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Netflixのスーパースター主義

最近各所で取り上げられている、NetflixのCEOが書いたコーポレートカルチャーについて書いたスライド。100枚以上あるが、日本の大企業に勤めているなら一読の価値有り。

Culture @ slideshare

いくつかの指針が挙げられているが、根底にあるのは(アメリカでは一般的にそうではあるが)徹底的なスーパースター主義である。

Great Workplace is Stunning Colleagues.

他に挙げられていることのほとんどは如何にスターを引き付け、効率的に働いてもらうかということに過ぎない(e.g. 時間的な裁量)。それは何故か。二つの根拠が示されている。

In procedural work, the best are 2x better than the average.
In creative work, the best are 10x better than the average, so huge premium on creating effective teams of the best.

創造性を要求する仕事においては、スターの相対的な価値が非常に高い。

Avoid Chaos as you grow with Ever More High Performance People – not with Rules.

企業が大規模になると複雑性が増すにも関わらず、大抵の場合、優秀な人材の割合は減っていく。これにより社内に混乱がもたらされる。多くの企業はこれに対してルールを用いて対処するが、これはさらに優秀な人材を減らす原因となる。この状態で、市場の変化(e.g. 技術進化)が起こると企業はそれに対応できない。スーパースター主義は代わりに、大規模になるにつれ有能な人材を増やすことで対処する。これが可能なのは一つめの根拠が成り立っていて、市場の変化が大きな場合となるだろう。

日本の企業文化はここに上げらている方針の正反対だといってもよい。もしこの方針が正しいなら(Netflixは非常に成功している)、日本企業がそのような市場でうまくやっていけないのも不思議はない。

アメリカ人は誰も指摘しないが、日本であれば、スーパースター主義は少数の企業ではうまくいっても社会全体では回らないという批判もあるかもしれない(実際にこのスライドにおいてもサラリーをもらっていない社員には適用されないと書かれている)。しかし、社会全体でどうであるかと、市場で生き残るかとは何の関係もない。社会的な対処が必要であるなら再配分政策などを利用すべきだろう。

ちなみに先進国ではドイツがもっとも日本に近い雇用慣習を持っている。

European Layoffs: Choosing Between the Young, the Weak and the Old

によれば、レイオフをする際、アングロサクソン系では業績の低い人、ゲルマン系では転職が可能であろう比較的業績の高い人や若い人、ラテン系では年金等の受給が可能な人を切る傾向があるそうだ。

アングロサクソン系で低業績の人を切る理由としては、

laying off the oldest, highest performers was a slap in the face to the successful employee and sent a bad signal to younger managers that the firm did not reward success.

業績のあるひとを解雇すると若い層に悪いシグナル(業績が評価されない)を送ってしまうとあり、ゲルマン系では逆に低業績の人を切らない理由として、

choosing a good performer decreases social discord since he will find employment easier.

他に職を探せる比較的優秀な人材を解雇することで、解雇があたえる不調和を緩和えきるとある。ともに業績を解雇する社員の選別基準としていて、他の社員への影響を考えているにも関わらず、全く異なる結果となっている。この違いは、影響を与える社員の想定が異なるためだろう。アングロサクソンでは将来成功する社員のモチベーションを考えているが、ゲルマン系ではリスク回避的な一般社員を想定している。ここでも雇用における根本的な考え方の違いが表れている。どちらがうまくいくかはどのような市場で競争が行われるかによってくるだろう。

Bill Me Later

Bill Me Laterを利用する顧客の平均購買価額は通常のクレジットカードを利用する顧客のそれに比べ有意に高いそうだ。Bill Me Laterというのはファイナンスオプションの一つで、基本的には支払いをずらす代わりに利子を払うというものだ。

Live From eTail: Alternative Payments Becoming Mainstream | PayPal, Bill Me Later, JTV.com.

Giving ballpark figures, Wolansky said Orvis’s average online order is about $150. But the average order for Orvis customers using Bill Me Later is $175. And those Bill Me Later customers who take the 90 days same-as-cash option spend more than twice that amount, just under $400.

Orvisはアウトドアアパレル関連の通販会社。この記事によると顧客全体の平均購入額$150に対し、Bill Me Laterを利用する顧客は平均$175消費する。さらにBill Me Laterの90日間以内に支払えば利子がかからない”the 90 days same-as-cash”オプションを利用する顧客にいったっては平均$400近くも使うそうだ。

“The 90 days same-as-cash”オプションを利用する人の平均がBill Me Later利用客の平均から大きく乖離しているのは、実際に90日以内に支払い(返済)する人が少なく、かつそのグループの支払額が非常に高いためだ。期日以内に支払う人の割合は1/4程度だと言われている。

ちなみに、90日以内に支払いがない場合には購入日に遡って利子が計算されるのが通例だ。その場合の利率は24%以上になる。

新聞社の規模

アメリカでは小規模な新聞の方が大規模な新聞よりもうまくやっているという話。

Small is beautiful (and successful) for newspapers – Yahoo! Finance

原因として挙げられているのは:

  1. 地域レベルでは競争が厳しくない。特にウェブ・ラジオなど他のメディアとの間の競争があまりない。
  2. Craigslistは小さな町をカバーしていないため案内広告(classified ads)からの収益が見込める。
  3. 購読者の興味に対応しやすい。
  4. 非公開会社が多く柔軟な対応ができる。

確かに自分も全国レベルの新聞は全くチェックしていない。ましてや紙の新聞は久しく読んだことがない。RSSリーダーによれば新聞でチェックしているのは、

  • East Bay Express
  • The Berkeley Daily Planet
  • The Daily Californian (campus)

だけだ。その他の新聞は何らかの記事で紹介されている場合にしか訪れない。理由は単純だ。大きな新聞のRSSを購読しても処理しきれないし、大概の記事は興味がない、ないし読む価値がない。重要なことは情報の有無ではなく、それを選別するリソースだ。その意味でローカルなニュースには価値がある。既に地域という要素でフィルターされている。

大手の新聞がこれに対抗するためには、読者によるコンテンツの選択を容易にするほかない。これは紙媒体を前提にするとそもそも不可能なように思われる。

追記:Craigslistのカバー都市が拡大したそうだ。

オンラインニュースの心理学(1)

スタンフォード、Persuasive Technology LabB. J. Higgsのインタービュー記事。お題は「オンラインニュースは如何に収益をあげるか」。

What a Persuasive-Technology Psychologist Can Tell Us About Paying for News Online

筆者はニュースサイトを(アクセス権限と課金の関係に基づき)三つに分類する:

  1. アクセスを全般的に制限し、全ユーザーに支払いを求める。
  2. 一部のコンテンツへのアクセスに対し課金する。広告も利用。
  3. アクセス制限は行わずに、寄付を元に運営する。

その上で三つめの寄付モデルが推奨される。理由としては次の四つが挙げられている:

  1. オンラインでのニュースは今まで無料であったため、ユーザーに支払い意志がない。
  2. 有料のサイトが増えると、サイト運営者にはコンテンツを無料にしてユーザーを奪うインセンティブが生じる。
  3. 大抵のユーザーは質が多少低くても無料のニュースを選ぶ。
  4. 特に若い層にその傾向が強く長期的な見込みがない。

しかし、これらの理由はかなりお粗末だ。支払い意志がなくとも必要なものは買わざるをえないし、質に差がありさえすれば二つめ・三つめの根拠は当たらない。また若い人の支払意志額が低いのは何についても同じである。むしろ、重要な問題は

  1. ニュースに関する法的保護は弱く、コンテンツを差別化するのは困難である。
  2. ニュースは消費するまで価値が分からない経験財であり、余程ブランドが確立していない限りアクセスを制限して売るのは困難である。
  3. ニュースの価値は消費者によって大きくことなるのでバンドリングなどを用いなければ差別化ができても十分な収益が得られない。
  4. そもそも多くのニュース記事はAPのようなニュースエージェンシーによって配信されていて差別化されていない。

ということだろう。一つ目はHot Newsの著作権保護が該当する。事実としてのニュースは一般的に著作権の保護対象ではないが、一部はHot News Doctrineで保護される。近年APがこれを根拠にニュースアグリゲーターを訴えている(e.g. AP vs All Headline News)。しかし、APのような大組織でなければこのような方策はとれないし、1918年のHot Newsが現代何を意味するのかは明らかではない。

二つ目は書籍などにも共通する。伝統的な対処法は評判を確立することである。WSJやEconomistのような出版物はすでにその価値が一般に理解されているためコンテンツをアクセスして課金することができる。また記事の内容も専門化されており、ユーザーも均質的だ(次の点に関連する)。

三つ目は一つ目と関連している。ニュースの配信が物理的な流通に縛られなくなったことにより、ニュースを纏めて売るというモデルは維持するのが困難である。スポーツ好きなユーザーはスポーツ記事だけを選んで読み相場情報は読まない。すると個々のニュースに対する需要は非常に弾力性が高くなり、たとえ独占的に供給されたとしてもたいした利益が上がらない。記事の選り好みが困難な紙媒体であればいろんな記事を混ぜることで、新聞全体への支払い意志をかなり均一にできる。この場合にはかなりの利潤を得ることができるのは明らかだろう。デジタル配信はこれを極めて困難にした。

四つ目の問題はそもそも問題なのかが定かではない。新聞各社は現在デスクの人数を減らしてコストを圧縮しているが、そもそもニュースが事実であるなら誰が見つけても同じなのでなるべく共有するというのは経営上も社会的にも妥当である。但し二つほど懸案がある。一つは、競争政策上の問題である。ニュースの仕入先が統合されていくことで価格が上がる恐れがある。これは、通常の競争政策として、効率性の向上と比べて判断されるべきである(Rule of Reason)。二つ目は民主主義との関係だ。ニュースソースが集中していくことは政府による言論の抑圧を容易なものにする。ニュースに関しては避けて通れない問題である。

次回は記事中で挙げられている、寄付をもとにしたいくつかのビジネスモデルについて考える。

http://www.bjfogg.com/B

ブログ再スタート

久々にブログをスタート。完璧主義の気があるため、なかなか始めるのが難しい。ブログの趣旨からフィードの構成・文体の選択に至るまで数日考えては用事が入って放置されるの繰り返し。これでは全く進まないので、深いことは考えずに書き始めることに。但し、見ての通り文体についてはである調で統一することに決めた。書く内容としては、

  1. 単なる個人的雑感
  2. 自分がチェックしたニュース記事などの紹介
  3. 同じくブログなどの紹介
  4. 書評

あたりを予定。RSSフィードはこちら。どうでもいい個人的話題は聞きたくない方はこちら。そのうち英語で書いたものだけを集めたフィードも作る予定。

最後にお決まりの自分用ブログ設定メモ:

  • Hostmonsterのsimplescriptsを使ってwordpressをインストール。
  • Sociableプラグインを導入し、はてななど日本でよく使われているソーシャルブックマークを手動追加。
  • アクセス解析はお手軽なStatを利用。Akismetのキーと共通。
  • マルチバイト文字対策にwp-multibyte-patchを導入し、日本語ロカール関連ファイルをwp-content/languagesにアップロード。
  • wordpressのアップデートでのメモリ不足を回避するため、メモリ使用量を増やしたphp.iniをwp-adminにアップロード。
  • バックアップにWP-DBManagerをインストール。定期的にバックアップを保存・メールに送信してくれる。
  • 利用しているテーマが利用を推奨しているWP-PageNaviも導入。

オンラインでアップデートが可能などWordpressも大分進化した様子。