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ハンバーガーフランチャイズ

1986年に創業し現在570店舗を誇るハンバーガージョイント「Five Guys」についての記事が面白かった。

How I Did It: Jerry Murrell, Five Guys Burgers and Fries

My two eldest sons, Matt and Jim, said they did not want to go to college. I supported them 100 percent.

Instead, we used their college tuition to open a burger joint.

ハンバーガー屋を始めたキッカケは子供ふたりが大学に行きたくないと言ったことで、学費を使って代わりハンバーガー屋を始めたそうだ。日本では少し想像もつかない話だ。

Anyone can make money in the food business as long as you have a good product, reasonable price, and a clean place. That made sense to me.

店を開く三日前にJW Marriottについての本で読んだと言うのが上の内容だ。飲食店は食べ物の質が高く、値段が合理的で、店舗が綺麗なら稼げるとある。

マーケティング

We figure our best salesman is our customer. Treat that person right, he’ll walk out the door and sell for you

セールスや内装にはお金を掛けず、客に宣伝をしてもらう。これはクチコミサイトなんかが増えた今では一段と重要だろう。

クオリティーコントロール

The magic to our hamburgers is quality control.

その代わりに行っているのが徹底したクオリティーコントロールで、ポテトはアイダホ産に限定、冷凍は全く使用せず、シェイクも提供しないという徹底ぶりだ。ドライブスルーもデリバリーもしないし、ハンバーガーとフライ以外にはホットドッグしかないそうだ。コーヒーを提供したこともあったが、店員はコーヒーの淹れ方を知らず質が低かったので取りやめたとのこと。

プライシング

Our food prices fluctuate. We do not base our price on anything but margins.

価格付けはマージンのみ決まっており、原材料価格の変動に応じて価格を変えるそうだ。また一定の材料が上がっても内容は変えない。

フランチャイズ

We make 6 percent of sales on the franchises. All franchises work the same way: People say they want to sell your product. So you give them a Franchise Development Agreement that explains all the ways we can beat them down.

フランチャイズに対する考えが大変正直で分かりやすい。フランチャイズというのは、みんなが自分の商品を売りたいというから、相手をどうにでもできるってことをあらゆる方法で説明する契約だと言っている。商品とブランドを握っているのはフランチャイザーであってフランチャイジーには交渉力がないのだ。

栄養

ところでこの本格派ハンバーガーだが、栄養面では批判も受けている。Wikipediaによれば、

A standard double patty burger, for example, contains almost 800 calories and 97% of the recommended daily saturated fat intake. Men’s Health also rated Five Guys french fries as the 4th most unhealthy french fry in America, noting that a standard large order of fries contains almost 1,500 calories (but is said to feed 3-4 people).

スタンダードなダブルバーガーは800kcal近くに一日必要量の97%もの脂肪を含んでいるし、自称3,4人前のラージフライは1,500kcalということだ。質にこだわるといっても栄養面でのこだわりは微塵もないのは何とも。

コモディティ化対策編

前回「労働のコモディティ化」で、労働の規格化が進みコモディティになってしまっていると述べた。

〇〇という資格を持っている人間が××をすると幾らみたいな状況では、労働者の価値は〇〇であることでしかない。それでも〇〇が希少であれば給与水準は高止まりするが、でなければ待っているのは完全なコモディティ化だ。

これは福祉業界や派遣業界に限ることではない。役職や資格だけで何をする人なのかが確定するような仕事をしている人全てに当てはまる。自分の仕事が言葉で簡単に表せるということで、それに当てはまる誰かが入れば後は給料が低い方が有利ということだ。

仕事・労働で考えると新しいことに聞こえるかもしれないが、マーケティングという観点から言えばこれは常識だ。物を売るときに一番最初にさけるべきはコモディティ化であって、いかに他の製品から自社製品を差別化するかだ。パソコンでも車でも携帯でも、どうやって単なるパソコン・車・携帯ではなく独自のブランドとして認識されるかに膨大な労力をはたいている。

この観点からすれば、資格だけで決まる分野や派遣業界で働くということは、あえてノーブランドのコンピュータ部品で勝負するようなものだ。そしてそのような場所で競争に勝つ方法は部品のそれと同じで、単に安く売ることだ。中国で賃金を抑えて安く売るならいいが、この場合抑えるのは自分の賃金だ。敢えてそんな処で自分を売りに出したくはないだろう(移住して生活費を抑えるのはありえるが)。

ではどうやったらこの状況でうまくやっていくにはどうしたらいいか。二つの方向性がある。

まずは他人をコモディティ化することだ。製造業がオートメーションによる生産性向上で発展したように労働者を規格化して利益を上げる。何をやるかを誰でも分かるようにマニュアル化すればよい。このマニュアル化こそが最も創造性を必要する部分で、これが出来る人間が最大の利益を享受する。派遣業者が儲かるのはこのためだ。労働者の賃金を抑えることでコストを下げ、経営者として利益を上げるノーブランド型だ(もちろん経営者としてそれなりに有名にはなるだろうが)。

他人を使いってコスト削減をしたくないのであればどうするか。製品差別化に走るしかない(日本で製造するためにはどうするかと同じことだ)。そのためにはまず自分の名前を掲げる必要がある。名札のないものにブランドは生じないからだ。これは昔ながらの名刺交換と変わらない。違うのはソーシャルメディアによって自分の名前を売るのが格段に容易になったことだ。これを有効に活用できるひとと出来ない人との差がついていくだろう。

実際の運用には、製品の場合同様にいろんなパターンがあるだろう。それこそ有名人のように自分というブランド一つでやっていくのも手だろうし、OEM・部品製造企業のように複数の組織に顔を出すような専門家になることもありえる(旧来の企業のように一つの組織の下で働くのでは単なる下請け企業になってしまう)。現実にはその中間型のような形態を取るケースが多くなるだろう。

どのような戦略を取るにしろ、単に人に言われたことをやるのが上手いだけでは駄目だ。自分の仕事は自分で作り出していく必要がある。不況だから大学生の希望就職先には大手企業ずらりという状況をみていると現実にはそううまくいっていないようではあるが。

上がる学費

教育費が年々上がるという話ではなく、同じ生徒の学費が毎年上がるのは何故かという話。そういえば日本の国立大学の学費は毎年上がっていたような気がするけどそれとは別。

Dear Economist: Should I try to make school fees fairer?

I’m a marketing manager at a British private boarding school. Fees start low and increase during a pupil’s education regardless of the fact that costs remain pretty constant before inflation. I want to reflect this “flat” cost and reward loyalty – but how can I without an ugly hike at reception class?

質問に対する答えという形式をとっているTim Harfordのコラム。実際、ショッピング中にどうしてこれはこういう値段の付け方なの??と聞かれることはよくある。。ちなみに、「ああそれは…」などと真面目に答えると、「そうアンタ達のせいでこういういやらしいプライシングになるのね」などと返されること請け合いだ(説明は後付で価格の付け方自体は昔からあることが多いわけだけど)。

今回のお題は私立(寄宿)学校の学費で、一年目から段々と上がっていくと言う。質問者は費用が一定なのだから価格も一定に、フェアに、すべきではないかと言っている。

Let’s take a step back. You say that you’d like to reflect costs. Why? Most businesses set prices to attract customers and increase profits. Costs are not directly relevant.

これに対する返答がなかなかいい。そもそも費用と価格を連動させる直接的な理由はないという。そりゃそうだ。基本的には相手が払う気がある限り価格を上げればいいだけの話だ。もちろん余り利幅が大きいと競合相手に客を取られるという懸念があるので価格を抑えるという話はあるだろうが、それはフェアかどうかとは関係ない。

Most companies say they reward loyalty, but it is more traditional to gouge loyal customers while chasing new ones. Don’t fall for your own propaganda.

ロイヤルな顧客を大事にするというのはよくあるスローガンだが、その心はロイヤルな客のほうが価格を上げても大丈夫だからであって、ロイヤリティそのものが重要ではないという話だ。

また「費用」といったときにそれが何を指しているのかも実ははっきりしない。例えば企業にとっては遊休設備があればコスト割れしても売った方いいことも多いわけだが、この場合の費用とは何だろうか。会計上のそれで言うならこれは赤字取引となる(もちろん会計原則には経済のそれとは違う意義があるので会計処理がおかしいという話ではない)。

Parents will be nervous about whether the school will suit their children, so a cheap price year in reception is sensible.

では何で最初安いのかというと、それはお試し期間だからだ。こういうと学費のようには聞こえないが本質的には同じことだ。ディアゴスティーニと変わらない。

The only reason to change your current pricing is if you can figure out a way of concealing some of the later fees.

改善の余地があるとすれば、いかに価格の上昇を見えないようにするかだ。これは各種証明書の発行費用を上げることで達成できる。流石にそこまで費用を計算する人もいないだろうし、将来どれぐらい払うかも分かりにくい。

「嫌消費」なわけない

他のネタを使おうかと思ったが、Twitterで出てきて気になったので:

「嫌消費」世代(2010年)-経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち

「クルマ買うなんてバカじゃないの?」。こんな話を東京の20代の人達と話しているとよく耳にする。車がなくては生活ができない地方でも「現金で買える車しか買わない」と言う。

今の東京の若者が車を欲しがらないなんて誰でも分かることだ。あんなに公共交通機関が発達しているのだから、駐車スペースもなく税金もかかる車を買わないのは極めて合理的だ。(そもそも平均的な若者が買うことはない高級車を除けば)車のステータス効果はもうない。こんなものを取り上げて若者の消費欲が下がっているなんていうのは、若者を何も知らないといっているのと同じだ。

彼らは、消費をしない訳ではないが、他世代に比べて、収入に見合った消費をしない心理的な態度を持っている。このような傾向を「嫌消費(けんしょうひ)」と呼んでいる。

一つ単語が抜けている。「現在」収入だ。そして、今の収入を使いすぎない合理的な理由はいくらでもある。将来の収入が心配なのがその一つだ。今消費しないのは消費が嫌いだからではない。将来消費したいからだ

もし本当に将来に渡っても消費する気がないなら、頑張って働く必要はない

20代の彼らは、非正規雇用が多く、低収入層が多いからだと思われがちだが、実際は、他世代に比べて、男性の正規雇用率は65%、年収も300万円以上が52%と見劣りする条件にない。

しかし彼らは他の世代と見劣りしないほど働いて稼いでいるわけで、消費する気自体はある。そもそも、本当に消費欲自体がなくなっているなら収入に対する欲求も減るはずだが、収入に不満を持つ若者の数は増えている

ものが売れない理由は様々だ。バブル崩壊以後の構造的な要因としてあげられるのは、将来が不安、収入の見通しがよくない、低収入層が増えている、の3つである。

それを、これでほぼ説明できているのに、

彼らは、思春期に、バブル後の混乱、就職氷河期、小泉構造改革を世代体験として持ち、共通の世代意識を共有している。「自分の夢や理想を高望みして周り と衝突するより、空気を読んで皆に合わせた方がいい」、と言う意識だ。この意識の背後には、児童期のイジメ体験、勤労観の混乱や就職氷河期体験によって植 え付けられた「劣等感」があるようだ。

世代を勝手にまとめて一人の人間に仕立て上げた挙句、心理分析などする必要はない。そんなことよりも哲学、歴史、経済学等の人文社会諸科学やゲーム理論に基礎づけられた新しいマーケティングに期待したいところだ。