と米司法省とのイノベーションに対する考え方の違いを示している。競争政策についてはアメリカが常に先行しているのでヨーロッパも徐々に長期的なイノベーションに対するインセンティブを重視するようになると思われるが分からない。

日本はヨーロッパよりもさらに遅く、競争政策に関する経済理論の適用自体進んでいないようだ。これは松本さんの次の一節に現れている:

独禁法に詳しい或る弁護士先生と話したところでは、「光通信サービスにおけるNTTの現状は、独禁法に抵触するものとして、今すぐにでも十分立件できる」との見解でした。

エコノミストは原理の問題として、それは競争法の適用が不適切なのだからそれはそれで競争政策を改善すべきと言うだろうが、当事者としてはそんなことよりも早く何とかしてほしいというのは当然の要求だろう。アメリカでも反トラスト関連の裁判が数年に渡るのは珍しくない。

まとめ

私のコメント(NTT組織改編議論)はどれも松本さんの議論を結論として批判しているものではない。議論の根拠の中で不明瞭なものを補足したというのが正確だろう。ブログにおけるやりとりで、NTTを含めた通信市場の競争・イノベーションに関する議論がより精緻になると同時により多くの人の目に触れることはとてもよいことだ。

(注)定訳が見当たらないので即興で訳した。

鶏が先か卵が先か

Chicken & Eggという問題はネットワーク効果の強い市場では非常に重要である。とくに双方向性市場(two-sided market)では顕著だ。例えばアマゾンがそうだ。本を買う顧客がいなければ出版社は商品を卸さない。

以下のエントリーで起業家でベンチャーキャピタリストであるChris DixonがChicken & Egg問題への対策を挙げている。

cdixon.org / Six strategies for overcoming “chicken and egg” problems

彼の提案は六つだ:

  1. Signal long-term commitment to platform success and competitive pricing.
  2. Use backwards and sideways compatibility to benefit from existing complements.
  3. Exploit irregular network topologies.
  4. Influence the firms that produce vital complements.
  5. Provide standalone value for the base product.
  6. Integrate vertically into critical complements when supply is not certain.

一つ目は人々の期待を変えるものだ。アマゾンの例でいえば出版社が商品を卸すのに必要なのは顧客が来るだろうという期待だ。別に卸す時点で客がいる必要はない。コミットメントデバイスとしてGoogleのオープンソースソフトウェアが挙げられている。より適切な例としてはIntelのIntel Architecture Labが挙げられるだろう。Intelはx86という自社が実質支配するプラットフォームに関連する投資を行った。IntelがIALにおいて如何にコミットメントの問題にを注意していたかはPlatform Owner Entry and Innovation in Complementary Markets: Evidence from Intelに詳しい。

二つ目は互換性を持たせることで既存のネットワーク効果を利用するというものだ。個の場合もコミットメントが問題になる。MicrosoftがMac互換のOfficeを提供する際、それがいつまで維持されるかはユーザーにとって重要だ。Silverlightも同様だ。この戦略はEmbrace, extend and extinguishと呼ばれる。しかし必ずしもうまくいくとは限らない。OS/2の例もある。この戦略がどのような場合にどうやって成功するかも興味深い。

三つ目はとくに興味深い。一部のグループに的を絞ることで既存のネットワークを打ち破るというものだ。ここでは大学生が多いfacebookがどうやってFriendsterを追い抜いたかが例として挙げられている。いかに特定のグループを発見するかが鍵となる。

四つ目はプラットフォームの問題だ。不可欠なコンポーネントを持っている企業を味方につければ確かに競争には勝てるだろう。しかし、それを提携相手の企業はそれを知っているのでそれなりの見返りがなければ協力しないため、最終的に利益になるかは微妙だ。Sony / PhilipsのCDが事例として挙げらているが、この場合最も重要な点は交渉のやりかただろう。複数いる提携相手に別々に交渉していくことで「見返り」を減らすことができる。

五つ目は見落とされがちだが、要するにネットワーク性を減らしてしまうということだ。ユーザーがリスク回避的であれば有効だ。

最後の六つ目もやはりコミットメントが問題になる。AppleはMac OSX上で多くのアプリケーションを持っているがこのことは外部のデベロッパーにとっては大きな脅威となる。