Web2.0的教育とダイエット

チェックさせて頂いているバークレーのMBAの方のブログの記事について:

A Golden Bearの足跡 : ゴルフレッスン開始 & Web2.0的教育へのちょっとした考察

その中で出てきた1つの話題が、「教育にWeb2.0的な発想を持ち込めないか」というものです。

供 給側では、例えば教育ツールとしては、Webに親和性の高いSNS・ガジェット・iPhoneアプリ等、従来の黒板やパワーポイントより効果が高そうな ツールが、いろいろ作れそうです。また、デジタルハードウェアに関しても、今まさにゲームの世界で盛り上がっている体感型センサや、自動車向けに開発され ている「居眠り防止センサ」のような技術は、そのまま教育にも横展開できるでしょう。

教育とは若干異なるがこれに非常に当てはまるベンチャービジネスとしてdailyburnがある。

ダイエットをしたい人のためのサイトで、関連する情報の提供、データの記録からiPhoneアプリまで、ダイエットの助けになるツールを提供している。

一方、需要側では、私がゴルフレッスンを丸1年間入れる事ができなくて非常に後悔しているように、もし仮に満足なツールが揃ったとしても、それを確実に受 け取るためのサプライチェーンが揃っているか、忙しい中どう受講生側の時間とモチベーションを確保してあげられるか、の問題解決の方に、需要がある気がし ています。

需要面においても、ユーザー同士のグループやパートナー、コンテストなどを導入してモチベーションを上げようておりまさに合致している。他のユーザーとつながることで参加にピアプレッシューが発生する。まさにWeb2.0的なメリットだ。

さらに金銭的な観点からモチベーションを維持することを考えると、ジムのメンバーシップのような形態が考えらる。決まった金額を払う契約になっていれば参加するインセンティブが生まれるためだ。ジムのモデルは供給側についても該当する。ジムがトレーナーの商売をジム内で認めることがあるように、サイトでコーチングのような副次的なビジネスを認めることは可能だ。dailyburnの例で言えば、サイト内でNutrisystemのようなダイエット食品を提供することが考えられる。サイト上で収集した個人情報を元に適切な抱き合わせ販売をすればより大きな利益が見込める。

dailyburn

但し、ジムとは異なり、メンバーの数は需要にも供給にもプラスの外部性を持つので価格付けには注意が必要になるだろう。特にサービス開始時は低価格ないし無料である必要がある(有名人を巻き込む戦略もありだ)。長期的にも広告収入やプラットフォーム上でビジネスを行う企業等への課金、サイト上での物品販売で十分な収入が見込めるのであればメンバーへの実質的な利用料をゼロにすることも可能なだろう。その場合には一定金額は徴収した上で、計画どおりに利用している場合には返金することでインセンティブ構造を維持できる。利用者は計画どおりに利用できることに過大な自信を抱くことが予想される(Paying Not to Go to the Gym)ため利用者からも収益が見込める。普段から忙しいなど利用できない恐れがあるひとのほうが平均的に支払い意志が強いため効果的な価格差別戦略でもある。

追記:似たようなことをするBlackberry用アプリケーション、senseiを発見。

  • Paying Not to Go to the Gym

BARTストライキ回避

East Bay Express | Blogs | Give BART Management Credit

今週予想されていたBARTのストライキ回避の要因は、不景気の中で世間一般からの批判が大きかったことだけではなく、政治家が介入しなかったことがあるようだ。前回労使争議があった2001年にはサンフランシスコとオークランドの市長が介入してなんと4年間で22パーセントもベースがあがったとのこと。

Clearly, the union was hoping for a repeat of 2001 when then mayors Willie Brown of San Francisco and Jerry Brown of Oakland inserted themselves in the process and the train operators and station agents walked away with a 22 percent raise over four years.

公共交通機関に労働組合が必要な理由がいまいち分からない。団体交渉が問題なら日本の公務員のように人事院のような組織を使うこともできる。そもそも半政府機関は労働者に厳しくないので交渉力の非対称性はあまり問題ではないはずだ。アメリカは労働市場が非常に流動的なので解雇による経済的なダメージも小さい。

ちょっと労働組合の経済的な意味について検索してみたが、あまり有用なものは見つからない。

IDなしでのフライト

How To Fly Without ID – Looking Glass News via Feld Thoughts

国内線であってもIDの提示を要求されるのが通例だけど、それを無視したらどうなるかを実際に飛行機に乗って確かめたという記事。

結果としてはIDは無くても搭乗自体は問題ない。航空会社によって対応が違うものの法律上、IDの提示を強制することはできないためだ。連邦航空局の規制によればIDの提示をしない客は要注意とフラッグして荷物の検査をするだけだ。実際航空局も搭乗を拒否しないように航空会社に通達しているし、拒否された客から訴訟も発生しているそうだ。

この記事には面白いオチがある。

[…] airline personnel were deliberately and knowingly coercing people into showing government ID by saying “it’s the law.” […] the companies are simply tired of people selling their frequent-flyer tickets. The airlines wanted to stem this practice by checking everyone’s ID, but knew there would be BIG problems if they instituted this procedure as a private corporate policy. It was so much more convenient to say it was federal law and make the government the scapegoat. So this policy meets the airlines’ private financial goals, and the government’s goal of ever-increasing social control.

航空会社は、マイレージ特典の航空券転売を防ぐためIDをチェックするインセンティブがあり、法律で必要とされているというのが都合のいい言い訳になっているとのことだ。

この慣習はおそらく当分なくならないだろうし、日本でも導入される日は近そうだ。

書評:Brazen Careerist

本を読んだら時々書評をしようと思う。初回は、昨夜、未だに時差ぼけがあり眠くなかったので読んだこの本で:

Brazen Careerist: The New Rules for Success by Penelope Trunk

著者は著名ブロッガー。45個のキャリアについての助言を集めたものである。特徴は、現在18-40歳あたりのGen X / Yのみを対象としていることだ。新しい世代は、前世代(=ベビーブーマー)とは異なり、「自分に合う」仕事を見つけるまで転職を繰り返し、会社での成功よりも仕事と私生活のバランスを求める。社会から性差に基づく収入格差もなくなり、主婦という概念もなくなりつつある。

この状況下においては、旧来のキャリア上の問題、例えばどうやって同僚より早く出世するか、はあまり意味を持たない。そこで著者はこのような状況の変化を所与としたうえで、キャリアを中心にしたアドバイスをする。履歴書の書き方から、上司・セクハラの扱いかた、、メールの書き方に至るまで様々な分野に渡る。心理学などの研究が援用されている箇所(例:人々の幸福度は年収$40,000を越えると収入の影響をほとんど受けない)は特に面白い。

個々のアドバイスの内容自体は特に驚くようなものではないが逆にどれも合理的だ。上述したような新しい環境で仕事をしている人には実用的な情報だろう。もし、自分の業界がまだ「前世代」的であるなら、この本を読んで備えてみるのもいいだろう。内容も平易で、200ページもないので英語の勉強にもお勧めできる。

知らなかった単語:hobnob, brownnose

アメリカ反トラスト法メモ

ほぼ自分用メモ。当然IANALで。

アメリカの(連邦)反トラスト法(Antitrust Law)は主に三つの法律(Act)からなる。

  1. シャーマン法(Sherman Act): 1890年
  2. クレイトン法(Clayton Act):1914年
  3. 連邦取引委員会法(Federal Trade Commission Act):1914年

これに加えて細かいものが

  • ロビンソン・パットマン法(Robinson Patman Act):1936年
  • ハート・スコット・ロディノ法(Hart-Scott-Rodino Act):1976年

があるが両者ともクレイトン法に対する修正案である。前者は小規模小売店を価格差別から保護するもので主に連邦取引委員会(FTC)が執行し、後者は一定規模以上の合併に際しFTC及び司法省(DOJ)に通知する義務を定めるものだ。

基本となるのはシャーマン法第一条:

Every contract, combination in the form of trust or otherwise, or conspiracy, in restraint of trade or commerce among the several States, or with foreign nations, is declared to be illegal. […]

第一条は非常に曖昧で競争を阻害する行為が対象となるが、実質的にはコモンローを築く根拠としての役割を果たす。第二条:

Every person who shall monopolize, or attempt to monopolize, or combine or conspire with any other person or persons, to monopolize any part of the trade or commerce among the several States, or with foreign nations, shall be deemed guilty of a felony […]

第二条は市場支配力を有する企業がとる一方的な行動に適応され、略奪的価格付け(predatory pricing)や抱き合わせ販売(bundling)が対象となる。

クレイトン法はシャーマン法の曖昧さに対する不満から生まれたもので主な条項としては、競争を阻害する抱き合わせ販売及び排他取引を禁じる第三条:

It shall be unlawful for any person engaged in commerce, […], to lease or make a sale or contract for sale of goods, […], or fix a price charged therefor, or discount from, or rebate upon, such price, on the condition, agreement, or understanding that the lessee or purchaser thereof shall not use or deal in the goods, […] of a competitor or competitors […], where the effect […] may be to substantially lessen competition or tend to create a monopoly in any line of commerce.

及び水平・垂直合併を規制する第七条:

No person […] shall acquire the whole or any part of the assets of another person engaged also in commerce […] the effect of such acquisition may be substantially to lessen competition, or to tend to create a monopoly.

がある。

FTC法はクレイトン法と同年に成立し、新しい執行機関としてFTCを設立し、第五条において、

Unfair methods of competition in or affecting commerce, and unfair or deceptive acts or practices in or affecting commerce, are hereby declared unlawful.

シャーマン法・クレイトン法において反競争的とされる行為を規制する権限をFTCに与えている。

DOJ、FTCは共に反トラスト法の執行機関であるがいくつかの違いがある:

  • DOJのみが刑事を扱う(シャーマン法違反のみが刑事罰の対象となる)。
  • FTCはよりFTC法に基づき若干広い範囲の行為を規制する。
  • FTCは衡平法上の救済(equitable relief)のみを行う。
  • FTCは内部に準司法的行政機関を持つ。

また日本と異なる点としてシャーマン法・クレイトン法違反により損害を受けた場合には、被害額の三倍(treble damages)の懲罰的賠償を請求できる。

アメリカの法律の原文はコーネル大学ロースクールから。