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エイズを減らす新しい仕組み

サブサハラでのエイズを減らすための新しい政策が提案されている

Economic Logic: Fight AIDS with life insurance

In short, there is strong evidence HIV/AIDS is not only a health problem, but a serious economic problem in sub-Saharan Africa.

エイズは人的投資を逸失させるだけでなく、平均寿命の低下を通じてそもそも人的投資を行うインセンティブを減少させる。人口が減ることによる一人当たり資本の増加を計算に入れても、経済成長にネガティブな影響がある。

Because the main mode of HIV transmission in sub-Saharan Africa is through heterosex-ual sex, eorts to contain the spread of the disease has entailed educating individuals not tohave lots of unprotected sex, to be faithful to their partners, and to use condoms every time.

アフリカでHIV感染を防ぐためには、コンドームの利用や不特定多数との性交渉を抑える必要がある。しかし、HIV感染のリスクを啓蒙する政策がうまくいっているとは言い難い。

Some studies suggests the only feasible way to contain the pandemic is by creatingopportunities for these countries to surpass a certain development threshold where life ex-pectancy and wealth are increased to levels in which the incentive to engage in risky sexualpractices is reduced.

その理由の一つは、リスクが認識されたとしてもそれを避けるとは限らないことだ。平均寿命が元々短くしかも貧しい国においては、エイズによって寿命が短くなることの機会費用が比較的小さい。どうせ長生きはできないし貧しいに決まってるなら好き放題するのも合理的でありうるということだ。経済が発展し、寿命が伸び所得が伸びればこの問題は自然と解消されるが、エイズの蔓延が肝心の経済発展を阻害するのでうまくいかない。

a government provided lifeinsurance benet that is payable for deaths that are not the result of AIDS.

しかし、エイズにかかることの機会費用を人為的に上げることはできる。ここでは、エイズ以外での死亡に対して政府が生命保険のようなものを支払うことが提案されている。生命保険の支払いが自殺行動に影響を及ぼすことは知られており、家族のいる男性に限ればこういった仕組みがリスクの高い行為を抑制するだろう。家族のいる男性の婚外性交渉はアフリカでのHIV伝播の大きな要因となっている。

援助のループ

プロダクト(RED)のCEOがグッチやらエルメスやらを一押ししているFTの記事の紹介に引き続き、NGOにおける金の流れに関する記事:

Secret NGO Budgets: Publish what you spend

Out of twelve NGOs that it asked to publicize the budgets of their ongoing projects, only one (Oxfam GB) complied.

グルジアとロシアでの45億ドルにも及ぶ人道的・復興支援の行方を追跡しようとしたところ、予算の公開に応じたのは12のNGOのうちOxfamだけだったという。これはNPO/NGOがドナーの信頼によって成り立っていることを考えると不思議なことだ。顧客たるドナーは自分たちが対価を支払って依頼している事業が適正に行われているかを観察できない利益を配分しないというのも信頼を保持するための手段だ。信頼を得られない団体は支持=寄付を得られず存続できない。

In an unusual display of interagency coordination, ten NGOs convened a meeting and wrote a joint letter to TI Georgia, arguing that they were unable to share their budgets at short notice as “there are a number of legal and contractual implications involved with donors, head office and other stakeholders which will take time to resolve.”

その辺りはNGO側も認識しているようで、10のNGOは共同で予算を開示出来ない旨のレターを送ってきたという。普段見られないほどの協調行動がこんなところで現れるというのは皮肉なものだ。確かにみんなが開示できないのであればダメージは少ない。

USAID informed me that it needed the consent of the NGOs to release this data as it might contain “confidential commercial information,” thereby closing the opacity loop: first NGOs had blamed donors for not being able to release budgets, and now the biggest donor was passing the buck back to NGOs.

寄付の多くを負担する政府機関へ情報公開を迫っても、NGOの同意が必要だと言って断られる。NGOは政府の機関ではないので全ての情報を要求出来ないということだ(これは政府が外部委託を行うことで情報公開を阻むのと同じ構造だ)。NGOはドナーのせいにし、公的機関であるドナーはNGOのせいにする。よってどこからも情報が見えないループが完成する。NGOの資金の流れが分からないだけでなく、援助国での政府のお金の使い方まで不透明になる。

“We finally got the district government to post its budget in the mayor’s office, where everybody can see it,” he proudly told me. When I suggested that he post his own project’s budget in his office, he recoiled. “This is an experimental project, so the overheads are very high,” he replied. “So it would be very difficult to explain.”

文中のこのエピソードは面白い。援助先の地方政府に予算を開示させたのが最大の業績と語るNGOが自分たちの予算の開示を渋る。援助を行う側にとっても援助を受ける側にとってもこのような不透明性は是正しなければいけない課題だ。

火山噴火とケニヤ

朝、アイスランドの火山噴火の影響について以下のようにコメントしたところ、現地からの情報を頂いたのでご紹介(ht @tmatsumo & @ryu_saito)。

火山灰の影響で空港に足止めされてる旅行者の苦労が報道されるけど、一番やばいのはアフリカの高付加価値一次産業だよね。取材とかしないのかな。

被害が想定されるのは、船便ではなく航空便が輸送に利用される高付加価値で容量のないフルーツや野菜などだが、特に被害を受けているのはケニヤの切花産業のようだ。

背景|ケニアの切り花産業|主要産業|ビジネス情報|駐日ケニア共和国大使館

ケニアの農業部門の中では、花卉栽培は紅茶に次ぐ第2外貨獲得産業です。年間2億5,000万ドル強を生み出します。そして、5万人~7万人を直接雇用し、150万人強を間接的に雇用しています。

若干古いデータではあるがケニア大使館でも花産業の重要性が強調されている。伸び率も高いようで、現在では一段と重要な産業になっているはずだ。

欧州市場向けの輸出は1970年代に増加し始め、最大の輸入国オランダは、全体量の71%を占めるまでになりました。流通の大半にオークション制が用いられました。英国が20%でこれに次ぎ、さらにドイツが6%で続きます。

輸出先は欧州が殆どで、特にオークションが行われるオランダを通じて輸出される割合が非常に高い。

The Standard | Online Edition :: Emirates increases cargo space for Amsterdam flights

Flower farmers and exporters will get a major boost with the introduction of daily Emirates Airline flights between Nairobi and Amsterdam from May 1.

来月からはエミレーツ航空が首都ナイロビとアムステルダムと間で毎日運行を開始するということになっているなど、ケニヤにとっては明るいニュースもあったがこの状況では予断を許さない。

“The Netherlands is a crucial market for Kenyan flower exporters and the fact that consignments are re-exported to countries as far and wide as Japan and the United States gives flower farmers market diversity out of their European stronghold,” Ahmad asserted.

アムステルダムに輸出された花はそこから日本やアメリカにまで再輸出されているそうだ。

Daily Nation: – News |Volcano in far-off Iceland hurting Kenya

The head of the Fresh Produce Exporters Association of Kenya, Mr Stephen Mbithi, said 3,000 tonnes of flowers and vegetables worth $9 million (Sh693 million) were stuck at Nairobi’s Jomo Kenyatta International Airport.

当然火山灰によるヨーロッパでの航空システム停止はケニヤの産業に深刻な影響を与えている。すでにナイロビの空港に輸出できなくなった花や野菜が大量に留まっている。

The Standard | Online Edition :: Horticulture hit hard as Europe airspace crisis persists

“Our cold stores are filled to capacity and we have no alternative but to start destroying some of the roses on Monday (today),” he said.

貯蔵には限界があり、既に輸送出来ない花の廃棄が始まっている。

Kneppers said the cancellation could not have come at a worse time, as farms were gearing up for Mothers day in three weeks.

花産業は既に母の日に向けて増産に入っており、これ以上悪いタイミングはないとのことだ。

アフリカ経済

JETROのレポートがなかなかいい:

サブサハラ・アフリカ主要国の消費市場(2010年3月) – アフリカ – ジェトロ

何かと絶望説ばかり囁かれるアフリカだが近年いい動きがあるようだ。

絶対水準だけでなく、成長率でも世界平均を下回ってきたアフリカだが、2000年以降世界平均を上回る成長を続けているのが分かる。

家計最終消費は2000年代に入り爆発的に伸びている。

また、消費者1人当たりの購買力も、2000年以降、加速的に成長している。アフリカの1人当たりの購買力平価(PPP)ベースのGDPは、1990年に1,132ドル、2000年に1,326ドルと順調に増加しており、IMF推計によると2010年には2,167ドルになると見込まれる。

購買力平価で見ても目覚ましい所得の伸びだ。

特に輸入が拡大しているが、残念なことに日本のシェアは低下傾向にあり、逆にシェアを毎年伸ばしているのは中国だ。

さらに、従来消費者とは見なされてこなかった層にも、企業は注目し始めている。アフリカ人口の大半を占める低所得層だ。従来、低所得層は、消費活動を行えるような所得を持ち合わせていないとされてきた。しかしながら、手が届く価格帯でニーズに合う商品であれば、低所得層であっても積極的に消費活動を行うことに、企業が気づき始めたのである。

特に最近注目されているのは低所得者層だ。高い人口増加を背景にアフリカの世界人口に占めるシェアは年々上がっており、市場として注目が集まっているようだ。

きちんと数字を使ってアフリカの経済の話をしているのは珍しいので興味のある方は本文を御覧下さい。

追記:こんな番組があるそうです(ht @dr_norick)「NHKスペシャル|アフリカンドリーム 第1回 “悲劇の国”が奇跡を起こす

国際開発のキャリア

最近、就活の話題をよく目にするのでもう一つエントリーを紹介。

Blood and Milk » Blog Archive » Finding Funding

国際開発のスペシャリストがどうやってそのキャリアを始めたかを説明している。しかし、その内容は開発という特殊な分野にだけ当てはまるというよりも、「アメリカの就活」で紹介した一般的な「就活」と本質的に変わらない。

It was an unpaid position with a multilateral organization in Tashkent, Uzbekistan, and it pretty much launched my global health career.

最初はウズベキスタンでの無給での仕事から全て始まったという。ではどうやってそのためのお金をもらったかという質問が沢山くるという。

I didn’t get funding. I estimated how much it would cost me every month to live in Tashkent. I figured out how long I wanted to stay – six months. Then I got a job, saved up my money, deferred my student loans, and got on the plane to Tashkent.

答えは単にもらえなかったというものだ。月いくら掛かるかを計算し、滞在したい期間を決め、そのための費用を働いて貯金し学生ローンの返済を延期して容易したという。

I actually ended staying at my internship for a full year, funding the extra six months with a US government fellowship that no longer seems to exist.

しかし、結果的に滞在は一年に延び、延長した分の費用は政府のフェローシップによってまかなわれたそうだ。

It led to the job that led to my next job and so on and so forth until here I am now with enough experience that I believe myself capable of blogging about it.

ここから次の仕事、その仕事への繋がり、十分な経験を得るに至っている。

But I got to Tashkent on my own, and I don’t think I could have gotten that fellowship if I wasn’t already there.

しかし、同時に最初のフェローシップを得たのは既に現地にいたからだという。これはインターンシップによって経験を積み、ネットワークを作ってキャリアを形成していくというアメリカでは普通のパスだ。

日本人も国際的な場所で活躍しようというなら、これだけの条件を揃えればいつ頃に行けるみたいな皮算用をするのではなく、自分から打って出る行動力が必要だ。仮に皮算用通りに事が進んだとしても、身一つで始めた人間と同じ力がつくとも思えないし、既に築かれた信頼関係なしに同じ結果を出すことはできない(同じことを言っていたとしてどちらに説得力があるだろう?)。