もっと子供を育てよう

もっと多くの子供を育てるべき理由を説明した父の日の記事:

The Case for Having More Kids – WSJ.com

アメリカの出生率は先進国では最も高い水準にあるが、それでも合計特殊出生率は2を若干超える程度だ。

ここでは、もっと子供を持つべきであるいくつかの根拠が示されているが、二つに分けられる。一つは子供を育てることの苦労は過大評価されていること(1-5)、もう一つは子育てに対して過剰なプレッシャーを感じていること(6-8)だ。

  1. 子供の経済的価値が減少したというが、狩猟民族の時代から子供は親の面倒を見ておらず、親が子供の面倒を見ていた。むしろ、近代になって年金などの社会制度が引退した親をサポートするようになった。
  2. 子供のいるカップルはそうでないカップルよりも「とても幸せだ」と答える割合が低いが、その差は1.3%に過ぎない。
  3. 結婚の幸福感に対する効果はそれよりも遥かに大きく、18%に上る。
  4. 子供がいることによる幸福感の減少は一人目の子供にほぼ限られ(5.6%)、二人目以降はほとんど影響を及ぼさない(0.6%)。
  5. 91%の親はやり直せるとしてもやはり子供が欲しいと答えている。
  6. 子供の生涯の健康度は遺伝要素が強い。
  7. 知能や幸福感についても生物学的な繋がりの方が育て方よりも強い。
  8. 子供の教育年数や所得に対する影響もほとんどない。

    要するに、子供を育てるのは言われているほど辛いことではないし、もっと気楽にやってもいいということだ。

    In fact, relaxing is better for the whole family. Riding your kids “for their own good” rarely pays off, and it may hurt how your children feel about you.

    確かに、子供に過度の期待をして育てて、うまくいく例はあまりない。放任気味で構わないというのは納得できる。

    Once parents stop overcharging themselves for every child, the next logical step is straight out of Econ 101: Buy more.

    もし、子育てのコストが思ったより低いのであればもっと多くの子供を育てるのが理にかなっている。二人目以降の子供のコストが小さいなら尚更だろう。ここでの「コスト」というのは子育ての金額ではない。幸福度自体を測定しているので金額は問題にはならない(子育てに幾らかかったとしても幸福度が高ければそちらの方がいいということだ)。複数の子供を育てることでリスクを分散することもできる。

    Focus on the big picture, consider the ideal number of children to have when you’re 30, 40, 60 and 80, and strike a happy medium. Remember: The more kids you have, the more grandkids you can expect. As an old saying goes, “If I had known grandchildren were this much fun I would have had them first.”

    しかも、子供を持つことのコストは、育て始める時に集中しており、その便益は長く続く。例えば、子供を持つことが親の幸福度に与える影響を調べるとき、数十年後に孫を持つことの便益はカウントされていない。子供を育てるかどうかを考える際に人生全体の視点から考える必要があるというのはその通りだろう。

    In the data, the people to pity are singles, not parents.

    この議論は、子育てに対する補助金の是非にも疑問を投げかける。もし子供を持つカップルが独身の人よりも幸福度が高いのなら、子供のいる家庭に対する(再)分配は幸福度に関して逆進的になる。

    結婚とダイエットのインセンティブ

    結婚や離婚が適正体重を維持するインセンティブに大きな影響を与えるという(当たり前の)話(NYTの元記事参照論文):

    The divorce diet

    まずは結婚を境にしたBMIの変化がグラフになっている。非常に分かりやすく結婚を機にBMIが急上昇していく様が見て取れる。結婚相手を探す必要がなくなるためにダイエットするインセンティブが減るという以外にも多くの理由が考えられる:

    • 共同生活によって自炊をして食べる量が増える
    • 二人だとデザートを食べることが多い(これはデート中でも同じか)
    • 結婚と出産が重なっている
    • ホルモンの影響
    • 同居によるストレス

    逆に離婚後のBMIの急減も明らかだ。特に女性で体重減少が甚だしい。これもまた、結婚市場での価値だけでなく様々な要因で説明できる:

    • 別居によるポーションの現象
    • 離婚に伴なう心理的な要因
    • そもそも太り過ぎてたのが離婚の一因

    さらっと眺めた限りでは特にこれらのファクターを分離している様子はないが、結婚相手を探しているかがダイエットするかどうかに強い影響を与えているのは明らかだろう。

    ブランドダメージ勝負

    小ネタですがブランド価値に関する面白いグラフ:

    BP: Still not as evil as Goldman Sachs | Analysis & Opinion |

    BrandIndexによるToyota, BP,Goldman Sachsの企業ブランド価値の推移だそうだ。最近二週間に、そのブランドに関する良い話を聞いたと言う人の割り合いから悪い話を聞いたと言う人の割合を引いた数値がプロットされている。一時は-50を超える低スコアを記録したToyotaは元々の高スコアもあり順調にイメージを回復しているようだ。他にもBPのスコアがずっとプラスだった点や、GSが全く評判を気にしていなさそうなところは面白い。BrandIndexのページを見るとサブスクリプション価格はお問い合わせになっているが一体どのくらいチャージしているのだろう。

    アメリカの受刑率

    アメリカの受刑者の数が多いのは知られているがここ二十年ほどの伸び率はすさまじい。

    Saving Money by Slashing Prison Spending

    縦軸は10万人当たりの受刑者数だ。戦後200人前後に過ぎなかった受刑者数は1980年あたりから爆発的に増え、今では800人近くになっている。これは常時国民の0.8%が堀の中にいるということでありショッキングな数字だ。

    Wikipediaの記事中の地図を見ても、アメリカの受刑率の高さは際立っており(中国の数字は極めて疑わしいが)、多くの州政府が財政赤字に苦しむなかで、軽い犯罪で収監されている受刑者を出所させようという提案がなされている。近年の受刑者急増はドラッグ取り締まりによるもので、直接他者に危害を与える可能性は「比較的」小さいこと、ドラッグ利用者を投獄することは他の犯罪者とのコネクションを作り、かつ逮捕歴によって社会復帰を極めて困難にすることなどが根拠だ。

    マリファナの合法化に向けた運動は新聞などでも頻繁に取り上げられているが、背景にはこの刑務所の運営コストと合法化に伴う税収がある。

    P.S. 逆にアフリカの多くの国で受刑率が低水準にとどまっているのは警察・司法機能の欠如を表している。

    ミルクにもインフォグラフィック

    牛乳パックにもインフォグラフィックスを入れたらどうなるか。

    Nutritional facts redesigned

    デザインを行っているのはモントリオールのデザイン事務所だ。牛乳パックのデザインとしてはなかなかカッコいい。ちなみにアメリカによくある牛乳のデザインは次のようなものだ:

    ちなみにこれはAmazon.comで売られているミルクだ。一体生乳をアマゾンがどう売るのかはよく分からないが、どうも製造元関係者にしか見えない絶賛コメントに溢れている。サイズは1ガロンなので訳3.8リットルとなっている(よって本当は下のボトルの方が上のパックより4倍近く大きい)。まあこの二つがスーパーに並んでいたら上を買いたくなる。

    しかし、デザインとはいえ気をつけることもある。キレイな栄養情報の表示が必ずしも分かりやすい、誤解のない表示方法とはいえないからだ。具体的なラベルは読めないが以下のような問題がある:

    • 視覚化が標準化されていないため比較が困難(逆に標準化されるとデザインとしては意味がない)
    • 同時に誤解を招く表示になっていないかの規制も難しい

    もちろんメリットとしては栄養情報が分かりやすくなるというものもあるが、これなら情報を規格化して例えばQRコードのような形で貼っておくだけでもよい。消費者は自分の端末や視覚化ソフトウェアで好みの表示方法を選べる。毎回同じソフトウェアを使えば比較は可能だし、製品の数よりソフトウェアの数の方が少ないので規制やレビューも容易だろう。