HIVカルトグラム

エイズといえばアフリカが大変というイメージだが、実際どの程度なのか視覚化されていると分かりやすい:

xocas.com information graphics » Blog Archive » World AIDS Day

aids

HIV感染者の数を面積で表したカルトグラム(統計地図)だ。色は人口当たりの患者数を表している。アフリカが圧倒的なことが分かる(マダガスカルが巨大なのはアフリカという単位で縮尺を決めたからだろう)。元データは国連にある。

ちなみに日本の現状はというと数日前に朝日新聞に記事が上がっている:

エイズ増える日本「現実直視を」 来日のNGO代表訴え

TKY200911300230

こんな中、日本国内の感染者の総数は2008年までに1万人を超えた。潜在的な感染者は数倍いるとみられる。

ということで、国際的には小規模ながらも右肩上がりに増えている。記事では適切な性教育の不足が問題とされているが、本当の原因は何だろう。アメリカのように性教育と聞くと騒ぎ出す政治力の強い団体がいるようには思わない。

ちなみにカルトグラムの作成は一筋縄にいかない。国別・都道府県別の数字を入れるだけで地図化してくれるようなウェブサイトがあると社会のためにもよいように思う。誰かやってくれないだろうか。

タクシー代の交渉

タクシー料金がメーターで決まるのはごく一部の先進国だけだ。多くの国では目的地を告げたあと値段交渉を行う。いくつかの戦略が提示されている:

Psychology, economics, and the taxi – Chris Blattman

Strategy part 1: Figure out the “real” price beforehand. Shopkeepers, hoteliers, hosts, and the like will help you here. Ask those who actually take taxis.

まず大体の落としどころを事前に調査する。ネットで調べてもいいし、現地の人に聞いてみてもいい。別に嘘をつくインセンティブはないだろうから誰でもいいだろう。

Strategy part 2: Anchor the price. Humans have a tendency towards starting point bias. Get that starting point low.

とりあえず低い額からスタートすることも重要だ。

Strategy part 3: Figure out the national bargaining fraction. Anchor too low and some cabbies will simply stop talking to you.

もちろんあまり低い値からスタートしようとすればタクシー運転手は交渉に応じない。大体どの程度から交渉を始めるのが普通かということも調べる必要がある。

Strategy part 4: Keep smiling. It’s a game, so try to enjoy it. Never lose your cool.

笑っていたほうがいいそうだ。これは大抵の一回限りの交渉に当てはまるだろう。

面白いのは、国によって大体のスタート位置と交渉にかかる長さが違うということだ:

  • Ethiopia: 0.7 with 2 rounds
  • Argentina: no less than 0.9 and 1 round.
  • Canada: 1 and 0
  • Uganda: 0.5 and 4 rounds
  • Liberia: 0.1 and 8 rounds
  • Morocco: 0.001 and upwards of 754 rounds (including mint tea).

非常に低い価格からスタートするのが普通でやたらと交渉に時間がかかる国もあれば、日本のように全く交渉を行わない国もある。これには二つの理由があるだろう。

まず一つは、タクシー運転手が値段交渉を価格差別のデバイスとして利用していることだ。お金のある人はさっさと移動したいので長い交渉を避けたがる。これを利用して、払える人に多く払ってもらいつつ、値引き交渉をするような客も取り込む。価格差別は需要が不均一な場合ほど重要であり、貧富の差はその最も大きな要因だ。

二つ目の理由は、タクシー業界の構造だ。個々の運転手にとって値段交渉を価格差別に使うのが最適な行動であっても、運転手全体にとっては最適ではない。業界が大きな企業に統合されれば、値段交渉に応じないようにすることで、運転手同士の競争を避けるだろう。これは会社の信用をもとに所属する運転手が機会主義的に価格を釣り上げて利益を出すことを防ぐためにもなる(フランチャイズのレストランが仕入れを統一するようなものだ)。日本のように料金が一律に規制されていない場合でも企業ごとに一つの価格体系しかなければ競合他社の価格を把握するのは簡単であり、(暗黙の)共謀を形成するのも簡単になる。

但し、値段交渉に応じないというポリシーは実際に守られているかを確認するのが難しい。運転手と客にとって有利な交渉であれば誰も会社にそれを報告するインセンティブがないためだ。メーターを利用した課金の仕組みはこの問題を解決するためのものだろう。

少子化とハンバーガー

追記:ハンバーガーの例えがメインな気がしてきたので題名変更。Topsyのほうが変わってません。

昨夜に引き続き日本のニュースに軽いツッコミを:

4割が「子ども必要ない」20〜30歳代は6割−内閣府調査 (1/2ページ) – MSN産経ニュース

結婚しても必ずしも子どもを持つ必要はないと考える人が42・8%に上ることが5日、内閣府がまとめた男女共同参画に関する世論調査で分かった。

男女共同参画社会に関する世論調査のことだろう。過去の調査結果は内閣府男女共同参画局にある。ここで報じられている最新の調査結果はまだウェブで公開されていないのだが、新聞各社にだけ一定期間独占的に供給しているのかと疑ってしまう(まあ出所をリンクしないのは日本の新聞ではいつものことだが)。

子どもを持つ必要はないとした人は、男性が38・7%、女性が46・4%だった。年齢別では20歳代が63・0%、30歳代が59・0%と高く、若い世代ほど子どもを持つことにこだわらない傾向が顕著になった。

確かに二十代では「結婚しても必ずしも子どもを持つ必要はない」と考えている人が六割いるが、「子ども必要ない」と意味が全然違うような気がするのは私だけだろうか。私は子供をを持つ必要はないと考える人間の一人だが、個人として子供がいらないと言っているわけではない。

結婚についても「結婚は個人の自由であるから,結婚してもしなくてもどちらでもよいか」という質問になっており、

少子化の背景に、国民の家庭に対する意識の変化があることを示した結果と言え、内閣府の担当者は「個人の生き方の多様化が進んでいる」としている。

内閣府の担当者が言う通り、日本人が結婚・出産についてリベラルになってきているということだろう。

しかし、これを「少子化の背景に、国民の家庭に対する意識の変化があることを示した」と結論づけるのは早急だ。前述のように、結婚・子供が必要かと実際に結婚するか・子供をつくるかとは別のことだからだ。「ハンバーガーは必要か」と聞かれたら、そりゃ別に必要はないという人がほとんどだが、それはハンバーガーの消費量とはあまり関係ない

晩婚化や少子化といった現象はかなりの部分が経済学的に説明できる(参考:結婚と市場)。もちろん価値観・意識の変化もあるだろうが、それらを政府が変えるというのは難しいし、そもそも政府にそんな権限があるとは思えない。また価値観・意識の変化自体が技術進歩からくる経済状況の変化によって内生的に生じている部分もある。

ハンバーガーの消費が増えるのが心配なら、アメリカ文化に対する日本人の意識の変化なんか考えるよりもハンバーガーの価格を見たほうがいい。安いから消費は増えるのだ。もちろんみんながアメリカ文化が好きならハンバーガー消費も増えるが、それに文句をつけてもしょうがないし、安いハンバーガーを食べてるうちにアメリカの食事が好きになっただけかもしれない。

本当の失業率

失業率ってのは結構当てにならない統計なんだけど、もし知らない人がいたら次のビデオをどうぞ:

Mintが本当の失業率は(10.0でなく)17.2%だと主張するビデオを作った

四種類のありがちな「失業者」が実は失業率にはカウントされないってのを面白おかしく説明している。元データは労働統計局(Bureau of Labor Statistics)のこちらにある。以下が六種類の失業率だ。公式な失業率はU3で10.0%となっている。

  • U1: 5.9%
  • U2: 6.6%
  • U3: 10.0%
  • U4: 10.5%
  • U5: 11.3%
  • U6: 17.2%

これらの定義はBLS introduces new range of alternative unemployment measuresにあり、BLSは1995年から六種類の数値を公開している。簡単に要約すると:

  • U1: 長期求職者(15週間以上)の労働人口に対する割合
  • U2: 解雇された求職者の労働人口に対する割合
  • U3: 25歳以上の求職者の労働人口に対する割合
  • U4: フルタイムの求職者のフルタイム労働人口に対する割合
  • U5: 16歳以上の求職者の労働人口に対する割合
  • U6: パートタイムの労働者・求職者を考慮
  • U7: 仕事がみつからないので職探しを止めた人を考慮

U6, U7はU5に足し算する形で作られているがU1-U4は全く違う指標と考えられる。但し、アメリカでは景気悪いから大学院に通うという人もいるのでこれでもどれだけ実態がつかめているか分からない。日本のデータは統計局にある。

ちなみに個人財務管理サービスを提供するMint.comが公開したビデオだ。もちろんこれは自社のプロモーション活動の一環であり、経済的な動機に基づいている。このクオリティのビデオを作るのは趣味・ボランティアでは難しく、やはりウェブのコンテンツが充実するためにはこういった経済利益に基づく行動が重要なように思われる(参考:日本のウェブが残念なのは当然)。

分かりやすい既得権益

mixiのニュースにあったので説明することもないがサクッとつっこんでおく:

「1千円カット」も洗髪設備を、義務化が加速 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

「カットのみ、10分1000円」など低価格を売りものに店舗を増やすカット専門の理容店にも、洗髪設備を設置するよう条例で義務付ける動きが加速している。

カットのみの理容店に洗髪設備を義務付けるというがこれは非常に明らさまな既得権益維持を目的した政治だ。

こうした営業形態に、既存店が加盟する県理容生活衛生同業組合などは今年2月、理美容店には洗髪設備の設置を義務づけるよう県議会に請願した。日野恒雄理 事長は「新型インフルエンザが騒がれる中、業界の信用にもかかわる」と主張。県は一般に意見を募り、義務化賛成が多数を占めたため提案に踏み切った。

衛生面が原因だというが、それなら何故消費者や医療関係者ではなく既存店の代表が請願するのだろうか。どう考えても拡大するカット専門店に対してサービスや価格以外の手段で優位を得ようとしているこれは消費者のためにならない

一方で、理美容店のハサミやくしの消毒状況を点検した千葉県は「カット専門店と既存店に衛生管理上の違いはない」と条例化を見送った。ほかに岩手、大阪など7府県も見送っている。

そりゃそうだろう。別に切った髪の毛が残っていたって特段不潔というわけではないし、家の近くで切ってもらい直ぐ帰宅して洗髪するだろう。順番から言えば遥に不潔そうな髪で歩いている人間をまずどうにかすべきだ。

#まあ自分でクリップしているので関係ないですが。