Openbook

ソーシャルネットワークねたが続きますが、Openbookというのは新世代のオープン型ネットワークではなく、Facebookのパロディだ:

Openbook – Connect and share whether you want to or not

OpenbookはFacebookで全世界に公開されているステータスを検索できるサイトだ。上のスクリーンショットでは「おはよう」を検索してみた(ちなみにRecent Searchesにある日本語は私が入力したものではない)。日本人以外にもなかなか人気の単語であることが分かる。Facebookにしては本人の顔写真が少ないのも特徴だ(日本語が好きな外国人を想像すればわかるが)。

このサイトの目的は別にこうやって遊ぶためではなく、Facebookにおけるプライバシーを啓蒙することだ。「Facebookの使い方」に書いたように、Facebookにはかなり細かいプライバシー設定機能がある。きちんと利用すればかなり思い通りのアクセスコントロールが可能だ。しかし、デフォルトでのプライバシー設定は徐々に甘くなっており、設定を変更しないと相当な情報が世界中に検索可能な形で公開されるので気を付けたい。

レピュテーションとプライバシー

実名・匿名の問題は、名前を売ってレピュテーションを上げることとプライバシーとの兼ね合いだ。実名利用が一般的なアメリカではどのようなバランスがとられているのだろう。

How people monitor their identity and search for others online

  • 57%のネットユーザーが、自分に関する情報を検索してモニターしている
  • 46%が、ソーシャルネットワークにプロフィールを持っている
  • 46%は昔の知り合いを、38%が友達について検索している

どの数字も上昇傾向にあり、ネット上で他人の情報を集めると同時に自分もまたその対象となっていることを認識されている様が見て取れる。

  • 18-29歳の44%はネットに公開する情報を制限している
  • 71%はソーシャルネットワークでのプライバシー設定を変更している

若い世代の話かと思えばそうでもない。18-29歳のの28%はFacebook, MySpace, LinkedInなどのソーシャルネットワークを全く信用しておらず、これは他の世代よりも高い数字だ。プライバシーは若者にも重視されており、情報をオンラインにすると同時にその管理に力を入れている。

  • 31%のネットユーザーは同僚や専門家、競争相手を検索している
  • 16%はデートの相手や交際相手を検索している

このような状況で、自分の情報がどうオンラインで流れているかに慎重になるのは自然なことだろう。ECサイトがSEOに労力を割くのと変わらない。

  • 27%の仕事を持っているユーザーは職場でオンラインでの活動についてルールがあると述べている
  • 12%は業務の一環としてオンライン上で自分を売り出す(market)する必要があると述べている(男性は15%、女性は7%)

さらにオンラインでのあり方が仕事にも繋がり始めている。多くの人は情報を限定的に公開し、その流れを自分でコントロールできるようなプラットフォームを求めているともいえ、Facebookが最大のソーシャルネットワークになったことも頷ける。

ツイッターでの災害情報

大したニュースではないが、むしろニュースになるのが不思議。

ツイッターでの災害情報提供を指示~総務相 | 日テレNEWS24

利用者が急増している簡易投稿サイト「ツイッター」に今月中旬から最新の災害情報を提供するよう、総務省消防庁に指示したことを明らかにした。

災害情報の目的は単に情報を広めることにあるわけだから、費用に対して効果が見合うなら当然始めるべきだといえる。ネット専門でテレビは見ないし、ラジオも聞かない人はたくさんいる。今までこういう人に速報を伝えることは難しかったわけで、良い試みだ。

一企業のインフラを使うのはどうなんだ、という声もありそうだが、放送局でもそれは変わらない。別に他のマイクロブログで同じ試みを初めても良い。コストにシビアな企業の多くがTwitterを含めた複数のチャンネルでマーケティングを行っているのだから政府がやらない理由もないだろう。ソーシャルメディアに数人割り当てて交代で管理すれば十分だ(CoTweet)のイメージ。

ジャーナリストに必要なスキル

ジャーナリストに必要なものは何なのか考えさせられる記事があった。

When public records are less than public: How governments try to use copyright to limit access to data

そもそもジャーナリストという職業が何を意味するのかよく分かっていない。是非ジャーナリストの方と話てみたいと思うが、ここではとりあえずWikipediaのエントリーを見てみる。

A journalist collects and disseminates information about current events, people, trends, and issues.

最近の事柄に関して情報を集めて広める人をジャーナリストというらしい。この定義によれば以下のような能力がジャーナリストには必要であるように思われる:

  • 需要のある情報を見極める
  • 必要な情報を収集する
  • 収集した情報を流通に適した形に加工する

こう考えるとITがジャーナリズムを変えるのは当然だろう。単に流通コストが下がったことで情報を売るのが難しくなったというだけでなく、ジャーナリストの仕事の全ての段階においてITが大きな影響を与えるはずだ。

需要のある情報を見極める能力や集めた情報をうまく流通させる能力はウェブ以前と以後では比べ物にならない。Googleのようにユーザーの行動を把握したり、Facebookのようにソーシャルネットワークを利用して興味を探ったりできる。個人レベルであっても、各種のソーシャルメディアを効果的に利用することでまわりの人、特に自分の観客が何を求めているのかを効果的に把握できる。今まで出来なかったことが出来るようになったゆえに必要となった能力だろう。

必要な情報の収集方法も変わった。調査報道だと例えば政府や企業の不正を暴くという機能がある。以前なら記者クラブに行くとか熱心に取材・聞き込みをすればよかったかもしれない。しかしこれからはそれでは足りない。

Will Columbia-Trained, Code-Savvy Journalists Bridge the Media/Tech Divide?

But even fluency in broadly defined “multimedia skills” isn’t enough, with coding becoming as crucial to the news business as knowing how to use a computer was a couple of generations ago.<

例えば、このWiredの記事はコロンビア大学がジャーナリズムとコンピューターサイエンスのジョイントプログラムを提供していることに際し、ジャーナリストは単にマルチメディアに強いだけではなく、プログラミングのスキルも必要だと指摘している。

これは政府が情報をデジタルデータとして公開する潮流を考えれば当然の流れだろう。情報がない時代にはそれをひたすら探すのが重要だが、逆に情報が溢れている時代には必要な情報をそこから探り当てることのほうが重要だ。そして莫大な情報をさばくにはコードを書くしかない。これには統計情報を、例えばRなどで、処理することも含まれる。

情報が少ないのか多いのか、それが情報を集めて広める職業に大きな影響を与えるのはごく自然なことだ

When public records are less than public: How governments try to use copyright to limit access to data

さらに今回の記事では、そのコーディング能力すら十分とは言えないという。

That’s all well and good, but having all those programmer journalists looking for access to public data brings to the forefront questions about who owns public records and who has the right to put limits on their use.

何故なら、政府が情報公開の流れに逆らおうとするためだ。情報処理能力があっても情報がなければ意味のある情報を得ることはできない。再び情報の少なさが問題となっているわけだ。

しかし、同じ情報の少なさでも対策は以前とは異なる。今回、情報が少ないのは政府が情報公開の規則を何らかの方法でねじ曲げてそれを拒んでいるためだ。

While Section 105 of the Copyright Act makes works of the federal government ineligible for copyright protection, this provision does not apply to state and local governments.

アメリカの様子が描かれている。著作権法は連邦政府の文章に保護を与えていないが、地方政府には適用されない。

In New York, for instance, state and local agencies may comply with their obligations under the state Freedom of Information Law while maintaining their copyright, and the public records law “does not prohibit a state agency from placing restrictions on how a record, if it were copyrighted, could be subsequently distributed.”

そこを利用して州政府が情報公開を拒むための法律を作っている。

Of course, even when a government entity claims copyright over public data, that protection is at best thin. In general, datasets are protectable as compilations, meaning only the original selection, coordination, or arrangement of facts is protected.

しかし、行政の情報というのはデータベースに該当することが多く、少なくともアメリカでは、実施的な保護はない。

In the case where a third party provides the government with information under a contract, the government agency may not be free to let you do anything you want with it.

そうすると行政は情報=データベースの作成を第三者に依頼する。それによって作成された情報の製作者が行政機関ではなくなるからだ。

記事中で明示されてはいないが、ここで必要な能力はリーガルなものだろう。行政が処理すべき情報の公開を法律・契約を使って阻んでいる以上、それを突破するには情報を収集する側の知識がかかせない

ITによってジャーナリズムが出来ることの範囲は大きく広がり、その結果としてジャーナリストに必要な能力も増えた。これ自体はよいことだが、ITは同時に紙媒体の収益性を奪い、単なる情報から利益を上げるのを難しくした。プログラムが書けて法律も分かるジャーナリストをこの業界がサポートできるかという話だ。

ITと情報公開の流れが可能にした、莫大な情報をコードを駆使して処理し得られた情報を低(限界)費用で配布するというモデルがビジネスとして成り立つのだろうか。

Twitterの収益源

Twitter話題(ソーシャルメディアを使った予想)ついでに、Twitterがどこから収益を得ているのかについて(ht @gshibayama):

Twitter Has a Business Model: ‘Promoted Tweets’

The promoted tweet is one of three streams of revenue Twitter will have available, including a data fee from search engines indexing Twitter in real time, such as Google, Yahoo and Bing, and the coming “professional accounts.”

三つの収益源が示されている:

  1. Promoted Tweet
  2. Data Fee
  3. Professional Account

Promoted Tweet

まずは今回導入されたPromoted Tweetだ。

Twitter is expected an answer to both questions on Tuesday in the form of “promoted tweets,” which will put ads on Twitter, first in search results and later in user feeds both on Twitter.com and the myriad third-party clients […]

Promoted TweetはTwitterサイトの検索結果やタイムライン、そしてサードパーティークライアントへとTweetの形で広告を配信する。通常のTweet同様、RTしたりFavoriteにしたりできる。

Twitter is developing a performance model that could be the basis for pricing based on a metric called “resonance” — impact judged on how much a tweet is passed around, marked as a favorite or how often a user clicks through a posted link.

この特性を活かして、広告効果の指標を作る計画だ。ユーザーの行動自体だけでなく、ユーザーの特性も計算にいれればかなり的確な指標にすることもできそうだ。豊富なファンディングを背景にユーザーの反応を見ながら慎重に進める方針とのこと。特にユーザー個人のTLへの広告Tweet挿入は抵抗も予想される。ユーザー毎にマッチした広告にしたり、ある程度表示される広告にユーザーの意思を反映させるといった対策は必要なように思われる。

Data Fee

データフィーは前回のポスト(ソーシャルメディアを使った予想)のように、Twitterのもつ情報を検索エンジンに販売するものだ。Twitterの検索結果は既にGoogleなどでリアルタイムに表示されている。

Professional Account

Professional accounts will include the ability to have multiple users on one account — much like some of the clients such as CoTweet do today — plus a dashboard that shows what’s happening with a brand on Twitter and integration with promoted tweets.

一つのアカウントに複数のユーザーを登録したり、ブランド管理のためのダッシュボードを提供したりするプロアカウントも計画中とのこと。これは既にサードパーティーのクライアントやコーポレート向けのサービスでカバーされているが、Twitter本体が参入するということだろう。「Tweetie買収」同様のプラットフォーム企業としての微妙なバランス取りが要求される。